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今年見た映画(2001年) Fight Club ファイト・クラブ 03/28/01 主人公はある大手自動車会社のリコール査定を担当する男。イケヤの家具が気に入り、高給をその収集に当ててアメリカの一流の消費生活を楽しんでいる。 だが、華やかなエリートサラリーマンの生活に彼は心底から不満を持っているのだ。自分の一生は、消費を支えるためにあくせく働き、ものを所有することによろこびを感じるように仕組まれたこの社会の仕組みに深い疑いを持っている。それは不眠症となって現れ、これを直すために、絶望の果てにいる人々のグループに出入りして、そこから精神的安堵を求めようとする。 同じようにそのようなグループに出没するナゾの女、マーラと知り合うが、それで自分の問題が解決したわけではない。やはり自分自身が行動しなければならなかったのだ。そこで彼に、もう一つの人間、つまり何ものにも束縛されず、アメリカの文明社会をせせら笑うことができるもう1人の存在、タイラーを生み出してしまったのだ。この映画はジキル博士とハイド氏の現代版ともいえる二重人格の物語である。 タイラーは筋肉隆々で、商業主義的な傾向に一切妥協せず、ボロ家に住み、ものを所有することから解放された生活を送っている。考え方や行動や過激であるが、どれも筋が通っている。主人公とタイラーは飛行機の中で「知り合う」。だがふたりのもつカバンが全く同じだということが二重人格への伏線となっている。 彼の消費世界から解放される方法は、男同士徹底的に殴り合うことである。怒りも感情も持たず、ただひたすら殴り合う。このやり方にひかれた同志が次第に彼のもとに集まり、ファイトクラブを形成してゆく。会員はアメリカ全国に広まり、自分たちの仕事で鬱積した不満を、血だらけの殴り合いで、きれいさっぱりと洗い流して再び社会に戻ってゆく。 主人公は、タイラーのやり方に心から同意し、まるで自分の親友かクラブの共同創立者であるかのように思いこむようになるが、いつの間にかタイラーは一人歩きし、過激的様相を強め、各地に支部を作ったあと、訓練を徹底させるために少数の精鋭を集め、この国の金融システムを破壊することを企てる。 タイラーが自分の化身でありながら、暴走し始めたことを自覚したあと、主人公は自分の口の中にピストルをつっこんで自殺を図る。幸い死は免れたが、タイラーはその瞬間消えてしまう。だが彼が部下たちを使って町中に仕掛けた爆弾は、金融街を次々を爆発させ、目の前で滅んでゆくのだった。 この映画のテーマは、自分の願望がそれを実現するためだけに存在する別の人格の誕生を描くこと、そしてもう一つのテーマは、繁栄するアメリカ社会の空洞をわかっていながら、そこから抜け出せないで消費の泥沼に引きずり込まれてゆく人々を、ここでは殴り合いというきっかけで救済されてゆく過程を描くことであろう。 全体としてコメディタッチで描きながらも、誰もが体験し閉じこめられているアメリカ独特の生活スタイルに対する鋭い批判が光っているのかもしれない。ある意味では前衛劇のようでもある。(1999年) Directed by David Fincher Writing credits (WGA) Chuck Palahniuk (novel) Jim Uhls Cast overview, first billed only: Edward Norton .... Narrator / Brad Pitt .... Tyler Durden / Meat Loaf .... Robert Paulsen / Zach Grenier .... Richard Chesler - Regional Manager / Richmond Arquette .... Intern at Hospital / David Andrews (I) .... Thomas at Remaining Men Together / George Maguire .... Group Leader - Remaining Men Together / Eugenie Bondurant .... Weeping Woman / Christina Cabot .... Leader - Partners in Passivity / Helena Bonham Carter .... Marla Singer 上へMorocco モロッコ 03/31/01 アフリカの西北端にあるのがモロッコ。