コメント集(21) |
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今年見た映画(2003年)
Un carnet de bal 舞踏会の手帖 2003年9月5日 なんとロマンチックな日本名なのだろう。「手帳」ではなく「手帖」といっている。二度と帰らない青春の日々を痛感する「同窓会」映画だ。70年近く前に制作されているのに、人間の若き日の夢は少しも変わっていない。 クリスティーヌは、富豪の夫と共にミラノから北へ行ったアルプスの麓にある風光明媚なコモ湖のほとりに住んでいたが、夫に死なれしばらく呆然とした日々が続いていた。知り合いの神父に勧められ旅に出ることにする。 クリスティーヌは16歳の時にパリにある舞踏会で初めて社交界にデビューした。そのときの思い出は今も心に生き続けていた。クリスティーヌはまれにみる美貌で舞踏会に参加した若者たちの心をとらえ、夢中になった彼らは何とかして彼女の心をえようと必死だった。 あれから20年。クリスティーヌは彼らの名前と住所を書き入れた手帖を持っている。彼らの人生はどうなっているだろうか。そんな思いに駆られたクリスティーヌは、彼らの消息を訪ねることを今度の旅の目的にする。 1人目はクリスティーヌが他の男と婚約したことを知って自殺していた。残された母親は気が狂い、まるで息子が生きているかのように振る舞う。いたたまれなくなったクリスティーヌはその家を飛び出す。 2人目は、暗黒街の帝王になっていた。若い頃は弁護士志望の青年だったが、ある時道を踏み外し泥棒たちのボスになっていた。はるばるクリスティーヌが自分を思いだして訪ねてきてくれたことを喜び、彼女に捧げた昔の詩を披露するが、クリスティーヌの目の前で警察に連行されて行く。 3人目は若き日には有望な音楽家だった。クリスティーヌのために作曲した曲を演奏したが、演奏会場のクリスティーヌは他の男と笑いさざめていた。絶望した彼は、自分の息子にも死なれ、僧侶の道を選んだ。今は修道院で多くの恵まれない子供たちのために合唱の指導を行っている。 4人目はクリスティーヌに思い焦がれたこともあったが高嶺の花と知り、パリを捨てて山のガイドになっていた。二人で山小屋に泊まりクリスティーヌに気が向くが、登山者の遭難の知らせを聞くと救助のために飛び出して行く。 5人目は政治家志望だったが、今は小さな町の町長となり、自分の女中とまさに結婚式を挙げるところだった。養子がいたが、ならず者の父親泣かせで、婚礼の日にも父親に金をゆすりに来てみんなの前で大喧嘩をする。 6人目は医者志望だった。(フランス領)サイゴンに赴き仕事をしたが手術中に自分の片目を失明し、再就職をしようにも何をしてもうまくいかない。クリスティーヌの目の前で持病の発作まで起こし妻をピストルで射殺しようとする。 7人目は若い頃トランプ手品がうまかったが、パリで美容師をしていた。結婚して子供をもうけていた。彼にかつて自分がデビューした舞踏会会場につれていってもらう。当時のままであり、クリスティーヌがそうだったように若い娘たちがはじめての踊りに胸をときめかせていた。 若き日の若者たちはそれぞれ若さの面影はなく人生に疲れ別人のようになっていた。クリスティーヌはコモ湖の自宅に帰り、もう旅はいやだと思う。だがもう一人の男がよりによってこの湖の対岸に住んでいたという。だがその男はすでに亡く、若き息子が残っているだけだった。(1937年) Directed by Julien Duvivier Writing credits Julien Duvivier / Henri Jeanson Cast: Harry Baur .... Alain Regnault / Marie Bell .... Christine Sugere / Pierre Blanchar .... Thierry Raynal / Fernandel .... Fabien / Louis Jouvet .... Jo/Pierre Verdier / Raimu .... Francois Patusset / Francoise Rosay .... Madame Audie / Pierre Richard-Willm .... Eric Irvin リスニング:フランス語、セリフが多く様々な話題にわたる。 道頓堀川 2003年9月23日 「蒲田行進曲」の深作監督の作品である。何か最後に悲劇的なことが予想される。アクションではないのにテンポの良さ、息をつかせぬ展開は日本映画に珍しい。 大阪ミナミの道頓堀近辺は、ストリップ、たこ焼き、ポン引き、とありとあらゆる都会の享楽が集まっているところ。クニヒコ青年は19歳。美術学校に通い、竹内氏の経営するコーヒーショップのアルバイトをして暮らしている。最近母親が死んだときに竹内氏に拾われた。 ある早朝、画架を立て道頓堀を描いていると犬をつれたママ、マチコに出会い、クニヒコは心引かれる。犬が行方不明になりその捜索を手伝うことから二人は急速に親しくなる。元は芸妓だったマチコは大不動産会社を経営する老人のおんなであったが、小料理屋のママとして働いていたのだ。 一方竹内氏の息子マサオはクニヒコの昔の同級生だが、若い頃の父親と同じく撞球にこり、将来はプロのハスラーになるつもりでいる。今度もシャブですっかりだめになった男をうち負かしたばかりだった。だが父親はそんな息子を許せない。自分が玉突きに熱中したあまり妻を自殺させているからだ。 話の合間に様々な連中が登場する。惚れた相手にひたすら尽くすオカマ、かつて竹内氏に世話になった撞球場の女主人、シャブで落ちぶれたハスラーの妻、腕っ節が強くしかも女にめっぽう強い謎の男、などミナミの夜の街にうごめいている。 クニヒコは10歳年上のマチコにすっかり入れ込み、アパートで二人だけの同棲生活を始めようとする。マサオは東京でのプロの大会に出るべくマチコをだまして借金を作るが、これを知った竹内氏は一計を案じ、長い間やめていた玉突きを再び始めて息子に試合を申し込む。 自分が勝てばマサオは玉突きを永久にやめ、マサオが勝てば自分の店を自由に使っていいという条件で、二人は死闘を繰り広げる。ポール・ニューマン主演の「ハスラー」(コメント集7に収録)を思わせる恐るべき対戦である。 戦いは果てしなく続き、しばらく対戦に立ち会っていたクニヒコはマチコの待つアパートへ繁華街を通って急ぐが、そのころあのオカマは相手の男に向かって包丁を振り上げていた・・・。戻ってきた愛犬を抱いてマチコは何も知らない。(1982年) 監督;深作欣二 原作:宮本輝 出演;松坂慶子 真田広之 山崎努 佐藤浩市 渡瀬恒彦 加賀まり子 柄本明 カルーセル麻紀 男はつらいよ・浪花の恋の寅次郎 2003年10月2日 柴又では、隣のタコ社長が頭を抱えていた。印刷工場の経営がうまくいかず、借金を抱え不渡り手形をつかまされたりで、工場を閉鎖しようかと悩んでいた。 そこへ寅さんが帰ってきて、脳天気にも自分が竜宮城の乙姫様と遊び、横にいたタコ社長そっくりのタコにスミを吹きかけられたなどというものだから、二人は大喧嘩。タコ社長は一層みじめな気持で金策に出かけて行く。 その日はタコ社長は連絡もなく、帰ってこない。心配した寅さんは自分の言葉が原因で身投げでもしたのかと思いこみ、江戸川を下流にむけて水死体を探しに行く。 遅く帰ってきたタコ社長は無事金を借りることができ、ほっとして酒を飲んでいたとのこと。