映画の世界

コメント集(29)

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  1. 父ありき
  2. 母を恋わずや
  3. 菊五郎の鏡獅子
  4. 男はつらいよ・寅次郎かもめ歌
  5. 終電車 Le dernier metro
  6. 阿弥陀堂だより
  7. タクシー・ドライバー Taxi Driver
  8. 砲艦サンパブロ Sand Pebbles
  9. 男はつらいよ・口笛を吹く寅次郎
  10. レオン Leon
  11. 男はつらいよ・拝啓寅次郎様
  12. トラフィック Trafic
  13. 半落ち
  14. 淑女は何を忘れたか
  15. 男はつらいよ・寅次郎物語
  16. 深い河
  17. 男はつらいよ・寅次郎の休日
  18. イブラヒムおじさんとコーランの花たち
  19. 青い山脈

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今年見た映画(2005年)

父ありき 2005/03/22

父ありき父を慕いながらさまざまな事情で一緒に暮らすことができなかった息子の思いをつづる。残念ながら小津の作品の中では最も音声の保存が悪い。ほとんど聞き取れない部分や雑音が多く入ってしまっている。

堀川周平は金沢で中学校の数学教師をしていた。妻は息子の良平が小さい頃亡くなり、再婚もせずに二人きりで暮らしていた。そのせいか周平はいつも良平のことを気にかけ何かにつけて励まし、息子も父親の言うことをよくきいていた。

学校の修学旅行で東京に出かけたときに事故が起こった。周平が3年間面倒を見てきた生徒が、箱根の芦ノ湖で勝手にボートをこぎ出し湖の真ん中で転覆して溺死したのだ。周平は責任を感じ、同僚の平田たちの止めるのもきかず教師を続けることをやめる決心をする。

周平は良平を連れて自分の生まれ故郷の信州上田に戻ってきた。親しかった和尚の世話もあって役場に勤めることができ、良平も土地の学校になじんだ。やがて良平は中学校に合格し、寄宿舎にはいる。周平は良平が将来大学まで進むことも考えて、東京に出てもっと収入のある仕事を目指す。良平は悲しんだが父親のいうことをきいて二人は別々の生活が始まった。

やがて良平は順調に高等学校を出て仙台の大学に入り、さらに秋田の学校で化学の教職が決まった。相変わらず東京で元気に働く周平はいつまでたっても息子と一緒に暮らせなかったが、時々温泉や釣りをしに落ち合って、東京に来たがる息子に今の仕事や人生にできる限りのことをするようにと説得するのだった。

あるとき周平は碁会所でかつての同僚平田に出会う。平田も妻を亡くし、男の子とその姉のふみと3人暮らしだった。かつての金沢の学校の教え子が東京に十数人おり、周平のことを聞きつけて同窓会を開いてくれた。ちょうどその前日から良平も秋田から遊びに来ていたのだが、教え子たちの心遣いに大いに喜ぶ。

翌朝、周平は急に体の調子がおかしくなった。急いで病院に連れていったけれども良平の目の前で息を引き取った。それを見ていた平田は周平が息子に見守られて、できる限りのことを尽くした人生だったとしみじみ語った。

良平はふみと結婚し、秋田への汽車の中だ。自分が小学校以来一度も父親と暮らすことができなかったことを思い出し、ぜひ平田とふみの弟を秋田に呼んで一緒に暮らしたいものだと思う。(1942年モノクロ)・・・資料外部リンク

監督 小津安二郎 脚本 池田忠雄 柳井隆雄 小津安二郎 配役 堀川周平:笠智衆/良平:佐野周二/良平(少年時代):津田晴彦/黒川保太郎:佐分利信/平田真琴:坂本武/ふみ:水戸光子/清一:大塚正義/内田実:日守新一/和尚さん:西村青児

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母を恋はずや 2005/03/23

母を恋わずや全部で9巻のフィルムで構成されているが、最初の1巻と最後の9巻が紛失しているそうだ。息子の母親に対する心理描写が実に細かく現れている。女の部屋にJoan Clawford のポスターがかかっているのだが、これが何度も繰り返し映し出されるのはなぜだろう。

両親と二人の男の子の幸せな家庭が突然、父親の心臓麻痺による死によって崩れた。長男貞夫も次男幸作も小学生で、まだこれから先が長いのだが、それは母親千恵子の肩に全部かかってきた。それでも何とか二人は無事に成長し、二人とも大学生になることができた。

ある日、戸籍謄本を見た貞夫は自分が千恵子の本当の子ではないことを知る。貞夫を生んですぐ死んだ先妻の子だったのだ。貞夫は千恵子に向かってどうしてこれまで知らせてくれなかったかとなじり、そのことにいつまでもこだわっていた。やがて3人は郊外に小さな家を求めて引っ越しをした。

ある時幸作が伊豆旅行に行こうとして、母親に家の家計が苦しいから行っては駄目だと言われたとき、貞夫はどうして自分には家計の苦しさを教えてくれないのだろうといぶかる。千恵子はこれまで極力ふたりの兄弟を決して区別しないで育ててきたというのだが、貞夫から見ると自分が特別扱いを受け、幸作と違って厳しく叱られることもないのは千恵子が遠慮しているのだと思いこむ。

いったんそう思い始めたらその考えを吹っ切ることができない。幸作と喧嘩をして家を飛び出し、チャブ屋の知り合いの女のもとに転がり込んで、迎えに来た母親に向かって自分は一人暮らしが性にあっていると言って追い返してしまう。

だがそばでそのやりとりをきいていた掃除婦がぽつりと言った。「木の股から生まれてきたわけじゃあるまいし、母親を泣かせるんじゃないよ。うちの息子ももっとしっかりしていたら、私はこんなことはやっていないだろうよ」

貞夫はそれを聞いて我にかえった。自分の思いこみがいかにつまらないものであるかに気づき、すぐに母親の元へ帰った。しばらくして3人は再び家を買い、引っ越しをする。千恵子も改めて霊前の夫に報告することができた。(1934年・モノクロ・サイレント)・・・資料外部リンク

監督:小津安二郎 原作:小宮周太郎 配役 父梶原氏:岩田祐吉/母千恵子:吉川満子/長男貞夫:大日方伝/貞夫の少年時代:加藤清一/次男幸作:三井秀男/幸作の少年時代:野村秋生/岡崎:奈良真養/その夫人:青木しのぶ/ベーカリーの娘和子:光川京子/服部:笠智衆/光子:逢初夢子/らん子:松井潤子/チャブ屋の掃除婦:飯田蝶子

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菊五郎の鏡獅子 2005/03/23

鏡獅子六代目尾上菊五郎による追真の演技を記録映画として撮影したもの。歌舞伎舞踊。長唄。本名題《春興鏡獅子(しゆんきようかがみじし)》という。原曲《枕獅子》の廓趣味を排除し,傾城(けいせい)を大奥の女小姓の役に変えて筋をつけ,後ジテは立役の能様式の獅子の精に改作したもので,明治期の高尚好みの作品といわれる。

大奥の鏡曳きの余興に,御小姓弥生が踊るうちに,名匠の魂こもる獅子頭がのりうつり引かれて入る。獅子による軽快な身のこなしと勇壮な振り付けは外国人もうならせる圧巻である。(1935年・モノクロ)・・・資料外部リンク

監督:小津安二郎 撮影:茂原英雄 配役  舞:尾上菊五郎(六代目) 謡:松永和楓 三味線:柏伊三郎 太鼓:望月太左衛門

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男はつらいよ・寅次郎かもめ歌 2005/03/26

男はつらいよ・寅次郎かもめ歌柴又村の悪代官をやっつけて妹のさくらと再開した夢から覚めると、寅さんは久しぶりにとらやに向かった。ちょうど国勢調査の最中で寅さんがとらやの居住者かどうかもめているところだったのだ。博とさくらはとらやの店を担保に入れて貰い、月々のローンを払うことで念願の一軒家を近くに買うことができた。

寅さんは新居に自分が泊まる部屋まで用意してあるのに感動し、源公から無理矢理2万円を借りて、さくらたちに新築祝いとして手渡す。その金額の多さに驚いた博はこんなに受け取るわけにはいかないと返そうとするが、それに腹を立てた寅さんはすぐに旅に出てしまう。

北海道江差町では民謡のど自慢大会が開かれていた。久しぶりに集まった行商仲間の間で、大酒のみでギャンブラーの男のことが話題になる。だがその男はもうすでに病気で死んでいた。親しくしていた寅さんはせめて線香の一本もあげようと奥尻島に向かう。

島には一人のこされた娘、スミレがいて墓参りに連れていってもらった。母親はすみれが3歳の頃に姿を消し、海岸のあばら屋に彼女一人で暮らしていた。口数の少ないすみれだったが、東京に出て定時制高校に通いながら働きたいという希望を寅さんに話す。

