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今年見た映画(2007年)
東京都足立区、西新井に住む三原ひかるは医者である養父の看護婦をつとめながら定時制に通っている明るい少女。同級生である木村勝利の働く工場に行けば、工員たちは大騒ぎ。しかし若い彼らの生活は貧しく仕事はきつい。体をこわし、結核で療養することになった少女もいた。 勝利は定時制を出て大手の会社を受験しようと狙っている。今のつらい暮らしを脱して将来への夢を持っているのだ。母親や弟と一緒に暮らしているが、父親は数年前に家を出て、勝利は決してそれを許せないでいる。 工場に出入りしていたトラック運転手の岩下留次は、ひかるに一目惚れ。勝利とも親しくなったが、恋のライバル同士になる。 学校の成績も優秀だった勝利は、ひかるの応援も受けて就職試験に挑むが、会社幹部が定時制の人間は社会の実態を知っていることから組合活動を警戒し、彼を不合格にしてしまう。社会の差別のひどさと挫折感で、勝利は会社にも学校にも出てこなくなる。 ひかるや留次や、まわりの人間が一生懸命勝利を励まそうとするが、すっかり気を落とした勝利はそれを受けつけない。そこへ父親が交通事故にあったという知らせが飛び込んできた。幸い命を取り留めたものの脚を失った父親を前にして、勝利はやっと自分と取り戻した。 物語の展開がハッピーエンドでないのがいい。相変わらず若者たちの暮らしは厳しいが、登場人物はいずれも前向きの姿勢で進む。これは21世紀の若者がほとんどすべて後ろ向きな生き方をしているのとあまりに対照的。まるで違う国の世界であるようだ。この映画が当時大ヒットして、当時みんなが「夢」を持っていたなんて現代では想像もつかない。(1963年日活)・・・資料 監督; 野村孝 主題歌; 1963年度レコード大賞受賞曲「いつでも夢を」 唄; 橋幸夫 吉永小百合 挿入歌; 「潮来笠」「おけさ唄えば」「北海の暴れん坊」「若い奴」 唄; 橋幸夫 「寒い朝」 唄; 吉永小百合 「街の並木路」 配役 岩下留次; 橋幸夫 /三原ひかる; 吉永小百合 /木村勝利; 浜田光夫 /三原泰山; 信欣三 /木村長太郎; 織田政雄 /木村あい; 初井言栄 /木村和平; 市川好郎 /岩下花子; 飯田蝶子 /金造; 野呂圭介 /黒木先生; 内藤武敏 /松本秋子; 松原智恵子 上へ戦後の混乱が収まって、政府はさまざまな「改革」を行おうとしていた。売春防止法もその一つ。だがその影響をまともに食らっていた人々がいる。かつての吉原で300年以上も続いていた売春宿だ。こんなに長く続くというのは社会が本当に必要としているからなのだろうが・・・ 田谷夫婦が経営するサロン「夢の里」にはいつも4,5人の女が毎日商売にいそしんでいた。みんなそれぞれ悲惨な出身であり、巨額の借金を抱えている。 より江はこの仕事にもう先がないと知り、田舎に住む男のところに嫁入りする決心をする。ところが実際に行ってみると無料の労働力としてこき使われるばかりで、すぐ嫌になり舞い戻ってきてしまう。 ゆめ子は故郷に息子の修一を残し、ここで働いているが、修一は単身上京し工場で働いているのだった。そして自分の母親がこんな仕事をしていることを恥じ、親子の縁を切ると言い出す。それを聞いてショックを受けたゆめ子は頭がおかしくなってしまう。 ハナエは唯一の夫持ちである。だが夫は結核に冒され、さらに幼子も抱えている。ハナエの稼ぐわずかな金をもとに一家は生活しているのだ。だから所帯じみた振る舞いにならないように、いつも注意されている。 知り合いの男が神戸から流れてきた若い女、ミッキーを連れてきた。その奔放な振る舞いは年上の女たちを怒らせるが、次第にここの生活になじんでゆく。ある日父親がやってきて連れ戻しに来たが、父親自身の極道ぶりに腹を立てたミッキーは追い返してしまう。 ここの最大の稼ぎ頭はやすみである。しっかりと貯金し、人に小金を貸して利子を取り、なじみの客には大金を貢がせる。