コメント集(14) |
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今年見た映画(2001年) 学校Ⅱ A Class to Remember 2 11/10/2001 北海道のある養護学校に新入生が入ってきた。サラリーマンから転進してこの仕事に移ってきた先生は、女の先生や、入ってきたばかりの新米の先生と共に、これからの3年間、これらの子供たちを引き受けることになる。 小学生まではあんなにおしゃべりだったのに、中学校に入ってまったく口を利かなくなったユウジは、障害を持ちながらも、自分の置かれている状態が分かっているために、なおさら落ち込んでいた。 だが、先生たちの手にも負えない弟分の少年が、自分のいうことを聞き、面倒を見てやっているうちに、次第に自信を取り戻して口もきくことができるようになってゆく。そしてついには作文コンクールに入選までしてみせるのだ。 だが、卒業が近づいて、クリーニング会社に実習生として働くうち、自分が職場に適応できそうもないと思いこんで、再び落ち込んだ状態になってしまう。先生に慰められても、もっと重症の弟分は「自分がバカだとわからないから幸せだ」とつぶやく。 アムロファンである彼は、弟分をつれて旭川まで無断でコンサートに出かける。たっぷりとあこがれの歌手の歌を楽しんだあと、養護学校の先輩が勤めるホテルへ行き、温泉に入れてもらい、仕事の苦しさや悩みを聞くのだった。 あてもない彼は、弟分は学校に戻して自分だけはどこかへいってしまいたいと願うが、弟分は決して彼のそばを離れてくれない。先生たちは彼らの行方を追って必死に探し回るが、層雲峡近くの雪原で見たのは、何と二人が熱気球に乗って自分たちの真上をふわふわと通り過ぎて行くときだった! コンサート、温泉、熱気球と素晴らしい体験をしたユウジは、すっかり元気を取り戻して卒業式に臨んだ。彼の前にはまだ分からないが、何か突き進んで活けそうな未来が見えてきたのだ。(1996年・松竹) 監督:山田洋次 脚本:山田洋次、朝間義隆 出演:西田敏行/吉岡秀隆/中村富十郎/いしだあゆみ/永瀬正敏 (再) 2020/04/07 留萌の養護学校に入学したばかりのタカシとユウヤ。担任の竜先生、新米の小林先生、あくまで優しい北川先生らを困らせるが、ある時から二人は子弟のように仲良くなり、先生たちは、彼らから多くのことを学ぶ。 3年後の卒業が近づいてきた。タカシはあるクリーニング会社に勤めてみるが、うまくいかず戻ってくる。そのあとタカシとユウヤは忽然と姿を消してしまう。先生方は大慌てで探しまわるが、旭川に向かったということ以外、どこに行ったのか見当がつかない。そのとき生徒の部屋に張ってあった安室奈美恵のポスターを思い出した。 二人はコンサートを楽しんだ後、先輩の働くホテルに転がり込んで、その部屋に泊めてもらい、翌朝当てもなく雪原に向かおうとしたところ、熱気球をあげるグループに拾われ、最後には乗せてもらう。二人を追跡する先生たちが、雪だまりに突っ込んだ時、真上から二人の歓声が聞こえてきた…➡資料 上へ白い馬 11/15/2001 実にすがすがしい映画というものがあるものだ。モンゴルの大草原を舞台とした一家の物語。出演者はみなモンゴル人で、椎名誠監督だが、「日本語吹き替え版」となっている。 少年ナランは、兄3人、姉1人、妹1人にはさまれて、まだ小学生だが、馬に乗るのがうまい。彼と同じ日に生まれた白馬が自慢だ。寄宿舎生活から夏休みに、両親の住むパオに戻ってきた来たその日から、馬にまたがって大草原を突っ走る。 すぐ上の兄は重病で寝たきりだ。一番上の兄がひまさえあれば、いつも本を読んでやっている。父親は、家畜扱いのベテランで、ナランは自分も大きくなったら父のようになりたいと尊敬している。母親は一家の食事作りに忙しい。 