映画の世界

コメント集(1)

  1. Shane シェーン
  2. Steel Magnoliasマグノリアの花たち
  3. The Firm 法律事務所
  4. Les Alaire de la Peur 恐怖の報酬
  5. It's a Wonderful Life すばらしき哉、人生!
  6. 麦秋
  7. 東京物語
  8. 晩春
  9. Death of a Salesman セールスマンの死
  10. Rear Window 裏窓
  11. Oklahoma! オクラホマ!
  12. Annie Hall アニー・ホール
  13. Angels with Dirty Faces 汚れた顔の天使
  14. 上海バンスキング
  15. Gorgeous ゴージャス(瑠璃星)
  16. Mr.Deeds Goes to Town オペラハット
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H O M E > 体験編 > 映画の世界 > コメント集(1)

1998年に見た映画

Shane シェーン 98/10 再 2008/01/28 再 2011/05/20

農民たちの団結、子役の少年の持つ魅力、大西部の情景、どれをとってもよい雰囲気を作っている。アメリカ西部での悪者と立ち向かうストーリーはパターン化しているが、流れや場面の作り方が素晴らしい。最後の少年の「シェーン!」の叫びがやはり印象的。さすらいものが定住者のところにやってきて問題を解決して再び去ってゆくという、まさに典型的な筋書き。

しかし一方で、「土地の所有」とはなんだろうか。先住民の持っていたものを牛追いたちが奪い、こんどは農業を行うものが土地を必要とする。誰でも欲しいものであっても、その移り変わりには必ず紛争がある。舞台になっているのは、保安官のいる場所が160キロも離れているという、アラバマ州の無法地帯。そこが徐々に整備され、「所有権」なるものが定着してゆく。土地とはいったい、誰のものなのか?

アラバマ州の平原に畑を開拓してがんぱっている夫のジョー、妻のマリアン、息子のジョイの三人家族があった。だが、ここを放牧地にしたいとたくらむランカーたちが、作物を荒らしたり、ときあるごとに脅しをかけて開拓民たちを追い出そうとしていた。

だが、ジョーは屈しない。近隣の仲間たちを集めて励ましあい何とかランカーたちの圧力をはね退けようとしていた。そのころシェーンが放浪の旅の途中に立ち寄ったのが彼らの一家だったのだ。彼は一家の農業の手伝いとして雇われる。みんなの行く酒場での喧嘩で見たシェーンの強さにジョイはすっかりひきつけられてしまう。マリアンもシェーンにほのかな慕情を覚えるのだった。

Shane開拓民仲間のトーリーがランカーたちの挑発によって撃ち殺される。そして彼の家族が住んでいた農家に放火される。農民たちはみなおびえて、この土地を逃れてほかに移ると言い出した。だが、ジョーは自分がランカーたちのところに談判に出かけると言い出す。

古い友人からランカーたちがジョーをはめようとしていることを知ったシェーンはジョーを殴ってまでとどまらせ、自分が一人ランカーたちの待ち受ける酒場に向かう。ジョイはひそかにシェーンの後をつけてゆく。早撃ちシェーンの運命やいかに・・・(1953年)

Directed by George Stevens Writing credits Jack Schaefer (story) A.B. Guthrie Jr. Cast: Alan Ladd .... Shane / Jean Arthur .... Marian / Starrett Van Heflin .... Joe Starrett / Brandon De Wilde .... Joey Starrett

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Steel Magnolias マグノリアの花たち 98/10 04/01

Steek Magnolias会話の99%以上は女同士のもの。それでもホームドラマでは、人生のなにものかを示してくれるものだ。「フライド・グリーン・トマト」を思わせる南部もの。糖尿病の若い女が無理をして子供を産み、病状が悪化して死んでしまうまでの、まわりの女たちの連帯を描く。

ここはケンタッキー州の田舎町。この家の長女シェルビーが結婚するというので家中大騒ぎだ。父親ドラムと彼女の弟たちは、お客さんの頭に糞が落ちては困るというので、庭の大木にめがけて空砲やら花火やらを破裂させて鳥を追い払おうとしている。醜い犬を連れた近所の性悪女ウィザーは顔を合わせればドラムと喧嘩している。今日は花火の音で犬の興奮がとまらない。

母親マリンとシェルビーは、式の前に行きつけの美容院に出かける。今日は美容師のトゥルービィは若い女アネルを雇ったばかりだった。これに市長未亡人クレーリーを加えて、にぎやかにおしゃべりをする。突然、シェルビーが発作を起こす。彼女は糖尿病だったのだ。嫁入りの支度の興奮で、予想外の時間に起こったが、急遽ジュースを飲ませて事なきを得た。、