だまされた客に危うく殴られるところだったが、ついには隣の布団屋ニコニコ堂を乗っ取って女主人に収まってしまう。 今回の国会でも売春防止法は不成立に終わった。ほっとした田谷夫婦は九州からやってきたまだうぶな女の子を新しく店に出す準備を始めるのだった。(1956年;大映)・・・資料 監督; 溝口健二 原作; 篇中一部分 芝木好子 「洲崎の女」 音楽; 黛敏郎 配役 ミッキー; 京マチ子 /やすみ; 若尾文子 /ハナエ; 木暮実千代 /ゆめ子; 三益愛子 /より江; 町田博子 /しづ子; 川上康子 /田谷倉造; 進藤英太郎 /その妻・田谷辰子; 沢村貞子 /おたね; 浦辺粂子 /ゆめ子の息子・修一; 入江洋吉 /ニコニコ堂主人・塩見; 十朱久雄 /ハナエの夫・佐藤安吉; 丸山修 上へ平清盛の若き時代を描く。白川上皇のもとに仕える平忠盛は数々の戦勝を勝ち取りながら、あまり報われず、部下たちの間にも公家への不満が高まっていた。延暦寺の僧兵たちも暴れだし、乱れた世の中で時代が大きく移り変わろうとしていた時期だったのだ。 清盛は、町に出かけふとしたことから自分の父親は忠盛ではなく、白川上皇、いやもしかしたら母親泰子の間男かもしれないと聞かされる。出生の秘密に動揺した清盛であるが、やがてそれを乗り越え、自分の運命を作るのは自分でしかないと確信するようになる。 泰子は忠盛と結婚したものの男とのうわさが絶えず、また地侍(ぢざむらい)たちの質素な生活が大嫌いで、夫がなかなか昇進しないので結婚生活は冷え切ったままだった。清盛の出生の話で、彼女はこの家を立ち去る決心をする。 清盛はふと親しくなった藤原時忠の姉、時子に惹かれ、自分の父親暗殺未遂事件を機に自分の妻とする。平氏は僧兵たちとのいさかいから大きな戦いになりそうになった。このため忠盛は譴責(けんせき)を受け、責任をとって自害する。 残された清盛は迷信深い僧兵たちを相手に渡り合い、彼らを見事に退散させたのだった。自分の持つ能力に自信を持った清盛は、園遊会に明け暮れるふやけた公家たちを見やりながら、「今度は武士の時代が来る」とつぶやくのだった。(1955年・大映)・・・資料 監督 溝口健二 原作 吉川英治 配役 平清盛 ; 市川雷蔵 /妻時子 ; 久我美子 /藤原時忠 ; 林成年 /泰子 ; 木暮実千代 /平忠盛 ; 大矢市次郎 /伴卜 ; 進藤英太郎 /木工助家貞 ; 菅井一郎 /左大臣頼長 ; 千田是也 /白河上皇 ; 柳永二郎 /藤原時信 ; 石黒達也 上へまた逢う日まで 2007/03/08 (再)2023/12/15 太平洋戦争は末期に近づいていた。田島家の栄作は裁判官であったが、すでに長男の一郎は戦死し、その嫁は身ごもっていたためにこの家にいた。二男の二郎は徴兵され、時々しか家に帰ってこない。 三郎はまだ大学生で、召集令状はまだ来ていなかったが近々来るだろうとは思っていた。彼は戦争には批判的で、すっかり軍隊に洗脳された二郎とは話が合わなくなっている。学友たちともお互いの不安をぶつけ合うのだった。 ある空襲の日、三郎は防空壕の中で一人の少女、蛍子と出会う。その後運命の出会いが2度続き、二人は親しい仲から、急速に恋に落ちてゆく。蛍子は戦争ポスターを書いて生活を立て、軍需工場に勤める母親と暮らしていた。蛍子は三郎の肖像画を描いてやる。 だが、戦争の影は日々濃くなり、三郎が出征する日が近づいてきた。初めて訪れた蛍子の家を去るとき、二人はガラス越しに口づけをする。ここで突然悲劇が起こった。二郎が貨物列車にひかれてしまったのだ。二郎は三郎に父親や長男の嫁の世話を頼むと言い残して息を引き取った。 三郎が出征する日が2日後に迫った。蛍子は自分は決して死なないといい、三郎も何としても死線を越えて帰還すると誓う。翌日の10時に二人は再び会う約束をする。 ところが軍からの電報は出発を一日はやめてその夕方に駅に集合することになった。さらに悪いことには長男の嫁が突然倒れた。