1910年代には、フランスの植民地になっており、人口の少ないフランスでは、ヨーロッパ各国から兵士を募り外人部隊を駐屯させていた。その中にゲーリー・クーパー演じる、トムも各地を転戦したあげく、街中に進軍してきた。女たらしで有名だが、戦闘はうまい。 一方、マレーネ・ディートリッヒ演じる、エイミーもヨーロッパから流れてきた酒場女。この日初めて、この街一の酒場で What am I bid をはじめとした歌をうたい、客から盛んな声援を受け、たちまち人気者になる。歌のあとでリンゴを店内で売り歩く彼女だが、金のない兵士には、「お釣りよ」と称して全額を返すようなところがあったのだ。だがステージに出たとたん、客の中にトムを見てたちまちひかれてしまう。 彼女がモロッコに流れ着くまでいろいろ面倒をみてくれた年寄りの金持ち男に結婚を迫られるが、その夜たずねてきたトムの率直さと正直さにますますエイミーはひかれてゆく。「10年はやく逢っておればよかった」、幾度となく男に騙されてきたエイミーに「ぼくは約束はできない」とさらりと言ってのけるトムに、かえって情熱を募らせる。 だが、現地人とのいざこざがもとで、もともと副官からあまりよい目で見られていなかったトムは、遠くの戦地に送られてしまう。最後の夜、トムはヨーロッパに一緒に逃げることも考えるが、I have changed my mind, Good Luck! と彼女の鏡に書き残して戦場に行ってしまう。 いったんは金持ちの男との婚約を考えもしたが、再び鼓笛隊の響きが町中に鳴り渡ると、いてもたってもいられなくなり、行方不明になったトムを求めて遠くの街にエイミーは出かけてゆく。やっと見つけても他の女と一緒にいたトムに、あまり暖かく迎えてもらえなかったエイミーだが、彼が座っていたテーブルに Amy Jolly の名が彫ってあるのを発見して、思いを新たにする。 砂漠を行軍する外人部隊のあとには、つかの間の「女房」として後に続く「後衛部隊」がいる。大きな袋を担いだり、家畜まで引き連れた女たちが、男たちの後を追うのだ。エイミーは彼女らを見て、自分もトムの後を追う決心をする。彼女は砂埃を上げて部隊が行進する後を追う。途中で靴を脱いで裸足になる。靴は砂漠の中に転がっている・・・(1930年・モノクロ) Directed by Josef von Sternberg :Writing credits Jules Furthman Cast: Gary Cooper .... Tom Brown / Marlene Dietrich .... Amy Jolly リスニング:きわめてゆっくりとした誰にでも聞き取れる英語。量は少ないが、男女の機敏をついたせりふに満ちている。 上へAmerican Beauty アメリカン・ビューティー 04/20/01 映画の傑作はホーム・ドラマに多いという。あの「鉄道員」もそうだ。そしてこの作品もアメリカの郊外にある中流家庭を題材に取ったということで、この範疇に含まれるといえよう。 主人公はある家庭を持つ42歳の男。人生に行き詰まり、妻との関係も停滞し、会社でも厄介者で、娘からも嫌われている。 その彼がある日娘の友だちの美しさにひかれ、突然今までの生活を切り替えようとする。そのきっかけは筋肉トレーニングだ。下心丸見えかもしれないが、自分の体を鍛えることに熱中することで、人生の新しい側面が見えてくるような気がする。 妻は小さな不動産会社を営むが、どうも商売がうまくいかず、夫との夜のつきあいもずっとご無沙汰だ。欲求不満が高じて、あるパーティで知り合ったやり手の業者と知り合い、浮気に走る。 娘は16歳という難しい年齢である上、父親が自分の友だちにひかれるのを見て愛想を尽かし、母親の生き方にも軽蔑を感じている。だが、隣に住む青年にひかれるようになって、生き方が次第に見えてくる。 娘の友だちというのは、将来モデルになれそうなくらい魅力的な顔立ちをしているが、自分がどれだけ男たちの関心を引きつけることができるかをひけらかすことしか興味がない、頭の空っぽな女の子だ。。 隣に住む青年は保守的な父親に表向きは服従しているが、その小遣いは、麻薬を売ることによって得ている。