映画の世界

コメント集(13)

  1. 前ページ
  2. The Accidental Tourist 偶然の旅行者
  3. Saving Private Ryan プライベート・ライアン
  4. Forrest Gump フォレストガンプ・一期一会
  5. Le Grand Jeu 外人部隊
  6. Barry Lyndon バリー・リンドン
  7. Dr. Dolittle ドクター・ドリトル
  8. Le Mari de la coiffeuse 髪結いの亭主
  9. 野菊の如き君なりき
  10. 風の又三郎
  11. お嬢さん乾杯
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今年見た映画(2001年)

The Accidental Tourist 偶然の旅行者 06/17/01 (再)2008/03/31

The Accidental Tourist主人公のメーコンは、「偶然の旅行者」というタイトルのビジネスマン向けのガイドブックを書くのが仕事だ。なかなか人気があって、多くの人に知られ、次々と各地の続編を出している。

メーコンと二人の兄、妹のローズは几帳面で社交嫌いである。それでも妻のサラと子供の3人でそれなりに幸せな家庭を築いてきていた。

だが、妻との間にできた一粒種の男の子イーサンを、強盗の発射した銃に撃たれて失って以来、夫婦の間はぎくしゃくして、この悲劇から二人とも抜け出せないでいた。

サラは、その気まずい雰囲気に我慢できず、別居と離婚を言い出し、家から出て行く。ひとり残されたメーコンは、一匹の犬と共に家で暮らし始めるが、取材旅行の時は犬を同伴するわけにはいかない。

ちょうど通りかかったところに犬のホテルがあり、急遽そこに預けてもらう。店の訓練士、ミュリエルは一風変わった女で、メーコンを誘ったり、食事に招待したり、およそ受け身なところがない。

ちょうど愛犬がかみついたりしてしつけが良くないことが問題になっていた矢先、ミュリエルに犬の訓練を依頼する。彼女の手にかかると愛犬はすっかり従順になってしまうのだった。二人は急速に親しくなる。

The Accidental Touristだが、最大の転機はメーコンが息子の死のことを告げたときに、ミュリエルが心からそれを受け入れて悩みを分かち合う態度を示してくれたことだった。それまで後悔や不眠に悩んでいたメーコンを彼女は優しく包んでくれた。

ミュリエルは、前の夫との結婚に破れ、アレクサンダーというアレルギー症の息子を抱えてスラム街に暮らしていたが、まわりに住む人々は親切で明るく、彼女の屈託ない生き方とぴったり合っていた。二人は同棲を始める。

やがてサラがよりを戻そうと帰ってくる。サラとミュリエルの間に揺れ動くメーコンだったが、「普通の女」であり、サラの夫としての自分の存在意義をどうしても見いだせないメーコンは、パリの取材旅行まで自分を追ってきたミュリエルのもとに帰る決心をする。ミュリエルの前では自分が彼女と「かかわっている」という感じを強く持つことができたのだ。

息子の死によって、サラとの間にあった亀裂が表に現れ、息子とい”うかすがい”なしには、サラにとって自分は、ほかの男が取って代われる、無意味な存在だと感じるのだ。女というものはいったん結婚すると、関心は子供や生活だけに向かうのか?

なお、ミュリエル役の Geena Davis は「テルマとルイーズ」のテルマ役でも同じようにひょうきんで変わった女を演じている。どちらでも普通の女の生き方をはずれているという点で、はまり役だ。(1988年)

Directed by Lawrence Kasdan Writing credits (WGA) Anne Tyler (book) Frank Galati Cast: William Hurt .... Macon / Kathleen Turner .... Sarah / Geena Davis .... Muriel / Amy Wright .... Rose リスニング:セリフが非常に多い。メーコンは文筆業だから、話し方が端正だ。

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Saving Private Ryan プライベート・ライアン  06/23/01

Saving Private Ryan第2次世界大戦後期、ノルマンジー上陸作戦は、海岸で待ち受けるドイツ軍を前に、連合軍は多大な犠牲を払いつつ遂行されていた。映画はその肉弾戦の模様を生々しく伝える。そして最前線のドイツ軍陣地を勝ち取った者たちの中に、中隊長のミラー大尉がいた。