おじいさんとおばあさんも一緒に暮らしているから、子供たちが町の寄宿舎から戻ると、大家族になって実に賑やかだ。家畜の世話のためにみんなで協力して働く。馬乳酒を作ったり、町へ買い物へ出かけたり、住居の移動、発電器の取り付けと、一家は毎日を忙しく暮らしている。 草原で馬頭琴を奏でるおじいさんのところでナランは、白馬の物語を聞く。せっかくレースに優勝したのに王様に横取りされ、白馬は飼い主の元へ逃走するが、王様の家来に矢を放たれて傷つき、飼い主の手に抱かれたところで絶命する悲しい話だ。 寝たきりの兄が死んでしまう。ナランは、白馬にまたがって、まだ小さいのに、町のレース、ナーダムに出場する。うっかりムチを落としてしまい、勝つことはできなかったが、夏休みが終わって寄宿舎に帰る日、来年またこの馬といっしょにレースに出ると誓うのだった。(1995年・ホネ・フィルム) 製作=黒木利夫・岩切靖治 監督=椎名誠 脚本=岸田理生・山上梨香・椎名誠 上へDeux Hommes Dans La Ville 暗黒街のふたり 11/22/2001 保護司というのは、つらい仕事だ。監獄に入れられてから、出所したあとまで、罪を犯したものの更正の面倒を見る仕事だが、刑務所や警察や裁判所、一般住民の板挟みになりながら、前科のある者を見守ってゆかなければならない。 ジャンギャバン演じるジェルマンもその1人だ。銀行強盗で10年間刑務所にいて出所したばかりの、アランドロン演じるジーノの今後のことを心配している。 だが、田舎町に印刷工の仕事を得、ジーノはまじめに更正を始めた。前の仲間たちとも縁を切り、妻とふたりでやり直そうという気持ちでいた。だが、何という運命だろう。暴走車を避けようとしてジーノの車は大破し、同乗した妻は死んでしまう。 落ち込むジーノに、ジェルマンとその家族は一生懸命慰める。そのかいあって次第にジーノは元気を取り戻し、恋人も新たに作るのだった。そして印刷所の親父も、まじめに働くジーノを自分の息子のように扱ってくれた。 だがこの田舎町に、かつて銀行強盗を働いたときにジーノを逮捕した刑事が転勤していていた。彼は一切、ジーノの更正ぶりを信じない。いつかすぐにまた、悪事を始めるだろうと確信し、あまりにも苛酷な身辺調査を行った。 ジェルマンの抗議もむなしく、刑事はジーノを拘束したり、仲間とのつきあいを暴こうと、恋人や印刷所の親父にまで嫌がらせに近い捜査を強行する。そしてある日、ジーノの恋人を使って仲間との関係を脅して言わせようとしたところを、ジーノは発見してその怒りは爆発する。 気が付くと、刑事はジーノに首を絞められてこと切れていた。刑事の汚いやり方が、このような事件を引き起こしたわけだが、フランスの裁判所では前科者の再犯には、容赦しない。一切の情状酌量は拒否されて、ジーノはむなしくギロチンの露と消えた。 かたくなな法制度、居眠りする陪審員、審理中にいたずら書きをしてヒマを持て余す裁判官、頻発する囚人たちの暴動、とジーノにとっては不利な条件が重なった末の運命の結末だったのだ。年老いたジェルマンは、やりきれない思いで処刑場を出る。(1973年・NHKエンタープライズ) Directed byJose Giovanni / Writing credits Gianfranco Clerici (dialogue adaptation: Italian version) Jose Giovanni / Cast overview, first billed only: Alain Delon .... Gino Strabliggi ; Jean Gabin .... Germain Cazeneuve : Mimsy Farmer .... Lucie : Michel Bouquet .... Commissaire Goitreau ; Ilaria Occhini .... Sophie : Victor Lanoux .... Marcel リスニング:フランス語 上へSome Like It Hot お熱いのがお好き 8/96 (再)12/4/2001 (再)2017/11/07 1929年といえば、世界大恐慌が始まった年。