医者が見つからず、三郎は約束の10時から1時間過ぎても駅に行くことができない。 駅で待つ蛍子は不安に駆られている。そのとき空襲警報が鳴って駅に直撃弾が落ちる。・・・。三郎は蛍子の家に行き、書き置きを残したことから母親が蛍子が帰らないことに気づき駅に急いだが・・・。 昭和20年の秋、戦争が終わり、蛍子の母親や三郎の父親が蛍子の描いた三郎の肖像画の前に立っていた。国民の多くが体験したであろう悲しい恋を通して戦争の無意味さを問いかける。(1950年・東宝)・・・資料 演出: 今井正 キャスト(役名) 岡田英次(田島三郎) 滝沢修(田島英作) 河野秋武(田島二郎) 風見章子(田島正子) 久我美子(小野螢子) 杉村春子(小野すが) 上へ大和朝廷が各国に国分寺や国司を置いて全国統制を目指していた頃の話。岩代(今の福島県郡山付近)の国司をしていた平正氏は、貧しい民衆を憐れみ善政を行ったが、それが敵を作り、遠く筑紫の国(九州福岡県)に赴任させられることになってしまった。 残された妻の玉木と安寿と厨子王の3人は里に帰ることになった。だが、日本海沿岸の親不知の近くで、人身売買の連中にさらわれてしまう。玉木は佐渡に連れて行かれて遊女をさせられた。 安寿と厨子王はまだ年がいかないのに、丹後半島の山椒大夫という悪人のもとに連れて行かれた。そこは朝廷の力が及ばず、私的な荘園で、売られてきた男女が奴隷として働かされている。脱走を試みるものは、額に焼きごてを当てられ、激しい労働のために命を落とすものも少なくなかった。 ある日、安寿は売られてきたばかりの若い女が安寿と厨子王に会いたい気持を歌った流行歌を口ずさむのを聞く。これで母親玉木が佐渡に流されたことを知るのだった。 姉弟は、父母に会える日をひたすら待ちながら成人を迎える。ある日、病気がひどくなり働けなくなった女を領地の外の山中に捨てに行くようにと命じられた姉弟は、脱走のチャンスをつかむ。だが姉は弟が無事のがれることができるようにと近くの沼に身を沈めてしまった。 国分寺に逃れた厨子王は、紹介状を書いてもらい今日の関白に会うことができる。自分の持っていた父親からもらった小さな仏像のおかげで、去年亡くなったばかりの父親に代わり、国司の役目をもらう。そしてその任地は何と丹後の国であった。 厨子王は、父親の進んだ道を見習い、丹後の人々における人身売買を禁止し、山椒大夫一味を捕らえて国外に追放した。安寿の死を知った厨子王は、すぐに国司をやめ佐渡に向かう。 脚を切られて歩けず盲目になった果たして母親は生きているだろうか?厨子王は佐渡の各地を歩き回るのだった。(1954年・大映)・・・資料 監督: 溝口健二 原作: 森鴎外 キャスト(役名) 田中絹代(玉木) 花柳喜章(厨子王) 香川京子(安寿) 清水将夫(平正氏) 進藤英太郎(山椒大夫) 上へ秋子は聾唖者だった。お寺に嫁に行ったが、太平洋戦争が終わったとたんに夫は発疹チフスで死去し、さっそく母親たまのもとに返されることになった。戦時の混乱の中で生活は苦しく、姉の信子は家出し、弟の弘一は警察沙汰になり小菅刑務所に送られる。 ある日秋子は聾唖学校の同窓会で片山道夫という男と親しくなる。誠実で率直な人柄に惹かれた秋子は互いに一人では暮らしていくのが大変なこの世の中で二人で一緒に暮らすことを決心する。 二人の会話はすべて手話で行われ、字幕がつく。それはサイレント映画のようでもあり、背景には独特の音楽が流れる。普通のセリフのやりとりに慣れた観客は、手話の持つコミュニケーション能力の大きさに感心するだろう。 やがて赤ん坊が生まれるが、雪の日に泥棒が玄関を開け放って立ち去ったため泣き声に両親が気づかぬままに凍死する。秋子は子供を育てることを一時は断念するが、再び子供が産まれ、一郎と名付けられた。 今度はたまが同居することになったので夫婦は安心して働きに出ることもできるようになった。道夫は靴磨きを経て、印刷工場に勤めることができるようになった。 しかし一郎が小学校に入学すると、両親は叱りつけることもできず、一郎がたまにだけなついているのを見て秋子は子供を産まなければよかったとさえ思うようになった。