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トランプ氏の迷走 2017/02/16

トランプ氏が就任してから、1か月がたつ。すでに予想されていたことだが、彼のあまりにも幼稚な政治手腕に、世界中が振り回されてしまっている。2016年11月に書いた、拙著のタイトルは「トランプ氏の当選」であったが、すでにその時から多くの危惧が生じていた。そのときには、3種類の場合を想定してみた。それを再びここに示すと…

(1)過激な発言とは裏腹に、かなりまともな政治家ぶりを発揮して、次々とこれまでとは違った斬新な政策を内外ともに打ち出して、国民を感心させる。これまでの既成の政治家たちが歯ぎしりして悔しがるような、思い切った行動に出ることもある。例えばかつてのニクソン大統領の中国訪問のような。ついにはMAGA(Make America Great Again)を実現したと称賛される。 (2)就任しても、自分の過激な発言が尾を引いて、穏健派が顔をしかめるような過激な政策を繰り出して、国民の分断はますます深まり、それに対する抗議運動が広まり、上昇の希望をかなえてもらえなかった下層の人々の失望を買う。そのため、任期の後半はどうしようもないレイム・ダックになり果てる。TrumpはTrampにすぎないと笑われる。 (3)結局のところ、人材は自分の出身である共和党・保守派から求めざるを得ず、また外交に関してはEUや中国、ロシアと足並みをそろえなければならない事柄も多いので、妥協に妥協を重ね、当たらず触らずの政策の連続となり、「歴代で最もつまらない大統領」の烙印を押されてしまう。MAW(Make America Weaker)と皮肉られる。

貼り付け元 <http://nishidanishida.web.fc2.com/board.htm>

11月には、(3)が最も可能性がありそうだと書いたが、現在2017年2月の時点では、(2)のほうが正しかったのかなと思い始めている。

米国憲法を無視した、イスラム諸国民の再入国の差し止めに示されるように、彼のやり方はまるで政治の素人であるかのようだ。現在、彼が次々と打ち出している政策は、なるほど選挙運動中には公約として支持者に受け入れられたものばかりだ。そう簡単にそれらを破棄するわけにもいかない。

そしてもう一つの重大な問題が持ち上がっている。これは支持者との関係ではなく、ロシアによるひそかな選挙運動へのかかわりの疑いだ。これは、弾劾裁判に至るような重大な国家の安全保障問題がかかわっているかもしれない。今後の捜査にもよるが、彼の部下たちが、そのような取引を行っていたとすれば、これはアメリカの政治史上初めてのケースとなる。

今回のトランプ氏の登場は、それまでの体制側(エスタブリッシュメント)がふがいなかったことにもよる。毎回の大統領選挙の投票率は低迷していたし、民主党と共和党の2大政党だけで政治が執り行われ、それ以外の声がまるで無視されてきたことに対して改善の兆しが見えなかった。

さらに、オバマ大統領が、いくら頑張っても銃規制の法案を成立させることができなかったのは、上院も下院も共和党の勢力が強かったからである。共和党は、トランプ氏のような極端な政策にならないにしても、銃規制、国民健康保険、環境保護の問題に対しては反対の立場をとっている。

ただし、自由貿易や”小さな政府”を目指す立場はトランプ氏には見受けられないようだ。というのもここで彼を支持した層の望みが大きくかかわりを持ってきているからだ。トランプ氏を支持している層は、自由貿易によって生活が苦しくなった労働者層である。彼らが働いていた職場は、激しい国際競争によって奪われ、生活をしていた地方都市は軒並み衰退している。最もわかりやすい例は自動車産業であろう。

この点ではイギリスのヨーロッパ連合からの離脱に投票した英国人たちとよく似ている。これまで彼らは政治の表舞台に出ていなかった。そして組織化もされていなかった。発言の機会は抑えられていたといえる。鬱積した不満は、大儲けをする多国籍企業や次々と入り込んでくる移民へ向かった。特に移民に対しては、「彼らは我々から仕事を奪った」と短絡的に考えやすく、それがトランプ氏のような巧みな政治家に利用されたのだと言える。

もちろんトランプ氏が彼らの不満をこれからくみ上げてくれなければ、彼らの支持はどんどん下がっていくだろうが、トランプ氏はそんな下手なことはしないだろう。プーチン氏がロシア国民に、エルドアン氏がトルコ国民に絶大な人気を保っているように、大衆迎合にたけた政治家は、決して自分の支持層を失望させることはない。状況がよくならなくても、それはトランプ氏が悪いのではなく、”敵”が悪いのだと思わせることに成功すれば、むしろ支持率は上昇していく。

さて、トランプ氏の支持者たちは、どのような特徴があるだろうか。アメリカの”深南部”と呼ばれる地域では、昔からKKKが暗躍し、人種差別の雰囲気は家庭内で親から子へと伝えられてきた。今でこそリンチは表向きにはなくなったけれども、リンチを黙認するような母親が息子と娘を育て孫に伝わり、それが現在に至っている。もちろんそのような地域では、銃がなければ自分がリンチに会うかもしれないので、銃を持たないなどということは考えられない。

さらにこのような人々の間では、キリスト教プロテスタントの中でも、特に原理主義的傾向が強く、たとえば進化論が学校では教えられていないところが多いのも特徴である。ひところ Tea Party という、共和党の中でも過激な部分が有名になったことがある。その運動は現在、衰退したかのように見えるが、トランプ氏の政策の中に吸収され、ついに国家的な方向まで決めるに至ったのだとみてよい。

トランプ氏の移民を入れない政策や、メキシコとの国境に壁を作る案も、国民の半分以上の支持を受けている。決して少数派ではなく、今まで世界の人々がアメリカ人に対して持っていた、「ワシントン、リンカーンに代表される世界に模範となる民主主義体制」とはまるで違う国が出現している。というよりは、これが本当のアメリカ合衆国だったのかもしれない。

かつてニクソン大統領は、ベトナム反戦運動が国中に広がり、ニクソン政権は危ないのではないかと思われた時、「アメリカのサイレント・マジョリティが私を支持している」と豪語して、そのまま政策を推し進めることができたことを考えると、実はアメリカを支配しているのは、別の人たちだったのではないかと思われる。ヨーロッパ的な知的で思慮深く冷静な、思想家、政治家、ジャーナリストは実は力がなく、目の前の利益を第一に考える、自分の住む地域第一主義の人々が実権を持っていたのではないか。

もしそうだとするならば、これからのアメリカ合衆国は今までとは完全に変質し、インターナショナルな仮面をかなぐり捨て、国家第一主義の道を突っ走ることになるかもしれない。そうなるとヒラリー・クリントンに代表されるような人々は、この国に安住の地を失い、カナダに移住するか、ヨーロッパに居所を定めることになるかもしれない。トランプ氏の当選のときに「アメリカの分断」が頻繫に叫ばれたが、かつての南北戦争のように、地政学的に別の国を作るわけにもいかないので、「嫌な奴は出て行け!」ということになる。

そのようになれば、トランプ氏は”迷走”ではなく、新しい体制の創始者になることになる。新しい体制では、アメリカはもはや「世界の警察官」ではなく、ロシアや中国、その他の新興勢力と国家利益を巡って激しく競争する関係になるのだろうか。

もう一つ忘れてはならないことがある。それはアメリカにはマイクロソフト、アップル、グーグルなど、世界1の大企業が多数存在し、それらは多国籍企業として、国家の枠を超えて動いているということだ。アメリカが自らの利益の中だけにとどまり、それらの企業との関係が悪化すれば、それらはアメリカを出ていくことになる。このような企業は移民によって恩恵を受け、何よりも規制されない自由な行動の場が必要だ。トランプ氏はそれらの企業とどう折り合いをつけていくのだろうか。

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トランプ氏の当選 2016/11/11

ドナルド・トランプ氏がアメリカの大統領にえらばれたが、この予期しない出来事に、世界中の人々が戸惑っている。選挙中の過激な発言は、対立候補ヒラリー・クリントンの陣営の大きな怒りを買い、それが当選後のアメリカの分断を引き起こすことになってしまった。

だが、勝利の喜びにあふれる彼は、1月からの仕事始めに際して、いったいどのようなことを始めるのだろうか。彼が共和党から立候補し、当選したとなれば、彼から離れていったあるいは批判をしてきた同僚たちは、手のひらを返して彼の政府に協力するのだろうか。どのような大統領補佐官が登場するのだろうか。そして、国民の半数近くを占めるヒラリー・クリントンの支持者たちは、これから新政府にどのようにして対処していくのだろうか。