それを聞いた寅さんは怒るが、翌朝タコ社長にはまわりに心配してくれる人が大勢いるのに、自分には誰も心配してくれる人がいないと言い捨てて再び旅に出ていく。 瀬戸内海のあるひなびた小島。寅さんが墓地の近くの丘の上で一休みしていると、大変な美人が墓参りに訪れた。寅さんが話しかけると二人は意気投合。浜田ふみという名で大阪で働いているといい、また会える日を楽しみに別れた。 寅さんは、久しぶりに大阪に出た。だがこの土地の商売はどうもうまくいかない。くさくさしているところ、向かいのおみくじ屋にふみが現れたのだ。「待ち人来る」の占いはぴったり当たってしまった。 二人は大阪中をデートする。ふみは芸者だったのだ。寅さんは有頂天である。そんなある日ふみに幼い頃に別れた弟がいることが話に出て、寅さんは早速弟に会いに行こうと言い出す。 だが弟のつとめていた神戸の運送会社には悲しいニュースが待ち受けていた。主任によれば、弟は先月心不全でなくなったのだという。悲しみに暮れるふみ。その夜宴会の仕事を終えるとふみは酒を飲んで寅さんの泊まっている旅館に転がり込んだ。 ふみはこんな気持の中、寅さんに抱いてもらいたかった。だが寅さんはそっと部屋を抜け出ると別の部屋で寝た。ふみは早朝、「先のことは一人で考えます」という置き手紙を残して出ていった。旅館の息子、喜介が女を手に入れるには根性がなかあかん、とアドバイスしてくれたのも後の祭り。 傷心の思いで寅さんは葛飾に帰るが、ある日ふみがひょっこり姿を見せる。だが、寅さんの喜びもつかの間、彼女は芸者をやめ、まじめ一本の若者と結婚して対馬に渡り寿司屋をやるという。 再び失恋した寅さんは、何ではるばるふみが柴又まで報告にやってきたのだろうといぶかる。「はがき一本出せばそれで済むことじゃないか」。寅さんにはあの旅館での一夜抱いてもらえなかった女の恨みがわからなかったのだ。(1981年) 監督: 山田洋次 製作: 島津清 佐生哲雄 原作: 山田洋次 脚本: 山田洋次 朝間義隆 キャスト:渥美清 (車寅次郎) 倍賞千恵子 (さくら) 芦屋雁之助 (喜介) 大村崑 (主任) マドンナ;松坂慶子 (浜田ふみ) 男はつらいよ 寅次郎紙風船 2003年10月3日 柴又小学校の同窓会があった。ちょうどその日にとらやへ帰ってきた寅さんは、早速出かけていく。だが、みんな立派な社会人になっている中で渡世人の暮らしをしているとなれば、誰も寄りつかない。しかも小学校の時にはみんな寅さんにさんざんいじめられた。 ぐでんぐでんに酔っぱらって帰ってきた寅さんはすぐに旅に出る。同級生がみんな寅さんを避けていたのだ。あとには光男に買って帰った紙風船が所在なく転がっていた。 九州は大分県日出市にある夜明駅。たった一つしかない旅館に泊まっていると若い女性が相部屋を求めているという。愛子という名の娘はまだ高校生の年齢で、静岡・焼津の実家から男を作った母親の元から家出してきたのだった。 愛子はすっかり寅さんになつき商売の手伝いをする。ある祭りの屋台で見かけたのは、渡世人仲間、常三郎の女房・光枝だった。常三郎は病気だという。寅さんは一度は見舞いに行かねばと、古い石の橋のある村(アキツキ?)にある、彼の家を訪れる。常三郎は退院したばかりで光枝もいた。 常三郎はたいへん喜ぶが、寅さんにもし自分が死んだら光枝を女房にもらってくれと約束させる。寅さんは半分本気で、半分病人の頼みということで引き受けてしまう。だが帰り道、光枝から常三郎はあと一ヶ月も持たないことを知らされる。 はかない命を見て、寅さんは愛子をおいて柴又に帰り、真人間になって出直そうと考える。愛子は再びあとを追ってやってきたが、マグロ漁船の船員である兄の健吉が心配してとらやまで訪ねてきて、妹を叱りとばし、焼津へ帰っていった。 しばらくして光枝が文京区の旅館で仲居をやっていることを知り、とらやに食事に招くのだった。だが光枝が来たのは夫が死ぬ間際に自分が死んだら寅さんの妻になるように言われたことが本当なのか確かめたかったからだ。 柴又の駅前で光枝が寅さんに向かって、本当にそんな約束を常三郎としたのかと尋ねると、寅さんは病人の前だからそう言ってしまったのだと答え、光枝は犬や猫じゃあるまいしと言いながら、それを聞いて納得したような顔をした。男と女の行き違い。夫婦になるかもしれなかった男女がその瞬間、通り過ぎるだけの相手に変わってしまった。(1981年) 監督: 山田洋次 製作: 島津清 佐生哲雄 原作: 山田洋次 脚本: 山田洋次 朝間義隆 キャスト;渥美清 (車寅次郎) 倍賞千恵子 (さくら) 岸本加世子 (小田島愛子) 小沢昭一 (倉富常三郎) 犬塚弘 (棟梁) 前田武彦 (柳) 地井武男 (小田島健吉) マドンナ;音無美紀子 (倉富光枝) 瀬戸内少年野球団 2003年10月9日 すがすがしい少年映画。終戦直後の瀬戸内の淡路島に起こった、先生と小学生を中心とした物語。同じ瀬戸内海を舞台にした「二十四の瞳」と違い、コメディタッチだが、むしろ「銀河鉄道999」のような帰らない青春の甘酸っぱさを持っている。 校庭で、終戦の詔がラジオで放送され、戦争が終わった。駒子先生は小学校5年生男組の担任。突然の教育体制の変化は、子供たちに古い教科書に墨を塗ることから始まる。 駒子先生は夫が戦死したばかりで、弟のしつこい求婚にも受け入れることができない。級長の足柄竜太は、集落唯一の警察官である祖父と祖母に育てられている。三郎はバラケツ(やくざ)なることを夢見ていていていつも駒子先生の悩みの種だ。 やがてアメリカ軍が島にやってくる。島にある大砲が爆破され、大人たちはびくびくものである。子供たちもはじめは撃退するつもりでいたが、米兵の投げるチューインガムやチョコレートに群がるのだった。 そこへ、海軍の元艦長とその娘、武女(むめ)がやってきた。父に似てさっぱりした気性の武女と、竜太たちはすぐ仲が良くなる。だが、父親はいずれ戦犯として連行される運命にあった。父娘は、わずかな間この島の生活を満喫するつもりでいたのだ。しばらくして父親は巣鴨プリズン連行されて行き、武女は知人の世話で島に残る。 竜太と三郎は山奥の神社で、片足のない男に出会う。それはなんと駒子先生の死んだはずの夫、正夫だったのだ。かつての名投手だった正夫は二人に野球の硬球を駒子先生に渡してもらうが、弟に犯されたばかりの駒子先生は会うことを拒絶する。 島では、床屋が飲み屋に変わり、外からやくざやパンパン風の女が入り込んで、にぎやかになる。その中には三郎の兄も含まれていた。外部の風潮に生徒たちが感化されることを心配した駒子先生は、野球チームを作ることを思いつく。チームのメンバーは男の子だけでなくあの武女も参加していた。 駒子先生は夫の正夫がいる高松の金比羅様へ行く決心をする。同行した竜太と武女にうながされ、駒子先生は社務所で働く正夫と再会する。新しい生活を再び始めることを決心した二人は、島に戻り、正夫は花を栽培し野球チームの監督を引き受ける。 はじめは負けてばかりいたチームも、グローブを働いて手に入れ、ユニホームもしつらえて、次第に成長していく。だが、6年も終わりに近づいた頃、武女の父親がシンガポールで絞首刑になったニュースが届く。 だが、武女はめげない。アメリカチームと、みんなで力を合わせて戦い抜いた。だが、島には変化が訪れていた。かつてのにぎやかさは次第に失せて、島を出る人が増えてきた。そして武女も東京の兄の元に戻ることになった。 