しかも一郎は学校でも有名な乱暴者である。自分の両親のことをからかわれるから友だちもできない。 そのころ出所した弟の弘一が家に居候するようになり、道夫の給料をせびったり、挙げ句の果て姉のミシンを質入れしてしまったのだった。仕事の道具を奪われた秋子は絶望し自殺を考えるが後を追いかけてきた道夫は電車の連結器にある窓越しに秋子を説得する。 道夫はここでも手話を使ってこれまでいっしょに力を合わせてやってきたのだから、これからもどうしても二人の協力が必要なのだと、強調する。道夫の必死の説得に秋子はようやく思いとどまったのだった。 一郎は次第に成長し、自分の両親のことを、そして取り巻く社会のことをすこしずつ理解するようになった。ある日自分の友だちを大勢家に連れてきてびっくりして逃げ腰の秋子をみんなのまでで紹介するのだった。 いよいよ一郎は小学校を卒業した。秋子が卒業式を万感の思いで眺めていると、たまがやってきて空襲の時に秋子が救った男の子が立派な若者になって自分を訪ねてきたことを知らされる。大喜びで秋子は家へ走っていったのだが・・・(1961年・東宝)・・・資料 監督: 松山善三 音楽: 林光 キャスト(役名) 高峰秀子(片山秋子) 小林桂樹(片山道夫) 島津雅彦(片山一郎(一年生)) 王田秀夫(片山一郎(五年生)) 原泉(秋子の母たま) 草笛光子(秋子の姉信子) 沼田曜一(秋子の弟弘一) 上へ書を捨てよ町へ出よう 2007/03/16 (再) 2013/08/03 同名の本の映画化であるが、それぞれの独立したエピソ-ド形式ではなく、一続きの物語となっている。この物語の主人公は若い男。映画のストーリーが始まる前に、自分の考えを紹介する。 彼はあちこちに顔を出している。父と妹、おばあちゃんとの4人暮らしで新宿の都電の線路に面するぼろぼろアパートに住んでいる。彼はサッカーチームの連中と知り合い、自分も練習に加わろうとするが、キャプテンに娼婦と引き合わされ、ほうほうのていで逃げ帰るはめとなる。 妹はウサギをかわいがってばかりで人嫌いになってしまっている。心配したおばあちゃんは隣の人に頼んでウサギを殺してもらう。首尾よくウサギを処分したものの、その後妹の行動はおかしくなり、サッカーチームの連中に輪姦され、そのあとでキャプテンの情婦となってしまった。 おばあちゃんは、寂しがり屋だ。人の目を引くために万引きを繰り返したり、宝くじが当たったと騒ぎ立てたりするものだから、英明の父親が養老院に閉じこめることを考える。 彼の心には人力飛行機のイメージが何度も去来する。彼の希望の象徴かもしれない。自分が高く高く飛翔しようとするのだ。だがなかなかうまくいかない。最後には飛行機は墜落して燃えてしまい、骨だけになる。 僅か2時間強で、映画は終わる。英明はたったこれだけの時間の中の存在だ。映画が終わり照明が輝くと、それまでの世界は一瞬にして消えてしまうのだ。(1971年・日本ATG)・・・資料 監督・制作・脚本: 寺山修司 キャスト(役名) 佐々木英明(私) 斎藤正治(父) 小林由起子(妹) 平泉征(彼) 森めぐみ(彼女) 丸山明宏(地獄のマヤ) 新高恵子(娼婦みどり) 浅川マキ(階段の娼婦) 鈴木いづみ(女医) J・A・シーザー(長髪詩人) 上へ第2次世界大戦もあと一年で終わろうとしているころ、学徒兵を集めた中隊が大阪城の付近にあった。木谷一等兵が2年のブランクを経て原隊に復帰してきた。中隊の連中には、はじめのうち病気入院のためと称して刑務所帰りだということを隠していたがすぐにばれてしまい、陰に陽に彼をいじめる。 木谷はかつて上官の財布を盗んだとされて軍法会議にかけられ、2年の刑期を終えて刑務所を出てきたところだった。だが、実際のところ彼は品物の裏取引をする上官たちの陰謀に巻き込まれたのだ。 好きな女とは別れさせられ、刑務所では筆舌に尽くしがたいような乱暴を受ける毎日だった。