今回のトランプ氏を支持した人々が、社会の底辺に苦しむ白人が多かったということは注目に値する。すでに10年以上前から、いやレーガン大統領の時代から、規制緩和と自由競争の強化によって国民の間の格差は極めて大きくなっていた。

その人々が、今まで明確な政治的発言の機会を与えられないまま、かつてニクソン大統領が言っていたような「サイレント・マジョリティ」を形成していたとすれば、これは既成の政治家たちが怠慢で、その苦しみを拾い上げることをせず、クリントン候補には大企業が高額の寄付を行ったことからわかるように、富裕層に有利に政治が動いていたことに対する怒りの表れでもあろう。

だから、下層白人のトランプ支持の声は、「溺れる者は藁をもつかむ」ということだったのかもしれない。しかしそれは保守的な人々の間に起こったことだ。政治的な露出度からすると、将来は国民の過半数を占めて、英語よりスペイン語を話す人が多くなるともいわれる、いわゆるラテン系の人々の声がはっきりと出ていたわけではない。また黒人の声もかつてほど強力ではなかった。

さらに、授業料の返済に事欠く若者たちから多くの支持を得た、サンダース候補のような左翼的な人々とも一線を画している。となると、今回のトランプ氏に投票した人々は保守的であるが、かなり食い詰めて、今までの現状に大きな不満を持っていたが、派手な演出によって新しい夢を与えられたような気になったともいえる。

世界中の競争に負けて、すっかりすたれてしまった鉄鋼をはじめとする製造業に従事する人々など、どんどんドン底に落ちてゆく状況にある時、これまでの政治家が何もしてこなかったために、トランプ氏を唯一の希望と見たのかもしれない。ただ、過激な発言の内容は、本当に実行されるのかどうかが問題だ。実行すれば、国内の混乱は高まり、まったく行動に移さないで規制の政治家路線で行くならば、言葉だけの大統領として軽蔑や失望を受ける危険性がある。

これを第2次世界大戦前夜のヒットラーの当選に似ているという人もいる。だが、アメリカ合衆国は一応は成熟した政治体験をしているし、ベトナム戦争など悔いを残すことはいっぱいしているから、少しは当時のワイマール共和国の国民よりも賢くなっていると信じたい。メキシコとの国境に移民を防ぐための壁を作るなど、アメリカの国論が一致するわけがない。ということは選挙中の言動は、就任した後一致することが極めて困難なことになると思われる。

こうやってみると、トランプ氏の当選は、既成の政治家など、権力者たちが大衆の窮状を無視してきた報いだともいえる。中国に迫る極端な所得格差が放置されてきた。先進国ではとっくの昔にできていた「国民皆保険」がやっと最近になって”形だけ”実現したありさまだ。それを救ってくれそうなのが、トランプ氏であり、サンダース氏であったが、後者はクリントン候補に負けてしまった。

クリントン候補については、残念ながら大統領として適格かどうかにはクエスチョン・マークがたくさんついていた。まずは健康問題。次にトランプ氏にも言えることだが、70歳近くという高齢、そしてなんといってもメール問題にみられるような不注意な行動である。前回の大統領選ではオバマ氏に負けてしまったが、今回もしオバマ氏が立候補できたとすれば、間違いなく再び負けてしまうだろうし、サンダース氏にも危なくやられるところだった。

さて、トランプ氏はこれからどのような4年間を送るのだろうか。年齢からすると若さで勝負というわけにはいかないだろう。本当に”救って”くれるのだろうか?彼がすでに考えた方針にのっとって進めていき、周りの保守的な人々の助言を得てやっていくのだろうか。そして変革を必要とする大きな出来事が起こった時、柔軟な対処ができるのだろうか。次の3つの方向が考えられる。

(1)過激な発言とは裏腹に、かなりまともな政治家ぶりを発揮して、次々とこれまでとは違った斬新な政策を内外ともに打ち出して、国民を感心させる。これまでの既成の政治家たちが歯ぎしりして悔しがるような、思い切った行動に出ることもある。例えばかつてのニクソン大統領の中国訪問のような。ついにはMAGA(Make America Great Again)を実現したと称賛される。

(2)就任しても、自分の過激な発言が尾を引いて、穏健派が顔をしかめるような過激な政策を繰り出して、国民の分断はますます深まり、それに対する抗議運動が広まり、上昇の希望をかなえてもらえなかった下層の人々の失望を買う。そのため、任期の後半はどうしようもないレイム・ダックになり果てる。TrumpはTrampにすぎないと笑われる。

(3)結局のところ、人材は自分の出身である共和党・保守派から求めざるを得ず、また外交に関してはEUや中国、ロシアと足並みをそろえなければならない事柄も多いので、妥協に妥協を重ね、当たらず触らずの政策の連続となり、「歴代で最もつまらない大統領」の烙印を押されてしまう。MAW(Make America Weaker)と皮肉られる。

どうも私は(3)になるような気がしてならないのだが、おそらく現実はこのどれにもならないだろう。歴史は常に予想を裏切ってきたから。そして歴史はまた、後悔の連続ともいえる。今回のトランプ氏の当選は、イギリスのEU離脱についての国民投票を思い出させる。「しまった、こんなはずではなかった」と歯噛みをしている、あるいはこれからする人々は多いだろう、だが歯車が逆戻りすることはない。確かなことはただ一つ、アメリカも世界も混迷の度を深め不安定化するということだ。

トランプ氏以外の候補者についていえば、ヒラリークリントンは落選しても仕方がなかった。彼女が当選しても、大企業や富裕層との結びつきが強い限り、国内における格差の是正は難しい。民主党が共和党よりも国民の下層にやさしいなどというのは神話になってしまった。よくてオバマ政権がやったことの現状維持といったところだろうし、シリア、アフガニスタン、パキスタン、イエメンなどにおける紛争は、強力な解決に向かう可能性は薄い。

今回の民主党での候補者争いの中で、印象に残ったのはサンダース氏である。アメリカには共産党は一応存在する。彼は”社会主義者”ということになっているが、かつて20世紀の中ごろにマッカーシー旋風が吹き荒れたことを思い浮かべると、まさに革新的な考えがアメリカに登場したと思わせる。

ヨーロッパでは普通の政党として認知されている社会主義的な考えが、アメリカ合衆国にもようやく表れたということか。残念ながらサンダース氏は高齢である。次の大統領選挙への立候補は無理だ。だが、もしかしてトランプ氏の当選に異議を唱える若者たちの抗議行動の中から、新しい政党が生まれるかもしれない。もしサンダース氏に勝るとも劣らない有能な政治家が生まれればの話だが。

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国民投票の非民主性 2016/06/25

イギリスがEUから離脱することになったが、その実現に至るのに使われた、国民投票とは何だろう?代議士制と異なり、国民投票とはより民主的で、直接民主制に近いといわれている。

だが、EU残留か離脱かというような、専門家でさえも意見の分かれる大問題を、何にも基礎知識のない人々が大部分である国民に判断をゆだねること自体が間違いのもとではないだろうか。

私も専門家に対して、原発事故、地球温暖化、などの問題処理のあり方を見て、懐疑的に見ている。だが、だからといって、素人に取って代われとはまったく思わない。素人は抗議、批判をするのが仕事なのだ。

アフリカでは憲法に大統領の任期は2期だと明記してあるのに、勝手に自分は3期目をやるんだと言い出し、反対する者たちを平気で虐殺するような暴力団以下の政府が大半だ。それは権力者に対して国民がまったく無力だからだ。

政府が支配することになっている国の国民が教育を受けておらず、歴史的教訓が何も生かされていないようでは、権力者のやり放題ということになる。為政者は自分を国民投票にかけて、支持率99%だったということにし、おおいばりで専制的政治を続けることになる。

イギリスは、制度としての民主主義が世界で最も根付いているといわれているが、巷の人々は、単なる移民に対する恐怖とか、賃金の低下といった問題から、短絡的に政治的意見を表明するだけで、徹底的に議論を戦わせることにできる人はごく一部だ。

今回の国民投票は、そんな状況の下に行われた。結果は国民的ムード、例えば外向きか内向きかといったことだけで左右され、冷静な政治的判断はどこにも入るスキがない。1票でも多ければ”過半数”となり、自動的に負けたほうは無視される。7対3ぐらいなら納得できるだろうが。

キャメロン首相は国民投票で残留が簡単に決まると、読み違いをしていたようだが、これが裏目に出た。しかも不幸なことに、僅差で離脱が決まったということは、国民の半分が残留を望んでいるわけであり、イギリスの人口は6000万人だから、3000万人の意向に逆らって、今後この国は離脱のほうへかじを取ることになる。

イギリスは大不況に悩んでいるわけでも、大災害にあったわけでもなく、単なるうっ積するEUへの不満だけで、混乱を引き起こすだけの政治的決断をおこない、大変な損失をこうむることになろう。まさにこれは”人災”なのだ。

今から70年以上前、熱狂したドイツ国民はヒットラーに権力を引き渡した。熱狂は政治にあってはいけない。直接民主制と間接民主制は、慎重な使い分けが必要だ。それなのにこんな国民を無視した衆愚政治があっていいものだろうか?