オクラホマの片田舎にあるのライアン家の出征した4人兄弟のうち、何と3人までが、世界各地の戦場で戦死した。軍の幹部は、もし4人目が戦死したら、母親にとってあまりに酷だと思い、末っ子の一兵卒( Private )、リチャード・ライアンを救い出し( Saving )、本国に送還する任務をミラー大尉に命ずる。

大尉は、独仏語に堪能な兵士を含む、6名ほどの部下を引き連れて、フランスの奥へとライアンを探しに出かける。だが、なかなか見つからない。途中にはドイツ軍の基地があり、廃墟には狙撃兵が潜み、ひとり、ふたりと部下を失ってゆく。

だが、高校の作文教師で、左手のふるえに悩みながらも、ミラー大尉の責任ある指導力と、最後まで任務をやり遂げようとする決意の強さが、部下たちを励まし、ついに野原の真ん中で、装甲車攻撃を仕掛けていた兵士の中に、ライアンを発見する。

だが、ここは敵のまっただ中。川にかかる橋を目指してドイツ軍の戦車ががれきの中をやってくる。少ない弾薬、減ってゆく部下たち、足がすくんで動かない新兵など、困難な状況の下で、大尉は奮闘する。

だが、大尉も撃たれ、全員全滅の危機に瀕したとき、空軍の援護が間に合い、かろうじてドイツ軍を追い払う。幸い無傷で済んだライアンの前で、大尉は全力を尽くして一生を過ごすようにと言い残して死ぬ。

時代は現代へと移り、年老いたライアンは、何千本もの戦死者たちの十字架の並ぶ中、ジョン大尉の墓の前で、自分がここまで生きてきたことを報告するのだった。

かつてアメリカから輸入された、テレビ番組に「コンバット」があり、その中のサンダース軍曹に、このミラー大尉は似ていなくもない。ただ、これは連続ドラマだったからサンダース軍曹は「不死身」だったが。

映画のところどころには、捕虜を殺してはならないとする国際法上の言い争いや、捕虜になったドイツ兵の前で、オレはユダヤ人だから殺して見ろといったりする場面や、瀕死の重傷を負った兵士が死にたくないと叫びながら死んでゆく場面が挿入されている。また、戦場のすさまじい場面は、生きるか死ぬかはただ運のみにかかっていることを知らせている。(1998年)

Directed by Steven Spielberg / Writing credits (WGA) Robert Rodat (written by) Cast: Tom Hanks .... Captain John H. Miller / Tom Sizemore .... Sergeant Michael Horvath / Edward Burns (I) .... Private Richard Reiben / Barry Pepper .... Private Daniel Jackson / Adam Goldberg .... Private Stanley Mellish / Vin Diesel .... Private Adrian Caparzo / Giovanni Ribisi .... T/4 Medic Corporal Irwin Wade / Jeremy Davies .... Corporal Timothy E. Upham / Matt Damon .... Private James Francis Ryan リスニング;兵卒同士の会話は、スラングや隠語などが多くわかりにくいが、作戦の指示などは明瞭である。

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Forrest Gump フォレストガンプ・一期一会 07/01/01

Forrest Gump主人公のフォレストガンプは本当に知能が低いのだろうか。信じがたい。こんなに目一杯人生を生きた人は少ない。ただ、日本語のサブタイトル「一期一会」はたしかに全編をつらぬいているテーマなのだろう。4人の忘れがたい人々がいる。

いじめられた小学生時代から、成功して金持ちになるまでフォレストの精神的支えになり、「チョコレートと同じで、人生は食べてみなければわからない」という名言を聞かせた彼の母親。

初めてスクールバスに乗った日に、隣の席に座らせてくれ、高校生まで「豆と人参」の親密な仲で過ごし、卒業後は、生き方が違うために、何度か再会したがそのたびに別れ、フォレストの子供を身ごもったが、彼との結婚間もなく、奇病のために死んでしまったジェニー。