だからこの中隊に来てみれば学徒兵が毎日ビンタを食らう生活なんかは生やさしい部類にはいるのだった。 先輩から怒鳴られ、殴られ、戦争に出陣するわけでもなくむなしく毎日を送る若者たちの軍隊生活の日常が描かれる。いつかは出動命令が下るかもしれないという不安がつきまとう。そうなったらまず命はないだろう。 もと歴史の先生で温厚な會田一等兵のおかげで恋した女や陰謀に加わった上官たちの行方はわかるが、木谷の怒りはおさまらない。中隊でも暴れ、やっかい払いを願う幹部たちによって、ついに南方行きの船に乗せられてしまった。もう生きて帰ることはできないだろう。(1952年)・・・資料 監督: 山本薩夫 原作: 野間宏 音楽: 団伊玖磨 キャスト(役名) 神田隆(峯中隊長) 加藤嘉(林中尉) 岡田英次(岡本法務少尉) 沼田曜一(週番士官) 西村晃一(大住軍曹) 木村功(木谷一等兵) 佐野浅夫(地野上等兵) 沼崎勳(彦佐一等兵) 下元勉(會田一等兵) 高原駿雄(染一等兵) ゲンズブールによる、ギター独奏が非常に印象に残り、ドヌーブが次々と纏ってみせる華麗な衣装やファッション・ショーのモデルたちはウンガロがデザインしている。 マノンはだれもが振り返る、絶世の美女だが、その振る舞いには魔性が秘められていた。成田空港からファーストクラスのスカンジナビア航空に搭乗しようとしたとき、ふと彼女と知り合った若い記者、ジャンは金もないのに思わず自分も航空券をファーストクラスに換えてしまう。あとで編集長にこっぴどく叱られることになるのだが。 ところでマノンは、デグルーという大金持ちといっしょに旅行中だった。だが、何となくジャンに惹かれたマノンはパリに着くと、ジャンのタクシーに乗り込んでしまう。ジャンは自分に忠実であることをマノンに要求するが、彼女は神出鬼没、いったいどこの男とつきあっているか皆目分からないのだった。いったんはジャンを捨てたように見えながら、わざわざ取材中のジャンをストックホルムに訪ねてきたりする。 実は、彼女には弟がいて、彼がマノンの行動を影になり日向になり助けていた。そのわけはデグルーからの金が目当てだったのだ。姉弟はおかげで豪勢な生活を楽しむことができた。ジャンはそのカラクリをうすうすと気づき始めるが、一方マノンとのつきあいは、多額の金とエネルギーを必要とし、おかげで編集長からクビを言い渡される。 無一文になったのに、ジャンはどうしてもマノンとまともな関係を持ちたいと、デグルーとの腐れ縁を何とか断ち切る方法を考えていた。ニースにデグルーをおびき寄せたとき、寝取られていることを心配したデグルーは、密かに盗聴装置を持ち込んでいた。 それを知ったジャンは、わざとマノンに自分への愛の告白を盗聴器の前で大声でしゃべらせ、デグルーは自分が寝取られたことを完全に悟る。せっかくの金蔓を失ったことでジャンに罵りのことばを投げるマノンであったが、もうどうしようもない。二人は裸足でパリにヒッチハイクして戻るしかないのだ。(1971年)・・・資料 スタッフ 監督: Jean Aurel 原作: Abbe Prevost 脚本: Jean Aurel / Cecil Saint Laurent 音楽:Serge Gainsbourg 衣装(デザイン): Emaniel Ungaro キャスト(役名) Catherine Deneuve (Manon) Sami Frey(Des Grieux)Jean Claude Brialy(Jean Paul) Elsa Martinelli(Annie)Robert Webber(Ravaggi)Paul Hubschmid(Simon) ガルシアの作品の映画化。少女と、その父親との間の心の交流を描くホームドラマ。不思議な雰囲気を持つ作品で大部分が、少女が亡き父の思い出を語る形になっている。 スペイン北部の一軒家に住む少女エストレーリァは、両親と3人暮らしである。母親は平凡な主婦であったが、父親は娘にとって不思議な存在であった。