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橋本氏の政治家引退と日本の福祉政策 2015/12/19

引退はスポーツの世界では日常的にみられるが、政治家の場合あとで別の方面からその影響力を持って発言するので、必ずしも実質的な引退とはならないのだが、いずれにせよ大阪という特定の地域から維新の会を作り上げた、日本ではユニークな存在として記憶されるだろう。

その最後の発言の中で、高齢者介護の行き過ぎを説き、身体障碍者や難病の人々への予算配分が不足していることをとりあげていた。福祉は社会的弱者のためにあるのである。病人や不運な運命に落ち込んだ人々を助けるのがその使命であろう。ところが、老人はどうだろうか。

老人、それも80歳を超えて生きているとすれば、すでに多くの親類縁者、友人、同僚をこの世で別れを告げている。。すでに同窓会も解散していることだろう。ということはそれまでいろいろ苦労したであろうが、結局のところその年になるまで生き延びることのできた、「社会的強者」である。

社会的強者に福祉政策は必要あるだろうか。特に収入が多かったとか、遺産が多かった場合などは、とても福祉の対象になるとは言えないのではないか。それなのにどうして日本全国津々浦々まで自治体は、財政が緊迫していることは百も承知なのに、老人保護にこんなに力を入れているのだろうか。その一方で、名前がまるで知られていない難病などは、ほったらかしにされている。

これは数の論理が冷徹に働いているからだと思われる。高齢化社会になり、年々、人口の中の高齢者の割合が増え、彼らが選挙権を行使して自分たちの要求を通そうとするとき、政治家は当然、何党に属していても老人施策を強力に推し進めるようになるだろう。そして日本社会には、”敬老”という儒教から発したと思われる文化的背景があり、「ご苦労さん」という意味を込めて福祉政策が推進されているのであろう。これが他の予算を大きく圧迫しているのだ。

いわゆるロビー運動と同種のものであり、アメリカで銃規制が、全米ライフル協会の強力な圧力によっていつまでも実現しないのと同じように、社会正義の実現が捻じ曲げられているのではないかと思われる。ここでは一部の要求に影響されることなく、もっと長い先への視野を持った政治家がもっと出てくることを望みたい。

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難民の急増 (Drastic Increase in the number of refugees into Europe) 2015/09/09

ヨーロッパでは、シリアをはじめとする難民が急増して、その受け入れに困難をきたしている。難民や移民が流入するのは今回に限ったことではないが、これほどの大規模な移動は例を見ない。そしてその受け入れ方法については、各国の間にかなりの温度差が存在している。

ドイツやフランスは積極的に受け入れ態勢を整えようとしているが、東欧諸国などでは、難民の流入を嫌い、中にはハンガリーのように難民が国内を通過することさえ嫌がる国もある。都市化が進み、これまで移民の持つに労働力や才能によって恩恵を受けてきたところ、そして差別を撲滅することに力を入れてきたとaころでは、難民の扱いに理解を示す人々が多い。

そういう経験がなく、田舎で同じタイプの人々が長らく暮らしてきたような国々では、異質な人々が自分たちの生活環境に入ってくることに強い抵抗を示す。日本も後者のタイプに属する。日本の場合、まわりを海に囲まれ、そもそも難民の不法入国はきわめてまれだ。

しかし、現在の困難だけを見て、近視眼的なものの見方をする前に、もっと長いスパンで見ると、「高齢化」という問題が将来に横たわっているのが見える。いずれの国、中国やインドでさえ、日本と同じくいずれは老人だらけになるのだ。ドイツもどんどん国民の高齢化が進んでいる。

移民・難民はおしなべて若い層、子連れの層が中心だから、教育さえきちんと受けてもらえば、国民の若返りに大いに役立つはずである。狭いナショナリズム(本質的に偏狭であるが)や、排他的な文化にどっぷりつかっているよりも、新しい血を入れて国全体を再生させるほうが得策ではないだろうか。

たしかに大量の移民・難民の流入は一時的な困難を引き起こすに違いないが、東西の統一も乗り越えたドイツは賢明な方向に向かっているのではないかと思われる。そして最終的にはヨーロッパには究極的な「人類すべてによる混血」が誕生するかもしれない。

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Drastic Increase in the number of refugees into Europe 2015/09/09

In Europe, the great number of refugees, mainly from Syria, has caused the serious trouble in accepting them. This is not the first time the migrants and refugees have flowed, but no one has seen it on such a large scale. And how they welcome the people differs from country to country.

Germany and Fransce seem to be positivly accepting them, but in such countries like the Eastern Europe, they are reluctant to accept them. As in the case of Hungary, just passing through the country annoys them.

In such countries, where urbanization progresses, they have benefited from the labor and talent provided with migrants and more efforts have been mede to lessen discrimination, more and more people show understanding in treating refugees.

In other countries where such experiences have never been existed and the people of the same type have lived in the same region for a long time, the people show strong hostility against different peoples coming into their living environment. The Japanese people belongs to the latter type. In the case of Japan, the land is sourrouned by the sea, and it is rare for the refugees to immigrate illegally.

But before we see the immediate present troubles and take a myopic view, there seems to be lying an aging problem in the future when we see in the long perspective. Any countries, even China and India, are to be filled with old people as we see it in Japan now. In Germany too, the people are getting older and older.

Migrants and refugees consist mainly of younger generation, sometimes with their children. They are very instrumental in rejuvenating of the nation if they get appropriate education. Isn't it beneficial to revive the whole country with new blood, rather than devoted to nationalism ( It is intrincically narrow-minded!) and emersed in xenophobic cultural atmosphere?

It is true that the influx of the great number of migrants and refugees causes temporal difficulties, but Germany, which has overcome the unification of the Eastern and Western part, may take the direction to the brighter future. Finally, the ultimate "mixed-race" people with all humanity can be born.

End

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2015年度予算案 2015/01/15

普通の人は、内閣の提案した予算案など大して興味を持たない。それでも福祉予算が減らされたりすれば、かなりの人がいろいろと意見を持つことだろう。今年の予算は、消費税8%に上がった後なので、さほど大きな変動がないように見えた。

だが、防衛予算は大幅に増やされている。相変わらずの借金依存、暮らしへの援護射撃はわずかなものでも、安倍政権の右寄りの姿勢がはっきり出て、去年より2%増加している。

だが、そのことに気付いたのは実はBBCのニュースを見てからであって、国内のマスコミは、ほとんどそのことに触れていなかった。マスコミとは、NHK、朝日、毎日、読売、日経、時事通信(全国の地方紙にニュースを送っている)などである。

政府としては、生活予算が抑えられているのに、防衛予算が大幅に増えたことが議論されたくないものだから、これら”マスミ”を手なずけたに違いない。マスゴミのトップたちは、”会食会”と称して安倍首相に美味しい料理をおごられているのだから、彼にとって不利なことは書きたがらないであろう。

戦後、ジャーナリズムが、このようにして野党性を失い、政府に忠実なニュースを流すようになって長い時間がたった。民主主義の番犬が、泥棒にソーセージをもらっている図式が、別に普通になってしまっている。このようにして民主主義は内側から崩れていくのだが、国民の大多数は呑気なものだ。

