暴論

かつてスペインの僧侶ブルーノは、当時の教会に対して「暴論」をはいたために、火あぶりの刑になった。いつの世でも異端は迫害される。だがその中で少なからず先見の明があった例には事欠かないのだ。

エアコンの使用制限をせよ

Giordano Bruno

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これこそ本当の暴論だといわれそうだ。何しろ、毎年地球温暖化のおかげで夏の平均気温はますます上がり、北日本にもスコールのような、亜熱帯的な気候の特徴が現れてきている。

経済担当者は、猛暑によってエアコンの販売台数が急激にのびることを景気動向が上向きになっていると考えて喜ぶ。エアコンの単価は、10数万円以上と高いし、その後の電力消費もすさまじいからだ。

真夏の急激な温度上昇は、300万キロワットもの変動を引き起こす。これによって、それまで休止していた発電機群が、動員されていっせいに電力を供給し始める。

だが、これは全く20世紀的な考え方であって、これでは21世紀を生き延びることはできない。エアコンの生産が環境にいかにひどい影響を与えているかちょっと考えただけでわかる。

何と言っても今日の技術では、冷媒としてのガスは、それだけでオゾン層に打撃を与える。多くの人はフロンが禁止されて、代替ガスになったから安心と思いこまされているが、実はそうではなく、その度合いが減ったとか、分解しやすくなったというだけで、本質的な問題は少しも解決していないのである。

現在のエアコンの値段を維持するには、今の熱交換の方法を続けるしかない。ほかにも新システムが考えられているが、コスト的に高く、電気会社にはやる気がない。冷蔵庫もそうだが、新しいシステムに変えるには、今までの生産ラインをいったん破棄しなければならないのだが、低電力型に変えても急に売り上げが伸びるという展望はないからだ。。

次に電気代だ。電力会社の最高発電量は、夏の最も暑いときに記録される。エアコンをつけてテレビを見ている状態が、最も電気を消費する。快適さを求める行為が、発電所をフル稼働させている。そのときは電車やビルでも当然、最高潮に冷房を行っている。

今のエアコンは技術的にはまだまだ改良の余地があり、効率も低い。そもそも熱交換というのは元々非常にエネルギーを必要とするものだ。何しろ自然の熱力学の法則の流れを人工的に逆転させることなのだから。

だからいったんエアコンを始動させると、特に一定の設定温度に到達させるためには、途方もない電力を食う。暑いときは全家庭でいっせいにスイッチを入れるから、発電所に対する負担は一気に上がる。たとえば、雲が切れて太陽が突然照りつけ始めたときなど。

日本は、需要に追いつかない状態をとても嫌う。自動車もたいてい注文するとすぐに届く。電力会社もその例にもれず、常に供給が需要を上回らなければいけないと確信しているようだ。電力不足による停電など決して許されることではないのだ。

余裕を持った発電体制を維持するためには、今のところ原発しかない。「暑い、暑い、スイッチを入れよう」という何百万の人々の一言が、原子炉一基を増設させるもとになっている。

現在の技術のもとでは、この方法しか取る方法はない。快適さを求めるためには、何十もの原発を増設して行くか、ガスや石油や石炭を途方もなく燃やして二酸化炭素をどんどん放出するかの二つしかない。風力や水力ではとてもこのような量には対処できないのである。

そもそもアメリカに始まった「エア・コンディショニング」という考え自体が間違っている。自然の当然の温度の上下を無視して、すべての人々に、病院の集中治療室のような環境を享受させようというのがこの技術の根本である。

自然の風や、気象条件から隔離された人工的な環境を維持しようという傲慢な目的から、猛烈なエネルギーを消費するシステムが生まれた。そしてそれを万人が最終的には消費する道具とするのがこの考えの最終目標である。

一体この動きの終点はどこにあるのだろう。しかも日本だけでなく、世界全体がその方向に動いているとしたら。もう結論は出ている。我々の使う電気製品のうち電力消費量の多いものは、廃棄するか、技術力によって大幅に減らすかのどちらかだ。

工業用電力は、使用量が多くても一定している。あるいは予測が容易である。アルミ精錬のような際だった電力消費さえ抑えれば、かなり計画的に減らしてゆくことが可能である。

ところが、家庭用電力は気まぐれに支配されている。先に述べた猛暑であるとか、何か新製品が登場して、それが爆発的に売れたりすると、予測もつかない消費量の増加が考えられる。

今、電力の最大の消費者であるエアコンを制限するのはそこに理由がある。病室、老人の部屋、人々の密集するところ以外では、今すぐ何らかの手を打つべきだ。今のような野放し状態では、滅亡の時期が加速度的に近づくだけである。

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