ビデオを撮ることが趣味で、隣の娘に惚れたとたん、彼女の姿をレンズに絶えずとらえて離さない。 彼のビデオ作品の中には、風でビニール袋が舞い上がりあちこちに動き回る光景を15分もとらえたものがある。日常生活の思いもかけないところに美しさが( Beauty )が潜んでいるのをこの青年は感じ取ることができたのだ。隣の娘もこの非凡さにひかれたのだ。 彼の父親は海兵隊出身でナチスのコレクションをするぐらいの超保守的な人間で、ホモを毛嫌いする。母親は父親の陰に隠れて何も言わない。彼の一家は彼の支配のもとに動いているかのようだ。 主人公を中心に、これらの人物がぶつかり合う。最後に自分の浮気を見つけられた妻によって主人公が拳銃で頭を撃ち抜かれるまで、これは続くのだ。現代の豊かな白人中流階級を実に写実的に描写したといえよう。 それほどまでに退廃しているのか、それとも時代は変わっても人間の本性というのはこういうものなのか?麻薬とホモの話を除けば、日本にもすっかり当てはまる話ではある。最後に流れる曲はビートルズ「 Because 」のカバー。(1999年) Directed by Sam Mendes / Writing credits (WGA) Alan Ball (I) (written by) Cast: Kevin Spacey .... Lester Burnham Annette Bening .... Carolyn Burnham / Thora Birch .... Jane Burnham / Wes Bentley .... Ricky Fitts / Mena Suvari .... Angela Hayes / Peter Gallagher .... Buddy Kane / Allison Janney .... Barbara Fitts / Chris Cooper (I) .... Colonel Frank Fitts リスニング:この種のドラマには珍しくスラングも少なくきわめて聞き取りやすい。 上へLife is Beautiful ライフイズビューティフル 04/30/01 イタリア語の原題を La Vita Bella という。戦争直後のリアリズムで一世を風靡したイタリア映画、いまだ健在なりというところだ。舞台は、第2次世界大戦直前のイタリア。ムッソリーニがドイツと同盟関係を持ったために、ドイツ国内ほどではないが、ユダヤ人へのいじめが激しさを増していた頃の話。 ユダヤ人である主人公のグイドは、仲間と共に都会に出てきた。夢は書店を開くことだが、今のところ元手はない。住まいは大金持ちの叔父さんのところに居候というところだが、資金集めのため、給仕の仕事をすることになる。 グイドは、根っからの陽気な人物で、人をびっくりさせたり幸せにするために生まれてきたような男だ。なぞなぞの大好きな医者と意気投合し、お互いに難問を出し合ったり、ローマからやってきた監督官に化けて小学校で演説をしてみせたり、次々と奇想天外なことをしでかす。 蜂に刺されて木から落ちてきた娘ドーラと知り合い、その後も偶然なで出会いを何度も重ねたあと、彼女の婚約者から彼女をさらって、二人は結婚し男の子を1人もうける。念願の書店を開店し、少年は店番をすることができるようになった。 だが、戦争の暗雲はついに市民生活に及び、ユダヤ人であるグイドや叔父さんは、馬の背中に落書きされるなど、嫌がらせを受けたり商売の妨害を受けたりで、次第に暮らしにくくなってきた。そしてついに強制収容所へ送られる日が来た。 叔父さんと、グイドと少年の三人は同じ貨車に乗せられ、ドーラも自ら望んで女だけの貨車に乗ってドイツにある収容所へ向かう。少年はまだ幼くてどういう状況なのかつかめていない。そこで父親は、今から素晴らしいゲームが始まるのだと少年に言って聞かせる。 見つからないように隠れていなければならない、おやつも食べてはいけない、その他いろんなルールがあって、それを破れば失格なのだと息子に話して聞かせる。しばしば元気をなくしそうになった息子は、ゲームの1等賞では本物の戦車が貰えると聞いてがんばり続ける。 収容所での重労働は大変だったが、グイドは少しもめげず、隙をついて構内放送でドーラに話しかけたり、結婚前に一緒に聞いた「ホフマンの舟歌」のレコードを女囚の棟に向かって流してみたりして、ドーラに自分たちの健在を告げる。 いよいよ終戦が近づき、収容所も脱走者が出たりして混乱し始めた。