二人の売れないミュージシャン、ジョーとジェリーは、禁酒法のもとのシカゴで、それぞれベースとサックスの担当だが、雇い主が警察の手入れを受けてあえなく失業してしまった。 何とか職にありつこうと散々探し回るが、一向にチャンスがない。しかも猛吹雪。そこにフロリダで女ばかりのバンドが楽員を募集していることを聞きつける。 しかも南部シカゴのボスが、抗争相手を射殺するところに居合わせてしまい、目撃した二人はギャングどもの追跡も、うけることになる。 二人は女装することを思いつき、何とかその楽団の中に紛れ込んでしまう。マイアミに向かう夜行列車の中で、すっかりほかの楽団員と仲良くなり、女たちの下着姿が見られるので二人は大喜び。 そのころジャズが流行ってきたので、それまでのおとなしい曲よりも、「Hot なスイング」ということで、この映画のタイトルがつけられたらしい。「恋に燃えている」という意味と掛け合わせているようだ。 楽団員の中に、入団したばかりの実にかわいい、モンロー演じるシュガー・ケーン(さとうきびの意味)がいて、二人は彼女に一目惚れ。マイアミに着いてからは、ジェリーが、シェル石油の御曹司に化けて、シュガーをその気にさせてしまう。一方で、ジョーにほれ込んでしまった大金持ちのおじいさんのヨットを、まんまと借りて二人のデートの場所に利用する。 そのころマフィアの一団は、楽団の滞在するホテルに集まって会合を開こうとしていた。二人はすぐに見つけられ、追われる身となる。ところが、宴会場のテーブルの下にもぐりこんでいると、なんと南部シカゴのボスとその部下たちが、マフィア全体の会長の陰謀で、体を機関銃で蜂の巣にされてしまう。 会長の演説は、「南部ボスを尊敬する人もいる( Some.... )、だが嫌っている人もいる( Some.... )」と回りくどい。このやたら Some を強調した言い方が、このタイトルになったのかもしれない。 二人はほうほうのていで、あのお人よしのおじいさんに救われる。シュガーは、ジュリーがだましていたこともすんなり許してくれ、二人はハッピーエンドに。 ドタバタ喜劇のように見えながら、実はとてもていねいに作られた作品。しかもモンローの魅力が最大限に発揮されるようにできている。(1959年)・・・ ➡資料 Directed by Billy Wilder Writing credits I.A.L. Diamond Billy Wilder Cast: Marilyn Monroe .... Sugar Kane / Tony Curtis ....Joe (Josephine)/Junior / Jack Lemmon .... Jerry (Daphne) リスニング:せりふが比較的シンプルだし、この時代のものは聞き取りやすい 上へ雪之丞変化 12/11/2001 中村雪之丞(ゆきのじょう)は、上方で大評判をとった女形だ。今回江戸に上って、師匠とともに舞台に上がっているが、ここでも大評判になっている。そのたち振る舞いはあくまでも女らしく、だがその男としての魅力も抜群で、多くの女たちを酔わせている。その中には、江戸のスリ仲間の姉御もいた。 だが、彼には暗い少年時代があった。まだ幼い頃、長崎に両親と暮らしていたのだが、父親が、悪徳商人や役人の手にかかって、えん罪の罪に問われ少年の目の前で首をつって死んだのだった。今彼は江戸の町で、その悪党たちが、金儲けをしたり大奥とのつながりを持って贅沢に暮らしているのを見る。 剣の手ほどきをしてくれた師匠のすすめもあって、忙しい公演のかたわら、彼はその敵討ちに乗り出す。