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総選挙は終わったのだが 2014/12/16

総選挙は終わった。史上最低の投票率で。今回の選挙は誰が買ったか負けたかというより、国民の無気力さと、国民を指導する無能な政治家だけが目立った選挙だった。景気が下向きになったというだけで、いとも簡単に消費税値上げを延期する。

この間のアメリカの中間選挙におけるわずか30%という投票率でわかるように、政治家が国民の声を無視して勝手な方向に走っているときは、選挙民にそっぽを向かれる。ドイツもチュニジアも70%台だ。

ここで気づくのは、共和党の大勝と、今回の選挙での自民党の大勝とは、非常に似通った面があることだ。つまり保守傾向が強く、無気力な国民の存在が、有力な野党勢力を作らぬまま、与党が横暴なふるまいに出ることだ。

アメリカの共和党は、すっかり弱体化した民主党のオバマ政権を相手に、妨害戦術をとり続け、共和党の推す政策をますますごり押ししようとするだろう。日本では、秘密保護法、集団自衛権、そして憲法改革への道をますます邁進していこうとするだろう。

一党独裁のような自民党政権が、戦後ほとんどを通じて変わらずに来たのは、なんといっても国民の怠慢によるものだ。一党独裁は中国や旧ソ連に学ぶまでもなく、腐敗と非効率、狭い視野に基づいた政治家ばかりを生み出してきた。そしてそれに対抗する勢力が弱いということは、彼らの行動にブレーキが利かないということだ。

なぜ日本国民はもっと野党勢力を強くしてくれないのか?このようなアンバランスな状態が続くと、国家の危急時に知恵ある行動をとることがますます難しくなる。実に情けないことだ。これは単なるイディオロギーの良しあしの問題ではなく、権力の分立がうまくいくかということなのだ。民主主義はチェックとバランスによってのみ成立するというのに…

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総選挙なのだが 2014/11/21

安倍首相が衆議院を解散した。ここのところ、日本の経済は傾き、世界的に見ても心配する声が日々高まっている。

まずは(1)安倍首相が得意げに唱えるアベノミックスは果たして効果があるのか。各界でこれには疑問の声が上がっていたところに、GDPが以前を下回るという大凶の知らせが届いた。

(2)前回の衆議院選挙で自民党は、その前の民主党の失策のおかげで、かなり安定した多数を獲得した。だが安倍内閣は秘密保護法、集団自衛権、そして経済の傾きなどが響いて、人気は落ち込んでいる。だから今度の選挙の結果は、どう見ても前回を上回る得票を得られるはずがなく、その分だけ野党の力が増して、政権運営は困難になり、思い切った政策は取れなくなる。強力な行政執行能力は低下し、将来を見据えた長期的な政策はますます実行が困難になる。

(3)消費税の一時的な先延ばしは、現在の景気落ち込みに対処するという目先だけの付け焼刃にすぎず、年々不気味に増え続ける国家の負債を減らす見通しがますます減ってしまう。

高齢少子化、そして重くのしかかる国家の負債、これに加えた決定的な政治力の欠如は日本の衰退を一層加速させるだけでなく、あるとき、いや誰も予想しないとき、恐ろしいカタストロフ(円価、株価、国債の暴落など)を引き起こすのではないだろうか。

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小国の独立 2014/09/30

スコットランドが、独立しようとして住民投票が行われ、惜しくも過半数に至らず成立しなかったが、独立運動がこれほどまでに盛り上がったのは特筆に値する。かつて世界連邦という考え方があり、一つの世界政府ができれば、世界平和は達成できると考える人々がいた。だが2度の大戦、米ソ対立、ベトナム戦争、その他数えきれないほどの戦争を経て、このような考えは単なる理想にすぎず、到底実現できるものではないと、人々の考えから消え去ってしまった。

しかしそれは今のように、少数の大国が自分の利害だけをもとに国際関係を牛耳っているからであり、たとえば国際連合の安全保障理事会では、”拒否権”を持っている国が5つあり、この国々の一つでもその権利を行使すれば、議案は成立しない。というか成立するわけがないのは、大国は愚かなメンツにこだわって行動するからである。

中国は、その13億の人口を抱えたまま、大国としてのまとまりを保とうと考えているが、年ごとに強権的になり、もはや各地で起こる暴動や独立運動をまともに抑えることができなくなるまでに事態が悪化した。香港、西安、チベットなど、本来は独立してもちゃんとやっていける国々が無理やり一つの国家の中に抑え込まれているのは、旧ソ連の場合と同じである。近い将来、中国にもゴルバチョフが現われて、国を適当なサイズに分割してくれるだろう。

大国の政治家の持つ権力欲が、あることないことを言って、無知な人々のナショナリズムを掻き立て、戦争に導いてきた。これに対し、小国はしたくても戦争ができない。生きていくためには周りの国と協調関係を保つ以外に道はないのである。そもそも国家の単位は文化と言語といわれている。大国がすっぽり包み込むことができるような巨大な文化は存在しない。小国のサイズが、それぞれのアイデンティティを安定して保つ、最適なサイズである。

アフリカやアジアの国々の中には、植民地時代の帝国の政策の都合によって勝手に境界線が引かれ、民族や部族の境界が全く無視されてきたのが多数ある。そのために現代にいたるまで無駄な血が流されている。かつての境界を引き直し、必要に応じて小国を作っていけば、それぞれが満足して争いは消える。こうして、世界の国々は小さく分割されればされるほど、むしろ安定の方向に向かっていくのだ。

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集団自衛権 2014/06/28

ついに集団自衛権が、内閣で決定された。国会や選挙での論議も経ず、密室談義で重要な問題を、憲法の解釈変更というだけで勝手に決めてしまうとは、「秘密保護法」に続いて民主主義の段取りを無視した、安倍ファシスト政権の正体をはっきりあらわしている。

海外の論調は、それほど危機感を抱いていない。というのも西欧諸国もそれぞれが自衛権を行使できるからだ。だが、日本は事情が違う。西南戦争といい、満州事変といい、太平洋戦争といい、日本国民にはファシストの暴走を止める政治的力がない。常に流され、議論を避け、決定的な立場を明らかにしないまま、極右勢力の台頭を許してきた。敗戦によって反省したとしても、歴史から何も学んでいない。

安倍政権は、アベノミクスという甘いエサをちらつかせながら、一方でファシスト政策をひた走っている。国民は景気さえよくなれば、どんな政治家にも大賛成だ。電気代さえ安ければ、すぐに原発稼働に飛びつく。長期的な未来を見据えた政治家はこの国に生まれることはない。だから国民も危機感をほとんど持たない。「気が付いた時には手遅れになっていた」というときが再びやってくるのに。

国民、特に若者たちは、政治論議そのものに無関係のつもりでいる。しかも誰が教えたのか、「横並び」意識のおかげで、誰も声を立てるものもいない。気の毒に、若者たちがこれまでの選挙で棄権をしたものだから、若者の労働環境は劣悪になったが、ブラック企業や極度の低賃金にも抵抗する意思はなさそうだ。これに加えて今回の好戦的政権の作り出した新方針は、いったいどこへ行こうとするのか。

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アジアの平和 2014/05/01

戦後の日本は、戦争前までの周辺諸国への侵略行為をきちんと清算しないまま、70年余りを過ごしてしまった。このため、どんなに協力的姿勢を見せても、中国、韓国をはじめとしてアジアの国々には、日本への不信感が残っている。そんなことがわからない人々が多い。普通の市民生活を送っていたのに、ある日突然、日の丸が進軍してきたときの人々の驚きと悲惨はどうだったのか、についての想像力が今の日本人には欠けていると思われる。

とくに、石原慎太郎の尖閣諸島を国有化する議論、松江市役所に掲げられている竹島返還の要求の幟(ノボリ)、ただ返せと連呼するだけの北方領土問題の扱い、歴代首相による(そうでない首相もいたが)周りの国々の国民感情に対してまるで無神経な靖国神社参拝など、ただでさえ不信感を持たれそうな関係なのに、それを無視した愚かな政治家が多すぎる。

さらに今驚くべきことは、ナチス時代のドイツを思わせるような、ヘイト・スピーチの蔓延だ。どこの国でも、ゆがんだナショナリズムは必ずといっていいほどその国の歴史の中に登場するが、日本の場合、敗戦から時間がたって、戦争の教訓がきちんと伝えられることなく(つまり歴史の勉強をおざなりにして)、公正な見方で外交関係を見ることのできる人が一般市民にはもちろん、ジャーナリストの中にも少なくなってしまった。