グイドは息子を連れて構内を逃げ回り、息子の体がすっぽり入る戸棚を見つけていう。「いいかい、お父さんが戻ってくるまでは、ここからでてはいけないよ。もし仮に戻ってこなくても、すっかりまわりが静かになって誰もいなくなったら出てきてもいいよ。それを守らないと、今までの得点がフイになるからね。そしたらゲームでは、失格だ。」 息子は言われたとおり、中で静かにしていたが、父親は戻ってこなかった。ドイツ兵に発見され銃殺されたのだ。翌朝、ドイツ軍や収容所の人々が逃げて静かになり、少年は外に出た。そしたら何と、本物の戦車が目の前にいる!自分はゲームに優勝したのだ! アメリカ兵に拾われた少年は戦車に乗せてもらい、その道すがら母親のドーラとも再会できた。父親は自分の命と引き替えに息子を救ってくれたのだ。主演のグイドはRoberto Benigni といい、監督でもある。その演技のおもしろさと多彩さはチャップリンを思い出させる。(1997年) Directed by Roberto Benigni Writing credits Vincenzo Cerami and Roberto BenigniCast: Roberto Benigni .... Guido Orefice / Nicoletta Braschi .... Dora / Giustino Durano .... Guido's uncle / Giorgio Cantarini .... Giosu Orefice リスニング;イタリア語。今この言語を勉強して人にとっては理想的な教材だ。実に聞き取りやすい。 上へErin Brockovich エリン・ブロコビッチ 05/06/01 エリンは、2度の結婚のあと、乳飲み子を含む3人の子供を抱えて、生活費を稼ぐのに四苦八苦している。今回もついていない。いくら求職活動をしても断られるばかり。次第に行き詰まってくる。 交通事故にまで巻き込まれて、その裁判を担当してもらった(しかも負けた)弁護士エドのところにねじ込んで、むりやりアシスタントとして雇ってもらう。仕方なくエドは、ファイルの整理などをさせる。 幸運にも、隣に無職で気のいい男が引っ越してきて、子供たちの面倒を見てくれるという。彼の好意に甘えて、エリンは弁護士事務所通いを早速始めることになった。 ある日、彼女はファイルしている中に、不思議な事件を発見した。P&Gという会社が、ある地域の住民の住宅を買い取るというのだ。その不自然な行動に興味を引かれたエリンは、さらに詳しく調べようとする。 その結果、驚くべき事実が明らかになったのだ。P&Gは工場の廃液を垂れ流し、そこに含まれた六価クロムは地下水を汚染し、周辺住民の間に、ガンなどの深刻な健康被害を引き起こしていたのだった。 学歴も教養もないエリンは、ひたすら足で丹念に証拠を集めてまわる。大学の研究者、水質管理局、健康に異常をおこしている周辺住民の家族など、そのうち、エドと相談して、大規模な集団訴訟を起こすことを考える。 すでに600人以上の原告を集め、彼女は住民たちの信頼を獲得した。汚染地域の住民の1人が、訪ねてきたエドとエリンにコーヒーとケーキを出そうとする。エドは忙しいからと、はやばやと帰ろうとするが、エリンは「住民の出すコーヒーは必ず飲んで帰らなければダメ!」とささやく。 持ち前のべらんめぃ調で、P&Gの弁護士らと渡り合い、裁判の長期化を防ぐために、調停和解への道をエドと二人で住民たちに説得する。そして数々の障害を乗り越えて、住民一人当たり500万ドルという、アメリカの公害訴訟史上最大の和解金を獲得したのだった。 これは実際にあった話を映画化したものだが、エリンの法律に関する知識が豊富だったとか、教養豊かだったというわけではない。ただ、ひたすら足を使って住民たちの間を歩き回ったたまものである。600人を越える原告たちの、ひとりひとりの電話番号、病名、家族構成その他を驚くべき正確さで、披露してみせる。なお、本物のエリンは、この映画のウェイトレス役として出演しているという。(2000年) Directed by Steven Soderbergh / Writing credits (WGA) Susannah Grant (written by) Cast : Julia Roberts .... Erin Brockovich / David Brisbin (I) .... Dr. Jaffe / Dawn Didawick .... Rosalind / Albert Finney .... Ed Masry リスニング:最高に聞き取りやすいジュリアの発音。 