だが、それぞれの悪党たちに近づいて剣でひと思いに殺すのは、現実的ではないし苦しみもだえて死んだ父親のためにも、彼らにも非業の死が訪れるように計画をたてる。 スリ仲間も協力してくれて、商人たちには、飢饉の迫る中で大儲けをしようと欲の皮を突っ張らせているところを狙い、互いのウソの情報を流して、仲間割れを起こさせる。浪路(なみじ)という将軍お気に入りの女が、雪之丞に恋をしてしまい、彼女を利用して敵討ちの対象であるその父親を陥れる。 商人たちは互いをつぶしあい、役人も自滅して、雪之丞の敵討ちは、公演の大成功とともに終了する。だが敵がみな死んだだけでなく、罪もない波路まで死なせてしまったことに、彼は深く傷つき、舞台の一座が上方へ戻ろうとするとき、彼はいずこへか姿を消してしまうのだった。(1963年・大映) 監督:市川崑 脚本:伊藤大輔 衣笠貞之助 シナリオ:和田夏十 配役:中村雪之丞・長谷川一夫 闇太郎・長谷川一夫 お初・山本富士子 浪路・若尾文子 昼太郎・市川雷蔵 島抜け法師・勝新太郎 上へバタアシ金魚 12/16/2001 カオルは、千葉市のモノレール沿線に住む高校生。オートバイにあこがれ、整備工のガールフレンドを持つ。ある日プールのそばを通るとき、バケツの水を頭からかぶってしまう。ところがその水泳部員、ソノコにカオルは一目惚れ。 まったくのカナヅチなのに、さっそく水泳部に入部。オリンピックを目指して猛訓練を始めるが、もともと才能がないから、まったく伸びない。しかもソノコはアプローチすればするほど、いやがって遠ざかってゆく。 せっかく母親とは仲良くなったのに、トレーニングに励めば励むほど、ソノコに嫌われてゆく。それどころか、ソノコは水泳部の有望選手に頼んで、恋人のふりをしてもらい、何とか遠ざける。 だが、その日からソノコはすっかりおかしくなってしまった。カオルがいなくなったのはいいが、精神が不安定になり、突然猛烈に食べ出したのだ。彼女はどんどん太り、過食症の一歩手前までゆく。学校も休み家の中に閉じこもってしまう。 自分の中のカオルに対する気持ちをどうしても素直に出せないから、ますます意固地になり、醜く太ったからだで(別の俳優が演じる)、決定的な別れをカオルに告げる。 だが、カオルからも本当にお別れだといわれたときから、ソノコは食べ癖を克服し、前のスマートな体に戻る。そして水泳プールの中で、二人はそれまで素直に出せなかった感情を思い切りぶつけ合うのだった。(1990年日本ビクター) 監督・脚本・松岡錠司 原作・望月峯太郎 出演:ソノコ・高岡早紀 カオル・筒井道隆 永井・東幹久 ババア・白川和子 上へ稲村ジェーン 12/25/2001 ビートルズ盛んなりし頃(昭和40年あたりか?)鎌倉、稲村ヶ崎で、先輩から頼まれて骨董屋をやっている青年ヒロシは、サーフィンがなによりも楽しみだ。この夏も毎日、仕事もそこそこにボードをオート三輪にくくりつけて、海にでている。19歳の頃に恋人からひどいふられ方をして以来、女性からは遠ざかり、あまり友達づきあいもしたがらない。 だが、かつての友人であったやくざが店に飛び込んできて、壺の行方を突き止めるのを手伝ってほしいと頼まれたときから、この夏は騒動の連続となる。横須賀のトルコからついてきた少女の波子、近くのラテン喫茶のマスターとラテン音楽をやる若者たち。床屋を営むおっかない男。そして骨董屋の主人であったが今は病気で山の上の病院で療養している先輩。 稲村ヶ崎に伝わる伝説によると、20年以上前に、いつもは平穏な海であるこの近辺でも、台風の引き起こす猛烈な大波が浜辺にうち寄せることがあったのだそうだ。そのときはお寺の龍の目が赤く光り、さまざまな前兆が現れたという。当時その大波に挑戦する若者が3人いた。まだだれもまともなボードを買えない時代のこと。