村祭りの夜、武女は竜太に翌日島を離れることを告げる。彼女がおしっこをしている間に竜太が歌を歌ってくれなかったために、喧嘩別れになるという奇妙な顛末だったが。(1984年) 監督: 篠田正浩 製作: 原正人 原作: 阿久悠 キャスト:山内圭哉(足柄竜太)/大森嘉之(正木三郎・バラケツ)/佐倉しおり(波多野武女)/ 夏目雅子(中井駒子)/ 大滝秀治(足柄忠勇) /加藤治子 (足柄はる)/ 渡辺謙(中井鉄夫) /ちあきなおみ(美代) /島田紳助 (正木二郎) /内藤武敏 (中井銀蔵)/ 上月左知子 (中井豊乃)/ 桑山正一 (校長)/ 浜村純 (老船大工) /不破万作 (青年団長)/ 清水のぼる (スポーツ振興係)/ 河原崎次郎 (中井宗次)/ 谷川みゆき (節子)/ 宿利千春 (正木葉子)/ ビル・ジェンセン(アンダーソン中尉)/ ハワード・モヘッド(GI)/津村隆 (通訳)/ 服部昭博(中井照夫・デブ国)/ 山崎修(新田仁・ニンジン) /森宗勝(折原金介・ボラ)/ 丸谷剛士(神田春雄・ガンチャ)/ 辰巳努 (吉沢孝行・ダン吉)/ 戸田都康 (高瀬守・アノネ)/ 沢竜二(池田新太郎)/ 伊丹十三(波多野提督)/ 郷ひろみ(中井正夫)/ 岩下志麻(穴吹トメ) 上へ私をスキーに連れてって 2003年10月16日 (再)2013/01/31 ストーリーはともかく、スキーですべりおりる場面が満載。スキーがあまり好きでない人まで滑りたくなってしまう。白銀の世界を楽しむためだけでも見る価値がある。 東京の商社に勤める矢野は、スキー狂い。仕事が終わったとたんにスキー場へ突っ走る。だが、いつも行くスキー仲間は、二組のカップルなのに、自分にはさっぱり女の子がつかない。それもそのはず、ケーキのプレゼントをもらって「これで食費が浮く」というくらいの野暮な男だからだ。 だが、今回の奥志賀高原では、何か心引かれる女の子、池上優に出会った。だが、女の子とのつきあい方がわからないので、どうしてもうまくアプローチできない。でもこのまま別れ分かれになるのも悲しい。 仲間の協力もあって、何とか彼女の東京での自宅電話番号を聞きだしたが、なんとそれは架空の番号。仲間たちは、この娘は「性格ブス」だと騒ぎ立てる。がっかりしていたところに重なった仕事のミスで上司に呼びつけられたが、そこにお茶を持ってきたのは池上だった。 デタラメの電話番号を教えたのは、一緒にいた女の子を矢野の恋人と勘違いしたため。本当は矢野が嫌いではなかったのだ。新しい年が明ける直前、矢野は5時間の雪道を運転して、池上のいるスキー場へ行き、年が変わる瞬間に再会を果たす。 同じ商社のスポーツ部には、田山というスキー狂いがいて、周りの抵抗にも関わらず新作のスキー用品を売り出そうとしていた。田山の人柄と、昔いっしょに滑った仲間であることから、矢野は別の部でありながら、ちょくちょく仕事を手伝っていた。今度バレンタイン・デーに万座で新作発表会を行うという。 矢野は直前まで発表会を手伝うが、関係者ではないということで、万座に出かけることは遠慮することにして、仲間と共に隣の志賀高原スキー場で池上とスキーを楽しんだ。ところが大変、発表会場では肝心のウェアが搬送のミス(実は同僚の陰謀)で届いていないという。 矢野ら6人が着ているウェアを至急会場まで送ってくれという。とは言っても会場まで車で5時間、一方、二つのスキー場を結ぶ直線を行けばわずか2キロなのだが大変な難所で、冬季はスキーでの通過を禁止しているツアーコースだ。 女の子二人は猛スピードを出して車で会場に向かう。池上は無謀にも、ひとりでツアーコースを通って会場に向かおうとする。彼女の置き手紙を見た矢野は、真っ青になり大急ぎで彼女を追いかける。うまく追いついたものの、道に迷ってしまった・・・もう発表会には間に合わないのか・・・(1987年・東宝) 監督: 馬場康夫 原作: ホイチョイ・プロダクション 歌: 松任谷由実 出演;原田知世(池上優)三上博史(矢野文男)原田貴和(佐藤真理子)沖田浩之(小杉正明)高橋ひとみ(羽田ヒロコ)布施博(泉和彦)鳥越マリ(恭世)飛田ゆき乃(ゆり江)竹中直人(所崎)田中邦衛(田山雄一郎) 上へ鬼龍院花子の生涯 2003年10月23日 日本のゴッドファーザーとも言うべき作品。土佐弁が全編にわたって流れるために、慣れない人には聞きづらいが、南国高知の気風がよく伝わってくる。侠客世界の悲劇が姉妹を中心に立て続けに起こるドラマチックな作品。 昭和12年、高知土佐には、鬼龍院という侠客一家があり、政五郎(鬼政)という名の男が取り仕切っていた。だが、妻、歌との間に子供がなかったために男女一人づつを養子にした。男の子はすぐ逃亡してしまったが、女の子は松恵といい、鬼政が目がつけたとおり器量よしでとても頭の良い娘とわかった。 歌には冷たくあしらわれる松恵だったが、すくすくと成長し、女学校入学に合格するまでになる。一方鬼政は侠客同士の闘争の処理に忙しく、ろくに松恵の面倒を見えてやることはなかったが、使用人の間でかわいがられ学校の先生を目指す。 松恵が養子にされてまもなく、鬼政の妾の一人が妊娠して女の子、花子を出産した。鬼政は実の娘ができたと大喜びでかわいがるが、歌は自分に子供がいないことで、酒浸りになり生活が荒れていく。 そのころ土佐電鉄のストライキが頻発し、ストつぶしを頼まれた鬼政はストライキの中心人物、田辺という青年を気に入り花子の婿にしようと考える。だが刑務所から出されたばかりの田辺は獄中で世話になった松恵にすっかり引かれ、鬼政の前で彼女を嫁にくれることを頼む。 鬼政の方は自分の望み通りにならないので怒り心頭に発し、激しい口論の末に田辺の指を詰めてしまう。田辺は高校教師をクビになり、自分の信念を持って京都の方へ出て行く。 花子はこうして自分の未来の夫を松恵にとられた。姉と違って器量よしではなかった。親が必死に捜してもなかなか相手が見つからなかったが、ようやく侠客仲間に相手が見つかったのだがその男はまもなく浅草で殺されてしまう。 妻の歌が腸チフスにかかる。松恵は伝染の危険も省みず懸命の看病をしたが、自分が松恵に冷たかったことをわびて歌は死んでいく。歌の死後、松恵は田辺の後を追って関西へ出る。だが彼らの社会運動は当時の治安維持法のため、弾圧を受け生活は苦しかった。 二人は鬼政に自分たちの結婚の報告をするために土佐に戻るが、途中で松恵は流産してしまう。鬼政は松恵を迎え入れ、二人のことを祝福してくれるが、田辺は祭りの夜を歩いているところを侠客仲間の敵討ちに巻き込まれて腹を刺されて死ぬ。 松恵は徳島にある田辺の実家から田辺の遺骨を取り返し、侠客の強さを身につけ始める。そして鬼政は田辺の敵討ちに出かけてくれるが、花子が敵方の相手の男と一緒になっているところを見て、いっさいの攻撃をやめて警察に自首した。それから数年後、行方不明だった花子が自殺したことを松恵は知らされる。(1982年) 監督: 五社英雄 原作: 宮尾登美子 脚本: 高田宏治 キャスト:仲代達矢 (鬼龍院政五郎) 岩下志麻 (歌) 夏目雅子 (松恵) 仙道敦子 (少女時代の松恵) 佳那晃子 (つる) 高杉かほり (花子) 中村晃子 (牡丹) 新藤恵美 (笑若) 小沢栄太郎 (田辺源一郎) 上へLa Lectrice 読書する女 2003年10月30日 フランスのどこかの町に住む若い女、コンスタンスは文学部の出身で、何か自分に向いた職業がないかと捜していた。