自分の娘のような気がした寅さんはすみれを連れて柴又に戻ってきた。とらやの人々はいつものように気がいいからすみれが自立できるようになるまで店の二階に泊めてやり、定時制の入学試験のために博とさくらが特訓までしてくれた。

男はつらいよ・寅次郎かもめ歌試験当日、すみれは急におじけづき目の前の困難から逃げようとするが、寅さんは「大酒のみでばくち打ちの男の娘だからぼんくらなんだ、と言われてもいいのか」と言ってすみれを励ます。

試験は合格し、タコ社長の世話でセブンイレブンのパート店員の仕事も世話して貰った。すべては順調な滑り出しを始めた。父親代わりといっても寅さんはすみれの学校の送り迎えをし、学校では生徒たちの人気の的になってしまった。

そのころ、札幌に住む大工の貞夫はかつての恋人が奥尻島からいなくなっているのを知り、はるばる東京まで彼女を追いかけてくる。ちょっとした諍いで離れていた二人はもとのさやにもどる。

一晩電話連絡もせず戻らないのでとらやのみんなが心配する中、すみれは翌朝姿を現した。寅さんはすみれの姿をみて怒りで爆発しそうになったが、それを押さえてすぐに旅に出る。必ず幸せになるんだぞと言い残して。(1980年)・・・資料外部リンク

監督: 山田洋次 原作: 山田洋次  脚本: 山田洋次  キャスト(役名) 渥美清 (車寅次郎) 倍賞千恵子(さくら) 村田雄浩(菊地貞夫) 松村達雄(林先生) 米倉斉加年(青山巡査) あき竹城(スルメ工場のおばさん) 関敬六(テキ屋の忠さん) 杉山とく子(国勢調査のおばさん) マドンナ;伊藤蘭(すみれ)

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Le dernier métro 終電車 2005/04/02 (再)2012/12/17 (再)2023/08/23

終電車演劇の世界の内幕を扱った作品としては、「コーラスライン」「スター誕生」など、数多い。この映画はドイツ占領下のパリで稽古に励む演劇グループを描いたもの。当時はドイツ軍による厳しい夜間外出禁止令があったために、人々は終電車に乗り遅れることは決して許されなかった。

パリ市民たちは毎夜劇場や映画館に殺到した。おかげで演劇会は盛況をきわめていたが、モンマルトル劇場の演出家、ルーカス・シュタイナーはユダヤ人であったため、ドイツの収容所にいつ送られるかもしれず、劇場の地下に隠れて海外へ逃亡する機会を狙っていた。

表向きはルーカスがすでに国外に出てしまったとしながらも、シュタイナー夫人であるマリオンが毎日夫の居室に通って身の回りの世話をしていた。そして彼女が女優をやるかたわら、演出家、衣裳道具係、門番だけの小さな一座の座長としての仕事も引き受けていたのだ。彼女は美貌でありながら謎を秘めた女だった。

今、彼らはルーカスが姿を消す前に準備した「消えた女」というやや難解な北欧風の劇を始めようとしていた。それでマリオンの相手役としてベルナール、その他の役者を雇い入れる。毎日練習が始まった。ベルナールは見かける女は誰にでも手を出すような男だが、役者としてのすばらしい素質を秘めていた。

占領下にはさまざまな事件が起こる。闇市の品物を届けてきた女が実はドイツ軍人の愛人だったり、一座の者たちの財布の金がみな抜き取られたりする。ユダヤ人嫌いで上演された作品に痛烈な文章を書く批評家、ダクシアもいた。又、開演の際にはドイツ軍将校たちのためにいちばんいい座席は確保しておかなければならない。

終電車俳優たちの中にはほかの劇場や映画をかけもちして多忙を極めているものもいたし、衣装係はレスビアンだった。一座が借りている場所の管理人の息子は、まだ幼い少年ながらセリフを見事覚えたので、この作品に参加することになった。

地下室からどこにも行けないためにうんざりしていたルーカスは、壁にあいている穴を利用して、階上の舞台で行っている練習風景を聴くことができるようになった。おかげでマリオンを通していろいろな指示を送ることができるようになった。

マリオンは夫が見つからないように、何とか海外へ逃亡できるようにと神経をすり減らす。だが自分は夫のはじめたこの作品をなんとしても完成させ、成功させなければならない。

いよいよ初演の日がやってきた。みんなが緊張する中、マリオンもベルナールも熱演し、観客から喝采を浴びた。お祝いのキスを唇に受けたベルナールはすっかりマリオンのとりこになってしまう。だがまたもや辛らつな批評を書いたダクシアを殴るという事件を起こし、逆に彼女からは一切口をきいてもらえなくなってしまった。

ある日、ゲシュタボが劇場にやってきて地下室を見せろと言う。マリオンの機転とベルナールの協力で、危うくルーカスは捕まるところを免れた。ルーカスは別れ際に、ベルナールに向かって自分の妻が彼を愛しているのだと告げる。だが、仲間が連行されるのを見たベルナールは演劇をやめ、レジスタンスに加わることを決心した。

それから数年後、ノルマンジー上陸作戦の後、ドイツ軍はパリから撤退をはじめた。ようやく平和が戻ってくる兆しが見え、ルーカスも思い切って外に出た。戻ってきたベルナールと共に、3人は新しいモンマルトル劇場の幕開けを迎えたのだった。(1980年)・・・資料外部リンク

Directed by François Truffaut Writing credits François Truffaut (scenario) & Suzanne Schiffman (scenario) Cast: Catherine Deneuve .... Marion Steiner / Gérard Depardieu .... Bernard Granger / Jean Poiret .... Jean-Loup Cottins / Andréa Ferréol .... Arlette Guillaume / Paulette Dubost .... Germaine Fabre / Jean-Louis Richard .... Daxiat / Maurice Risch .... Raymond Boursier / Sabine Haudepin .... Nadine Marsac / Heinz Bennent .... Lucas Steiner / Christian Baltauss .... Bernard's Replacement / Pierre Belot .... Desk Clerk / René Dupré .... Valentin Chanson; Mon amour de Saint-Jean par Lucienne Delyleリスニング;フランス語

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阿弥陀堂だより 2005/04/06 (再)2024/02/06

阿弥陀堂だよりのどかで心の洗われる信州の風景を舞台に、故郷に戻ってきた夫婦と村の人々との交流を描く。映画がまさに「 Life goes on (人生はめぐりゆく)」という真実をいろいろな角度から表すことができることの実例である。スローペースで進む話の展開が何ともいい。

長野県、木島平村の阿弥陀堂にいたわり合いながらゆっくり登って行く夫婦の姿があった。妻の上田美智子は東京では腕利きの医師だったが、流産と仕事の重荷から心を病み、夫孝夫の実家のあるこの村に、無医村地区の診療所で働くためにやってきたのだった。

阿弥陀堂では管理をしているおうめ婆さんにお茶をごちそうになり、孝夫の親たちが住んでいた家に落ち着くことになった。美智子はまだ病気が完全に治らないので、診療所での仕事は一日おきにしてもらったが、その日から近隣の農民たちの評判は上々で、隣にある保育園の子供たちとも仲良くなる。

孝夫は10年前に新人賞をとって以来、泣かず飛ばずの作家で、暇なため故郷では「花見百姓」(桜の花に見とれて少しも仕事が進まない百姓)などというあだ名で呼ばれていたりしたが、妻が少しでも病気が回復して、この土地になじむようにと心を砕くのだった。自らも農作業の手伝いや広報誌配りをかってでる。

おうめ婆さんは96歳だという。阿弥陀堂から見える里、そしてその背後に見えるアルプスの風景を見ながら茶飲み話をしているうちにこんな高齢になってしまったのだそうだ。上田夫妻は婆さんの生き方にすっかり惚れ込んでしまう。

ある日回ってきた広報誌に、「阿弥陀堂だより」というコラムがあった。おうめ婆さんのつぶやきをまとめたものなのだが、それは喉の病気で声のでない小百合によって書かれていた。上田夫妻は、先輩である幸田夫妻を訪ねる。幸田は末期の胃ガンなのだが、一切医者に診察をさせず、毎日何事もないように妻のヨネと暮らしている。幸田に形見として日本刀を譲り受けた孝夫は幸田の生き方にも感銘を受ける。

季節は過ぎ、春から夏へと変わってゆく。村の風景は息をのむほどに美しく、変化に富んでいる。美智子はすっかり仕事にも土地にも慣れ、東京では常用していた睡眠薬がなくともぐっすりと眠れるようになった。

ある日小百合の診察をした美智子は彼女の喉に肉腫ができているのを発見する。彼女の専門だったため、遠く離れた町にある総合病院の中村医師と協力して無事小百合は快復した。治療の最中、美智子は中村に自分が東京で悩んだ医師としての生き方を語る。