上へThe Remains of the Day 日の名残り 05/12/01 イギリスには貴族がいる。そして彼らのもとには必ず執事(Butler)がいる。彼らは縁の下の力持ちで、忠実に毎日の仕事をこなし、主人が快適に過ごせるように常に気を配るのだ。彼らは職業意識が徹底し、親子代々その仕事を続けている者も多い。 だがもしその主人が、ナチスのシンパだったらどうするか。主人公スティーブンスのはまさにそうだったのだ。だが、彼は少しもあわてず、紳士的に淡々と日々の義務をこなし、主人の最後まで忠実に、そして主人の死後は主人とは全く政治的な立場の違う人に仕えることになる。 頻繁に訪れる、ドイツからの客たち。その会話を聞いていれば、彼らの政治思想はよくわかるはずなのだが、スティーブンスは済ました顔で、そんな話を聞いていると気が散るといって、受け付けない(実際は聞いていたのだろうが)。 スティーブンスの父親も長年の執事で、今度の募集でこの館に前からここにいる息子と共に、臨時に働かせてもらうことになった。75歳の高齢で、つまづいたりヘマをしたりしながらも、自分の仕事への誇りを失わない男だった。最後に脳出血で死ぬときも、息子には大切な任務を変わらずおこなってくれることを望む。 ミス・ケントンはスティーブンスに選ばれた女中頭だった。その有能さで、館のあらゆることを取りしきっていたが、一方でスティーブンスへの思いがあった。だが、スティーブンスがあまりに仕事に徹するあまり、彼女はスティーブンスと心を通じる機会を失い、失意のあまり、副執事候補と結婚して、この館を出る。 主人が死んで、20年たちアメリカのルイス議員が、この館を買い取った。実は戦前ルイスはこの館での会議に出席し、「あなた方政治のアマチュアが、ドイツをそんなに優遇すると危険だ」と宴会の席上で一席ぶった男だったのだ。 スティーブンスはそれを聞いているし、結局ルイスの考え方が正しかったこともわかっているが、「そんな話は記憶はございません」と言いながら、ルイスとその家族の受け入れのための準備を黙々と進めるのだった。 昔の想い出と、スティーブンスがルイス一家の世話のために新たに人材を求めて、かつてのケントンに会いにゆく話が交錯する形式で描かれている。カズオ・イシグロ原作による、「大人の映画」(1993年) Directed by James Ivory Writing credits (WGA) Kazuo Ishiguro (novel) Ruth Prawer Jhabvala Cast : John Haycraft .... Auctioneer / Christopher Reeve .... Jack Lewis / Anthony Hopkins .... James Stevens, Butler of Darlington House / Emma Thompson .... Miss Sally Kenton, Housekeeper of Darlington House / Caroline Hunt .... Landlady / James Fox (I) .... Lord Darlington / Peter Vaughan .... Mr. Stevens, Sr. リスニング;はじめは聞き取りにくいイギリス英語だが、次第になれてくると独特のアクセントさえ会得すればむしろわかりやすいことに気づく。 上へPaths of Glory 突撃 05/18/01 英語の原題は、「栄光への道」。昇進して、栄光に輝くことしか頭にない高級将校たちを描いた映画だ。時は1914年、第1次世界大戦が、フランスとドイツの間に始まった頃の話。 両軍とも国境付近を挟んで膠着状態となり、互いに塹壕を掘り、一進一退を続けていた。わずかに前進するためには、敵の集中砲火を受けることになり、日露戦争の旅順攻略の時と同様、多大な人命の消耗を覚悟しなければならなかった。 フランス上層部は、この停滞を打開すべく、ミロー将軍に丘を奪取することを命じる。彼は部下の司令官であるダックス大佐に作戦の実行を命じるが、誰もがこれがほとんど不可能であり、実際におこなっても半数近くの人命が失われることを知っている。 