おりもおり、自分の恋人にベッドで小説を読んで聞かせたところから、「朗読」を仕事にしようと思い立つ。 さっそく新聞広告に出してみると意外に反響があり、客がついたのだ。彼女は持ち前の美しい声と、よどみのない朗読、そしてちょっぴり色気を伴って、各家庭を回る。新しい職業が順調にいきそうなのでうれしくて、大学時代の教授のもとに報告に行く。 最初の客は車椅子に縛り付けられたままの青年。彼はコンスタンスの朗読を聞くよりも彼女の太股を見つめる方が好きだったようだ。彼の母親とも仲良くなり、定期的に読んで聞かせるようになる。いつも蜘蛛が這い回っているというおかしなメイドが付き添っている、年齢不詳の老婆。彼女の夫は将軍だったそうで、コンスタンスに、マルクスやレーニンの著作を読んでくれるようせがむ。 母親が忙しくて面倒を見てやれない幼い女の子の相手をすることにもなった。独り身の実業家は、コンスタンスを一目見るなり朗読よりもベッドにいっしょにはいってくれるように懇願する。もう先のない老人は、サドの男色に関する著作を読んでくれるように頼む。コンスタンスが二度目に姿を現すと、彼の仲間がさらに二人増えて待っていた!いくらプロでもこんなのはまっぴらだわ! コンスタンスが家から家へと歩くときには、ベートーベンのの軽やかなメロディが流れる。これも映画を楽しくする要因の一つ。サウンドトラックとして聞く価値あり。そして言うまでもなくそれぞれの著作のさわりの部分が彼女によって紹介される。時々彼女がまさに「読書する女」のペーパーバックを朗読する場面がある。(実はそこは実際のコンスタンスであり、いろいろな家に出かけてさまざまな出会いをするのは、自分そっくりのマリーという女で、これは夢想の世界だったのだ・・・まったくややこしい!)フランスらしい実にユニークな作品。(1988年) Directed by Michel DevilleWriting credits Michel DevilleRosalinde Deville Cast : Miou-Miou .... Constance*Marie / Regis Royer .... EricMaria / Casares .... General's Widow / Patrick Chesnais .... Comapny Director / Pierre Dux .... Magistrate / Christian Ruche .... Jean/Philippe リスニング:フランス語。一般会話の他に、さまざまな小説や論文の素晴らしい朗読が聞ける。 上へ男はつらいよ・望郷篇 2003年11月2日 寅さんは旅先でたまたまおっちゃんが死んだ夢を見る。急いで柴又に帰ろうと電話すると、おっちゃんもあまり先がないなどと言うものだから、近所の人に危篤だと知らせるわ、葬儀屋を呼ぶわで大騒ぎ。 そこへ舎弟の登から札幌にいるかつての親分が危篤だと聞いて出発しようとするが金がない。どこに行っても借金を断られるがさくらは地道に生きなければならないとたっぷりと説教をした上で前に寅さんがくれたお金をよこした。 虫の息だった親分は、病院のベッドで寅さんに向かってかつて他の女に生ませた息子に会いたいと口走る。寅さんはいろいろさがしたあげく機関車の釜焚きをしている息子を発見するが、それまでの父親の仕打ちにうんざりしていた息子は病院に行こうとしない。 寅さんは誰からも見捨てられて死んだ親分を見て、自分も舎弟の登もやはり地道に生きなければならないと思う。早速柴又に帰り、職探しをする。だが寅さんをよく知っている近所の人は誰も仕事をくれようとはしない。疲れ果てて江戸川につながれている小舟の中で昼寝をしていると、もやいひもがほどけて下流の浦安の方に流されていった。 当時はまだ浦安は江戸時代以来の漁師町で水路には所狭しと小舟がつながれているようなところだった。寅さんは職人がやめてしまった豆腐屋でそれこそ「油にまみれた」仕事を始めたのだ。 訪ねていったさくらは、寅さんがこんなに仕事に精を出し長続きするのは、なぜかすぐに悟る。豆腐屋のおかみさんの娘、節子に惚れているのだ。そしていずれはフラれるだろうことを予想して柴又に帰る。 節子はある夜寅さんに向かっていつまでもこの豆腐屋にいてくれるかと聞いてきたところから、寅さんはこれをプロポーズと思いこみ有頂天になるが、実は国鉄に勤める婚約者と結婚して浦安を離れるためだったのだ。 節子は寅さんに向かってその詳細をはっきり言わないから、その落ち込み方はひどかった。ちょうどの仕事をクビになった源公が来たのをいいことに、代わりに豆腐屋の仕事をやらせ自分はまた旅の空に出る。(1979年) 監督: 山田洋次 キャスト: 渥美清・・・車寅次郎 /倍賞千恵子・・・諏訪さくら/ 森川信・・・車竜造/ 三崎千恵子・・・つね/ 前田吟・・・諏訪博/ 津坂匡章・・・川又登/ 太宰久雄・・・梅太郎/ 笠智衆・・・御前さま/杉山とく子・・・節子の母富子 マドンナ;長山藍子・・・三浦節子 上へ男はつらいよ・寅次郎あじさいの恋 2003年11月7日 信州の貧しい百姓夫婦の家に泊めてもらった寅さん扮する旅の男は、自分たちにはろくな食べ物もないのに客人のために白いご飯を用意してくれた夫婦のために、ふすまに雀の絵を描いて去る。雀は翌日になってふすまから抜け出て、これが近所の大評判・・・という夢だった。 信州から京都の葵祭りへ。寅さんは今日も旅を続ける。鴨川のほとりで下駄の鼻緒が切れて困っていた加納老人を助けたのが縁ですっかり気に入られ、寅さんはこの国宝である大陶芸家の家にしばしば出入りするようになる。 加納老人の家にはばばと弟子の他に女中のかがりがいた。かがりは数年前に夫に死なれ、母親と娘を丹後半島に残して京都に働きに来ていたのだった。寅さんはかがりと仲良くなるが、かがりが結婚するはずだったもう一人の弟子が別の女と結婚したため、加納老人からその控えめすぎることを叱咤されたこともあって、丹後半島へ帰ってしまう。 話の始終を加納老人から聞いた寅さんは、風の吹くままといいながら早速、丹後半島に向かう。絶壁に囲まれた狭い水際に小さな家が寄せ合うように並んでいた。寅さんの思わぬ訪問を受けたかがりはびっくりしながらも、このひとなら今の寂しい生活を救ってくれると思ったのかもしれない。 その夜、泊めてもらった寅さんだが、そっとしのんできたかがりの前で寝たふりをする。何事もなく、翌朝別れるが寅さんは別れた瞬間から急に恋いこがれ、そのまま柴又に帰って寝込んでしまう。みんなは心配するが、恋煩いだということは誰でも知っている。 そこへかがりが突然とらやを訪れた。加納老人の、これというときには命を懸けてもぶつかって行けという説教の通り、はるばる丹後半島からやってきたのだ。そして寅さんに、鎌倉のあじさい寺で待っているという手紙を密かに渡す。博がおどろいた。これは今までにないケースだと。 アジサイの咲き誇る寺の中で、果たしてかがりは待っていた。だがこともあろうに、寅さんはいやがる甥の満男をいっしょに連れてきたのだ。かがりは失望の色を隠せない。そして二人の間にはしゃべる言葉もない。京都ではあんなにおもしろくて優しい寅さんだったのに、なぜ今こうして二人でいると気まずい気持なのだろう。 この出会いが無駄だったと悟ったかがりは、その日のうちに新幹線で帰っていく。いつもフラれてばかりの寅さんはかがりをフッたのか?いやそうではない。おっちゃんの言葉によれば、寅さんには甲斐性がないんだとのこと。