「歴史は繰り返す」というが、その最大の原因は忘却、つまり歴史体験の次の世代への伝達が不十分であることにある。そしてまた、西南戦争や太平洋戦争でもそうだったが、相手を刺激することは憎しみのスパイラルが引き起こされるという、大切な歴史の教訓を無視した、独りよがりの国家関係論が勢力を増している。日本の大学には、この10年ほどの間に、「国際…」で始まる学部が激増したが、これは単なるポーズに過ぎないということか。

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秘密保護法の成立 2013/12/09

秘密保護法が成立した。その危険性は、すでに知れ渡っているが、普通の日本国民には、”難しすぎて”理解できない人が多いようだ。

自由民主党は、この間の選挙で、大勝した。その原因の一つに、民主党の失策があるが、衆議院選挙後、一気に多数派となり、その復元の仕方が、”一党独裁”といって過言ではない。実際、戦後この70年近く、旧ソ連や中華人民共和国がうらやむほどの安定した自民党政治が大部分だった。そのほころびが出て、民主党に政権を奪還されたのは、ごく最近のこと。

残念ながら、彼らの多数派支配による傲慢さは、ふたたび政権を取った後でも何も変わっていない。この間の参議院選でも大勝し、”ねじれ国会”は解消されたから、大いに自信を取り戻したのだろう。秘密保護法の成功のあとは、つぎつぎと右翼である安倍総理大臣によって、悪法が出てくるであろう。

これはいったい誰のせいなのか?もちろん、このように圧倒的多数で政権を握らせてしまった日本国民である。日本人は、風潮に流されやすく、羊のごとく大きな流れに一斉に従う習癖がある。これで戦前の悲劇も、戦後の政治の硬直化も引き起こしたのであるが、彼らにとっては即決即断の政治が好ましく、停滞する政治は効率的ではないのだろう。

一方、ヨーロッパでは小党分立が多い。このため政治は停滞し、そのあおりを食らって経済も停滞している。だが、おかげで”強行採決”はない。政治は妥協の産物であり、民主主義というのは、これしかないぐれたシステムではあるが、非常に効率が悪いのは事実だ。粘り強い説得と論争とをへて政治がようやく進む。

日本人はこれが我慢できない。そのせっかちさのために、おめおめと独裁的で自分たちの利益集団だけに奉仕する権力の存在を許してしまっている。

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防空識別圏 2013/11/30

中国が防空識別圏を設定したことは、今までの周辺地域に対する強硬な態度からすれば、当然予測されたことであった。これは何かかつて日本が発明した、「大東亜共栄圏」を思わせるような動きの一環であろう。

第2次世界大戦がヨーロッパで勃発する前、ヒットラーの強硬な出方に対して、イギリス、フランス、そしてアメリカなどが”弱腰”な態度をとったために、そのあとのナチスの軍事拡大政策に拍車をかけたことは、よく知られたことである。

一つの国が、強大になろうとするときは、周りの利害関係を持つ国々は、こぞって”防衛連合”を作って、その野望を打ち砕く動きを見せないと、あとで取り返しのつかないことになることはこのような歴史が教えていることだ。

さらに付け加えて、もうひとつ気になることは、まるでエジプトやミャンマーのように、中国で軍部(人民解放軍)が強力な権力を持ち、現在の政府では「文民統制」が機能していないような気がするのだが、それは杞憂だろうか?

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特定秘密保護法案 2013/11/23

自民党、それも安倍政権は、つぎつぎと右傾化した政策を出すと予想されていたが、ついにこれほどまでに人権を無視したのも珍しい法案を持ち出してきた。特定秘密保護法案は政府、つまり権力者側の秘密保持を大々的に認めるという、まったく現代の情報公開の方向に逆行する恐るべきものだ。

それだけではない。一部の野党までが少々の文句をつけながらもそれに同調しようとしている。少しでも歴史を学んだものならば、過去の権力者たちが、”秘密”を盾にどれだけの悪行を行い、世界に悲惨さをもたらしてきたか十分にわかるはずなのだが、日本国民の危機感は薄く、何でも”お上”にお任せという、徳川以来の情けない伝統から抜け切れていないようだ。

ついこの間も、アメリカにによって友好国のはずのドイツの首相の携帯電話が盗聴されていた。それがばれてアメリカ政府は弁解に追われた。悪人は、暗いところが大好きだ。なぜならそれによって、隠れていくらでも悪行ができるからだ。この世の悪を少しでも減らすには、すべての彼らの行為を白昼にさらさなければならない。

この法案が成立すれば、日本でもウィキリークスとアサンジ氏のような活躍が、ますます必要になってくる。権力者たちとの終わりのない戦いが続くことになるだろう。小説と映画の「華氏451度」は空想ではないのだ。

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偽装エビ 2013/11/08

最近、有名ホテルでの、偽装食品のことが大いに騒がれているが、この種の詐欺はは大昔から存在したものなのだろう。(「混乱を引き起こして申し訳ない」、という謝りの言葉が気に食わない。「騙してごめんなさい」、といえないのか?)だが、客は誰一人として(一人ぐらいいたかもしれん…)、自分の口にエビを入れながら、そのことに気付かなかった。

私はワイン好きだが、高級ワインと低級ワインの区別がつかないので、いつも安売りストアで一番安い、ただし飲むに堪えないものは除いて買っている。イタリア人やフランス人はワインが大好きで、毎日水代わりに飲んでいると聞く。水代わりであるからには、高級なはずがない。それでも毎日の食卓は、豊かになっているはずだ。

日本人のように、目玉が飛び出るようなワインを開けるのは、よっぽどの金持ちか、自分で勘定を払う必要のない人か、であろう。でも、自分で善し悪しが判別ができない場合、そんなものに金を払う必要はまったくないのである。

振り返って、ホテルの例えばインチキエビの場合でも、本物の海老とインチキエビとを口に入れてみて、その違いを判定できる人は、極めて少数だろう。ただ、そういう人にとっては、つまり「違いの分かる」人にとっては、そのような高級エビを注文する価値があろう。

だが、水道水とミネラルウォーターの区別のできないような人を客として相手にして、まともに応対する必要があるのだろうか。そのような偽装レストランを弁護する気はないが、「儲かりまっせ」といわれて、喜んで巨額のお金を詐欺師の言う通り投資する人々のことを考えれば、何か複雑な気持ちが出てくるのである。

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「半沢直樹」の終了 2013/09/23

異例の人気を博した、「半沢直樹」のドラマがついに終了した。このドラマのおかげで、国内にあるメガバンク上層部の実態についての注意が向くようになった。そしてこのドラマの終わり方、つまり無慈悲でルール違反を重ねた取締役が、軽い処分で済み、それに対して弾劾を見事にしてのけたヒーローが、「社内の和を乱した」ということで昇格どころか出向の憂き目にあうという流れが、日本の経済界を牛耳る人々の姿を見事に映し出している。

もちろん、だれも巨大企業やメガバンクの上層部が、善良で正直な人々で構成されているなどとは思っていない。資本の論理が人々の見えないところで暗躍し、不正もすべて覆い隠されてしまう実態は、世界中どこでも起こっていることだ。さらにこのドラマでわかるように、日本ではこの国特有の文化的背景も加わっている。つまりサラリーマンは、江戸時代の武士と同じくあくまでも使い捨ての道具であり、その組織内における軍隊的規律を乱す者は、直ちに排除されるということだ。

原発での廃水漏れ隠し、本四架橋の負債支払いの行き詰まり、そしてリニア新幹線計画などは、社会的責任を一切考えず、未来の世代に先送りをするだけのでたらめな経済界の上層部の存在を示しているが、結局のところ損害を被るのは、監視を怠り、それらをやりたい放題にした国民なのである。

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7年後の東京オリンピック 2013/09/17

不幸にして、開催が決まってしまった、と思う人は大勢いるに違いない。そもそもオリンピックとは、開発途上にある国が、ある一定の安定と充実を達成したことを世界に示すための機会であると思う。だから60年代にあった第1回目の東京オリンピックはそれなりの意義があったともいえる。いま日本は、誰が見ても老国である。