父親は一種の「霊力」を持っていて、それで井戸を掘るべき場所を予言したりしていた。ストレーリァもその性質を受け継いだらしく、父親から、霊力を集中させるための振り子をもらったりしている。 父はしばしば家を空けたり、部屋の中にずっと閉じこもっていたり、8歳になったエストレーリァはいつも好奇心をかき立てられるのだった。やがて彼女のはじめての聖体拝領の日がやってくる。カトリックの儀式の中でもとくに子どもの成長を祝う行事だから、スペイン南部(スール)から、父親側の祖母と乳母が駆けつけてきた。 泊まっていった乳母から、自由主義の父親はフランコ将軍派の祖父と仲違いをして家出してきたことを知る。それでもカトリック嫌いの父親は、自分の娘の聖体拝領の儀式には教会の片隅で見守ってくれていたのを知り、エストレーリァは感激する。 祖母と乳母は帰っていったが、その故郷は父親の育ったところであり、自分のルーツもそこにあるような気がしてエストレーリァは南の地方にひそかな憧れを持つようになった。 ある日映画館でエストレーリァは父の秘密を知ってしまう。ある女優とかつて恋をして、その女を忘れることができないのだった。しかも彼女最後の出演となった映画を見た父親は思わず昔の女に手紙を書き送った。 15歳になったエストレーリァは父とレストランでまともに話す機会を得て、父が相変わらずその女のことで苦しんでいるのを知る。だが、娘としては何も手を貸してやることはできない。それから少しして、父親はオートバイに乗って死んだ。 そのショックも薄らいだ頃、祖母から気分転換のためにも遊びに来ないかと誘われ、エストレーリァは父からもらった振り子と謎の電話番号が書き入れてある紙切れを持って南へと旅立つのだった。(1983年;スペイン/フランス [製作年]1983 )・・・資料 監督: Victor Erice 原作: Adelaida Garcia Morales キャスト(役名) Omero Antonutti(Agustin)Sonsoles Aranguren(Estrella;8 years old) Iciar Bollan(Estrella;15 years old)(Julia)Rafaela Aparicio(Milagros) Maria Caro(Casilda)Germaine Montero(Dono Rosario)Aurore Clement(Laura) Francisco Merino(Enamorado)言語;スペイン語 この作品を一見して感じることは、これが寅さんの男はつらいよシリーズによく似ていること。なぜならば20世紀初頭のパリも昭和の葛飾柴又も共に下町の人々の人情に満ちあふれているからだ。最後は安っぽいハッピーエンドではなく、未来への希望を残して終わる。 ここは、サン・マルタン運河沿いにある、下宿と当日の泊まりを兼ねた北ホテル。女将さんと夫の二人が中心になり、養子、使用人、近所の人たちが集まるにぎやかなところだ。 ある日、深刻な表情をした若い二人連れが泊まりに来る。ピエールとルネの二人は食い詰めて部屋で心中をするつもりでいたのだ。ピエールは、ルネの胸をピストルで撃ったところで、向かいの部屋にいる商売女レイモンドのヒモになっているならず者のエドモンドに発見されてしまう。 だが、彼は黙ってピエールを逃がし、幸いルネも一命をとりとめた。ピエールはその後死にきれず警察に自首する。ルネは自責に苦しむピエールを刑務所に面会に通い、何とか二人の間を修復したいと願っている。 ルネは退院後、北ホテルにあいさつに来た。自分がホテルの男に輸血で救われたことや、親切な女将のすすめで、しばらくこのホテルで仕事を手伝うことになった。彼女があまりに別嬪なので、ホテルに出入りする男たちはみな彼女にくびったけだ。 エドモンドもその一人で、南仏にレイモンドと高飛びする計画を中止して、北ホテルに居続けることになる。ピエールはかたくなな態度をとり、それに不安を感じたルネはエドモンドの誘いを受けて、過去を捨てて二人でスエズ運河の町、ポートサイドに逃げる気持になる。 