(1982年) 監督: 山田洋次 撮影: 高羽哲夫 出演; 渥美清(車寅次郎) /倍賞千恵子(さくら)/杉山とく子(かがりの母)/関敬六(仲間のテキヤ)/柄本明(近藤)/津嘉山正種(蒲原)/片岡仁左衛門(加納) マドンナ;いしだあゆみ (かがり) 上へ蒲田行進曲 2003年11月14日 松坂慶子の最高潮の頃の作品。銀四郎に押し倒されるシーンは、女の色気を申し分なく出している。「道頓堀川」の深作監督にしても、これは最も記念すべき作品だろう。イタリアの「ニューシネマ・パラダイス」という映画界を描いた傑作に匹敵するといえる。途中、主題歌として、桑田佳佑作曲で中村雅俊の「恋人も濡れる街角」が流れる。 映画産業がまだ栄えていた頃、東映撮影所では(この映画の制作は松竹!)竜馬と新撰組の幕末の戦いが撮影されていた。竜馬役の橘は、本来主役であるはずの新撰組の銀ちゃん(銀四郎)をすっかり食ってしまっていた。 次第に落ち目になる銀四郎だったが、大人をそのまま子供にしたような純粋な人柄は、傍目から見るとまさにめちゃくちゃだった。子分たちを引き連れて何とか橘を圧倒しようと考えているが、なかなかうまくいかない。 かつては華々しくデビューした恋人の小夏は妊娠4ヶ月だったが、銀四郎は朋子という新しい恋人もできたことで、小夏を誰かに譲り渡すことを考える。白羽の矢が当たったのが、長年付き人をやってきたヤスだった。 銀四郎はいつもの調子で訳も言わずに無理矢理小夏をヤスに押しつける。腹の子を抱えたままで結婚しろと言う。だがヤスは親分が絶対で断るわけにはいかない。 小夏は結局ヤスに「譲られ」て、二人の生活が始まる。ヤスはまじめな性格で、大部屋暮らしのうだつの上がらない男だったが、妻との生活のために危険なスタントの仕事を次々引き受けて体中傷だらけになる。 はじめのうちはヤスをいやがっていた小夏も、妊娠中毒症で入院している間にも銀四郎と違い、献身的なヤスの姿を見て次第に心が和んでいく。 二人は九州の山の中に住むヤスの母親のもとに会いに行く。大歓迎を受けた後、母親は小夏をひとめ見て父親が別だということを察しながらも、ヤスを見捨てないように懇願する。 決心を新たにした小夏は、銀四郎とも完全に手を切り、ヤスとの新生活を始めるのだった。おなかは次第に大きくなってきた。 その間に銀四郎はますます落ちぶれ、最後の決め手として新撰組が竜馬の泊まっている旅館を襲撃するときに、とんでもない高い階段から銀四郎に切られた相手が転がり落ちるというシーンに賭けたいという。 ヤスは、転がり落ちる役を引き受けてしまう。銀四郎への忠誠というよりは小夏を引き受けてしまった責任の重さ、苦しさがそうさせたのかもしれない。 危険手当をもらい、生命保険にも入って、映画会社の偉いさんが集まる中、いよいよその場面の撮影をすることになったのは雪の降る、なんと小夏の出産の日だった。 いよいよ斬り合いのシーンの撮影が開始された。大きな音がしてヤスは階段を転げ落ちる。前代未聞の大スタントのために待ちかまえていた救急車が走り出した!撮影所の門の前にいた小夏は気を失って倒れてしまった。(1982年) 監督: 深作欣二 製作: 角川春樹 プロデューサー: 佐藤雅夫 斎藤一重 小坂一雄 原作: つかこうへい 脚本: つかこうへい 撮影: 北坂清 音楽: 甲斐正人 美術: 高橋章 タカハシアキラ キャスト(役名) 松坂慶子(小夏) 風間杜夫(銀四郎) 平田満(ヤス) 高見知佳(朋子) 原田大二郎(橘) 蟹江敬三(監督) 岡本麗(トクさん) 汐路章(山田) 榎木兵衛(トメ) 高野嗣郎(太) 清川虹子(ヤスの母)、千葉真一、真田広之、志穂美悦 上へI am Sam アイアムサム 2003年11月23日 ロサンゼルスに住むサムは、立派な大人なのに、7歳の知能しかない。どこからか迷い込んできたホームレスの女と暮らすうち女は妊娠し、赤ん坊が生まれた。病院を退院したとたん女は姿をくらます。サムは大好きなビートルズの歌から、「Lucy in the Sky with the Diamonds 」にちなんで、この女の子をルーシーと名付けた。 マンションの隣に住むピアノ教師アニーに助けてもらいながら、サムはこの赤ん坊を育て始める。昼間はアニーに預けて自分はスターバックスでウェイターをして生活費を稼いだ。サムは父親の自覚を持ち、愛情を注ぎそしてすくすくと育ったルーシーは7歳になった。仲間たちも見守ってくれ、ルーシーの靴を買うときは足りない金をみんなで出し合った。「Two of Us」の曲が流れる(風船を持って横断歩道を渡るさまは Abbey Road のジャケット写真にそっくり)。 ルーシーは学校に行き始めるが、そのうち自分の父親が他の親と違うことに気づき始めた。特にこれまではサムが絵本を読んでくれたのに、学校の難しい本になると、とたんにサムは読めなくなってしまった。ルーシーは自分の父親のことで悩み始める。しかも学校の関係者たちは、サムが父親としてふさわしいか問題にし始めたのだ。「Strawberry Fields Forever」の曲が流れる。 ルーシーの7歳の誕生日、福祉関係者がやってきて、ルーシーを施設に入れるために連れていった。サムは、なんとかルーシーを取り戻したい。サムにはいつもビデオ会やいろいろな集まりをして親しくしている仲間たちがいた。みんなに相談すると、腕利きの弁護士が必要だという。 サムは、ロスでも名高い女性弁護士、リタ・ハリソンを訪ねた。もちろん彼女は売れっ子でサムに高額な費用が払えないことを知るとけんもほろろで彼を追い返す。だが、親権問題に強い知り合いを紹介するとつい口を滑らせたために、サムに執拗につきまとわれ、ついに自分が無料奉仕で弁護を引き受けさせられてしまう。 一度も裁判に負けたことのないリタだったが、この件はきわめて難しかった。まず本人の知能が低いために裁判で論理を展開することができない。友人たちもまともな弁論ができない。リタは何か有利な証言がないかと奔走する。「Across the Universe」の曲が流れる。 いよいよ裁判が始まった。検事側は、サムに養育する能力がないことを次々とまくし立てる。リタはできる限りの証言を集め、サムの隣に住んでいたアニーにも来てもらえることになった。最後に、スターバックスでウェイターからコーヒー作りに昇進させてもらったサムが質問に答える。 だが結果はダメだった。すっかり落ち込んでやる気をなくしたサムに今度はリタが励ます番だった。彼女はサムの弁護をつとめるうち、浮気を重ねる夫や忙しくて放っておかれている幼い息子の反抗に悩んでいたのだが、サムのルーシーに注ぐ愛情とルーシーがいかにサムを慕っているかを知り自分の元気を取り戻していく。「Lovely Rita」の曲が流れる。 ルーシーはとりあえず里親のもとに預けられることになった。サムは一計を案じ、スターバックスをやめ犬の散歩のアルバイトを始める。ルーシーの住む家の近くを通るためだ。さらに里親の家のすぐ近くに家を借りた。ルーシーは、夜になるとそっと家を抜け出てサムのところに会いに行くのだった。里親もルーシーがいかにサムを慕っているかを知り、審理に有利なように証言してくれると言った。「All You Need is Love」の曲が流れる。 サムとルーシーが一緒に住めるようになるかはわからない。でもガールスカウトに入ったルーシーをサムも里親も、リタも、みんなが応援している。