ベトナム従軍の時のタイラー中隊長。フォレストがナパーム弾爆撃から救い出したが、両足を切断され、救われたことを長いこと恨んでいたが、フォレストの始めたエビ漁のビジネスで航海士となって成功し、フォレストのおかげで人生の生きる意味を見つけることができた。

陸軍入隊時からの親友となった黒人のババ。生まれ故郷のエビ漁を四六時中夢見て、エビ取り船の船長になり、フォレストにもビジネス・パートナーになることを望んでいたが、ベトナムでの戦闘中に命を落とした。でも彼のアイディアはフォレストによって受け継がれたのだ。

全体の3分の1は、フォレストがジェニーに再会しに出かけた町のバス停留所で待つ乗客たちに、思い出を話して聞かせる形で進む。乗客たちは、ベトナムでの活躍や、卓球での大活躍、歴代大統領との会見、マラソンでの大陸横断など、フォレストの有名人ぶりをホラ話と思ったことだろう。

人生が進行するというテーマだけで進められた回想中心の1代記の映画といえば、「フライド・グリーン・トマト」とか、「ガープの世界」が思い出される。何事にもトロくて、欲のないフォレストも、さまざまな荒波を越えて、ジェニーの残した一粒種をスクールバスの停留所まで見送るところでこの話は終わる。

Directed by Robert Zemeckis Writing credits (WGA) Winston Groom (novel) Eric Roth Cast : Tom Hanks .... Forrest Gump Robin Wright .... Jenny Curran / Gary Sinise .... Lieutenant Daniel Taylor / Hanna R. Hall .... Young Jenny Curran / Mykelti Williamson .... Benjamin "Bubba" Bufford-Blue / Sally Field .... Mrs. Gump リスニング;主人公はゆっくりしたしゃべり方をするし、まわりの人々も軍隊場面を除いて、だいたい聞き取りやすい。

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Le Grand Jeu 外人部隊 07/10/01

Le Grand Jew原題は「大いなる賭」である。北アフリカあたりに駐留するフランスの外人部隊だったので、このような邦名がついたのだろう。

フランスは人口が少なく、外国から傭兵を大勢入れていたのでこのような軍隊が昔からあった。ただし、フランス国内であぶれた、この物語の主人公ピエールのような人間が、負債を返すためとか、過去を帳消しにするために、敢えて志願する場合もある。

ピエールは派手な遊び人で、フローレンスという恋人とともに、豪遊していたが、投資に大失敗し一族から尻拭いをしてもらう代わりに国外に出るように命令される。

フローレンスが贅沢好きであることを知っていたピエールは、彼女を棄てて、北アフリカの外人部隊に応募することにした。つらい戦闘が続いたが、彼は有能で軍曹への道も開け、勲章の数も増えていった。

部隊は長距離の移動のあと、ニコラスという女将の経営するホテルにしばらく滞在することになった。ニコラスにトランプ占いをしてもらうと、女性に出会い、ある男を殺すなど、数奇な運命をたどるらしい。

予想通り、バルセロナから流れてきた女、イルマにピエールはすっかり惚れ込んでしまう。フローレンスとはうって代わって暗い女で、過去に自殺をしかけたような女なのだが、二人は何となく一緒に暮らすようになる。

このまま傭兵の仕事をしつつ、ピエールはここに居着くように思われた。だが、ニコラスの夫が劣情を起こし、イルマに襲いかかったところをピエールに見つかり、もみ合ううちに2階の腐った欄干から落ちて死んでしまう。

ニコラスが一計を図って、ピエールはとがめられずに済んだが、トランプの占いは見事的中したのだった。そのあと何とフランス本国の伯父が死んで、ピエールは遺産を貰えることになってしまった。

これで過去の負債の清算もできるし、フランスに戻ってまともな暮らしができると、イルマとマルセーユに帰るために船の切符を2枚買う。だが、何という運命だろう!切符を買った帰り道、北アフリカに来ていたフローレンスに街中でばったり出会ってしまう。

未練があったピエールは、イルマだけひとり先にマルセーユに向かわせ、フローレンスによりを戻すように頼むが、体よく断られてしまう。女によって人生が変えられてゆく愚を悟ったピエールは再び外人部隊に入り、すべてを棄てて軍務に打ち込む決心をする。