幸田は息を引き取った。だが村の季節も生活も変わりなく進んでゆく。秋から冬へと村は真っ白な雪に覆われた。近づく春におうめ婆さんはあいも変わらず毎日の仕事に忙しい。美智子の体には新しい命が宿っていた。(2002年)・・・資料外部リンク

監督:小泉堯史 脚本:小泉堯史 原作:南木佳士 配役 上田孝夫:寺尾聰/上田美智子:樋口可南子/幸田重長:田村高廣/幸田ヨネ:香川京子/助役:井川比佐志/中村医師:吉岡秀隆/小百合:小西真奈美/おうめ婆さん:北林谷栄/田辺:塩屋洋子/ 村長:内藤安彦/鬼剣舞:荒野祥司

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タクシードライバー Taxi Driver 2005/04/11= 2012/08/02

Taxi Driver大都会の孤独と闘うために、拳銃を使って正義を通そうとした男の喜劇。ベトナム帰りのもと海兵隊員が社会から孤立させられ、すさんだ都会の人間関係の中で行動を起こすことで、自分の存在を確認しようという、そのやり方は実にむちゃくちゃなのだが、不思議にも何か共感させられるところがあるのだ。

トラビスはベトナム戦争から帰還して名誉除隊になったばかりだった。ニューヨークに小さなアパートを借りてタクシーの運転手になることにした。もともと体力はあったから、毎日深夜の12時間労働はじきに慣れ、収入も増えた。

トラビスから見ると、盛り場をうろつく売春婦、麻薬の売人、オカマ、ギャングなどみな人間のクズに見えた。だが自分といえば、ただ毎日同じ労働を繰り返すばかり。お金には困らないが何も人生に起こらない。このまま自分の殻に閉じこもっていても、バカげていると日記に書き記す。

ある日、大統領候補のパランティン事務所の前を通りかかると中に自分好みの女がいた。すっかり惚れ込んだトラビスはそれから毎日事務所の中にいる彼女を見つめるようになる。ついに意を決して事務所に入り、選挙に協力するボランティアになりたいと称して彼女に近づくことに成功する。

ベッツィというその女は、自分と同僚のトムとの空虚な関係を見透かされ、トラビスの変わった人生観に惹かれもする。いったんは映画のデートに応じさえするが、ポルノ映画館に連れて行かれたために怒り心頭に発し、その後は一切電話にも出なくなった。偶然に乗車してきたパランティンも口先だけの平凡な政治家に過ぎなかった。

Taxi Driver再びトラビスの孤独な生活が始まる。タクシー仲間は乗せた客の噂をするばかり。自分も変質者を乗せて危うい目にあったことも何度か遭った。だが、同じパターンが長い鎖のように続くばかり。何か人生を変えることをしたい!

それでトラビスはある日一大決心をする。拳銃を買い込み、なまっていた肉体の訓練を開始した。「人間のクズ」どもをやっつけてやるのだ!もともと海兵隊員だったおかげで、身のこなしは素早く、拳銃の命中率も向上していった。

ある日行きつけのコンビニで買い物中、金目当ての拳銃強盗が押し入った。トラビスは日頃の訓練の成果とばかり、その犯人を射殺する。トラビスは自分のやり方にいっそう自信を深めたのだった。

ある日タクシーに助けを求めてきた少女がいた。トラビスがどうしようかと迷っているうちに追っ手の男が追いついてこの女を無理矢理連れ去っていった。しかも口止め料として紙幣をトラビスの運転席に残していった。

トラビスは助けを求めていた少女を放置したことを気にして、彼女の住んでいるところを探し、ついに見つける。彼女はアイリスといい、マシューという名の男によって売春をさせられていた。客を装ってアイリスに近づいたトラビスは早くこの世界から足を洗って親元に帰るように勧めるが、そんな説教じみたやり方では、彼女に効果はなかった。

大統領選挙も大詰めに近づいた頃、コロンバス・サークル(広場)で演説会をしていたパランティンに、拳銃で身を固めたトラビスは近づいていってパランティンを狙撃しようと試みるが警備の人間に見つかって失敗した。

次の行き先はもう決まっていた。アイリスを救出するのだ。マシューやその一味が住むクズどもの巣窟だ。トラビスはマシューを、そして客や売春宿の管理人を次々と撃ち殺す。自分も撃たれて意識不明の重傷を負う。

トラビスは回復した。再びタクシーに乗務している。アイリスの両親からは再び娘を取り戻してくれたことで感謝され、新聞にも載った。新聞記事を読んで再び近づいてきたベッツィには、料金をただにしてやるほどの余裕を身につけたようだ。(1976年)・・・資料外部リンク

Directed by Martin Scorsese Writing credits Paul Schrader (written by) Cast: Robert De Niro .... Travis Bickle (as Robert DeNiro) / Cybill Shepherd .... Betsy / Peter Boyle .... Wizard / Jodie Foster .... Iris Steensma / Harvey Keitel .... 'Sport' Matthew / Leonard Harris .... Sen. Charles Palantine / Albert Brooks .... Tom リスニング;ニューヨーク英語

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砲艦サンパブロ The Sand Pebbles 2005/04/13

砲艦サンパブロ原題は「砂のような小石」である。舞台は中国の揚子江であり、戦乱の中に中国人やアメリカ人がはかなく命を落とした。3時間以上に及ぶ長編でありながら、少しもその長さを感じさせないのは、単なるアクションではなく次々と人間が登場するからである。

西部劇でのインディアンの存在の無視、アフリカでの物語での黒人の存在の無視はアメリカ映画では普通のことである。ところが、この映画では良かれ悪しかれ中国人がストーリーの中心に出てくる。その点で非常に「非」ハリウッド的映画である。

時は1926年。南京事件の近い中国。世界の列強が勝手に中国に入り込み利益を欲しいままにしたために、中国人民の間には怒りが高まっていた。そのころ蒋介石率いる国民党が次第に南部で勢力を伸ばしていたが、一方でソ連の後押しで共産軍も急速に勢力を伸ばしていた。

ジェイクはユタ州出身の水兵だが、機関長としてのすぐれた腕を持ち、中国周辺を警備するアメリカの艦船で仕事をしてきた。このたび上海周辺に停泊している小さな砲艦サンパブロに転属になった。上海への道すがら、連絡船の甲板でシャーリーという若い女性と知り合いになる。彼女はバーモントの出身でこの中国で教師の仕事をしようと伝道所へ向かうところだったのだ。

サンパブロはコリンズ艦長以下30数名の小さな船であった。機関士の腕は一流だが、コリンズはどうしてジェイクはこんなに転属が頻繁にあるのかいぶかしく思う。ジェイクが船内の勤務について驚いた。中には大勢の中国人が居着いていて、船の出す余り物や残飯を食べながら暮らしていたのだ。

酒場ではフレンチという同僚と仲良くなった。ジェイクたちの前に英語を話せる新しいホステス、メイリーが現れ、自分は200ドルあれば自由の身になって上海に逃げることができると聞き彼女に惚れ込んだフレンチは何とか200ドルを工面することを考える。

砲艦サンパブロ中国人ボスのチャンはジェイクが勝手に機関室を動き回るのをいやがった。演習航海に出た日、ジェイクはベアリングが壊れていて事故になると艦長に告げるが、チャンがすべて取り仕切っているからと取り合ってもらえない。だが副艦長が故障を見て機関員たちは修理に取りかかる。運悪くベアリングが途中で割れ、チャンはつぶされて死ぬ。

サンパブロでの初の死人に、居着いている中国人の間にも動揺が広がった。困った艦長はジェイクにチャンの後継者を養成するように命じた。ポーハンという若者が選ばれたが、乗組員の一人にいたぶられたために、喧嘩になり、ポーハンとその男は行きつけの酒場でボクシングで勝敗を決することになった。自分の持ち場とプライドをかけて闘ったポーハンは非力ながら最後にはうち勝ち、同僚たちと賭けをしていたジェイクは200ドル以上をものにする。

そこへ緊急の召集ドラが鳴り、サンパブロは揚子江上流にいるアメリカ人宣教師を保護するために川をさかのぼることになった。そのころ急速に中国人の間では西洋人に対する反感が広がりつつあり、命さえ危険にさらされるかもしれなかった。

洞庭(トンチン)湖まで達し、長沙(チャンシャー)の町にたどり着いた船は、そこでジェイクは宣教師と一緒に中国人たちに教えているシャーリーと再会する。二人を連れて戻った船は途中の港でアメリカ領事館が国民軍に徴発されてしまっていることを知る。この町の反米感情は高まっていた。

しかもポーハンのことを妬んだ船内に居着いている中国人のボスが彼を町にわざと使いに出した。共産軍に裏切り者として捕まったポーハンは沖に停泊するサンパブロ号の目の前で磔にされる。ポーハンの早く自分を殺してくれという叫びに我慢できなくなったジェイクは艦長が止めるのも聞かずボーハンを射殺するのだった。