しかも、現在からの日本にはそんなゆとりはないはずだ。なんといっても第1原発の後始末が待っている。今度のオリンピックにかけるすべての資金を注いでも、安全な廃炉には全然足りない。その他少子高齢化、空前絶後の国の借金を抱えている。その中で大会を強行するなんて狂気の沙汰である。

いまのオリンピックはクーベルタン男爵の理想からあまりにかけ離れてしまった。アマチュア精神の消失、商業主義の跋扈、薬に頼る記録至上主義など、観戦の価値が一つもないような状況がますますひどくなってきている。開催の決定後、さっそく国を挙げての選手強化策が始まったではないか。獲得した金メダルの数と、外国人観光客の落とす金のにしか目がいかないのである。

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エジプトのクーデター 2013/08/20

エジプト情勢は日に日に深刻さを増している。何よりも悲劇的なのは、去年、せっかく民主化運動によって、大統領を選挙で選ぶことができたのに、それを軍部が潰してしまい、つまりクーデターを起こして退任させてしまったことだ。エジプトは、まだ先進工業国のような複雑な社会体制が整っておらず、この脆弱な時期を軍部に利用されてしまった。

軍部の暴走は、日本の2・26事件をはじめとして、世界中いたるところにある。ミャンマーにおける軍事政権が長期にわたってこの国を締め付け、近年どうしようもないほど政治経済が行き詰って、やっと民主化への国民の参加を認めるようになった。軍隊というのは、自分の持っている暴力装置によって権力を握るのであるから、最も非民主的組織であり、いったん彼らが力を持つと、正常に戻るには途方もない時間と犠牲が必要になる。

エジプトでは不幸にして、ムバラク大統領が退任させられても、軍部はその既得権を守るべく、いつまでも政治の中心にいようとした。そしてモルシ大統領が軍部の力を抑えようとしたものだから、堪忍袋の緒が切れて、今回のような行動に出たと思われる。

アジア、アフリカ、南アメリカの国々のこの100年間の歴史を振り返ると、軍部によるクーデターが数限りなく起こっている。そして国民が真に目覚めて、軍部の独走を許さなくなるまで、どれだけの血が流されたことか。もっとも、日本の場合は国民が目覚めることなく、敗戦という事実によって、軍部の権力が消滅させられたのだけれども。

エジプト人が自分の力で、この事態を打開するには、もっと多くの血を流さなければならないかもしれない。ムバラク大統領の中央集権体制によって育てられた軍の特権階級は、政治的にも軍事的にもきわめて手慣れた集団であるから、内戦状態を脱するためには、四半世紀が必要になるかもしれない。

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早く死んだほうがいい? 2013/01/22

麻生大臣の発言、「生命維持装置を外して早く死んだほうがいい」というのは、主語がないので、自分のことなのか、一般の人々のことなのか、判然としないが、これまで日本でこの問題について真剣に議論がなされてこなかったことは、実に情けないことだ。日本ではこのようなことは必ず話題から外される。つまり目をそむける。

「自然の摂理」では、弱肉強食であり、マンボウが生んだ2億個の卵のうち、大人になれるのはわずか2個であり、どこの野生動物にも”老化個体”が存在しない。一方、「ヒューマニズム」では、どんな重病でも、どんな体質でも、いかなる年齢でも、生かしておくことこそが究極の目標である。

人間は、そのどちらの極端にも偏るわけにはいかない。しかし現代の日本は、どうも後者のほうに寄り過ぎているような状況である。正しい道はこの両極端の中間にあるのだろうが、それを的確に決定するには、本当の「知恵」が必要になるだろう。そのためには極論、暴論も含めて自由に考えが行きかうように政治家はその場を用意するべきなのだが。

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選挙後 2012/12/20

2012年の衆議院総選挙は、予想した通りだった。民主党の惨敗と、自民党の大勝、そして第3勢力の伸び悩み、だ。もちろん自民党が大勝したのは、投票率が低かったことからもわかるように、ほかに選択肢がなかったからだ。前回の総選挙を思い出してみるといいが、民主党が大勝した時の自民党には、今回の民主党の場合と同じく政権担当能力が全くなかった。そして現在民主党が担当能力を備えるようになったかといえば、多少の傲慢さが消えたこと以外に特筆すべき点はない。

これからの自民党の進む方向は、過去の場合と同じく、業界寄りの方向へ舵を取ることだろろう。これにより、原発の再稼働の動きは強まるし、どこかに忘れ去られてしまった空気中の二酸化炭素の問題など、再び真面目に取り上げられることはない。ただし、貿易によって生きている業界にとって、中国や韓国との関係は大切だから、領土問題はこれ以上悪化することはないだろう。

残念ながら、日本の直面する問題はあまりに多く、普通の政治担当者には能力に余る。ましてや前回担当能力がなくて仕事を投げ出した人が再び総理大臣になるのだから、内閣支持率は、直ちに低空飛行になるだろう。だが、それに代わる指導者は、いま日本のどこにもいないのである。

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いよいよ衆議院選挙 2012/11/19

民主党が政権担当をして、ついに選挙の時がやってきた。その間には、東日本大震災をはじめとして、様々な問題が起こったが、最終的に内閣の支持率はどんどん低下し、民主党内部では次々と離党者が出て、誰もが選挙では民主党の惨敗を予想している。

一方では、一度政権を投げ出した安倍氏の率いる自由民主党が次の政権を狙い、第3勢力である、維新の会が、急速に周りの人々をひきつけて、一つの勢力を作ろうとしている。また、中国や韓国との領土問題は、それまで眠っていた、ナショナリズムを目覚めさせ、扇動的な発言をする政治家に人気が集まることが懸念される。

今の閉塞的な社会に対する積もり積もった不満などが、このような機会に一気に爆発するかもしれない。人々は、過去に駄目だと分かったものには冷たいが、まだその力が未知数のものには、かなり大きな期待をかけるものだ。今回もそのような新しい動き、新しい攻勢に、人気が集まるだろう。

だが、どこの政治の世界でもそうであるように、「蜜月期間」は極端に短い。そしてそのあとの失望は政治運営を円滑にすることを妨げるほど大きい。現代社会は、かつてのように単純な社会と異なり、一人の優れた政治家が力強く国を引っ張っていくことができなくなった。あまりにも問題が山積し、その問題同士が足を引っ張り合っているので、すっかり機能不全に陥っているのだ。

この病状は、バブルが終わったあたりから顕著になってきた。これは外国、特に先進国と呼ばれる国々でも例外ではない。現代社会は、あまりに肥大化し、人知ではコントロール不可能な領域に足を踏み入れてきているのではないか。もしそうだとすれば、これは大変恐ろしいことで、かつてのアンモナイトや三葉虫のように、地球全土に広がった挙句、暴走の果て、今では一匹残らずいなくなってしまったことを思い出させる。

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ノーベル賞受賞 2012/10/08

日本人が、幹細胞に関する研究でノーベル賞を受けた。マスコミは大騒ぎだが、良識派にとって、あらたに憂鬱なニュースが加わっただけだ。なるほど、金儲け、地位、名誉という観点からすれば、実にめでたい出来事なのだろう。

だが、医学研究の未来を考えれば、これから生じるであろう、医学上あるいは倫理上のさまざまな不幸を感じて、暗澹たる思いになるのが当然だ。ある討論で、「原発事故の根本原因は何か?」という問いに対して、「アインシュタイン!」と答えた者がいた。これは実はふざけた答えではなく、本質をつかんだ賢者の答えなのだ。

なるほど、昔にさかのぼって、アインシュタインに原発や原爆の責任を負わせることはできない。そもそも彼がそんなことを予想できるわけでもない。それは彼は単に熾烈な研究者間の競争の中で、”ゲームの最高得点”をとった技術屋(科学者の別名!)に過ぎないからだ。彼には未来を見通す力もなければ、過去の歴史に学ぶ能力も豊かに持っているわけではない。単に面白いゲームに熱中して、ほかの人より早くゴールにたどり着いたに過ぎない。

われわれはアインシュタインを持って不幸になった、それだけのことである。さらに、アインシュタインの理論を発展させ、さまざまな応用分野に広げた研究者達は、もっと小物に過ぎない。彼らに人類の進む道についての展望など、これっぽっちもあるわけでない。そして20世紀後半になって始まった、利潤追求に後押しされた巨大科学への進展を、われわれはもはや止めることもできない。