だが、何とニコラスのところに立ち寄ったときに見たトランプは、スペードの死のカードがはっきりと出ていたのだった。ニコラスは、ピエールの運命を知って愕然とするところでこの映画は終わる。

遊び人から一転して外人部隊の英雄ピエールにとって、「大いなる賭」が打てる生活はより魅力的だったらしい。もはや女たちさえも彼をつなぎ止めることはなかった。そのせいもあってか、フローレンスとイルマはまったく違った性格ながら、同じ女優が演じているのである。似た舞台の映画に1930年の「モロッコ」があるが、結末はまるで逆だ。(1934年)

Directed by Jacques Feyder / Writing credits Jacques Feyder Charles Spaak Cast: Pierre Richard-Willm .... Pierre Martel / Marie Bell .... Florence/Irma / Georges Pitoeff .... Nicolas リスニング;わかりよい、フランス語

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Barry Lyndon バリー・リンドン 07/16/01

Barry Lyndonイギリスは18世紀、ジョージ3世の治世の時代、アイルランドに生まれたバリーは、父親を決闘でなくし、母親の手一つで育った。決闘は彼の一生にもついてまわることになる。

初恋の人ノラは従姉妹だったが、彼女にもてあそばれ、やがて彼女が貧しさから逃れるために軍人との結婚を目指すようになると、裏切られた腹いせからバリーは、何とか彼女の結婚を阻止しようとする。

だが親族の計略に引っかかり、決闘で彼女の結婚相手を殺したと思いこまされたバリーは、首都ダブリンへ体よく追い出されてしまう。しかも途中で追い剥ぎにあって旅の金もすっかり取られてしまった。

だがちょうどこの時期はフランスとイギリスの覇権を巡って7年戦争が行われているさなかだったのだ。イギリス軍は兵士をかき集めるのに必死で、文無しバリーも軍隊に加わりドイツへと赴いた。

イギリス軍の待遇が良くないことで脱走を試みたが、途中で出会ったプロシア軍に見破られ、結局もっと条件の悪いもとで勤務させられる羽目になってしまった。だが、彼の勇敢さと強さは、たちまち軍隊の中での頭角を現わす。

戦闘中に上官を救ったために戦後、警察に紹介してもらい、スパイを監視する役目をもらったが、その監視する相手が同じアイルランド人だったことから、意気投合し二人でプロシアをまんまと抜け出してヨーロッパ各国の宮廷で、賭博師としての暮らしを始める。

バリーはこうして財産はたまっていったが、上流社会に加わりたくて仕方がない。そこで病気で死にかけた老齢のリンドン郷を夫に持つ美しい女に目を付けて、うまく取り込んでしまう。賭博場で彼女がバリーに見つめられて、次第に心引かれてゆく様が、まなざしの動きだけで表現されるシーンは驚嘆に値する。

リンドン郷の死後、バリーは彼女と結婚し、イングランドに戻って優雅な生活を楽しむが、リンドン郷から生まれた息子のラッドはバリーをひどく憎み、ついに家を出てしまう。また貴族の称号を得るための出費によってリンドン家はどんどん借金漬けになってゆく。

悪いことは続くもので、自分と妻の間にできた幼い息子は落馬して死んでしまい、妻は半狂乱の状態の中、ラッドが戻ってきてバリーに決闘を申し込む。バリーは命は助かったものの、足を打ち抜かれ、切断されることになる。

年金を貰えるという条件で、イングランドを去り、アイルランドに戻る条件を突きつけられたバリーは、妻をおいて、母親と共に失意のうちに故郷に戻る。ラッドは再びリンドン家に帰って家を継いだのだった。

バッハを中心としたバロック音楽が全編を通じて流れる中、今まであまり知られていなかった、アメリカ独立戦争が起こる少し前のヨーロッパの上流社会の事情が、バリーを中心として展開する。バリーの数奇な運命は、ヨーロッパの社会でもみくちゃにされ、上流社会へ入り込みたいという願望はあえなく潰え去る。(1975年)