式は無事終わり、シェルビーは夫ジャクソンと新しい生活を始める。クリスマスに彼女は故郷に立ち寄ったときに、自分が妊娠していることを告げる。だが母親のマリンは、悪い予感を感じて大いに心配する。医者は子供を産むことは極力避けるようにといっているのだ。だがシェルビーの決心は固い。

翌年の7月、子供は無事産まれた。男の子で、みんながかわいがった。だが、出産の負担はシェルビーの腎臓を直撃していた。腎臓がうまく機能しなくなり、透析を受けるようになっていたのだ。しかもこれから子育てのハードな仕事をこなしていくためには、どうしても腎臓移植をしなければならない。

マリンの腎臓をもらって手術は無事成功したかに見えた。だが、ある日ジャクソンが帰ってみると冷蔵庫が開けっ放しになり、子供が泣き叫んでいる。シェルビーは意識不明のまま庭に倒れていた。急遽病院に収容されるが、二度と昏睡状態からさめることはなかった。

シェルビーを埋葬したあと、マリンはどうして娘が自分より先に逝かなければならないのかと嘆く。だが、いつも仲良くしていた女たち、トゥルービィ、アネル、ウィザー、クレーリーは、人生は悲しいことがあっても進んでいくのだと励ます。

残された子供も歩けるようになり、シェルビーの結婚式の日に知り合った人と結婚したアネルは自分が子供を産む番になった。仕事がなくぶらぶらしていたトゥルービィの夫もようやく働き始め、ウィザーにも恋人ができた。この通り、人生はいつものように進行していくのだ。

Directed by Herbert Ross Writing credits Robert Harling (play) Robert Harling Cast: Sally Field .... M'Lynn Eatenton / Dolly Parton .... Truvy Jones / Shirley MacLaine .... Ouiser Boudreaux / Daryl Hannah .... Annelle Dupuy Desoto / Olympia Dukakis .... Clairee Belcher / Julia Roberts .... Shelby Eatenton Latcherie (1989年)

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The Stuntman スタントマン 98/10

The Firm 法律事務所 98/10 04/02 (再)2019/01/01

The Firmミッチはボストンにあるハーバードのロースクールを優秀な成績で卒業し、たくさんの法律事務所から高給の申し出があって、引く手あまただ。特に有利な条件を出してきたのが、南部のテネシー州メンフィスにある小さな事務所だった。これまで妻のアビーと貧困の中で暮らしてきたミッチにとっては、夢のようだった。

だが世の中のうまい話は必ず何か裏があるもの。わずか10年の間に、この事務所の弁護士が4人も若くして死んでいる。そのうちの二人は、ミッチが入社してまもなくカリブ海に浮かぶ金持ちの預金先として有名なケーマン島で不審な事故にあったのだった。

ある日ミッチが残業で疲れ果ててコーヒーショップにいると、FBI のエージェントが話しかけてきた。ここでようやくこの事務所が何かくさいことがミッチにもはっきりしてくる。

事務所ではアベリーという男が直接の上司となった。理想家肌のミッチに対し、アベリーは収入の高さにひかれてこの業界に入ってきた現実家だった。ミッチは彼について司法試験の準備を始める。

やがてアベリーに連れられてミッチもケイマン島に赴く。そこに待っていたのは色仕掛けの罠だった。そしてアベリーの泊まっている部屋に積まれた不審なファイル、脱税まがいの節税法、手数料の水増し請求の実態などが次々と明らかになる。

帰りにミッチは自分の兄を訪れる。彼は刑務所に入れられており就職の際にも会社には黙っていたのだ。面会のあと兄に紹介してもらった知り合いの私立探偵に事務所のことを調べてくれるように依頼する。

そしてワシントンにセミナーで出張した日、エージェントに呼び出されたミッチは、驚くべき話を聞かされる。私立探偵は何者かによって射殺され、生き残った秘書によれば犯人たちは、ケイマン島での事故の時に見かけた男たちとそっくりらしい。

この事務所がシカゴのマフィアとつながっており、その膨大な利益は脱税などに関わることによって生み出され、それを知った職員は辞めようとすると必ず消されてしまうということ。自分たちの住む家は盗聴器だらけだということ。そしてミッチにとって取るべき道は証拠となる内部文書をもってくることしかなかったのだ。

大胆にもミッチは会社の幹部に自分が FBI に呼び出されたことを告げる。こうやってはっきり言っておいて信用させた方がいいと狙ったのだ。その後、私立探偵の秘書に協力してもらい、会社の重要ファイルを次々とコピーする。