上海に戻ってきたが、町はすっかり反外国人一色になっていた。行きつけの酒場以外はどこにも行けず、乗組員たちはまわりを海上デモを続ける中国人たちの小舟に囲まれて身動きすることもできなかった。外交関係の緊張が続く中、相手の挑発にのることはできない。国際問題に発展するかもしれないのだ。川の水位が下がり、彼らはひと冬をここに錨を降ろしたまま過ごすことになった。

フレンチとジェイクは約束通り200ドルを払ってメイリーを解放しようとしたが、値をつり上げようとする店主に腹を立て町中の部屋に彼女を住まわせることになった。フレンチとメイリーはジェイクとシャーリーの前で結婚式を挙げ、激動の時代の中で夫婦になった。ジェイクとシャーリーも感じるところがあったが、水夫と伝道所で働く教師では一緒に暮らす見込みなど立つはずもない。

冬が過ぎようとしていた。シャーリーは宣教師と共に上流にある伝道所へ向かってジャンクに乗って去っていった。フレンチは夜中に港まで冷水の中を泳いでメイリーと会いに行っていた。ある日、ジェイクは領事館宛の書類を届けることを命じられ町に上陸するが、妊娠しているメイリーの部屋を訪ねてみると体をこわしていたフレンチはもう息がなかった。そこへ地区の委員会と名乗る男たちが乱入し、ジェイクは殴られ無理矢理港まで連れ去られた。

ジェイクが砲艦に戻ると驚くべき事が起こっていた。これまで船に居着いていた中国人たちが次々と水に飛び込んで脱出し、ジェイクはメイリー殺しの犯人として身柄を引き渡すようにと市の代表が無数の小舟で包囲して言ってきたのだ。艦長はアメリカ国籍の人間を引き渡すことができないと断固拒否する。

だが、次々と起こる事件はみなジェイクのせいだと思っていた乗組員たちはジェイクに向かって自ら出頭せよと合唱し、艦長の射撃命令を無視した。艦長は自ら中国の船に向かって威嚇射撃を行い、そのあと船室にこもる。乗組員たちは我にかえり持ち場に戻ったが、反乱にあっては艦長は自ら命を絶つしかない・・・

その時緊急指令が入り、中国全土で騒乱状態が発生したことを告げていた。艦長は今回の失態を覆い隠すためにも、アメリカ人救出のために再び長江の上流に向かうことを決意する。しかし上流には両岸からいくつもの船を丈夫な綱で結んで、大河の要塞になっている。それを突破しなければその先にいる宣教師たちのもとへ行くことができない。

すでに中国全土でアメリカ人が何人か死に、これまで控えてきた砲撃も許される。サンパブロ号は要塞に向かって突進し、砲撃でこれをうち破る。小舟の船腹につけてなだれ込み、白兵戦になった。ジェイクは戦闘の中でシャーリーの教え子だった青年も倒さなければならなかった。彼は綱を切断し、砲艦は要塞突破に成功した。

だが、伝道所に着いてみると宣教師は救出されることを拒み自分は無国籍者になったのだと言明するが、暗闇の中から狙撃兵が彼を射殺した。救出隊のうち、艦長も撃ち殺され、シャーリーを救うため自分があとに残って援護するとジェイクは言い張る。しかし彼女は予感していた・・・(1966年)・・・資料外部リンク

Directed by Robert Wise Writing credits Richard McKenna (novel) Robert Anderson Cast : Steve McQueen .... Jake Holman / Richard Attenborough .... Frenchy Burgoyne / Richard Crenna .... Captain Collins / Candice Bergen .... Shirley Eckert / Emmanuelle Arsan .... Maily (as Marayat Andriane) / Mako(岩松信) .... Po-han / Larry Gates .... Jameson / Charles Robinson .... Ensign Bordelles / Simon Oakland .... Stawski / Ford Rainey .... Harris / Joe Turkel .... Bronson / Gavin MacLeod .... Crosley / Joe Di Reda .... Shanahan (as Joseph di Reda) / Richard Loo .... Major Chin / Barney Phillips .... Chief Petty Officer Franks リスニング;英語と中国語

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男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎 2005/04/17

男はつらいよ・口笛を吹く寅次郎今年は博の父親が亡くなって3年目。中国地方を旅していた寅さんは、備中高梁に立ち寄って、博の代わりに墓参りに訪れる。寺の境内の階段を下りるところで、この寺の和尚とその娘、朋子に出会った。寅さんが遠く東京からやって来たときいて二人はぜひ寺に立ち寄るようにとすすめる。

その晩、和尚と寅さんはすっかり意気投合し、一晩泊まることにした。もちろん朋子も強くすすめるので。翌朝出発しようとする矢先、法事の迎えにタクシーがやってくるが、和尚は前の晩に飲み過ぎて二日酔いになりふらふらだ。寅さんは急遽代理としてつとめることになった。

帝釈天で小さい頃から遊んでいただけあって、お経のあげ方はわかっている。しまいめには見事な法話で出席者の喝采を浴び、寅さんは一躍町の人気者になってしまった。それからというもの、和尚の助手として法事に、寄り合いに活躍することになってしまった。

朋子は一回結婚に失敗し戻ってきて父親の身の回りの世話をしている。寅さんはもちろん夢中になってしまい、毎日が楽しく過ぎて行く。朋子には一道という弟がいるが、せっかく入った大学の授業にも出ず、カメラを片手にそこら中を歩き回っているために、父親とは口も聞かない。

男はつらいよ・口笛を吹く寅次郎博の父親の法事が近づいてきた。さくらや満男も連れて博と兄姉たちが高梁に集合した。和尚のあとにくっついている寅さんを見てさくらはショックを受ける。とらやでは寅さんがいったいどうやって寺に居着いてしまったのかといぶかり、今度の恋の相手は誰だということになった。

一道は大学の授業料をカメラに使ってしまったことがばれ、父親に追い出される。東京にいる友だちを頼って働きながら写真家になる修行をしに行くといい、恋人のひろみをおいて列車に飛び乗ってしまった。

町には和尚が寅さんを婿養子にしてお寺を継がせるのではないかといううわさが広まった。和尚が風呂に入っていたとき、すぐ近くに寅さんがいるのに気づかないまま、娘に向かって寅さんとの結婚話をしてしまう。居づらくなった寅さんは書き置きを残していったん柴又へ帰る。住職になるのはなかなか大変だし、年月もかかると分かった。

突然ひろみが上京してきた。一道ととらやで再会することができた。しばらくして弟のことが心配で朋子も上京してきた。とらやの人々が若い二人のことを親切に世話してくれたことを聞いて安心した朋子だったが、実は寅さんの「真意」を確かめたかったのだ。

肝心のことは朋子が柴又駅のホームから電車に乗り込む瞬間まで先延ばしされた。朋子がどんな返事を求めているかは寅さんは十分に承知しているのだが・・・(1983年)・・・資料外部リンク

監督: 山田洋次  原作: 山田洋次  脚本: 山田洋次 キャスト(役名)渥美清(車寅次郎) 倍賞千恵子(さくら) 中井貴一(一道) 杉田かおる(ひろみ) 下絛正巳(車竜造) 三崎千恵子 (車つね) 前田吟 (諏訪博) 太宰久雄  (社長) 佐藤蛾次郎 (源公) 吉岡秀隆  (諏訪満男) 笠智衆  (御前様) 松村達雄 (和尚) マドンナ;竹下景子 タケシタケイコ (朋子)

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Léon レオン 2005/04/21

Leonミルクを飲む腕利きの殺し屋とギャングに家族を殺された少女との物語。いずれもきわめて特殊な境遇にありながら恋人同士でもなく父親と娘でもない、不思議な関係が取り持つドラマがすさまじいアクションの中で展開する。

ニューヨークのリトル・イタリー地区はイタリアからの移民が住んでいる。「ゴッドファーザー」に描かれているように、マフィアのボスたちの間に抗争が絶えない。レオンは19歳でアメリカに上陸してから、レストランを経営するトニーを通じてずっと敵を始末する「掃除屋」の仕事に携わってきた。

彼は酒も飲まずトレーニングを欠かさずのどが渇けばミルクを飲むのだった。無口な彼は観葉植物を愛していた。毎日目が覚めると窓を開けて植木鉢に日を当ててやるのだった。そのひょうきんそうな風貌はなにか田中邦衛を思い出させる。しかしその植物と同じく彼も孤独な根無し草だった。

ある日仕事を片づけて自分が一人住むアパートの部屋に戻ろうとすると、階段の踊り場に煙草をふかす少女がいる。同じ階に住む五人家族の次女であるマチルダは顔が赤く腫れ、どうも家族から殴られたようだった。

再び同じ場所で会ったとき、レオンはマチルダにミルクを買ってきて貰うことになった。それからしばらくしてマチルダたちの部屋にスタンフィールドという男をボスに、ギャングが乱入する。マチルダの父親が麻薬を隠していたらしくそれをかぎつけた連中が家族の皆殺しにやってきたのだ。