Directed by Stanley Kubrick / Writing credits William Makepeace Thackeray (novel) Stanley Kubrick Cast : Ryan O'Neal .... Barry Lyndon/Redmond Barry / Marisa Berenson .... Lady Lyndon / Patrick Magee (I) .... The Chevalier de Balibari / Hardy Kruger .... Captain Potzdorf / Steven Berkoff .... Lord Ludd / Gay Hamilton .... Nora Brady / Marie Kean .... Barry's Mother リスニング;全編を通じて話されるナレーションは実にゆっくりで聞き取りやすい。また登場人物たちの英語も、ドイツから来た人間が多いせいもあって、あまりイギリス式アクセントが前面に出ることもない。

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Dr. Dolittle ドクター・ドリトル 07/22/01

Dr.Dolittleイギリスのヒュー・ロフティングが第1次世界大戦に従軍中、自分の子供に向けて出した手紙から生まれた「ドリトル先生物語」を読んだことのある人は、この映画を見てびっくりするだろう。

独身で太り気味のイギリス紳士であるドリトル先生は、イギリスの田舎町に住んでいる町医者だ。これに対し、エディー・マーフィ演じるドリトル先生はサンフランシスコの診療所に勤める医者で、大手の病院との合併話に巻き込まれている。正にアメリカナイズされている。

妻も、ふたりの娘もいる。原作のようにオームからではなく、生まれつき動物と話をする才能に恵まれているのだ。ふと野良犬を助けたことから、至る所から動物の「患者」たちが押し寄せてきた。その中には得体の知れない頭痛に悩まされている自殺志願のトラもいる。

ドリトル先生はそのトラを自分の病院の中に入れて手術をしようとしたからさあ大変。一時大騒ぎになるが、妻をはじめとして周りの人の理解を得て、人間と動物の両方の医者になることになる。合併話もうまくまとまった。

コンピュータ・グラフィックスの助けを借りて、動物たちは口を動かして言葉を(英語を)しゃべる。この動きが好評で、第2作はもっとこれに改良を加えて登場するそうだ。

原作にあるような、人間活動に対する批判主義や、自然破壊に対する警告のようなものは一切なく、アメリカ流のエンタテインメントに仕上げられている。(1998年)

Directed by Betty Thomas (I) Writing credits (WGA) Hugh Lofting (stories) Nat Mauldin  Cast: Eddie Murphy .... Dr. John Dolittle / Ossie Davis .... Archer Dolittle / Oliver Platt .... Dr. Mark Weller / Peter Boyle .... Calloway / Richard Schiff .... Dr. Gene Reiss / Kristen Wilson (I) .... Lisa Dolittle / Jeffrey Tambor .... Dr. Fish / Kyla Pratt (II) .... Maya Dolittle / Raven-Symone .... Charisse Dolittle  リスニング;典型的な口語英語だから、聞き取りにくい。ただし動物たちの声は別だ。

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Le Mari de la coiffeuse 髪結いの亭主 08/02/01 (再)2013/04/08 (再)2021/01/21

Le mari de la coiffeuseいかにもフランスらしい映画だ。主人公のアントワーヌは、少年時代から髪結いにあこがれていた。しょっちゅう理髪店に通いつめ、その太った女の体臭や、ふくよかな乳房が鋏を持つたびに自分の頭に触れるのを楽しみにしていたのだった。

幼い彼は、いずれはこの髪結いと結婚しようと心に決めるが、ある日この女は鎮静剤を飲みすぎて、突然死んでしまう。だから、その願いを心に抱いたまま、大人になり、ある日町を歩いていると、一人で理髪店をしている若い女にめぐり合ったのだった。

彼女の名はマチルダといい,客として髪を切った後、プロポーズをすると2回目に訪れたとき、不思議にも彼女は承諾してくれた。彼女は孤独な女で、謎に満ちている。最初の出会いでは、予約客があるから30分待ってくれといったが、それはうそだった。