事務所の男にケイマン島での色仕掛けの罠を写した写真を見せられ、これをアビーに知らせると脅されるが逆に、はっきりとアビーにあやまちを告げる。このためアビーはショックを受け実家に帰ろうとするが、たまたまアベリーがケーマン島に来ないかと誘ったのをチャンスとばかりに、彼女はアベリーと酒を飲み睡眠薬を飲ませ、その間にケイマン島にあった重要ファイルを次々とコピーすることに成功する。

一方ミッチは FBI と取引をして、ファイルを渡す代わりに兄を釈放すること、兄の生活費のために75万ドルを振り込むことを約束させる。この「取引」は日本人にはなじみがない方式だが、ミッチは強引に FBI と渡り合う。(※2018年になって、日本でも司法取引が可能となった)

アビーにやられたと気づいたアベリーは自殺し、メンフィスの事務所ではミッチの不審な行動に気づき捕まえようとするが、すでに時遅く、証拠書類はすっかりコピーされ、悪徳事務所は一網打尽にされる。

弁護士になったばかりのミッチは、この事件で依頼人との秘密保持を破ったために資格を剥奪されることがないように、これまでこの事務所と取引をした依頼人を一軒一軒回って、郵便法違反で重大な罰金と刑期を受けることをちらつかせ、今後の裁判にコピーした書類を証拠として使用する了解を取り付ける。

ミッチは大学では教えてもらえなかった貴重な体験をした。法がいかに人々を守り、そのためにはいかに弁護士の仕事が重要かということを今回の就職で痛いほど味わったのだった。そしてアビーと共にボストンに戻って再出発をめざすのだった(1993年)・・・資料外部リンク

Directed by Sydney Pollack Writing credits (WGA) John Grisham (book) / David Rabe (screenplay) Cast Tom Cruise .... Mitch McDeere / Jeanne Tripplehorn .... Abby McDeere / Gene Hackman .... Avery Tolar  リスニング;大量の会話があり法律関係、弁護士のしゃべる言葉などの学習に理想的。

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Le Salaire de la Peur 恐怖の報酬 1998/11 2004/04

恐怖の報酬(オリジナル)爆発物を満載したトラックを運転する男たちの恐怖との戦いを描く。高額の報酬のためにあくまでやり遂げようとする男たちの執念と、困難を切り抜けるさまざまな知恵や工夫、すさまじい恐怖感の中での人間として結びつき、そして何よりも人生は度胸の必要な”賭け”だということを教えてくれる。

ここは南アメリカ、ベネズエラの首都カラカスからも飛行機でしか交通機関のない小さな町。開発を目指して作られた町の例にもれず、ここもヨーロッパ各国から食い詰めた男たちが仕事を求めて集まっていた。埃だらけの街路には仕事のない男たちがたむろし、暇を持て余していた。

陸の孤島とも言えるこの町から脱出するには飛行機しかない。しかし失業者たちにはまともなパスポートやビザもなければ、航空運賃を払う金もない。それでも何とかしてもっとましなところに行こうともがいていた。

若いマリオもその一人だったが、ある日飛行機が着陸して、ジョーと名乗る謎の男がこの町に降り立った。なんと二人は同郷だった。共にパリで暮らし近所同士だったのだ。異国での出会いは二人を親しくする。マリオは大切にしてあるパリのメトロの使用済み切符を見せたりした。

もうすでに中年も終わりに近いジョーはかつて暗黒街の顔役だったらしく、この町の酒場でも幅を利かせようとした。だが、さすがに金がもうなくなり、何としても仕事を見つけなければならない。そこへ300キロ以上離れた石油採掘現場で爆発事故があり、油井火災が起こった知らせが届いた。この火を消し止めるには爆破によってその爆風で吹き消す以外に方法がない。

この町に作業所を置くアメリカの石油会社 SOC はニトログリセリンを現場へ運ぶトラック運転手を募集した。報酬は2000ドルだと聞いて、大勢の男たちが応募したが、テストに合格したのはマリオを含めて4名。ジョーは、そのうちの一人を何とかしてあきらめさせ、自分がその仕事を手に入れた。

マリオ、ジョーは組になって10トントラックに乗り込み、珪肺でもう寿命幾ばくもないルイジ、ナチの収容所で苦汁をなめたことのあるビンバの組がもう一台のトラックに乗務した。一台でよいのだが、もう一台は事故にあったときのための保険だ。4人は SOC の所長に見送られて早朝3時に出発した。

恐怖の報酬(おりじなる)ニトログリセリンが爆発しないように大きな揺れを起こさないでゆっくり進む時の極度の緊張のため、年をとっているジョーはさっそくからだの調子がおかしくなった。もたもたしているうちに、後発のビンバ組に途中で先を越される。