だが、いったん船に乗ったもののどうしてもピエールを忘れることができず、ルネはやはり北ホテルに戻ってしまった。ようやくピエールの気持も和らぎ、彼の釈放の日が近づいてきた。 パリ祭の夜、エドモンドは北ホテルにやってきた。ルネが船から下りてしまったことは少しも咎めることなく彼は紳士らしく最後の別れのあいさつに来た。ルネは北ホテルに別れを告げ、出所したばかりのピエールと新しい門出を目指すのだった。(1938年)・・・資料 Director:Marcel Carne Writers:Jean Aurenche Eugene Dabit (novel) Cast Annabella ... Renee / Jean-Pierre Aumont ... Pierre / Louis Jouvet ... Monsieur Edmond / Arletty ... Raymonde 湘南逗子(ズシ)に住む高校生竜哉は兄の道久、両親との4人暮らし。これまではバスケット・クラブに入っていたのだが、物足りさを覚えていたところ、ボクシング・クラブで試し打ちをさせてもらいその魅力に取りつかれてしまう。 やがてクラブの中心的なメンバーの一人になったころ、街で仲間たちとナンパをしたときに知り合った武田英子と知り合いになる。彼女は竜哉よりも年上らしく、しかもかなり金を自由にできるらしかった。 二人は次第に仲が深くなってゆく。英子はこれまでの男との付き合いに疲れ、愛することができなくなっていると告白する。一方ニヒルな竜哉も素直な気持ちで女にあたることができない。それでも二人でヨットに乗ってはじめて相手の気持ちが理解できるようになった。 しかし偏屈な竜哉は、そのあともほかの女に絡んだり、兄に英子を譲り渡そうとしたりもするが、最後にはやはり本当にお互いに愛し合っていることに気づくのだった。 英子は妊娠した。竜哉はあえて反対せず、結婚して父親になってもいいかなと感じ始めた。4ヶ月になったある日、英子は竜哉を喫茶店に呼び出して最終的な決断を迫る。生半可な返事をしたために、英子は子供を堕ろす事にした。 その手術で英子は死んだ。竜哉は一人葬儀会場に乗り込む。鉢を彼女の遺影に投げつけると、あっけにとられた親族の見守る中、寺から姿を消していったのだった。ギターの独奏が海とマッチしている。それにしても若い頃の長門裕之というのはサザン・オールスターズの桑田佳介と顔つきがよく似ている。(1956年)・・・資料 監督: 古川卓己 製作: 水の江滝子 原作: 石原慎太郎 キャスト;長門裕之(津川竜哉)三島耕(兄道久)清水将夫(父洋一)坪内美詠子(母稲代)南田洋子(武田英子) Le Charme discret de la bourgeoisie ブルジョワジーの秘かな愉しみ 2007/05/10 (再)2013/08/18 南アメリカのミランダ国からフランスにやってきている大使ドンは麻薬に密輸に絡んで大儲けをしているが、一方大変なパーティ好きで、妻とともに、テブノー夫妻とその妹アリスの主催する夕食会にたびたび出かけている。 中心的登場人物は6人。その6人が草原の中の一本道を歩いているシーンが何度も出てくるが、これはなんだろう?とりたてて筋があるわけではないが、ドンは自国からのテロリストや警察、軍隊などに命を狙われているらしく、しょっちゅう殺される不安から夢でうなされたりする。 テブノー夫妻には、料理係の女がおり、彼女が見事な料理を運んでくる。庭師は病気でクビになったところだが、昔自分の両親を殺された司祭がこの仕事を引き受け、偶然に病気の男が実はその犯人だったことを知る。 テブノー夫人とアリスがレストランで友人と食事をしていると、知らない中尉が突然現れて自分の話を聞いてくれという。自分は小さい頃、義父によって実の両親を殺され、その復讐として義父を毒殺したことをいかにも得意気に話して聞かせるのだった。 舞台はほとんどがこのグループの食事のシーンに限定される。