だが軍の規律は絶対である。ダックスは何とか部下を説き伏せて攻撃に向かわせるが、もとよりできない相談で、先発隊の後に続く部隊は、結局出陣しなかった。 ミロー将軍は大変腹を立て、この失敗が自分の昇進に大きな障害になると考えて、下っ端の兵士3人をそれぞれの部隊長に選ばせて敵前逃亡の罪で、見せしめに処刑することをダックスに命ずる。 この理不尽な命令に、ダックスは、弁護役をかって出るなど、三人の救命に奔走するが、軍法会議はミロー将軍の思惑通り進み、彼らはあえなく処刑場の露と消える。 それどころではなく、三人の救命のために、ミロー将軍が腹立ち紛れに、味方の陣地への砲弾射撃を命じた事実を明かしたことは、もうひとりの将軍によって、ダックスが昇進の野望に燃えていると誤解されてしまう。 ダックスが意気消沈して兵士の食堂を通りかかると、彼らはドイツ娘が戦争で引き離された恋人の歌をうたうのを、静まり返って涙を流しながら聞き入っているところだった。間もなく彼らに、前線へ復帰するようにとの命令が伝わる。 下級兵士は国家のためだとして、犬猫のように殺され、一方高級将校は楽な生活を保障されている上に、責任はすべて下にかぶせ、自分たちは栄誉を得ることしか考えない。ダックスのような良心的な男も子の巨大な戦争マシンの中では為すすべがないのだ。(1957年白黒) Directed by Stanley Kubrick / Writing credits Humphrey Cobb (book) Stanley Kubrick Cast : Kirk Douglas .... Colonel Dax / Ralph Meeker .... Corporal Phillip Paris / Adolphe Menjou .... General George Broulard / George Macready .... General Paul Mireau, 701 Regimental Commander / Wayne Morris (I) .... Lieutenant Roget / Singing Man / Richard Anderson (I) .... Major Saint-Auban / Joe Turkel .... Private Pierre Arnaud / Christiane Kubrick .... German Singer リスニング;フランス兵がみな、英語をしゃべっているのが変な気がする。軍隊調の会話が中心。 上へDersu Uzala デルス・ウザーラ 05/25/01 (再)2018/10/20 ➡黒沢監督 黒沢監督の後期の作品。ここは東部シベリア、ハバロフスクの近くの森の中。軍から派遣された隊長が、数人の部下と共に地域探査を行っている。 ある夜、薄気味悪い密林の中でキャンプを張っていると、アジア系の顔をした男が突然彼らの前に姿を現す。名前はデルスといい、シベリア原住民族の出身らしい。職業は猟師というが、たまたまルート探索に難航していたときであり、隊長は彼にガイド役を依頼する。 雇ってみて、その役に立つこと。デルスは、シベリアの自然を隅から隅まで知り尽くしており、足跡を見て、その動物や人間である場合にはその民族名まで言い当ててしまう。 射撃の名人で、隊長の部下たちが、木から下げたガラス瓶すらまともに撃てないのに、デルスは瓶をつり下げている糸を撃ってしまう。厳しい自然を生き抜く知恵を持っていながら同時に、山小屋を立ち去るときに、緊急食糧を詰めた包みをぶら下げておく細やかさも持っているのだった。 ある時、吹雪の吹き荒れる湖沼地帯の真ん中で隊長と二人で迷ってしまう。このまま夜が来れば確実に凍死するだろう。デルスは、辺り一面に生えている枯れ草を刈り取り、大きな山をこしらえる。中に穴をあけ、測量器具を支える三脚を柱に利用して、無事一夜を切り抜けるのだった。 こうして何度も命を救ってもらい、隊長はすっかりデルスが気に入り、一緒に街に出て暮らすことをすすめるが、デルスは自分は文明社会の中では生きられないからと言って、探査が済むと、クロテンを追って、隊長一行に別れを告げる。(第1部) 再び隊長は、探査に出た。今回もあちこちで苦しい思いをして測量を続けたが、幸いデルスに再会できたのだった。