次第に夜が明け、なだらかな道はまるでトタン板のように波打つ道に変わった。むしろある程度のスピードを出した方が震動が少なくて済む。そのうち山岳地帯に入り、トラックの横幅すれすれの登り道が続く。工事のため木製の張り出しで車をスイッチバックさせなければならなかった。

ビンバ組のトラックの重みで、すでに半分腐っていた材木はタイヤの当たるところがつぶれて穴があいてしまった。後に続くマリオ組はきわめて困難な状況に直面したが、ここでジョーは怖じ気心を出し、山の中に逃げ出した。仕方なくマリオは一人でトラックをとり回す。

ジョーは道ばたにうずくまっていた。町の酒場であれほど威勢の良かった面影はどこにもない。年齢が彼から体力も気力もすっかり奪ってしまっている。マリオから臆病者呼ばわりされてすっかり意気消沈して助手席に座って旅が続く。

さらに先の方では大きな岩が転がり落ちて道をふさいでいた。先行しているトラックのビンバはたっぷりあるニトログリセリンを使って岩を砕くことを考える。すぐれた工夫によって岩は吹っ飛び、トラックは先を急いだ。

だが、ビンバ組のトラックは、大きな穴に誤って落ち込みトラックは大爆発を起こした。マリオたちのトラックからは大きな噴煙が見えた。現場に着いてみると、すべて吹っ飛びトラックの跡形もなかった。そしてその大きな穴には破れた油送管からの原油が流れ込み、その池はどんどん大きくなっているのだった。

これ以上深くならないうちにトラックはその池の強行突破を試みるが、先導役をしていたジョーは池で転んでトラックのタイヤに足をひかれてしまう。何とか池は渡り終わったものの、ジョーはもう疲労と怪我で虫の息だった。やがて日が暮れ真っ暗になるとジョーはパリの街角のことを思い出し始めた。

真っ暗な中に燃え上がる油井が見えてきた。ついに到着したのだ。だが、そのときジョーはすでに息絶えていた。マリオは全身油だらけになりながらもついに最後まで仕事をやり遂げた。

ジョーの分も報酬をもらい、マリオは意気揚々と空のトラックを運転して帰途につく。町ではマリオは英雄となり、恋人のリンダが今か今かと待ちわびているのだ。やがてトラックはカーブの多い山道にさしかかった・・・(1953年)

Directed by Henri-Georges Clouzot Writing credits Georges Arnaud (novel) Henri-Georges Clouzot Cast: Yves Montand .... Mario / Charles Vanel .... M. Jo / Peter van Eyck .... Bimba (as Peter Van Eyck) / Antonio Centa .... Camp Chief (as Centa) / Véra Clouzot .... Linda / Luis De Lima .... Bernardo リスニング;中心はマリオとジョーのフランス語なのだが、開発の町だけあって、スペイン語、イタリア語、英語が入り乱れる。

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It's a Wonderful LifeIt's a Wonderful Life すばらしき哉、人生! 98/11 

「住宅ローン」会社の社長息子が、零細ながら町の人々のために資本家ポッターを相手に奮闘するが、破産寸前に追い込まれ、自殺を企てる。「天使」が下りてきて彼のいない世界はどんなものかを見せて、生きる希望を与える。

人生の大切さ、特に小さな個人でも社会に大切かを教えた映画。クリスマスキャロルに似ているような。

Directed by Frank Capra Writing credits Philip Van Doren Stern (story) Frances Goodrich Cast: James Stewart .... George Bailey Donna Reed .... Mary Hatch Bailey Lionel Barrymore .... Mr. Henry F. Potter Thomas Mitchell (I) .... William 'Uncle Billy' Bailey Henry Travers .... Clarence Oddbody (1946年)

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麦秋(再)1998/12 (再)2004/06/27 (再)2018/12/27 (再)2020/12/08

麦秋春になるとすべての生命が花開くのに、麦はその刈り入れ時期を迎える。これが麦秋だ。人間の家族にもこれから新生活に入るものもいれば、老後の隠居暮らしに入るものもいる。その人生のやりとりがささやかな家族を通して描かれる。

横須賀線北鎌倉に住む、医者として油ののった康一は妹の紀子、妻の史子、息子の實と勇、両親の周吉としげを加えた7人家族だ。毎日がにぎやかでその日常シーンは「埴生の宿」のオルゴール曲が流れる。ちょうど、まほろばの大和から、周吉の兄である茂吉が遊びに来ていた。

商社に勤める紀子はもう28歳。もうそろそろと言われながらも、女学校同級のすでに結婚した安田や高梨たちに向こうを張って親友のアヤとともに未婚同盟を結成している。独身の自由がいいか、家庭の幸せがいいか、いつも二手に分かれて議論が沸騰するのだ。