全編にビートルズの歌が流れる(ただし別グループのカバー)。(2001年) Directed by Jessie Nelson Writing credits (WGA) Kristine Johnson (written by) & Jessie Nelson (written by)Cast: Sean Penn .... Sam Dawson / Michelle Pfeiffer .... Rita Harrison / Dakota Fanning .... Lucy Diamond Dawson / Dianne Wiest .... Annie Cassell Born on the Fourth of July 7月4日に生まれて 2003年11月27日 (再)2020/01/05 この映画は、まさに「歴史は繰り返す」を実によく表している。いや、「アメリカ人は少しも歴史に学ばない」という方が適切だろうか。「共産主義をつぶせ」という声を信じ、国のためにベトナムに散ったアメリカの若者たち。そしてテロリストがいないのに、大量破壊兵器もないのにイラクへ向かって命を散らし、または半身不随になった(またはこれからなる)若者たち。だまされる方が悪いのか、だました方が悪いのか? アメリカの田舎町に育ったロンはコビック家の長男だ。小さい頃から兵隊ごっこに熱中しハイスクールではレスリングに取り組んだ。両親は敬虔なキリスト教徒であり、妹や弟がいる。ロンは自分がアメリカ独立記念日である7月4日に生まれたことを何か国家に対する忠誠への気持に変えていった。 いよいよ高校生活も終わりに近づこうとする頃、1960年代に入っていよいよ激しさを増したベトナム戦争のさなか、海兵隊員がロンの高校にもやってきて、共産主義を打倒するために海兵隊にはいることを希望するベストな人間を募る。 ロンはさんざん考えたあげく、入隊を決意するのだった。プロム(卒業パーティ)の夜、ガールフレンドでシラキューズ大学に進学が決まったドナと最後のダンスを踊ったあと、海兵隊の厳しい訓練にはいる。 訓練後、ロンは直ちにベトナムの最前線に送り込まれた。そこは筆舌に尽くしがたい地獄だった。北ベトナム軍は優勢で、いつ攻撃を仕掛けてくるかしれず、死傷者が多数出て常に新兵を補充しなければならなかった。海兵隊員であるロンは小隊のリーダーであったがあまりに経験がなさ過ぎた。 ある村で、一人が銃を暴発させたのがきっかけで激しい銃撃を行い、誤って村人をほとんど殺してしまった。ロンは民間人を殺してしまったことに深い良心の呵責を覚える。しかも死んだ母親に抱かれていた赤ん坊はまだ生きていた。だがベトナム軍が近づいてきており、その子も見殺しにしなければならなかった。 さらに混戦のさなか、ロンは逆光で相手の姿が見えないままに、銃でウィルソンという新兵を撃ってしまう。彼は即死し、このことを正直に部隊の司令官に告白するが取り合ってもらえない。そんなことは日常茶飯事に過ぎないと言いたげだった。 そして運命の日がやってきた。北ベトナム軍の猛攻撃の中、ロンは足を撃たれた。それでも猛烈に反撃している間に今度は胸を打たれ今度こそ死ぬのだと感じたのだった。幸い仲間に救われヘリコプターで病院に急送される。だが病院ではロンよりもはるかに重傷の兵士が大勢おり、彼の順番が回ってくるのはいつともしれなかった。 数ヶ月後、彼はニューヨークのブロンクスにある傷病兵のための病院にいた。切断は免れたけれども彼の下半身は完全に麻痺し、一生車椅子で過ごすのだと宣告された。おまけに病院の設備はひどい。予算の削減もあって病院をたらい回しされ、器械類も故障だらけだった。 ようやくロンは故郷の町に帰ってきた。両親も妹や弟たちも優しく迎えてくれたが、テレビをつけると世間では反戦運動が大きなうねりを見せていた。町では復員したロンを歓迎してくれたが、もはや女を抱くこともできず職業も選べないロンの絶望は深かった。 ロンはシラキューズ大に入ったドナを訪ねる。彼女は反戦運動に取り組んでおり、まだ国家のために尽くすことが大切だと思っているロンは、何か違和感を感じる。だが、その直後大学では集会が開かれそのあとで警察が乱入した。ロンもその中に巻き込まれる。 その後のロンは、これまでの愛国的行動がなんだったのか訳が分からなくなり酒浸りの日々が続くようになった。女には暴言を吐き、太平洋戦争帰りの男と口論になった。家にも酔いつぶれて戻り、優しい両親もロンを持て余してきた。また誤って死なせたウィルソンの実家も訪れた。 その中で幼なじみのトミーにも出会う。幼い頃に遊んだ仲間はほとんど戦死し、ロンはいよいよこの戦争の意味が分からなくなる。家庭内で大暴れをした後、彼はメキシコへ旅に出る。そこには下半身不随の彼を相手にしてくれる売春婦がおり、麻薬や酒やばくちにおぼれるベトナム帰りの男たちがいた。 そのころからロンの考えは変わり、自分と同じ悩みをかかえる帰還兵がいることを知る。自分や多くの若者を共産主義撲滅の名の下に遠い外国へ追いやったアメリカ政府に激しい怒りを覚えるようになった。そして彼は他のベトナム帰還兵と共に、ニクソン再選指名のための共和党大会にデモをかける。マイクを差し出すレポーターを前に、彼は雄弁だった。 共和党大会は大混乱に陥り、ロンたちのデモは全国に大きく報道される。そして4年後、民主党の大会に出席したロンは、本を書きベトナム帰還兵の代表として大勢の前でスピーチを行おうとしていた・・・(1989年)➡資料 実在の人物で反戦活動家 Ron Kovic をモデルに作られた。 Directed by Oliver Stone Writing credits (WGA) Ron Kovic (book) Oliver Stone (screenplay) ...Cast : Tom Cruise .... Ron Kovic / Bryan Larkin .... Young Ron / Raymond J. Barry .... Mr. Kovic / Caroline Kava .... Mrs. Kovic / Josh Evans .... Tommy Kovic / Seth Allen .... Young Tommy / Jamie Talisman .... Jimmy Kovic / Sean Stone .... Young Jimmy / Anne Bobby .... Suzanne Kovic / Jenna von Oÿ .... Young Suzanne / Samantha Larkin .... Patty Kovic / Erika Geminder .... Young Patty / Amanda Davis .... Baby Patty / Kevin Harvey Morse .... Jackie Kovic / Kyra Sedgwick .... Donna (Ron's girlfriend) リスニング;軍隊での会話は聞き取りにくい。また病院内でのわめき声、反戦運動でのかけ声、当時から生まれた4文字語など、なかなかむずかしい。 上へ男はつらいよ・花も嵐も寅次郎 2003年12月5日 このタイトルは、昔の流行歌「花も嵐も踏み越えて・・・」で始まる歌詞からとったもののようだ。恋を成就するためにはそのくらいの覚悟が必要なのだ。冒頭の夢は、ミュージカル「ウェストサイド・ストーリー」をひねったもの。