Leonすさまじい銃声がして、マチルダ以外はみな殺された。マチルダの4歳の弟も殺された。レオンは買い物に行っていて命拾いをしたマチルダをその晩自分の部屋に泊めてやる。まだ12歳ぐらいなのに自分は18歳なのだという。マチルダにはもう身寄りもない。町に出ればスタンフィールド一味に命をつけねらわれるだろう。

一人暮らしに慣れたレオンは大いに迷惑がるが、仕方なくしばらくマチルダを保護してやることにし、ホテルに部屋を借りて二人で住んだ。マチルダはレオンの仕事に憧れ、自分の弟を殺した連中に復讐したいから「掃除屋」の仕事を教えてくれと頼み込む。

はじめはいやがっていたレオンだが、少しずつマチルダとの生活にも慣れ、ピストルの扱いなどを教えてやる。二人の間には不思議な感情が芽生えてきた。親子でも友だち同士でもなく、又あまりにも歳が離れてもいて恋愛感情でもなく。

「仕事」に同行させるまでになった。目指すアパートの行くと、呼び鈴を鳴らして中に侵入する方法も教えた。「獲物」を追いつめて最後に始末するときの銃の撃ち方も伝授した。マチルダのことを本当に思いやるようになったレオンはある日トニーに向かって自分に何かあったらその金をマチルダに渡すように頼むのだった。今までは片目を明けて椅子で仮眠を取っていたのに、二人は同じベッドに寝ることになった。レオンはいつか自分も根を張った生活をしたいと思い始めていた。

マチルダはある日スタンフィールドの居所を突き止める。レオンが一人で仕事に行った時を狙って自らピストルを持ってスタンフィールドのいるビルに入っていった。だがすぐに見つかってしまい危うく殺されるところだったが、仲間の一人がチャイナタウンで殺された知らせ(実はそれはレオンがやったのだ)を聞いて彼は急遽その場を離れる。アパートにマチルダがいないことに気づいたレオンは書き置きを見て現場に乗り込みスタンフィールドの部下たちを射殺してマチルダを救出した。

スタンフィールドはトニーのところに出かけていってトニーのシマで自分の部下が殺されたことを口実にレオンの居所を聞き出す。大勢の部下たちがレオンの住むアパートに侵入した。はじめのうちはよく戦っていたが、多勢に孤立無援となったレオンは体の小さいマチルダを通風口から脱出させようとする。もちろんマチルダはその先のことを予感していてどうしても逃げたくないと言ったが、無理矢理レオンは彼女を行かせるのだった・・・(1994年)・・・資料外部リンク

Directed by Luc Besson Writing credits Luc Besson Cast : Jean Reno .... Leon / Gary Oldman .... Stansfield / Natalie Portman .... Mathilda / Danny Aiello .... Tony / Peter Appel .... Malky / Willi One Blood .... 1st Stansfield man / Don Creech .... 2nd Stansfield man / Keith A. Glascoe .... 3 rd Stansfield man / Randolph Scott .... 4 th Stansfield man / Michael Badalucco .... Mathilda's Father / Ellen Greene .... Mathilda's Mother / Elizabeth Regen .... Mathilda's Sister / Carl J. Matusovich .... Mathilda's Brother / Frank Senger .... Fatman / Lucius Wyatt Cherokee .... Tonto (as Lucius Wyatt 'Cherokee') リスニング:英語。レオンはイタリアからの移民ということで、簡単な英語しかしゃべらない。

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男はつらいよ・拝啓車寅次郎様 2005/04/29

男はつらいよ・拝啓車寅次郎様寅さんの甥、満男はだんだん寅さんに似てきたとまわりから言われる。だがどんなふうに似てこようとも、寅さんのあの他人の気持ちの悩みや寂しさを分かち合うことのできる性格は満男が誇りに思っていることなのだ。

ある街で寅さんは売れない女性歌手と郵便局で出会う。彼女の顔を見た寅さんは目と目の間をじっと見つめて大器晩成の顔だからこれから一生懸命がんばれと励ますのだった。喜んだ歌手は寅さんの後ろ姿を追い続けるのだった。

一方満男は就職したばかりの靴屋の営業がうまくいかず、だんだん仕事がいやになってきたところだった。そこへちょうど寅さんが帰ってきた。とらやの茶の間で鉛筆を売るところを披露する。今日の晩飯や宿代がかかっている寅さんの売り方は見事で、満男は寅さんの生き方に改めて感心する。

翌日満男は久しぶりに寅さんと飲もうと思ったのだが、いつものようにとらやの家族と喧嘩してまたどこかへ旅に出てしまった。満男は日頃の仕事の疲れもあって、気分転換のために琵琶湖の長浜にいる先輩、川井信夫の招きに応じてお祭り見物に出かけることにした。

着いてみるとそこは大きな屋敷で、両親と妹の菜穂が住んでいた。満男は祭り見物や街の中を案内してもらっているうちにすっかり菜穂と仲良くなってしまった。実は兄の信夫は満男を菜穂の将来の結婚相手にしようかともくろんでいたのだが・・・

一方寅さんは琵琶湖の湖岸をさまよっているうちに、鎌倉の奥様で写真撮影に夢中の典子という女性に出会う。別れ際に彼女は岩の上で足を滑らして手を脱臼してしまい、二人は同じ旅館に泊まることになる。典子は仕事で少しも自分にかまってくれない夫との生活からの息抜きもかねて、自分で車を運転して琵琶湖にやってきていたのだ。寅さんは彼女の淋しい気持ちを和らげる。だが、怪我の報告を聞いて駆けつけてきた夫が迎えに来た。

男はつらいよ・拝啓車寅次郎様満男は短かったが楽しかった休日を終え東京に戻った。菜穂とは気持ちが通じ合っていたつもりだったが、信夫がやってきて、自分の言い方が悪かったために菜緒は怒りだしてしまった、この話はなかったことにしてくれと言い出す。

そこへ寅さんが戻ってきて、鎌倉まで車を運転して連れていってくれという。実は寅さんと行き違いに典子はとらやに姿を見せていたのだ。気になった寅さんは自宅から出てきた彼女の幸せそうな姿を車の窓から見ていた。話しかけることもなく遠くから見て安心した寅さんは満男に引き返すようにいい、二人は江ノ電の「鎌倉高校前」駅で別れる。

せっかく生まれかけた恋を失ってがっかりした満男は何もかもつまらなくなってしまった。正月が来てもふてくされてみんなの話の輪にも加わりたくない。一人中川の堤防を歩いていると、そこに菜穂の姿があるではないか!寅さんはそのころ島原にいた。あの売れなかった歌手が大ヒットし、寅さんの姿を見つけてぜひ今夜のコンサートに来てくれという。(1994年)・・・資料外部リンク

監督: 山田洋次 脚本: 山田洋次 朝間義隆 キャスト(役名) 渥美清 (車寅次郎) 倍賞千恵子(さくら) 小林幸子(歌手) 吉岡秀隆(満男) 牧瀬里穂(川井菜穂) 下絛正巳(竜造) 三崎千恵子(つね) 前田吟(博) 太宰久雄(社長) 佐藤蛾次郎(源公) 山田雅人(川井信夫) 平泉成(宮幸之助)マドンナ;かたせ梨乃(宮典子)

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トラフィック Trafic 2005/05/01

トラフィックフランス映画には、あまりセリフを使わず、パントマイム的な喜劇進行で旅道中を描くジャンルがあるようだ。いわゆる「起承転結」の原則に沿った造りではなく、最後まで川の流れのように話が進んでいくのである。ハリウッド映画に毒されている人にとっては退屈に感じるかもしれない。だが、こういう映画の利用法もあるのだ。

その代表的なものとして、「素晴らしい風船旅行」がある。これは自由自在に旅ができる気球を発明した科学者とその孫の空中旅行だが、その大部分がフランスを上空から見た眺めを堪能させてくれる。

同様にこの映画では高速道路が舞台である。トラフィックの名の通り、至るところ車だらけだ。交通事故は頻発するしエンコした車を人々は押して歩く。時代はちょうどアポロ宇宙船が人間を月に送った年のこと。高速道路は車でいっぱい。

パリにある自動車メーカーでは、みんなが忙しく働いている。今度の新作キャンピングカーはユロ博士(監督自身が演じる)の手になるもので、非常に評判がいい。さっきアムステルダムから電話があって見本市に出品したいから至急車を運んできてくれとの依頼があった。

そこで広報係のマリアは自分の黄色い車に愛犬を乗せて出発。幌をはったトラックにはキャンピングカーを積んで出発。順調にいけば高速道路をとばしてその日のうちに着くはずだった。

ところがすぐにトラックはパンク。自動車の行き交う側道でのパンク修理は実に危険だ。やっと直ったと思ったらいくらも行かないのにガス欠。畑を横切ってどこかの村のガソリンスタンドまでタンクを持っていく羽目に。どうもそのあとクラッチの調子が良くない。仕方なく修理工場に入れて応急修理をして貰った。