だが紀子のことについてはまわりが黙ってはいない。会社の専務、佐竹が自分の先輩を紹介しようとしてきた。紀子はその話しにあまり気が進まないが、専務がせっかく持ってきた話だし兄の康一も乗り気なので、次第に具体的な縁談の形を取り始めた。

紀子と周吉の間には正二という二男がいたが、スマトラの戦地におもむいたまま行方不明となり、しげを除きもうだれもがあきらめていた。正二の高等学校の時の同級に矢部という男がおり、周吉の病院で同じく医者の仕事をしていた。だが彼の妻は2年前に亡くなり、残された小さな女の子が謙吉の母親、たみに育てられていた。

麦秋ある日康一が囲碁友だちで同じ医者の西脇から、謙吉の転勤話を聞かされる。秋田県の県立病院の内科部長として3,4年行ってもらえないかというのだ。謙吉は将来のことを考えて、必要なステップとみなし引き受けることにする。問題なのは幼い娘と母親をどうするかだ。

鎌倉に住み慣れたたみはこの地を離れたくない。そこでたまたまお使いもので訪ねてきた紀子に、自分の息子の嫁に来てもらえないかと、断られるのを覚悟で聞いてみる。すると何と紀子は行ってもいいと返事をしたのだ。思わぬ返事にたみはびっくり仰天。もちろん謙吉も翌日秋田へ出発するのだがろくに眠れないほどだった。

紀子は佐竹が紹介してくれた男が40も過ぎて結婚しないままでいることに、何か信用できないものを感じていた。それよりも何よりも謙吉は幼なじみでそれまで空気のような存在だったし、前の妻と結婚してからは全く結婚対象として考えていなかったのだが、今言われてみると信頼できそうでごく自然に受け入れる返事をしてしまったのだ。

女の幸せを逃さず、子連れであるとか、地方で暮らすというような問題を飛び越えて、ぐずぐず思い悩むことなくいさぎのよい紀子の決断は、大胆ながら自分の人生をしっかりと自分でつかんだ姿があった。

麦秋もちろん康一も両親も大いに心配する。かつて医者とは結婚したくないと公言していたのも紀子だったからだ。母親のしげは、「まるで一人で大きくなったように、一人で何もかも決めちゃって・・・」とつぶやくが、紀子の気持ちはいったん決めたら揺らぐことはない。

佐竹に縁談のことを断りに行くと、「すごく古風なアプレゲール( après guerre 戦後派 )だね」といわれた。紀子は日本の女の芯の強さと、自分で自分の人生をしっかりと決めていく新しい女の両面を兼ね備えていたからなのだろう。

紀子の結婚を機に、両親も鎌倉を離れ兄、茂吉の住む大和へ引退することになった。いちどきにこの家から3人もいなくなるわけだが、また再会する日を楽しみに、それぞれの生活が始まっていくのだった。(1951年)・・・資料外部リンク

監督: 小津安二郎 脚本: 野田高梧 キャスト(役名) 菅井一郎(間宮周吉)東山千栄子(しげ)笠智衆(康一)三宅邦子(史子)原節子(紀子) 村瀬禪(實)城澤勇夫(勇)高堂国典(茂吉)淡島千景(田村アヤ)高橋豊子(のぶ)佐野周二(佐竹宗太郎)二本柳寛(矢部謙吉)杉村春子(たみ)宮内精二(西脇宏三)井川邦子(安田高子)志賀真津子(高梨マリ)

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東京物語 1098/12 (再)2004/06/19

東京物語勤勉で働き者の日本人。だが、高度成長は「忙しさ」という大義名分のもとに家族の結びつきをはじめとして多くのものを失ってしまった。小さい頃はやさしい子供でも生存競争の波にもまれ、自分の生活を第一に考えてしまうようになった。小津監督は、日本における家族の絆が切れていくさまを静かに描き出した。

広島県尾道に住む平山周吉、とみの老夫婦は、東京に住む子供たちを訪問することにした。学校の先生をしている末娘の京子に留守番をしてもらって、二人は子供たちの暮らしぶりをうかがいに列車に乗る。

長男の幸一は東京のはずれで町医者をしていたが、せっかく両親が訪ねてきたというのに、日曜日の朝から患者がやってきて東京見物はおじゃんになった。そこで二人は、長女の志げの経営する美容院へ出かける。だがここでも彼女は仕事に追いまくられ、夫の庫造も集金に忙しい。