沢田研二が一曲歌ってみせる。 久しぶりに葛飾に戻ってきた寅さんだったが、店の前で幼友達だった女といちゃつき、すでに亭主がいるとも知らずに手を握ったりしたものだからおっちゃんは憤慨し、夕食の時にもろくに口を利いてくれない。せっかくの松茸ご飯も手を着けぬまま寅さんは再び旅へ。 九州では、杵築、臼杵など別府周辺ではお祭りが相次ぎ、寅さんは各地を回っては商売をしていた。湯布院から奥へ入り、くじゅう連山の麓、湯平(ゆのひら)温泉の昔なじみの親父がやっている旅館に泊まることになった。 その晩は、東京から車でやってきたおとなしそうな青年三郎と、同じく東京からやってきた若い女性の二人組も泊まっていた。親父と寅さんがその晩話し込んでいると、三郎がやってきて自分は実はこの旅館に昔働いていた女中の息子だという。最近東京で病死し、郷里のお墓に納める前に、回り道をして生前しきりに懐かしがっていたこの旅館を見せてあげようとお骨を運んできたのだった。 その親孝行に感激した寅さんは、その夜おやじと共にかつてゆかりのあった人や東京からやってきた女性たちも巻き込み、わざわざ坊さんをよんで盛大な読経をやってもらう。 翌朝それぞれは出発するが駅への途中で寅さんは二人の女性たちと一緒になる。そのうちの一人蛍子はまだ恋人もいないデパートの店員だった。3人はあたりを散策していたがいい加減疲れたところに、三郎青年が車でたまたま通りかかり、寅さんに世話になったこともあってみんなでサファリパークやらあちこちをドライブして回る。 その間に三郎は蛍子がすっかり気に入ってしまい、大分港のホーバークラフト乗り場で別れるとき何か言おうとするが内気な性質で、間際にいきなり「つきあってください」としか言えなかった。蛍子は困った顔をしていってしまう。寅さんはそれを見ていてそんなんではいつまで立っても恋人はできないと、恋の手管を伝授する。 二人で車に乗って東京へ帰り、とらやはでは珍しく寅さんの連れてきた男性の訪問客でにぎやかになった。三郎は動物園でチンパンジーの飼育を担当しており、「自分の子供」とよぶほどだ。寅さんは三郎に頼まれて蛍子に会うことになる。それとなく気持を伺うが、それではと、とらやに二人を別々に招待して、不意打ちお見合いをさせることにする。 かくして二人は江戸川の川縁で初デートということになるのだが、三郎は女性とのつきあいがまったく得意でないのでどうも会話が弾まない。チンパンジーの話題ばかりだ。 将来のことが不安になった蛍子は寅さんに相談する。寅さんにカツを入れられた蛍子はみずから動物園に突然出かけて三郎に真意を聞こうとする。だが心配無用。観覧車に乗っている間、三郎は勇気を奮い起こして蛍子にプロポーズできたのだ。二人がうまくいったことを聞いて寅さんも旅に出る。今回の寅さんは恋をしない。キューピット役であった。(1982年) 監督: 山田洋次 製作: 島津清 佐生哲雄 原作: 山田洋次 配役;渥美清(車寅次郎)倍賞千恵子(さくら)沢田研二(三郎) マドンナ;田中裕子(螢子) 上へUn homme and une femme 男と女 2003/12/10 (再) 2011/02/05 (再)2021/09/30 (再)2023/11/30 ノルマンディー地方にある、ドーヴィルの町は、イギリス海峡に面するリゾートの町である。目の前には海が広がり夏はヨットが美しい。だが今は冬だ。アンヌは自分の幼い娘フランソワーズを施設に預けている。パリに住み、列車で2時間近くかけてこの町に一週間に一度会いに行くのだ。 一方デュロックも、息子のアントワーヌを一週間に一度、この託児所にパリから車で訪ねてきていた。それぞれの親子が楽しい日曜日を過ごしたあと、子供を預けて帰ろうとしたとき激しい雨が降ってきた。託児所の女性の紹介で、アンヌはデュロックの車に便乗させてもらう。 パリへ向かう車の中、二人はお互いのことを少しずつ聞き合う。アンヌの夫は映画の俳優兼スタントマンのような仕事をしていた。アンヌは夫を深く愛し、二人でブラジルに行ったり、サンバの音楽に酔ったりしていたが、ある日夫は撮影中に爆発に巻き込まれて死んだ。 パリのアンヌの住まいに送り届けるとデュロックは、テストドライバーとしての仕事をすべく、テストコースへ向かう。そしてアンヌのことばかりが思い浮かぶのだった。翌週もデュロックはアンヌを誘い、いっしょに雨の中をドーヴィルまで運転した。 デュロックのほうは、かつてレース中に事故を起こし、意識不明になる大事故を起こした。精神的に打撃を受けた妻は、病院で取り乱し、自殺してしまったのだ。今はどこかの女となんとなく同棲している。こうしてそれぞれ幼い子供を抱える二人は、共に独身であることがはっきりした。 ドーヴィルで一緒にいる子供たちもお互いに仲がいい。船に乗る4人。長い長い遊歩道の続くドーヴィルの海岸。犬を連れた老人。そんな風景の中で、二人の心もいつしか近づいていったのだった。 翌週はモンテカルロ・ラリーだった。デュロックも仲間と共に参加し、過酷なレースを見事完走して祝賀パーティに姿を見せると、そこにはアンヌからの愛を告白した祝福の電報が待っていた。 直ちに夜通し運転してパリに向かい、さらにドーヴィルへ行っているアンヌのもとに車を走らせた。海岸には、二人の子供を連れたアンヌがいた。二人はその夜、結ばれる。だがアンヌの目には、亡き夫の姿がちらついて仕方がない。 デュロックもそれに気づく。まだ早すぎたのか。よほどのおしどり夫婦だったのか。アンヌは前の夫に、よほどのめり込んでいたに違いない。さまざまな考えが頭をかすめたが、結局アンヌは列車でパリに帰ることになった。デュロックは一人で自分の車を運転して帰る。 パリのサン・ラザール駅にひとあし早く到着したデュロックは、急いで到着ホームに向かう。ターミナルに入ろうとする、ヘッドライトを明るく輝かせた列車を待ち受けるのだ・・・ 他愛ないメロドラマに聞こえるかもしれない。だが、ほとんどスタンダード化したフランシス・レイによるこの主題歌はもちろんのこと、映画そのものの出来もとてもしっとりとしていて、まさに男と女のシンプルな出会いを忠実に描いているのだ。 ドーヴィルの海岸風景がいい。二人が車に乗っているときはいつも雨だ。シーンによってモノクロとカラーとを使い分けている。車の中でのそれぞれの身の上話はじっさいの会話ではなく、なにも前触れもなく新たな映像で示される。気になったのは、たばこを吸うシーンがやたら多いこと。現在の基準から見るとあまりに男も女もよく吸う。それも一つの時代なのか。(1966年)➡資料 Directed by Claude Lelouch Writing credits Claude Lelouch Pierre Uytterhoeven Cast: Anouk Aimé .... Anne Gauthier / Jean-Louis Trintignant .... Jean-Louis Duroc / Pierre Barouh .... Pierre Gautier / Valèrie Lagrange ....Valerie Duroc / Antoine Sire .... Antoine Duroc (as Antoine) / Souad Amidou .... Françoise Gauthier (as Souad) / Henri Chemin .... Jean-Louis' Codriver / Yane Barry .... Mistress of Jean-Louis リスニング;フランス語。