二人は結婚し、アントワーヌはマチルダが仕事をしている間、にこにこしながらそばに座って見守っている。客の話もいっしょに聞いてやり、相談にものってやる。むずかる子供が来たときには、得意のアラビア風ダンスを踊って見せて妻の仕事をやりやすくする。映画全編に流れる中東風の音楽は不思議な雰囲気を醸し出していて、マチルダにぴったりだ。

思いがかなったアントワーヌは、ひたすらマチルダを愛し、二人は客の来ないときは常に抱き合うのだった。二人の間には子供もいらない。ただひたすらいっしょにいられれば、旅に出たりどこかに出かけたりする必要もなかった。

だが、このような幸福の絶頂のいたとき、ある雷雨の降りしきる晩、、マチルダは突然店を出て近くの池に身を投じて自殺する。彼女にとって今があればそれでよかった。将来アントワーヌが自分に飽きて捨てることは耐えられないこと。それよりも最も愛の高まった今このときに命を絶ったほうがよいと思ったのだった。

世の中の恋人たちは、「君との愛は永遠だ」ということをよく口にする。そんなことはありえず、単なる”誇張”に過ぎないことがわかっているのに。「無常」をよくわかっているマチルダのような生き方に比べると、世間の恋人たちは軽薄だと思う人もいるだろう。

残されたアントワーヌは、何も知らない客とともに、お気に入りのアラビア風の音楽をかけたりクロスワードパズルを解いたりしながら、くるはずのないマチルダを待つ。いつまでも。髪結いにほれ込んだ男と、それに答える妻の純愛物語だ。シンプルそのもの。だがこれはすべてアントワーヌの夢想の世界だったのかもしれない。(1990年)・・・資料外部リンク

Directed by Patrice Leconte Writing credits Claude Klotz Patrice Leconte Cast: Jean Rochefort .... Antoine Anna Galiena .... Mathilde  リスニング:フランス語。客の話など、かなり早口で、聞き取りが難しい。

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野菊の如き君なりき 09/26/01

野菊の如き君なりきひとりの老人が、川船に乗ってある村へ向かう。そこには野菊の咲き乱れる墓地があるが、老人はじっと若き日の思い出に耽るのだ。それは、遙か昔、自分が(旧制)中学へ進学する頃の、悲しい青春の思い出だった。

彼(政夫)は富農の家に生まれたが、小さい頃から乳を分け合った、そこで働く、タミ(民)という女の子と幼なじみであった。民の方が2つほど年上であったが、二人は仲良く成長し、17歳と15歳の頃、淡い恋が芽生えていた。

だが、農村に働く人たちの嫉妬心や噂好きは、二人の思いを押しつぶす。政夫が中学へ進むために家を出るとなると、まわりの人々はよってたかって、民を無理矢理お嫁に行かせてしまう。

だが、民は政夫への思いを振りきれなかった。二人で遠くへ使いに出されたとき、民は野菊、政夫はリンドウのようだとお互いに名付け合ったその思い出は、お嫁に行っても、中学へ行っても消えることはなかったのだ。

失意のうちの結婚生活の中で、民は流産し、実家へ返される。だが生きる気力を失った民は、リンドウの花と政夫からの手紙を握りしめつつ、死んでゆくのだった。

そして今、70歳を過ぎた政夫は、若かりし日を追想しつつ、民の墓を参るのだった。それは彼の人生では決して忘れ去ることのできない青春の大切な思い出だったのだ。(1955年・松竹)

監督;木下恵介 原作:伊藤左千夫 脚本;木下恵介 出演;有田紀子・田中晋二・田村高廣・杉村春子・笠智衆

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風の又三郎 10/11/01

風の又三郎宮沢賢治の作品が、岩手県遠野市や花巻市周辺を中心に撮影した映画によって新しく生まれ変わった。<文部省特選>とあるが、時にはいい映画を推薦してくれるものだ。