東京物語そこで志げは、戦争で死んだ次男の嫁である紀子の働く会社に電話をかけて二人を東京見物に連れていってくれるように頼む。紀子は快く引き受け、翌日会社を休んで周吉たちを見物に連れ歩き、夕方には自分が夫と暮らしていたアパートへ二人を招待して、心からのもてなしをする。

幸一と志げは相談して二人で金を出し合い、周吉たちを熱海の温泉に行ってもらうことにした。二人は喜んで出かけていったが、その夜の旅館はどんちゃん騒ぎ、翌朝の海辺の散歩では、とみがちょっとめまいを感じて、二人はそろそろ尾道が恋しくなってきた。

熱海で一泊した翌日、二人は早々に志げの美容院に戻ってきたものだから、志げは困り果ててしまう。今夜はこの美容院で寄り合いがあるのだ。二人は宿無しになってしまった。それで周吉は古い尾道時代からの知り合いである服部を訪ね、とみのほうはまた紀子のところに泊めてもらうことにした。

東京物語紀子が嫌な顔をするどころか再び心からのもてなしをしてもらい、とみは実の子どもたちよりやさしい彼女に感動するのだった。そして次男が死んでからもう8年もたつのだから、そろそろ新しい生活を始めるように紀子に勧めるのだった。

一方周吉は服部の家に行ったものの狭い家で泊まるところもなく、かつて尾道の警察署長であった沼田をまじえて3人で飲みに出かけ、昔話や子供たちへの期待がはずれたことで話が弾んだ。3人ともぐでんぐでんに酔っぱらった後、周吉と沼田は深夜に交番の巡査のお世話になって志げの美容院に届けられた。

翌日、午後9時30分の列車で二人は尾道に帰ることになった。みんなが送りに来たが、とみはみんなの歓迎に感謝した後で、もうみんなに会えたから何かあってもわざわざ尾道までこなくてもいいよとぼそりと言った。

帰りの列車の中でとみは気分が悪くなり、大阪で途中下車をして、三男で国鉄に働いている敬三の世話になった。幸い間もなくとみは回復しようやく尾道に帰ってくることができたのだった。

東京物語だがそれからしばらくたって、京子から「ハハキトク」の電報が入る。前から太っていたこともあり、熱海でよろめいたのそのせいかもしれない。旅行の疲れがそれを悪化させたのかもしれない。家族がとみの枕元に集まったときは、意識は戻らず大きないびきをかいていた。幸一と志げは準備よく喪服を持参していた。

翌朝午前3時にとみは息を引き取る。敬三は出張のため親の死に目に間に合えなかった。まさに世に言う、「孝行したくても親はいず、さりとて墓にふとんは着せられず」であった。周吉は一人日の出を見て、迎えに来た紀子に向かって「今日もまた暑うなるのう」と言った。

葬儀が済むと、幸一と志げはすぐに東京へ帰ろうとする。敬三も去った。紀子だけがしばらく滞在していろいろと面倒を見てくれた。いよいよ紀子も東京へ帰る日がやってくると、京子は兄姉たちの親子の情の薄さを嘆くのだった。仕方がないのよ、みんなそうなっていくのよ、と紀子は答える。

ちょっとしたことだが、京子が学校に出勤する場面がある。出かける前に靴下を履くのだが、畳の上に尻餅をついて履くのではない。若い娘らしく鶴の一本足よろしく、片足をあげてバランスを取りつつ履いている。精神は姿勢に現れるというのはこのことだろうか。現代の(全員ではない)娘たちを比較してみるとよい。

周吉は紀子に向かって自分の子供以上に自分たち夫婦によくしてくれたことに感謝した。東京行きの列車が尾道駅を出る。京子は授業の合間に窓の外の線路をばく進する機関車を見ていた。紀子は周吉からもらったとみの形見である時計を握りしめていた・・・(1953年)・・・資料外部リンク

監督: 小津安二郎 脚本: 野田高梧  小津安二郎 キャスト(役名) 笠智衆(平山周吉) 東山千栄子(平山とみ) 山村聡(平山幸一) 三宅邦子(平山文子) 村瀬禪(平山実) 毛利充宏(平山勇) 杉村春子(金子志げ) 中村伸郎(金子庫造) 原節子(平山紀子) 大坂志郎(平山敬三) 香川京子(平山京子) 十朱久雄(服部修) 長岡輝子(服部よね) 東野英治郎(沼田三平) 高橋豊子(隣家の細君)

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晩春(再)98/12  (再)2020/12/18

晩春これも購入すべき作品。娘が、妻を亡くした父親のもとから嫁として家を離れるだけのストーリーなのに、なぜこれほど奥行きがあるのだろう。 平凡な題材なのに、観る人は誰でもここに新しい人生の姿を感じてしまう。