トラフィックやっとの事でオランダとの国境までたどり着いたのだが、書類の不備で警察に出頭する羽目になってしまった。工夫を凝らしたキャンピングカーを見た警官たちは興味津々。テントを張ったり、バーベキュー装置を見たり、シャワーを出したり、ベッドを出してみたり。

おかげですっかり遅くなってしまった。見本市会場では会社の幹部が今か今かとやきもきして待っている。見本市は始まってしまい大勢の客がやってきたのだが、この会社のスペースだけは主がいないままだ。

ようやく警察から解放されたものの、田舎道で多重衝突事故に巻き込まれる。トラックに積んでいたキャンピングカーは衝撃で前部にへこみを作ってしまった。おまけにけが人をユロ博士が家まで送る羽目に。

夜が迫ってきた。オランダの運河のほとりにある修理工場に飛び込んで、明日の朝一番でへこみをなおして貰うことにする。マリアは犬とボートに眠り、男たちはガレージに寝た。翌朝修理人は一生懸命尚してくれるのだが、部品が特別だし、車体の色に合うペンキがないのでマリアが街まで買い出しに行くことになる。

やっと修理完了。アムステルダムに向けて一路トラックは走って行く。田園地帯から再び大都市圏に入って、渋滞がひどい。前の車とわずか30センチの間隔をあけたままでのろのろ進む。ようやく見本市会場に到着してみるともう閉会したあとで、後かたづけさえもだいぶ終わっていた。

だが、建物の外でキャンピングカーをおいていると人々が集まってきてこの車は大人気。見本市に出品しなくても注文が殺到したのだ。大役を果たしたユロ博士はマリアに付き添われて会場をあとにする。そこに大雨が降って、もうまわりの車は身動きがとれない・・・(1971年)・・・資料外部リンク

Directed by Jacques Tati Writing credits Jacques Tati and Jacques Lagrange Cast: Jacques Tati .... Monsieur Hulot (as Mr. Hulot) / Tony Knepper .... Mechanic / Franco Ressel Mario Zanuelli / Maria Kimberly .... Maria リスニング;フランス語、オランダ語、英語のチャンポン。だが別に聞き取れなくてもよい。映像を見ているだけで十分楽しい。

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半落ち 5/2/2005

アルツハイマーの妻殺しの男に嘱託殺人のいうことで実刑懲役4年の判決が言い渡された。報道関係者たちからは厳しすぎるという声がもれた。だが若き裁判官は(アルツハイマーによって)魂を失ったものも、失わないものもわれわれは殺す権利はないのだという結論を下したのだった。

男はかつては優秀な警部で部下の指導を一手に引き受けていた。だからこの男が自首すると、まず警察署内部での身内のかばいあいが表面化し、調書の捏造さえたくらまれた。また外部の報道機関にもことごとくこの警察の「恥部」がもれないように必死の工作が行われた。

だが、検察官はそんな様子を黙ってはいない。たとえ警察と敵対関係に陥る危険を冒そうとも、また自分の将来の出世コースが損なわれることになろうとも真実は貫かねばならない。すでに事件の真相に迫ろうと、ある新聞社の女性記者、人権問題でひとつ仕事を成し遂げようと考える弁護士が隠された事実を究明するために走り回った。

それによると男は数年前に急性白血病で息子を亡くした。骨髄移植をしてもらおうにも適当なドナーが見つからなかったからだ。息子の死のショックは妻にアルツハイマー病を引き起こした。男は自らドナーになることを決心してある新宿のラーメン屋に働く少年の命を助けることができたのだった。

妻はそのことを新聞記事で知る。男はドナーができる期限が50歳までということから、それを過ぎたときに夫婦で息子の元に行きたいと思っていたらしい。妻の頭は日々壊れていった。妻にとって、息子の死が何度も繰り返され、そのたびに耐えがたい苦痛を味わうのだった。

それを見ていた男はある日、妻を絞め殺す。妻の姉はその苦労を義理の弟に負わせたことを感じており、報道陣に向かって自分はあの男を恨んでいないと言うのだった。妻を殺した後、男は自分が命を救った少年の姿を見に新宿に向かう。

だが男は妻を殺した後自首するまでの空白のこの2日間について頑として誰にも明らかにしようとしなかった。裁判の場でも誰に質問に対しても、命を助けた少年のことを知らないと言い張った。そして4年の刑を甘んじて受けることにしたのだ。(2004年)・・・資料外部リンク

監督 ・・・  佐々部清 脚本 ・・・  田部俊行 佐々部清 原作 ・・・  横山秀夫 配役 梶聡一郎 ・・・  寺尾聰/梶啓子 ・・・  原田美枝子/藤林圭一 ・・・  吉岡秀隆/中尾洋子 ・・・  鶴田真由/植村学 ・・・  國村隼/佐瀬銛男 ・・・  伊原剛志/高木ひさ江 ・・・  奈良岡朋子/志木和正 ・・・  柴田恭兵/植村亜紀子 ・・・  高島礼子/島村康子 ・・・  樹木希林/石橋蓮司 井川比佐志

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淑女は何を忘れたか 5/4/2005

淑女は何を忘れたか大学の医学博士である通称ドクトルは妻と二人暮し。暇な妻は仲良しの女友達とおしゃべりをして時を過ごしている。そこへ大阪から姪の節子が遊びにやってきた。

若い節子はタバコを吸うのが大好き。最近は自動車にも凝り、なんにでも好奇心を持つ。ある土曜日のこといつもならとまりが毛でドクトルはゴルフに行くはずだったのに仕事のことが気になってどうも行く気がしない。だが妻に急き立てられいやいやながら家を出る。

ひそかに学生の岡田の下宿に向かうと、ゴルフ道具を彼の部屋に置いて街の居酒屋「ドンキホーテ」へ向かう。そこにはゴルフへ向かう友だちがいるからその男に妻宛の「アリバイ証明」用のはがきを託し、現地の伊豆で投函してもらうつもりなのだ。

ところがウィスキーを飲んでいるドクトルのもとへどこでどう聞いたのか節子が現れた。芸者を呼んでもらいたいという彼女の頼みをしぶしぶ聞いたドクトルは一緒に付き合うが、節子は飲みすぎて一人で帰れなくなってしまう。仕方なく岡田に頼んで自動車で自宅に送ってもらい、自分は岡田の部屋に泊まることになった。

午前1時を過ぎてしかも酔っ払って帰ってきた節子を見て妻はかんかんに怒る。しかも後日届いたはがきに改正と書いてありながら実際は大雨だったことからドクトルがゴルフに行かなかったこともばれて妻は絶対に許そうとしない。

妻に対して常にした出に出ようとするドクトルを見て、節子はふがいなく感じ、ドクトルにもっと妻に威厳を持ってあたるようにけしかける。その気になってドクトルは妻の頬にびんたを一発お見舞いするが、その後で節子が真相を語り、自分がやりすぎたことを知った妻はドクトルに自分の日を認めた。これを聞いたドクトルは大喜び。

だが鏡の前でニヤニヤしているドクトルを見た節子はそんな態度だから妻になめられるのだというと、ドクトルは済ました顔でまだ若い娘にはわからないだろうが、「逆手」にとり妻を持ち上げていい気持ちにさせるのが良いなどと得意げに説明するのだった。(1937年)・・・資料外部リンク

監督 ・・・小津安二郎 脚本 ・・・ 伏見晁 ゼームス・槇 配役 麹町の夫人時子 ・・・栗島すみ子 その夫小宮 ・・・ 斎藤達雄 大坂の姪節子 ・・・桑野通子 大学の助手岡田 ・・・佐野周二 牛込の重役杉山 ・・・坂本武 そのマダム千代子 ・・・飯田蝶子 大船のスター ・・・上原謙 田園調布の未亡人光子 ・・・吉川満子 その子藤雄 ・・・葉山正雄 近所の小学生富夫 ・・・突貫小僧 料亭の女将 ・・・鈴木歌子 女中のお文 ・・・出雲八重子 酒場のマダム ・・・立花泰子 大学の先生 ・・・大山健二

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男はつらいよ・寅次郎物語 2005/05/12

男はつらいよ・寅次郎物語寅さんの物語は次第に人生の味がじっくりと染みわたるようになってきたようだ。旅の先々で出会う人々とも、甥の満男との間でも寅さんの持ち味が至るところで広がっている。又、今回の作品は爆笑させるセリフのやりとりがとりわけ多い。

ある日、とらやに一人の男の子が迷い込む。寅さんからの年賀状を持った郡山から来た秀吉というこの子は、母親は行方不明で、父親は死ぬときに寅さんを頼って柴又へ行けと言ったのだという。