3人はまた、稲村ジェーンと呼ばれる女の子に想いをよせる恋敵同士でもあったのだ。 壺を探したり、やくざたちに巻き込まれたり、ラテン音楽を満喫したり、「短かったけれど暑かった夏」が終わろうとする頃、南海に発生した台風が、こちらに向かって来るという。すべては伝説の再現になったのだ。ヒロシも波子と共に、店の片隅で見つけた龍の絵を描いた大きなボードを抱えて、豪雨の中で山に登って大波を見物しようとする。 だが誰もそんな大波はただ見つめるばかりで、こわくて乗りにいけない。そして今は中年となった、かつての3人の若者も、稲村ジェーンも、誰なのか今になってわかった。若者の一人は骨董屋の主人だったのだが、雷鳴と共に療養所で息絶える。そしてヒロシも今何かに向かって歩き出そうとするのだった。サザン・オールスターズが、ラテン音楽と、若者の希望への道や大波を歌った音楽を提供している。(1990年) 監督;桑田佳祐 脚本;康珍化 キャスト;加勢大周/金山一彦/的場浩司/清水美砂/尾美としのり/泉谷しげる 上へ今年見た映画(2002年) 東京日和 01/07/02 写真家は仕事がない。妻のヨーコは小さな商社に勤めている。ふたりの日常は、典型的な DINKS ( Double Income No Kids )のそれである。平凡な東京の閑静な住宅地の生活の中で、ふたりが新婚旅行をした、九州の柳川に再び訪れることを楽しみにしている仲である。 だが、妻は夫の注意を引くためなのか、夫の優しさに反抗したいのか、挙動が不安定である。3日もぷいと家を出たまま帰らない。近くの小学生を家に呼んで遊ばせ、自分を「おばあちゃん」と呼ばせる。 そのうち彼女は自分のまわりに蚊が飛んでいるように見える、「飛蚊症」の症状を見せるようになる。だが医者は心配いらないという。会社にはしばらく休んだのは、自分の夫が交通事故にあったためなどと、すぐにわかるうそをつく。 妻は、最後に子宮肉腫で短い命を終えるが、今になってみればさまざまな事件を起こして夫との生活を密度の高いものにしたかったのかもしれない。(フジテレビ1997年) 監督;竹中直人 出演;中山美穂/竹中直人/松たか子/浅野忠信/三浦友和/荒木経惟 上へThe Phantom of the Opera オペラ座の怪人 01/13/02 パリのオペラ座のオーケストラの指揮者サンドアは、エレーヌという美しい妻があり、彼女はオペラ界へのデビューに備えてリハーサルを繰り返していた。ところが、劇場の有力者の一人である男爵の誘いを断ったために怒りを買い、デビューの日にさんざんな酷評を受けて彼女は自殺に追いやられる。 復讐に燃えた夫サンドアは、エレーヌの演技について書いた批評家を訪ね、差し金が誰であるかを問いただすが、逆にピストルを突きつけられ、乱闘の末、その批評家を殺してしまう。だがもみ合った弾みに机の上にあった強酸がこぼれ、彼の顔面にまともにかかり焼けただれて、彼は二度とみられぬ怪人の顔となる。 それからは、彼は憎き男爵を復讐することを考える毎日となった。オペラ座の清掃人に助けられて、建物の下にある下水道の迷路のような中に彼は隠れ住んだ。彼が、暗闇の中から、オペラ座での人々をじっと見つめていることから、いつしか人々の間に、この建物には亡霊が住むといううわさが立つようになった。 そんなある日、ファウストの公演のために抜擢したベテランのプリマドンナのわがままぶりに腹を立てたイギリスからきた監督ハートネルは、代役のオーディションでマリアという若い娘を発見する。彼女はまるでエレーヌの生まれ変わりのように似ており、それを陰からみていたサンドアは彼女をデビューさせることで男爵への復讐をはかろうとする。 マリアにひそかに鍵を渡し、声楽のレッスンをする毎日が続いた。だがマリアは監督のハートネルと恋に落ち、怪人サンドアはこれを止めようとする。仮装舞踏会の日、仮面をかぶったサンドアはマリアに近づいて決してハートネルと会わぬように厳命する。