北鎌倉に住む大学教授周吉は56歳。妻を亡くし、娘の紀子と二人暮らし。紀子も適齢期を過ぎようとして、周吉も、その妹の叔母も誰かいい相手がいないかと探し回る。

周吉の弟子、服部はすでに許嫁がいるのだが、心の底では紀子にひそかに思いを抱いている。でも、二人はあまりにも友達みたいで、真意を言い出せないうちに、服部はその許嫁と結婚をしてしまう。紀子も深く傷つく。

叔母がお見合いの話を見つけてきて何とか紀子にその気にさせようとする。だが、紀子は父親のもとにいたいのだ。その少女のような思いが、父に縁談の話が持ち上がったとたん、紀子の気持ちは動転する。居心地のいいそれまでの娘時代がひっくり返る恐怖が襲ったのだ。

能見物に行ったときに周吉が相手の女の人に客席越しに会釈するのを見て、紀子の心は乱れる。感情は彼女の顔に出て、表情の激しい変化が心の内をすべて物語る。周吉は、仕方なく自分も再婚する予定であると、うそをつき、なんとか紀子にお見合いの承諾をさせるのだった。

最後に二人で出かけた京都旅行。叔父の再婚には「不潔だわ」と言ってしまったことを後悔した紀子だったが、旅館の部屋の明かりを消して、窓辺にぼんやりと浮かぶ壺を紀子が見つめる場面は何を象徴しているのだろう?

帰り支度をしながら、やはりどうしても父親の元を離れたくない。いつまでも少女のままでいたいのだ。周吉は落ち着いて、たしなめてようやく紀子に新生活への気持ちを整えさせる。

無事、結婚式が済んだ。周吉はお手伝いも帰り、誰もいない自宅に戻った。リンゴの皮をむいても、眠気が襲ってきた。これからは長い長い孤独な生活が始まるのだ。(1949年)・・・資料外部リンク

監督:小津安二郎 原作:広津和郎 脚本:野田高悟/小津安二郎 出演:笠智衆/原節子/杉村春子

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Death of a Salesman セールスマンの死 98/12

長男との葛藤を引きずる父親は63歳にして会社を首になり、息子もぶらぶらしているが、最後に和解が訪れる。しかしそれもつかの間、息子に保険金を残してやりたい父親は自殺をする。弱肉強食で、保険金しか救いのないアメリカ社会を描く。(1951年)

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1999年に見た映画

Rear WindowOklahoma!Rear Window 裏窓(再)99/01/15 これぞヒッチコックの傑作だ。主人公は少々怒りっぽいが、グレース・ケリーの演じる女がうまくバランスをとっている。しかし人の窓を望遠鏡で覗くのはあまりいい趣味ではないが。 (1954年)

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Oklahoma! オクラホマ!(再) 99/02/02

シャーリー・ジョーンズと言う女優が一番光っていた頃だ。その愛らしさは、オクラホマ平原にぴったりだ。中にでてくる歌は、今では考えられないくらい若々しい。ミュージカルは「サウンドオブミュージック」だけではない。

Directed by Fred Zinnemann Cast; Gordon MacRae .... Curly /Gloria Grahame .... Ado Annie Carnes/ Gene Nelson .... Will Parker/ Charlotte Greenwood .... Aunt Eller/ Shirley Jones (I) .... Laurey Williams (1955年)

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Annie HallAnnie Hall アニー・ホール 99/02/10 (再)2012/10/17

アルビーがニューヨークの町でアニーと出会って、別れるまでの話。人生は惨めだからこそ、生きているとわかるのだ。ウディ・アレンの傑作。ウイットに富んだ会話がおもしろい。アレンとニューヨークの組み合わせは最高だ。

1970年代の風俗が次々と飛び出す。マリファナ、コカイン、セックスの回数、左翼運動、ケネディ暗殺、精神分析医、当時の映画、などその時代を知らない人には、会話の内容を十分理解することが難しいかも。一方、「人生は惨めさと悲惨さだ」とか、ユニークな人生論も展開している。

ニューヨークに暮らす、コメディアンのアルヴィは、二回の結婚に破れている。「自分を迎え入れてくれるクラブなんかには入りたくない」というへそ曲がりの精神だから、どうしてもうまくいかない。

そこへアニー・ホールという女性が現れた。ニューヨークの町にぴったり合った、この歌手志望の女は、いつの間にかアルヴィのアパートに引っ越してきて、同棲生活を始める。だが、最初のころの熱情はどこへやら、アニーは、次第にアルヴィを遠ざけるようになってくる。