密猟の落とし穴を発見したり、匪賊に捕らわれていた人々を救い出したり、相変わらずデルスの活躍が続く。 だが寄る年波は、デルスの視力を確実に悪化させていた。かつてはあれほどの射撃の名手であったのに、もはや簡単な獲物さえ撃てなくなってしまった。デルスは、自分が近づいてきた虎を撃って(殺さなかったが)しまったのが原因だと信じている。自分たちの掟では、虎は決して殺してはいけないのだった。 ついに弱気になったデルスは隊長の説得に応じて、ハバロフスクの街に彼の妻や息子と共に暮らすことに同意する。だが、自給自足で自分の生活を支えてきたデルスにとって、規則づくめの街の生活がどうしても自分に合わない。ついに森へ戻ることを告げると、隊長は黙って、照準のすぐれた最新式の銃を餞別として渡すのだった。 だが、この銃の贈り物は裏目に出た。間もなくデルスは、おそらくこの銃を奪おうとした犯人によって殺されてしまう。懐に持っていた名刺によって、連絡を受けて駆けつけた隊長は、デルスの埋葬に立ち会うことになってしまったのだった(第2部)。 文明とは相容れない、自然界の英雄。だが英雄も体に少しでも故障があれば、厳しい自然界の中ではもう生きてゆくことはできない。そしてこの映画のように、多くのエスキモーやアメリカン・インディアンとよく似た最期を遂げることになるのだ。(1975年)➡資料 Directed by Akira Kurosawa / Writing credits Vladimir Arseniev (journals) Akira Kurosawa Cast: Yuri Solomin .... Captain Vladimir Arseniev / Maksim Munzuk .... Dersu Uzala リスニング;ロシア語の初心者には理想的な教材!デルスのとつとつとしたロシア語は、重要語ばかり、また隊長や部下の会話もゆっくりで、単純明快である。 上へ鉄道員(ぽっぽや) 05/31/01 鉄道員は「ぽっぽや」と読むのだ。鉄道開業以来、蒸気機関車はその象徴だった。鉄道に勤める人は誰でも、蒸気の釜焚きをしたことになるのだ。 北海道美幌線の終着駅、幌舞の駅長佐藤は、まさにこの言葉が似合いの人物だった。若い頃は蒸気機関車に石炭を投入することに汗を流し、ひたすら鉄道人生を歩んできた。そしていよいよこれで定年を迎える。しかも美幌線の廃線が間近に迫っていた。 機関士仲間は、わざわざ正月に訪ねてきて、佐藤の定年後の身の振り方を心配しているが、佐藤はただ笑うばかりではぐらかしてしまう。これまで鉄路に生きてきた人間が、JR の始めたホテルやら観光産業やらが自分に合うはずがないことはよくわかっているのだ。 ホームで最終列車を見送ったあと、佐藤は自分の人生を振り返っている。17年連れ添った妻。その妻がせっかく産んだ女の子、雪子は生まれた年にあえなく命が消えてしまう。だが、自分は勤務のため、死に目にあうこともできなかった。 そのあと、妻が体調を崩し、その病がついに彼女の命を奪ってしまったときも、自分は勤務のために死に目にあうことはできなかった。これはみな、鉄路を守るぽっぽやの宿命なのだ。 駅のそばのダルマ食堂で知り合った、九州から流れてきた炭坑夫と知り合うが、炭鉱事故であえなく死に、残された男の子を養子にと考える。だが、妻の病気であきらめるほかなかった。その子も、ダルマ食堂に引き取られたあと、イタリアに留学し、近々美幌にイタリアン・レストランを開業するという。 正月に入って、佐藤駅長は、素朴な人形を抱えた小さな女の子に会う。夕方には置き忘れられた人形を取りに来たその姉に会う。そして数日たった深夜、一番上の姉が訪ねてきた。彼女は鉄道に興味がある高校生で、佐藤に料理まで作ってくれる。 その人形をどこかで見たことがあると佐藤は思った。そういえば、雪子が生まれて間もなく、街へ出たときにおみやげに買ってきた人形とそっくりなのだった。3人姉妹と思ったのは、雪子の成長の過程だったのか?そうだ、雪子は自分を迎えに来たのだ。(1999年) 監督;降旗康夫 出演;高倉健・大竹しのぶ・広末涼子・小林稔侍 上へMemphis Belle メンフィス・ベル 06/10/01 第2次世界大戦も終末に近づいたころ、イギリスの空軍基地では、ドイツの軍需工場を破壊するため、20機以上の爆撃機を用意し、若きアメリカ人パイロットたちを出動させていた。 