口数は少ないが、きわめて明快 上へ男はつらいよ・純情篇 2003年12月24日 寅さんは長崎から五島列島へ渡ろうとしていた。連絡船を待っていると、赤ん坊を連れた絹代が座り込んでいる。今日の最終便が出てしまったのだが、旅館に泊まるお金がない。 寅さんは快くお金を貸し、その夜彼女の身の上話を聞く。幼くして母をなくし五島に住む父親,千造のもとを駆け落ちのようにして出た絹代だったが、もうこれ以上夫には我慢できず父親のもとに帰るところだというのだ。 翌日父親に会うのをおびえている絹代に付き添って、寅さんはいっしょに行ってやる。千造は、娘の絹代に厳しくさとし、帰るところがあるからそうやって我慢できなくなるのだ、夫の元に返れという。寅さんはそれを聞いて、自分も葛飾という帰るところがあるからいつまでたっても半人前だとさとる。 だが、いったん懐かしい家族のことを思い出すといてもたっても居られない。あきれ顔の千造親子を後目に、寅さんはハシケの最終便に乗って吹っ飛んでいく。そして柴又に帰ってくるのだが、どうもおいちゃんの様子がおかしい。何となくそらぞらしいのだ。 というのも、老夫婦の遠縁にあたる、夕子という若い女性が夫とうまくいかなくて、しばらくの間いつも寅さんが寝ている2階に居候をさせてもらっているというのだ。それを聞いていったんは旅に戻ると言い出した寅さんだったが、夕子の顔を見たとたん、だらしない顔になってしまい、彼女と仲良くなろうとする。 そのころ博は印刷工場を辞め、新しい機械を買って独立したいと思っていた。だが、それをうわさに聞いたタコ社長は真っ青。何とか社長に辞意を伝えたい博も、なんとしても博にやめてもらいたくないタコ社長も、寅さんに仲介役を頼んできた。 寅さんは二人の正反対の頼みをいいかげんに引き受けてしまい、タコ社長の開いた工場連中の祝賀パーティでこれがばれて大騒ぎ。怒り狂い、自分たちの感情を素直に吐き出す人たちを見て、夕子は自分たちの夫婦生活がいかに空疎なものだったかを思い知るのだった。 そのころから寅さんの食欲がなくなり、ふさぎ込むようになった。もちろん体調が悪くなったのではなく、恋の病なのだ。だが夕子が江戸川の川縁に連れていってもらいたいというと、いっぺんに元気を取り戻す。 江戸川で、夕子は寅さんに言う。「私のことを思っている人がいるのだけれど、その人をあきらめさせたいのよ」寅さんはそれが誰のことだか深く考えずにその「誰か」を探しに行く。それは寅さんのことかもしれないし、もしかしたら自分の夫のことかもしれない。女の心はわからない。 突然とらやに夕子の夫が訪ねてくる。夕子を迎えに来たのだというのだ。困った顔をしていた夕子だったが、さくらに「こんな時女って弱いのね」とつぶやいて夫と共に家に帰ることになった。 寅さんは突然失恋をした。さくらに柴又の駅のホームまで送ってもらって電車のドアが閉まるときに言う。「帰るところがあるからいつまでたっても俺は半人前さ・・・故郷ってやつは・・・」(1971年) 監督: 山田洋次 製作: 小角恒雄 原作: 山田洋次 脚本: 山田洋次 宮崎晃 配役: 渥美清(車寅次郎) 倍賞千恵子(さくら) 森繁久彌/森繁久弥 (千造) 宮本信子(絹代)松村達夫(山下医師)垂水悟郎(夕子の夫) マドンナ;若尾文子(明石夕子) 上へUn homme et une femme 20 ans déjà 男と女Ⅱ2003年12月31日 原題は「男と女、すでに20年」である。男と女の役をした俳優がそのまま20年後に映画で現れる。とはいっても、ストーリーは観客の思うような進み方はしない。むしろ期待を裏切る形で進む。だが、これも新たな人生の展開だといってもいい。この続編は従来の続き物と違い、第1作を少しも傷つけず、むしろますます印象の深いものにすることにしている珍しい作品だ。 あのサン・ラザール駅での抱擁のあと、ジャン・ルイとアンの二人は二人は、すぐに別れる。アンの夫の死からあまりにも時間がわずかしかたっていなかったことが原因かもしれない。アンはそのあと結婚するが、夫は彼女のもとを去り、今は映画のプロデューサーとしての仕事に励んでいる。 娘のフランソワーズは美しく成長し女優になって、子供も産まれている。アンは自分の制作した最新作の評判がはかばかしくなく、新しい映画のストーリーを捜していた。そのとき思い当たったのが、あのドーヴィルでの思い出である。 さっそくジャン・ルイと連絡を取り、二人は20年ぶりに会う。アンは、自分たちの思い出を映画化する案をうち明ける。それを聞いたジャン・ルイははじめ、あまり乗り気ではなかったが、スタッフたちと会い、俳優たちを見て次第に協力的になっていく。 ジャン・ルイはずっと独身だった。息子のアントワーヌは結婚し、モーターボート・レーサーになっていた。そして息子と結婚した女性の妹マリーとジャン・ルイは同棲生活を送っていたのだ。かつてのラリー・レーサーから今ではレーシングチームを率いる仕事をしている。 撮影が進むにつれ、アンは当時のことを目の当たりに思い出し、次第に昔の気持を取り戻していく。残念ながら、自分たちのあまりにもプライベートなできごとを扱ったこの映画はお蔵入りとなってしまったが、二人を急速に接近させ、ジャン・ルイも砂漠の彼方から便りをよこすようになる。 アンは、同じ俳優を使って、最近起こった精神異常者による殺人事件を扱ったミステリー事件に取り組む。ある筋から真犯人はその精神異常者ではなく、その男の主治医らしいという情報を得ていたからだ。 一方ジャン・ルイはニジェールの砂漠にチームを組んで出かける。だがいっしょに行ったマリーはパリへ帰りたいと言い出す。わがままな要求を聞き入れ、チームの他の者に留守を頼んで空港のある町まで危険な砂漠を横断して送り届けるべく二人だけで出発する。 だが、ジャン・ルイが昔の女とよりを戻したことを察したマリーは嫉妬に狂い、砂漠の真ん中で真夜中に水を捨て、無線を使えないようにし、タイヤを切ってしまう。二人の捜索は困難を極め、発見されたときは、二人とも死の直前だった。 アンの製作した映画は興行的に成功し、二人は思い出の地ドーヴィルへドライブする。そのときも20年前と同じく雨の中だった。エッフェル塔を望むセーヌ川でのボート・レースを見ながら二人はこうなるのに20年かかったことを痛感する。 Directed by Claude Lelouch Writing credits Claude Lelouch (original scenario & adaptation and dialogue) and Pierre Uytterhoeven (adaptation) Cast: : Anouk Aimee .... Anne Gauthier / Jean-Louis Trintignant .... Jean-Louis Duroc / Richard Berry .... Richard Berry / Evelyne Bouix .... Francoise / Marie-Sophie L. .... Marie-Sophie (as Marie-Sophie Pochat) リスニング;映画製作、ニュース解説、など種々の会話が交錯する。 H O M E > 体験編 > 映画の世界 > コメント集(21) © 西田茂博 NISHIDA shigehiro |