同じことが、肝細胞の研究についてもいえる。この発見によって新しい治療法が開けるなどと、実に安易な報道がなされているが、これは「原子力は平和利用によって人類に貢献する」という言い方とまったく同じであって、これから始まる未来への暗いドラマについては一言も触れないでいるの。これが大衆受けするのであろう。

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領土紛争 2012/10/02

ここにきて、尖閣諸島やら、竹島など、領土問題が急に浮上してきた。19世紀のヨーロッパに生きた人々は、21世紀のこんな時期に、こんなつまらない小島のことで争いが起こるなんで、だれも想像しなかっただろう。ましてや宇宙飛行士が、上から見たら地球にはどこにも”線”が引いてありませんでした、と語る時代になっているのに。

19世紀といえば、それまでのフランスとドイツの間の確執に代表されるように、狭い土地に小国がひしめき、一枚の畑、一軒の農家を奪うために、数え切れない人命と財産が無駄にされた。もしそのことに考えが及ばないとすれば、その人は、歴史から何も学んでいないことになる。

「歴史は繰り返す」というが、正確には、人々は戦争の惨禍のことをあっという間に忘れてしまう、というべきだ。個人の経験はその人の生きている間に生かされるが、歴史は人類の経験であり、社会の中では歴史的事件はきちんと伝わらず、後の世代は、また同じことを繰り返す。

人類が、残酷で、殺しの大好きな生物種であることは、自明のことで、「文化」による伝達がきちんと行われない限り、常に”新鮮”な体験が繰り返されるだけなのである。「この領土は俺達のものだ、命を賭けてもも守ってやる」などと叫ぶ群衆を、タイムマシンにでも乗せて、第1次世界大戦の西部戦線の塹壕の中にでも放り込んでやれば、少しはわかってくれるだろうか?

尖閣諸島のカモメ達は自由に島のまわりを飛び交いながら、人類というのはこんな小さな島を取り合いすることに大変なエネルギーを費やして、なんて愚かな動物なんだろうと、あきれ返っているに違いない。

「君は、中国のカモメかい、それとも日本のカモメ?」

「笑わせるんじゃないよ。お前たち人間というのは、地上最低の生き物だと聞いていたが、本当にその通りだね。でも実は、俺たちは戦争が始まってほしいと思っているんだ。」

「どうして?」

「この岩だらけの島は肥料分が少ない。両国の兵士が大勢死んで、死体が腐敗すれば、植物の勢いもよくなって、俺たちの生活にもプラスになる。」

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電力会社の株式総会 2012/06/28

2012年度の沖縄電力を除く株主総会では、当然予想されたことだが、「脱原発」「減原発」、いずれも大多数で否決された。何しろ彼らは、原発事故の可能性を2011年3月以前にはせせら笑っていた人々なのだから。

今回の原発事故は、彼らにとって何も教訓になっていないようだ。ただ「以後、十分に気をつけます」という経営側の言葉を信じているのか信じていないのか知らないが、依然として彼らの目には、漫画でよくあるように「\」の印が浮き出ているだけであり、国や人類の将来というような長期的展望はまったく存在せず、ただ原発を稼動しない限りは自分達の配当金が入ってこないという心配だけであるということは、誰にでも想像できることであった。

2012年6月現在、福島原発の事故の中は何も分かっていないし、もちろん廃炉その他の見込みも何も立っていない。全国の核のごみの捨て場も捨てる方法も決まっていない。断層の上に立っている原発の問題についても調査を長引かせて、人々の記憶から消し去ろうと躍起だ。

それなのに、’市民生活の維持’だの’産業界の要望’だのという言葉で彼らは行動する。原発に代わる研究も怠り、現状を汲々と維持するだけの臆病者の集団が彼らなのだ。

彼らが本当に原発の悪魔性を理解するには、もう1度原発大事故が起こる必要がありそうだ。今度は単なる放射能漏れではなく、原子炉が”割れ”て、大勢の死者が出て広大な無人地帯が生ずるようでないと、この社会は進歩することはないようだ。最もそのときにはこの国は当然つぶれているだろうが。

「目先の利益でこの地球を汚すな!」

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ツィッターによる不適切発言?2011/12/09

「セシウムまみれの干し草で毒牛を作る行為もセシウムまみれの水田で毒米を作る行為もサリンを作ったオウム信者と同じ」というのだが、文を作る際の気配りがまったく欠けていることに驚かされる。これを英語やフランス語に訳せと言われても、とてもできるものではない。

(1)”毒牛をつくる”と”毒米をつくる”のそれぞれの主語は一体何なのだ?農民だろうか?もしそうだとすればまったく的を外れていることは自明のことだ。本当に著者は、農民を非難するつもりで言ったのだろうか?

(2)”作る行為”とは、じつは途方もない省略文であって、ほんとうのところは、「東京電力の起こした事故が、結果的に(農民に)作らせることになった」ということなのだろうか?もしそうだとすれば、この発言は極端に不正確で誤解を招くものだといわねばならない。

(3)「A が B と同じ」といっているがA = 行為、 B = オウム信者、だということになれば、比較するものが同等なカテゴリーにないので、極めて不正確である。自分だけの思い込みで、読む人にも同じ読解法で理解するように強いている。

大きな問題として、日本語で、気軽に主語を省いてしまう習慣が、人々の前に意見を公表する場合にも強く残っていて、大変な誤解をまねく恐れを増大させている。かねてから指摘されているように、言語場での論理的脈絡がでたらめでも、そこのところはなんとなく”雰囲気”でわかってもらえるという甘えた認識があるのだ。この問題はこの文を作った大学教授のみならず、一般人でも文脈を粗末に扱うという点で、日本語の未来を考える上でも由々しき問題だ。

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失業問題を解決するには 2011/12/05

失業問題は、先進国共通である。かつては不景気が失業者を生むといわれていた。かつては小さな工場でも人があふれていた。ところが現在は景気が良くても悪くても、失業率の大きな変動はない。そして慢性的な悪化が日々進んでいる。

これはなぜか。原因は企業側にある。”国際競争に勝つ”という大義名分のもと、自社内の仕事を、10人でやるところを無理に7人ぐらいでやらせ、初任給を大幅に下げ、それぞれの職員の生涯収入を激減させ、最後にはついに派遣やアルバイトを合法化して、正社員の数を極力減らすようにしてしまったからなのだ。

これをとめるには、強力な政府が、人を粗末にする企業を名指しで挙げ、各企業に強制的に人員を確保させ、給料の最低基準を厳格に守らせ、非正規雇用を徹底的に非合法化させなければならない。

それでもなお国際競争に勝たねばならないとのたまうのなら、一つには不買運動を起こして、その企業を窮地に陥らせ、一方ではアメリカのように、規制緩和によって、従業員を自由に解雇できるようなシステムは、これこそ”(自由貿易の)非関税障壁”であるとして国際機関に訴え出るべきだ。

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環太平洋パートナーシップ協定(TPP) 2011/11/12

この協定は、一連の自由貿易を目指す動きの一つである。自由貿易は、その”自由”という言葉に惑わされずに、きちんと現状を分析すると、すぐれた技術を持った先進国が、相手の言いなりに買うしかない、開発途上国から搾取する構造だということが、この10年ぐらいの間に明らかになった。その結果、所得格差、失業や国内産業の崩壊を各地で引き起こしている。

かつて、小泉首相が、郵便局の民営化という愚を引き起こしたことは記憶に新しい。あのときは彼一流の戦略によって、国民はもちろん、代議士達の大部分もそのことが一帯何を引き起こすのか、まったく考えることなく議決してしまった。あの時は、他国の指導者たちも、リーマンショックの起こる前で、規制緩和による、利益増大の夢に浮かれていたころだ。

今回のTPPもそれほどではないが、決断する時期ぎりぎりになって議論を始めてももう遅い。野田首相は、それまでの歴代の自民党首相たちと同じく、大企業の利益をなんといっても代表する人だから、この協定を推進することは目に見えている。この協定によって、アメリカ式の経済構造、つまり”企業の利益の邪魔になるものはすべて排除する”システムがますます定着していくことを見通すことができる。

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貧富の是正運動 2011/10/16

ニューヨークに端を発した、強欲な企業による貧富の差のひどさに対する抗議行動はいまや全世界に広まりつつある。アメリカ合衆国では、皮肉にも「Change」を唱えたものの、実行力の伴わないオバマ大統領への”戦力外”宣言にもなってしまっている。だが、いささか”遅きに失した”感を否めない。

これまで貧困者たちは、「アメリカン・ドリーム」などという言葉に乗せられて、”いつか成功する”という夢を素直に、本気で信じてきた。もうその夢が絶対にかなわないとわかり、チェニジアに端を発する民衆の示威行動による政治の変換を達成するという風潮に乗って、次々と共鳴者を増やしてきている。

だがこの運動はどこへ進んでいくのだろうか?何を目標としているのだろう?最も現実的な方策は、あまりに進みすぎた”規制緩和”を元に戻すことがまず第一であろうが、今富裕層たちは、この運動を叩き潰すために頭を絞っているに違いない。歴史では、必ず”巻き返し”ということが生じることになっている。

かつて、1950年代の”赤狩り”は少しでも貧富の差のことを考える人々を”共産主義者、つまり世界を破滅に追い詰める人々”だというレベルをはって、その発展を阻止するのに成功した。さて、今回富裕層はいったいどんな作戦で反撃に出るのだろう?そして自分たちの富を維持し続けようとするのだろう?