アルヴィーが授賞式に出席するために二人でカルフォルニアに向かうが、向こうでの華やかで社交に忙しい雰囲気が気に入ったアニーと、あくまでも暗いニューヨークが好きなアルヴィは、ここで違いが決定的になる。

アニーがアルヴィーのアパートを引き払ったあと、彼女はロサンゼルスに住み、アルヴィは、いったんは追いかけて行ったけれども、「友達」としての関係であきらめるしかない。それでも、いまでもアニーのよさは心から離れないのだ。・・・資料外部リンク

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Angels with Dirty Faces 汚れた顔の天使 99/02/17 Angels with Dirty Faces

幼なじみの一方は神父に、もう一方は感化院に送られて、ギャングになる。少年時代に二人で悪いことをしたが、後者は逃げ遅れて警察に捕まったばかりに転落の道を辿ったのだ。

タイトルはニューヨークに住む、感化院の「天使」たちのことだ。ギャングや死刑の時になって、少年たちのために神父に協力してくれる。(1938年)

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上海バンスキング 99/03/14

これを見たのは上海に出発する前の晩。これを見たおかげで実際の上海が違って見えた。松坂慶子が目の覚めるような美しさを発揮する。日本から流れてきたジャズマンたちが、上海に居着いてしまう。だが日本軍は中国大陸を侵略し始めた・・・

タイトルの意味は「上海前借り王」のこと。戦前のジャズ盛んな頃の話。反戦映画といえる。ジャズメンたちはみな死ぬ。きわめてエキサイティングな展開。

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Gorgeous ゴージャス(瑠璃星 boh lei chun)99/03/20

上海の映画館で見た。ジャッキーチェン主演で、いつものおもしろさはあるが、B級だ。しかし中国語でストーリーが進んだ割には印象が残っている。彼の映画作りは、言葉よりもボディーランゲージで勝負なのだ。

台湾でイルカを飼っている女の子がビンの手紙につられて、都会に出てモデルを志願するが断られる。大金持ちの事業家(ジャッキー)に出会って、闘争に巻き込まれるが、ジャッキーのアシスタントをするうち彼と親しくなる。ささいなことで別れるが、ジャッキーは敵に勝ち、台湾に彼女を迎えに行って Happy End!(広東語) 

Directed by Vincent Kok Cast; Jackie Chan .... C.N. / Chan Qi Shu .... Bu / Tony Leung Chiu Wai .... Albert / Emil Chow .... L.W. / Lo Hsien-Chi Jen .... Bu's Suitor / Elaine Jin .... Bu's Mother / Sung Young Chen .... Bu's Father / Bradley Allan .... Martial Artist

(再)2018/12/20

台湾の島でレストランを営む両親のもとで、家業の手伝いをしていたプウは仲良くしているイルカから、手紙の入った瓶を受け取る。そこにはアルバートという男から、「待ってます」という文面があった。ロマンチックな夢を抱いたプウは、さっそく香港に旅行に行き、アルバートを見つけたのだが、彼は女性には興味のない人物だった。

それでもメイクアップアーティストであるアルバートは親切にも泊めてくれ、ドレスの着方も教えてくれた。そこに現れたのが、廃品回収業のチャン。彼は株でもうけ、大金持ちであった。だが、彼の株の買い方が気に入らない学校友達が、海外の拳闘家を呼んできてチャンと戦わせる。鍛え方が足りなかったために、一回目は負けてしまうがプウの励ましで再び強さを取り戻す。

プウは有頂天になり、このロマンスが実現するような気がしてきた。だが、プレーボーイで有名なチャンは女と一緒にいた。がっくりしたプウは思い出だけをカバンに詰めて台湾に戻ってしまう。第2回目の挑戦に勝ったチャンだが,勝った原因は、プウの笑顔だと悟って、自ら台湾に赴く…➡資料?O???????N

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Mr.Deeds Goes to Town オペラハット 99/03/29

Mr.Deeds Goes to Town今のようなアクション中心のアメリカ映画からは想像もつかない、文芸作品。「我が生涯最良の日」もそうだが、フランス映画のような気品はなくても、アメリカ流人生を実に見事に映し出している。

ゲーリークーパーは「真昼の決闘」でしか知らないとすれば、もったいない。クーパー演ずる田舎青年が思わぬ遺産を受け取るが、そのまっすぐな人柄で、金がすべてのアメリカ社会の中を生きてゆく、実に爽快なドラマ展開。

Directed by Frank Capra Cast; Gary Cooper .... Longfellow Deeds/ Jean Arthur .... Babe Bennett /George Bancroft (I) .... Editor Mac Wade/ Lionel Stander .... Cornelius Cobb /Douglass Dumbrille .... John Cedar (1936年)

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

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