さいわい翌日寅さんが戻ってきて、実は秀吉の父親は渡世人仲間で、生前は酒ばくち女の限りを尽くした極道者だったという。妻のふでとの間に子供が産まれ名付け親は寅さんだった。さっそく寅さんは秀吉をつれて母親探しの旅に出る。

最初に出かけたのは和歌山県の和歌の浦にあるホテル。だが、ふでは客とのもめ事でそこを去っていた。次に訪れたのが奈良県の吉野であった。へとへとになった寅さんと秀吉は、ようやくふでが女中をしていたホテルにたどり着くが、すでにそこをやめてどこかに去っていた。

疲れがたまったのか、秀吉はその夜高熱を出した。医者を呼び、危ないところを命拾いしたが、夜通し看護をしてくれたのは、隣の部屋にたまたま泊まりあわせた、貴子のおかげだった。彼女は寅さんのことを(秀吉の)「お父さん」と呼び、寅さんは彼女を「お母さん」と呼んで親しくなった。

男はつらいよ・寅次郎物語貴子は軽自動車で関西地方の小売店で化粧品を売り歩くセールスをやっていた。この晩は待ち合わせた男がやってこなかったので死にたい気分だった。自分の選んだ人生にとかく絶望的になりそうな貴子を寅さんは励ます。貴子も自分が幼い命を助けることができて生きていてよかったと感じるのだった。

寅さんと秀吉は貴子と別れ三重県の伊勢志摩に向かった。そこにある真珠店に行く。ふでが大病をしたあと、今静養中であるという。息子に会いたいのにかなわずすっかり気落ちしているところだった。秀吉はめでたく母親と再会することができた。

秀吉は病気を看病して貰ったこともあってすっかり寅さんになついていた。だが一晩でもここに滞在してふでとの間が深入りしてしまうことを恐れ、心を鬼にして秀吉と別れを告げる。

大任を果たして寅さんは柴又に帰ってきた。御前様は寅さんは仏様に愛されているのだという。再び旅に出る寅さんを駅に見送る満男は自分の進路に悩み、ふと訊ねる。人は何のために生きるの?・・・寅さん答えて曰く、ああ、生きていてよかったなあと思うことが一生の間に何回かあるからじゃないかな。(1987年)・・・資料外部リンク

監督: 山田洋次 原作: 山田洋次 脚本: 山田洋次  朝間義隆 キャスト(役名) 渥美清(車寅次郎) 倍賞千恵子(さくら) 五月みどり(ふで) 伊藤祐一郎(秀吉) 下絛正巳(車竜造) 三崎千恵子(つね) 前田吟(諏訪博) 太宰久雄(社長) 佐藤蛾次郎(源公) 吉岡秀隆(満男) 美保純(あけみ) 笠智衆(御前様) イッセー尾形(警官) 笹野高史(白雲荘主人・長吉) 関敬六(ポンシュウ) すまけい(船長)マドンナ;秋吉久美子(高井隆子)

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深い河 2005/05/20

北の河遠藤周作の小説の映画化。人生に迷う一人の若い女のまえに、ガンジスの深い流れは変わることなく流れ続ける。デリーから出発した10数名の日本人観光客たちの乗ったバスは、深夜の街道をベナレスに向けてひた走る。数多くの日本人がアメリカやヨーロッパ、アジアに向かう中で、なぜこの人たちはあえてベナレスを選んだのか。

磯部はガンで妻を亡くした。妻は死の間際、自分がきっとこの世に生まれ変わるから、自分の化身を探してくれと言い残した。転生のことなどそれまで考えたこともない実直なサラリーマンだった磯部は、そのことばが気になりどこかで彼女と巡り会えることを信じてベナレスに向かったのだった。

ある心霊調査機関の報告によると、彼女の命はベナレスの近くに住む村の幼女に乗り移ったというのだ。磯部はベナレスに着くと、単身近郊の村を巡り、好奇心を持って集まってくる村人たちに聞いてまわり、占い師にも所在を教えて貰ったりしてあちこち探し回る。

榎波は第2次世界大戦中、インドで悲惨な戦いを生き延びてきた男だった。塚田という戦友が自分の命を助けてくれたこと、塚田は自分の命をつなぐために仲間の食糧を奪い、それがいつまでも心の傷となって深酒に浸り、最近死んだばかりであった。榎波はインドの土になった無数の戦友や、塚田のことを考えるためにガンジスのほとりにやった来たのだった。

美津子はかつて学生時代にもてあそんだ男、大津を探しにやってきた。大津はまじめなクリスチャンであったが、美津子に捨てられたことから神父への道を目指しフランスのリヨンの修道院で勉強していたこともあった。その時に美津子はパリにいる実業家の夫のもとへ行くすがら、大津と再会したこともあった。

ベナレスを流れるガンジス川大津はヨーロッパ人特有の善悪に分断する宗教観になじめず、普段から汎神論を口にしていたために、修道院側からとがめられ、エルサレムに行ったり、風の噂ではベナレスに流れていったということだった。美津子は自分の生き方がつかめないまま、なぜか大津にあって自分を確かめたかった。

ツアーのガイドが見せてくれた暗い寺院にある満身創痍のヒンディー教の女神を見て、美津子は何か自分の一生と重ね合わさるような気がして何度もその姿を見るのだった。榎波がマラリアの発熱で、美津子は一晩看護をし、榎波の苦しみを聞く。

大津が見つかった。彼はキリスト教会をやめ、ヒンディー教徒のアシュラム集団に入れてもらい、毎日行き倒れになった人々の遺体を担いでガンジス川の岸辺(ガート)にある死体焼き場に運ぶ手伝いをしていた。美津子はぼろぼろの服を着た彼の中に何か晴れ渡ったような心を発見していぶかしく思う。

大津と再会した翌日、美津子自身もほかの大勢のインド人と一緒にガートに立ち早朝の沐浴を行った。それは自分の生まれ変わりを象徴するようであった。何か自分の内部で変わりつつあるような気がした。そこへ「OOTSU !」という鋭い叫び声が聞こえた。タブーになっている死体置き場の撮影を強行した日本人カメラマンを追って、階段を駆け下りた大津が転倒したのだ。

日本への出発の時間が迫っていた。だが、病院の知らせから大津が危篤だという。一人インドに残ることに決めた美津子は病院に急行するが、「ぼくの人生はこれでいいんだ」と満足な表情を残して大津は死ぬ。美津子は大津の遺灰をガンジスの河に流すことになった。(1995年・東宝)・・・資料外部リンク

監督: 熊井啓原作:遠藤周作 脚色:熊井啓 キャスト(役名) 秋吉久美子(美津子) 奥田瑛二(大津) 井川比佐志(磯辺) 沼田曜一 (木口) 菅井きん(塚田の妻) 杉本哲太(江波) 沖田浩之(三條) 白井真木(三條の妻) 内藤武敏(住職) 香川京子(磯辺の妻) 三船敏郎(塚田)

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男はつらいよ・寅次郎の休日 2005/05/22

男はつらいよ・寅次郎の休日満男は大学生になったばかり。だが入学して少し時がたつと遊びに、アルバイトに、と勉強にあまり身が入らない。通学に片道2時間もかかる。やがてさくらの世話も何かうっとうしく、大学の近くにアパート暮らしをしたいと言い出した。さくらと博は息子が言うとおりにしないのですっかり手を焼いている。

そこへ突然高校のブラスバンドの後輩で、前作「ぼくの伯父さん」に出てきた及川泉が名古屋から突然とらやにやって来る。母親と別れて東京の職場にいるはずの父親一男に会いたくなったのだ。泉に恋している満男は引っ越しを急遽延期してすっかりうきうきしている。

満男は翌日一緒に都内の会社へ向かう。だが一男は連絡もせず会社を辞め、新しい女の故郷である九州へ行ってしまったのだという。がっかりしてとらやに戻ってきたところ、寅さんが帰ってきていた。寅さんに悩みをうち明けてすっきりした泉は翌日新幹線で帰ることになる。だが見送りに来た満男の前で泉は博多行きのきっぷを見せるのだった。

どうしても父親に会い、相手の女と別れさせたいという泉の言葉に、ろくに金も持っていない満男は自動ドアが閉まる前に列車に飛び乗ってしまう。目指すは大分県日田市。果たして父親は町中にある薬局を経営する女と一緒に暮らしていた。祭りの喧噪の中、父親と相手の女の交わすまなざしを見て、泉は別れてくれなどととても言えなかった。納得した気持ちで満男と二人で父親のもとを離れた。

男はつらいよ・寅次郎の休日一方、とらやに泉を迎えに来た母親、礼子と二人寝台列車に乗って駆けつけた寅さんは、満男と泉を発見する。その晩温泉旅館に泊まった4人は、まるで親子水入らずの旅行のようなふりをしたが、深夜礼子はもう戻らない夫との生活を思って号泣するのだった。