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管首相の辞任 2011/08/26

管首相の辞任は、大震災と原発事故の処理における不手際とされる。支持率も非常に下がった。だが、これから立候補して次の首相を目指す民主党の連中は、彼を上回る能力と実行力を持っているのか?なるほど、管首相が非常にすぐれた政治家だったとは言えないかもしれない。

だが、次の権力を目指す連中の、名指し非難には、まったく建設的な方向を見出すことができなかった。彼らの胸中にはただ、権力が欲しい、という願望しかないことがひと目で見てとれる。さらに管降ろしの中心となった自民党だが、原発のいい加減な管理を許したという、過去の大罪なんかすっかり忘れたように、ただ自分たちは国民にとって、民主党以外の唯一の選択肢だとまくしたてるだけ。

もとはといえば、すべてこれらは国民の無知、無関心から発したことなのだが・・・日本の直面している現実が、経済的にも、国際的にも、将来性の点からも非常に厳しいのに、それを見据えるビジョンを持った政治家が現れてこないのは、実に残念なことだ。

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ノルウェーの大量射殺事件 2011/07/27

ノルウェーで起こった、一人の男による大量射殺事件はヨーロッパ中を揺るがしている。その被害者の数の多さもさることながら、「イスラム人からヨーロッパやノルウェーを守る」という主張から長い時間をかけて周到な準備を重ねてから、実行に移したといわれているからだ。

しかし、ここでは本来政治は関係ない。このタイプの人間は、歴史的にも必ず一定の割合で出現するようである。イギリスの「切り裂き魔」、女子大生を殺して冷蔵庫に入れ、それを食べていた日本人留学生、秋葉原でナイフで多くの人々を殺した男、神戸で同級生の首を切り取った少年、いずれも民族や文化に関係なく出現している。

このようなタイプの人間は、普段の生活の中でも、学校で飼育しているウサギを皆殺しにしたり、花壇にみんなで植えつけた植物を一夜のうちに根こそぎにしたりするのと系統は同じようである。でもだからといって、今回のような犯行にまでエスカレートするには、頭のよさや周到性が備わっている必要がある。

たまたま犯人の性格から、ある政治思想が利用されることがあるが、それが極右であるか極左になるかは育った環境によるのである。残念ながら、現代の心理学では普通の人と、こういった人間とを区別する境界線がはっきりしていないし、戦場のような異常な状況の場合は別にして、どうしてそれが引き起こされるのかもわかっていない。

そうなると社会はどのようにしてこういった人間たちの攻撃から身を守ればいいのか?アメリカ合衆国では銃が野放しになっているから大量射殺事件はこれまでも頻繁に起こっている。だが、今回のような多人数になったことはない。これは単にアメリカ人が身を守る方法をノルウェー人よりよく心得ているからなのか?

おそらく最も実行可能な解決方法の一つは、今イギリスで推し進められているように、「ビデオカメラ監視社会」を作ることだろう。プライバシーの観点からこれを歓迎する人はいないが、効率と、費用の点から多くの国民に受け入れられるであろう。だが、公共の場所がすべてビデオが見つめているとすれば、これは人類の未来社会としては、あまりにも惨めだ。

また、犯人に対する刑罰の問題がある。ノルウェーはヨーロッパの他の多くの国同様、死刑を廃止している。禁固も20年ぐらいまでだ。だが、これらは”初級”から”中級”の犯罪者を想定している。今回のような殺人鬼の場合には、それを当てはめる法的制度がない。しかもこういうタイプの犯人の場合には、死刑が犯行の歯止めにはまったくなっていない。

しかも仮に死刑が確定しても、死刑を執行している国々では、一人の人間を殺しても死刑になるが、80人以上となれば、どういうふうに死刑をすればいいのか?80倍の刑というのはあるのか?ここでも非常に難しい問題に突き当たってしまう。

このままであれば、不運にも射殺された人々は、天災、たとえば雷に打たれたのとか、津波にさらわれたのと同じ扱いになってしまうのだろうか?

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イタリアの脱原発 2011/06/14

イタリアの国民投票で脱原発が決まった。このようにヨーロッパの国々では、次々と原発に頼る政策を改める動きが出ている。原発事故による経済に対する負の効果は、ほかの手段によるエネルギー生産やエネルギー使用制限による負の効果より遥かに大きいことが、はっきりと示されたからだ。

日本ではまだ懲りずに原発継続をつぶやいている者もいるようだが、ここにきて、あの原子炉という”薄皮饅頭”のなかに猛毒物質を閉じ込めておく狂気が、ようやく理解されたようで、もはや原子力に未来はない。ただ、すでに稼動している原子炉を廃炉にするということが、途方もない費用と手間と危険を伴うことを覚悟しなければならない。

これまで”恩恵”を受けた原子力への代価を払うのである。ツケはすべて未来の世代にかかっていくのだ。ただし、未来の世代がわれわれ以上に賢いなどという保証はどこにもない。考えてみれば福島第一原発もとっくの昔に廃炉にするべきところを実行するのに途方もなく巨大な金額のために延期することにし、これからもだましだまし使い続けていこうという魂胆だった矢先、こんな事故が起こったのだ。

だが、原子力は必要ないことはイタリア人にも日本人にも同じである。地方を旅行した人には十分わかっているように、人口減少と過疎化には歯止めがかからない。そもそも日本の人口はイギリス、フランス、ドイツ、イタリア並みの6千万ぐらいで十分なはずなのに、その2倍もいるのだから、エネルギーもこんなに必要になった。また、これからも中国並みの成長率を維持するだろうというような能天気な予測をした人もいた。

今後人口が半減し、エネルギーも半分で済むのならば、発電所もいらなくなるだろう。風力発電所や太陽光発電所は地方に作られることになるから、その維持管理は地域の雇用にもよい影響を与える。

今回の事故はある意味ではよい教訓になったのだ。誰でもこれでも大事故だと思っているようだが、原子炉が”割れ”なかっただけでも大変な幸運なのだ。もし割れて、内部が大気中に露出したら、5つの原子炉すべてでこれが起こり、まったく手のつけられない事態となり、日本列島は無人島、朝鮮半島や台湾の人々でさえ、自分の住んでいるところを避難する必要に迫られたかもしれないのだ。

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オバマよ、お前もか? 2011/05/07

ビンラディンの殺害によって、アメリカ国民は沸き立った。どうもオバマ大統領は、自分の経済政策の不人気を挽回して、今度の大統領選挙を有利に進めるため、殺害を承認したらしい。アメリカ国内でのナショナリズムの高まりは、たしかに効果があった。だが、一方でパキスタン政府に断りもなく、勝手に暗殺部隊を送り込んで殺害を決行したというこは、かつて CIA が中南米でやった主要政治家の暗殺計画とまったく同じだ。また、裁判も何も行わないという点では、グアンタナモの囚人に対する扱いとまるで同じだ。やはりオバマも、世界最強国の権力者に過ぎなかった。選挙のときは Change! を連呼したオバマであったが、実はブッシュや、ベトナム戦争を始めた大統領たちとほとんど代わらないことが判明した。権力者が極悪人であることは歴史が教えるところである。

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