しかし、ドイツ領に侵入すれば、高射砲を受け、メッサー・シュミットのような戦闘機が行動の自由があまり利かない爆撃機をねらい打ちしてくる。このため、多くの若者たちがドイツの空に散った。 しかしドイツの兵器生産を止めなければ、戦争終結の見込みは立たない。連合軍は、どんな犠牲を払ってでも目的を遂行させるつもりだった。志願兵からなる爆撃機乗務員は、士気も高くどうしてもこの作戦には必要だったのだ。 メンフィス・ベルは過去25回も出撃し、そのたびに奇跡的に帰還してきた爆撃機で、自称医者の機長を頭に10数人の乗組員は勇敢なことで有名だった。機体の先端には、その名前と、メンフィスの美人らしい絵が描かれている。 出撃の前の晩、ダンスパーティが開かれ、乗務員たちは翌日の出撃が終われば故郷に帰れることはわかっていながら、ブレーメンの軍港攻撃という、きわめて困難な命令を受けて、死の不安におびえる。 志願兵である彼らは、故郷に戻って何をするかをお互いに語り合う。プールの監視員をしている者もあれば、アメリカ各地に全く同じ味のハンバーガーを作る夢を語る、まるでマクドナルドの前身を思わせる男もいる。ここで、あの有名なダニー・ボーイの歌が流れる。 翌日、悪天候のため一時延期された出撃も、ついに実行に移され、メンフィス・ベルや、他の20機ほどの爆撃機は一路ドイツ領へ向かう。だが、敵の反撃は猛烈で、多くの爆撃機が打ち落とされ、リーダー機も後部に致命的な損傷を受けて帰還することになり、急遽メンフィス・ベル機が中心となって爆撃地へと向かう。 戦闘機によって満身創痍になりながら爆撃目標に近づいたものの、雲が濃くて下界の様子がさっぱりわからない。機長は、高射砲に打ち落とされる覚悟で旋回を命じる。「俺たちがやらなければ、次に行く連中がやらなければならないんだ」と全員を励ます。しかも民間施設に誤爆することは許されないのだ。 一回目の旋回でも失敗、だがその次の旋回で目標の上空に戻ったとき雲の切れ目から、軍需工場が一瞬目に入り、無事爆弾を落とすことができた。 だが、帰路は往路と同じく危険であり、ひとりが銃撃を受けて瀕死の重傷を負い、エンジンは火を噴き、最後の着陸の際には車輪が機体からでないという、絶体絶命な状態に陥ったが、何とか帰還できたのだった。メンフィス・ベルは使い物にならないほどの損傷を受けたが、乗員は任務を果たして帰国することができたのである。(1990年) Directed by Michael Caton-Jones Writing credits (WGA) Monte Merrick Cast : Matthew Modine .... Capt. Dennis Gilmore, Pilot / Eric Stoltz .... Sgt. Danny Daly, Radioman / Tate Donovan .... 1st Lt. Luke Sinclair, Copilot / D.B. Sweeney .... Lt. Phil Lowenthal,Navigator / Billy Zane .... Lt. Val Kozlowski, Bombardier / Sean Astin .... Sgt. Richard "Rascal" Moore, Ball turret / Harry Connick Jr. .... Sgt. Clay Busby,Tailgunner / Reed Diamond (I) .... Sgt. Virgil "Virge the Virgin" Hoogesteger, Top turret / Courtney Gains .... Sgt. Eugene McVey, Left waist gunner / Neil Giuntoli .... Sgt. Jack Bocci, Right waist gunner / David Strathairn .... Col. Craig Harriman, Commanding Officer / John Lithgow .... Lt.Col. Bruce Derringer, Public relations officer リスニング;若者たちの興奮したやりとりが多いから、やや聞き取りにくい。 上へH O M E > 体験編 > 映画の世界 > コメント集(12) © 西田茂博 NISHIDA shigehiro |