その場から逃げ出したマリアは男爵と共に車に乗せられ、怪人の部下によって秘密の場所に運ばれる。 男爵は車の中で鳥についばまれて悲惨な死を遂げ、マリアはオペラ座地下の部屋に監禁される。亡霊のうわさを使用人たちから聞いた監督ハートネルは、調査の末、ついに隠れ家を見つけてマリアを救出する。すべてを暴かれて窮地に陥ったサンドアは、ファウスト公演の真っ最中に自分のぶら下がったシャンデリアの鎖を切ってマリアもいる観客の真上に真っ逆に落ちていったのだった。このテレビ版はとかく評判が悪い。どこが違うのか映画としてのほかの作品も見てみたいものだ。(1983年・テレビ版) Directed by Robert Markowitz : Writing credits Gaston Leroux (novel) Sherman Yellen / Cast; Jane Seymour .... Elena / Maria Gianelli Maximilian Schell .... Sandor Korvin = Phantom of the Opera / Jeremy Kemp .... Baron / Michael York .... Hartnell 上へぼんち 02/10/02 戦前の大阪、船場の問屋の中に、足袋を製造する老舗があった。代々続くその家系は、姑が隠然たる勢力を誇り、産まれてくる子供は男の子よりも、女の子が待ち望まれた。あとで優秀な婿を捜してきて経営を任せられるからだ。 だから、先代の婿養子から生まれた、ぼんぼんの喜久治 は、大した商売の才覚もなかったので、ひたすら女遊びを続けるのだった。だが、持ち前の優しさと女を引きつける顔つきのおかげで、もててもてて仕方がない。 最初の女房弘子は、自分の里で男の子を産んだためにしきたりに反したということで、子供は引き取ったが、彼女は離縁させられる。これもみな、姑と、喜久治 の母親の差し金によるものだった。 これに懲りた喜久治 は、結婚ははやめにして次々と妾をとることにする。ぽん太、幾子、比沙子、お福 と、公認の妾が増えてゆく。ちゃんと店からお手当が出るのだ。 芸者のぽん太が、正式の妾として、姑の所にご挨拶に出かけるシーンがある。若尾文子演じる彼女の見事な挨拶ぶりは、日本文化の中でしっかりとできあがった作法を完璧に表現している。よどみない口上と洗練された動作はみていて実に気持ちがいい。 だが、太平洋戦争で、船場一体は焼け野原になる。奇跡的に足袋を入れた土蔵だけが焼け残った。妾たちは寺に預け、喜久治は戦後の混乱の中で、何とか再び商売をはじめようとするが、うまくいかなかったようだ。 いま、年老いた喜久治の家の仏壇には、大勢の人たちの位牌が並んでいる。姑も母もすでになく、妾たちも死んだか行方不明になり、喜久治自身も「ぼんぼん」から「ぼんち」になれないままここまできてしまったが、みんなから愛された人生だったのである。(1960年・大映) <原作>山崎豊子<製作> 永田雅一 <企画> 辻久一 <監督> 市川崑 <配役> 喜久治 ................ 市川雷蔵 /芸者ぽん太 .............若尾文子・弘子 ...........中村玉緒 / 幾子 .........草笛光子 / 比沙子 ........越路吹雪 / 喜久治の母・勢以 ............山田五十鈴 / 喜久治の父・喜兵衛 ..........船越英二 / ぽん太の子・太郎 ............林成年 / お時 ..........倉田マユミ / 喜久治の祖母・きの ..........毛利菊枝 / お福 ............京マチ子 H O M E > 体験編 > 映画の世界 > コメント集(14) © 西田茂博 NISHIDA shigehiro |