翌朝置き手紙を残して母娘は旅立った。バス停まで駆けつけた満男は泉の手を握って別れを惜しむのだった。満男はまた寅さんのおかげで人生の勉強をした。いったい幸せとは何だろう。泉の父親はあれで幸せなのだろうか?自分ももっと幸せになるためにどん欲になろう・・・(1990年)・・・資料外部リンク

監督: 山田洋次原作: 山田洋次脚本: 山田洋次キャスト:(役名)渥美清 (車寅次郎)倍賞千恵子(さくら)後藤久美子(及川泉)吉岡秀隆(満男)寺尾聰(一男)宮崎美子(幸枝)下絛正巳(車竜造)三崎千恵子(つね)前田吟(諏訪博) 太宰久雄(社長)佐藤蛾次郎(源公)笠智衆(御前様)マドンナ;夏木マリ(礼子)

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イブラヒムおじさんとコーランの花たち Monsieur Ibrahim et les fleurs du Coran 2005/05/27

イブラヒムおじさんとコーランの花たちパリに住んでいるのは白人だけではない。アフリカから、中近東から大勢の人々がこの街に住み着いている。一昔前(まだレコードで音楽を聴いていた頃)の裏町に暮らしていた少年と、食料品の店主の交流を描く。そして今も昔も変わらぬ街の息づかいが聞こえてくる。

ユダヤ人であるモモは、パリの裏町、ブルー通りに住む少年だ。母親はまだモモが小さいときに兄を連れて家を出て、今はアパルトマンに父親と二人暮らしである。16歳の誕生日を迎えた今日、モモは貯金箱を壊していつもブルー通りにたむろしている売春婦たちのひとり、シルビーに男にして貰った。

いつも暗い顔をしている父親は忙しくてモモが夕飯の支度をすることになっている。買い物は近くのイブラヒムおじさんのやっている食料品店に行くのだ。モモが買い物のたびに商品をくすねているのを知っているが、それで怒ることはない。むしろコーランの教えをそれとなく伝えてモモもその生き方を少しずつ変えて行く。

イブラヒムおじさんはトルコの黄金の三角地帯(ペルシャ近く)からやって来たのだという。モモにコーランを渡し、小銭の整理をさせたり、日曜日には散歩に行くなど次第に親しくなって、モモもすっかりおじさんを信頼するようになっていた。

イブラヒムおじさんとコーランの花たちある日父親が仕事をクビになった。ますます暗い顔をして落ち込んでいたが、突然モモを残して姿を消してしまった。わずかな有り金と、書棚一杯の書物をおいて行方不明となってしまったのだ。だが、父親は母は親と去った兄の方をかわいがっていた。数日後、警察がやってきて父親が自殺したことを告げる。

母親が訪ねてきたが、モモは塗装工のふりをして自分が息子であることを明かさなかった。今さら一緒に暮らしたいとは思わない。天涯孤独になってしまったモモは、イブラヒムおじさんの店へ駆け込んで、養子にしてくれるように頼んだ。おじさんは喜んで頼みを聞き入れてくれた。

故郷にいる妻に養子ができたことを知らせに行くためにおじさんは車を買い、大急ぎで免許を取って、モモと共に出発する。スイス、アルバニア、ギリシャ、そしていよいよトルコに入って奇妙な形をした岩が続く山や、平原を故郷の村へと向かった。

あの山の向こうが故郷だと言うとき、おじさんは車を止めてモモに下りろと言う。いぶかしく思ったが、何か予感がしたのだろう。夕暮れ、村からオートバイに乗った男がやってきて知らない言葉でイブラヒムの名を叫ぶので、モモはうしろに乗せて貰って村に急行した。おじさんの車は岩山の途中で車体がひっくり返り煙が上がっていた。

村に着くと、おじさんは農家の部屋に寝かされ虫の息だった。彼の妻も昔にこの世を去り、モモにコーランの教えを守るように言い聞かせると息を引き取った。モモは、パリに帰るとおじさんの店を受け継いだ。今日も商品をくすねようとする近所の子供たちに目を光らせながら店番をしている。(2003年)・・・資料外部リンク

Directed by François Dupeyron Writing credits François Dupeyron / Eric-Emmanuel Schmitt (novel) Cast : Omar Sharif .... Monsieur Ibrahim / Pierre Boulanger .... Momo / Gilbert Melki .... Momo's Father / Isabelle Renauld .... Momo's Mother / Lola Naymark .... Myriam / Anne Suarez .... Sylvie / Mata Gabin .... Fatou / Céline Samie .... Eva / Isabelle Adjani .... The Star リスニング;フランス語

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青い山脈 2005/06/03 (再)2023/12/16

青い山脈・吉永小百合主演「青い山脈」は何と5回も制作された。普通の人気映画でも2回が限度だが、この繰り返しは驚くべき事だ。これと同じ回数といえば、「伊豆の踊子」だ。今回の作品はその3回目に当たる。石坂洋次郎原作の小説の魅力は、至る所で爆発する若さのエネルギーとでも言えようか。

古い因習やしがらみをうち破って、未来へ向かって開放的になり、自分の好きな人を好きといえるこの明るさが、単純でありながら実生活では実現ができないところにこの作品の根強い人気があるのかもしれない。「キューポラのある街」の吉永小百合が主演で全体を引っ張っている。

ここはかつての城下町。街からは高台にその昔一族郎党が攻め寄せる敵を前に自害した領主一族が住んでいた城がそびえている。「貞淑女子学園」はその名の通り、女学校で、この地域の乙女たちがいずれは嫁に行く前の最後の学生生活を過ごすところでもある。

新任の島崎先生は、東京からやって来たばかりだが、その美しさのために男の先生たちの羨望の的だ。一方彼女の担任のクラスに、寺沢新子という転校生がやってきた。前にいた男女共学の学校で、一緒にハイキングに行った男の子と台風で一夜帰れなくなったためにあらぬ疑いをかけられ、自分でやめてきたという。家では父親と弟と共に養鶏をやっている。

新子の一風変わった、だが率直で歯切れのよい態度に、旧態依然の土地柄に染まった同級生たちは嫉妬と敵意を抱き、何とかなぶりものにしてやろうと考える。クラスの誰かが男からのラブ・レターをでっち上げ、新子を誘い出そうとした。新子はその手紙を島崎先生に渡し、先生は学級会でこれを話題にする。

前からこの学校への”愛校心”の名の下に人を糾弾するようなやり方が気になっていた島崎先生は、さっそくみんなの前でこの手紙を非難してもっと若者らしくまっすぐな態度をとるようにとクラス全体を叱責する。これを聞いて保守的な少女たちは激昂した。先生にその発言を取り消すようにとまで要求した。

だが、島崎先生はその意思を通そうとした。校医の沼田は彼女の良き理解者であり、同じくこの土地の反動的な風土を何とかしたいと思っていた。沼田のなじみの芸者、梅太郎は沼田を密かに思っていたから、妹を通して何かと沼田の手助けをする。だが、沼田は島崎先生に惹かれているらしい。

新子は、バイクで通学しているが、同級生の服を破ってしまったためにその弁償のために街に卵を売りに行った。最後の20個が売れなくて困っていたところに、荒物屋で店番をしていたその家の息子で大学を2年浪人している金谷六助におかずを作ってやるという交換条件で卵を買ってもらった。

だがまたまた新子の運が悪いことに、ネズミが飛び出してきて六助にしがみついたところを町の人に見られ、あっという間に同級生の間に男と抱き合っていたという、うわさを立てられてしまった。だが、新子は持ち前の明るさから、沼田を通じて大学生たちと仲良くなり、六助の友人の大学生、富永も密かに新子に惹かれてしまう。だが、新子は六助と気が合うようだ。

学校はこの問題で大騒ぎ。この学校のPTA会長はこの地域に影響力をふるい、保守派のボスである。生徒たちの騒ぎはついに、まず内輪でPTAの役員会を開くことになってしまった。島崎先生には沼田がついているが、どう見ても劣勢である。

それでも新子にあてた偽のラブレターが公開され、役員会に紛れ込んだ富永の活躍もあって、島崎先生の方が優勢になりかけた。PTA会長が強引に会を閉じようとするところに、島崎先生にあてた教員のラブレターが暴露され、保守派は面目をつぶされて解散する。新子は偽レターを書いた少女と仲直りをした。

海岸に若い男女たちが集う。六郎が海に向かって新子に自分の思いを思い切って告げると、沼田も島崎先生へ求婚をした。行く先に多くの困難が待っていても若者たちは恐れない。(1963年・日活)・・・資料外部リンク

監督: 西河克己 原作: 石坂洋次郎 キャスト(役名) 吉永小百合(寺沢新子)浜田光夫(金谷六助)高橋英樹 (富永安吉) 田代みどり(笹井和子)芦川いづみ(島崎雪子)二谷英明 (沼田玉雄)南田洋子(梅太郎)松尾嘉代(駒子)下元勉 (武田校長)織田政雄(八代教頭)

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

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