ヒロインのかりんは幼い頃に父親を失い、胸を病む母親と二人暮らし。父親の実家ではしきりに母親の療養所への入所を勧めるが、母娘とも互いに離れたがらない。

そこへ、三郎という少年が、モリブデン鉱を捜している父親とともに村の分校に転校してきた。彼がいるとなぜか風が起こるのだ。

かりんはその前の晩、木の枝から飛んでゆく少年を見ているし、村では210日から220日の間に、「風の又三郎」が風をおこしにやって来るという伝説がある。

かりんはてっきり、この少年が「風の又三郎」だと思いこむ。村の少年たちもはじめのうちはなかなかうち解けなかったが次第に親しい関係ができてゆく。

かりんは自分が小さい頃に、猟銃を持った父親の不注意から、片耳がよく聞こえなくなって以来、木の実や風の音に耳をすませるようになっていたが、三郎にもそのことが伝わると感じる。

彼のうちへ遊びに行くと、そこは風車の付属している、2階が吹き抜けになった小屋で、実験道具がたくさん並んでいた。三郎の父親がかりんの父の形見である動かなくなった時計を元通りになおしてくれた。

ある日みんなで牧場へ行って馬に乗りに行く。村の少年が、不注意から馬を囲いから逃がしてしまい、いつの間にか山の中に迷ってしまう。だが少年が野宿して朝、目をさますころ、大きな木の梢に「又三郎」が座っていたのだ。

やはり、三郎は本物の「風の又三郎」であることがはっきりする。だが、220日がやってくると突然三郎は転校していってしまった。かりんは彼の家をたずねるが、小屋の中には草が生い茂り、なおしてもらったはずの時計は再び止まっていた。

場面に登場する山や川は、むかし見たことのあるような懐かしい風景だ。そして山の中をさまようと、山の中に精霊やらお化けやら、いろんなものがうごめいている世界が見えてくる。かりんが「ど、ど、ど、ど、ど」と始まる歌を歌うと、又三郎が風を起こしてくれるのだ。(1989年・ポニー)

原作;宮沢賢治 監督;伊藤俊也 脚本;筒井ともみ、伊藤俊也 音楽;富田勲 出演;早勢美里 小林悠 檀ふみ 樹木希林 草刈正雄 

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お嬢さん乾杯!お嬢さん乾杯 10/26/01

終戦間もない頃で、みんなが再生の熱意に燃えていた頃、主人公で独身の圭三も、自動車製造販売に将来性を見つけ、浮浪少年から救った弟分と二人で安アパートに住んでいる。

弟分は、すでに思いを入れ結婚する気になっている恋人がいるが、圭三はその女が気に入らないと言って、ふたりの結婚を許さない。そのくせ自分は女っ気なしで、32歳になってしまった。

そこへお節介な友人がお見合い写真を持ち込んで、むりやりに二人が会うように段取りをつけてしまう。その写真に写っているのは絶世の美女で圭三はすっかり惚れ込んでしまう。

ところが、世の中にそんなうまい話はないわけで、お嬢さんは、家を抵当に取られ、家族が明日にでも路頭に迷いかねない、落ちぶれた元華族だった。圭三のような成金が現れて、家の財政を救ってくれるのを待っていたのだ。

なお悪いことに、彼女には心を許した婚約者がいたのだが、結婚直前になって死んでしまい、その思い出が、彼女の心をまだ占めている。振り払い新しい生活を目指そうとしているのだが、なかなかうまくいかないのだ。

しかも圭三ののように、新興成金には、華族のお上品さがどうしても合わない。ショパンのレコードを買ってみたり、彼女のためにピアノを買って誕生日に送ったりするのだが、お嬢さんが心から自分に惚れ込んでくれるわけがないと次第に思いこみ始める。

せっかくの婚約記念パーティを開こうというところまでいったのに、圭三は一通の置き手紙を残して田舎に向かう。それまであまりに控えめで、自分の思いもしっかりと圭三に伝えることができなかったお嬢さんは、彼に惚れていることをはっきり示す必要に気づいて、彼が乗ろうとしている3時の汽車に向かって走り出す。

甘っちょろいハリウッド映画と違って、最後はハッピィエンドにはならない。3時の汽車に追いついたか、それとも二人は永遠に別れてしまったかは、観客が決めるのだ。(1949年)

監督:木下惠介 脚本:新藤兼人 出演:佐野周二/原 節子/佐田啓二/東山千栄子/坂本 武

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

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