それぞれがまとまった話のようであり、お互いに脈略はなく、それでいて何か殺される不安がみなぎっているような場面づくりである。食事もセックスもなにもかも、完遂しない。実際に殺される場面が実は主人公たちの夢であったことが何度もある。 わけのわからないのが、おもしろい。こんな映画表現もあるのだ。「去年、マリエンバードで」と同じく初めて見る人にはとまどいを引き起こすかもしれないが、そんなことを気にしないで見続けていると結構そのおもしろさが伝わってくるのだ。映画は必ずしも筋を忠実に追った起承転結である必要はないようだ。(1972年)・・・資料 Director:Luis Bunuel Writers:Luis Bunuel (written by) Jean-Claude Carriere (written by) Cast:Fernando Rey ... Don Rafael / Paul Frankeur ... M. Thevenot / Delphine Seyrig ... Mme Thevenot / Bulle Ogier ... Florence / Stephane Audran ... Alice Senechal (as Stephane Audran) ギターを持った渡り鳥 2007/05/12 (再)2018/09/03 すがすがしい青春編。弱いものいじめが大嫌いで、孤独を愛し、もうこの世にはいないかつての恋人を思って寂しい影を持つさすらいのヒーローの登場である。小林旭はその役に最適だ。この映画に21世紀日本では完全に失われたロマンや金に関心を持たない生き方がまだ生きているのだ。 滝伸次はギターを抱えて函館に流れてきた。まだ若いがギターを弾いて歌を歌い、喧嘩はめっぽう強い。しかもどこかの通う酒場の専属になる気は毛頭ない。 そこに目を付けたのが地元の暴力団の首領、秋津礼三郎である。伸次の喧嘩の強さを利用して地元の自分に反抗する連中をみんな押さえ込もうとした。 礼三郎の娘は由紀といったが、彼女の弾くピアノの間違いを伸次は指摘するのである。はじめは腹が立ったが次第に彼女は伸次に惹かれてゆく。 礼次郎の妹は駆け落ちして船会社を経営する夫と暮らしている。面目をつぶされた恨みをいつかは晴らしてやろうと思っている礼次郎は、借金のかたに妹たちの船を取り上げてしまい、会社の跡地にはアミューズメントセンターを作る気でいる。 あまりのあくどさに伸次はうんざりした。彼は弱いものいじめが大嫌いである。しかも伸次がかつて神戸で刑事をしていたときに、仲間を殺されたジョージが麻薬を外航船から受け取るために函館にやってきていて、秋津の協力を得ようとしていることを知る。 函館の沖合で二人は宿命の対決を行おうとするが、嵐のために麻薬の受け渡しは中止になる。一方妹の夫は自分の判断の甘さのために、こんな事態を引きを越したことを気に病んで死んでしまう。それは自殺に見えたが、実は秋津の部下が海に突き落としたのだった。 二度目の沖合での対決では、自分の犯行がばれるのをおそれた秋津が直属の部下にジョージと伸次の二人を海の藻屑にしようとたくらむが、その計画は失敗し、激しい撃ち合いの末、秋津もジョージも銃弾に倒れる。 かつての伸次の上司は再び刑事の仕事に戻ることを勧めるのだが、伸次は自分はギターを抱えてさすらいの旅にでると言って消えてゆく。波止場で見送る由紀は、彼が決して戻ってこないことを悟っている。(1959年) 監督: 斎藤武市 原作: 小川英 キャスト(役名) 小林旭(滝伸次) 浅丘ルリ子(秋津由紀) 中原早苗(庄司澄子) 渡辺美佐子(リエ) 金子信雄(秋津礼三郎) 宍戸錠(ジョージ) 二本柳寛(沼田刑事) 木浦佑三(庄司明夫) 青山恭二(安川) 野呂圭介(サブ)・・・資料 EL Espiritu de la colmena ミツバチのささやき 2007/05/24 スペインの地平線が遙かに見渡せる平原に住むフェルナンドは養蜂家である。かつては妻のテレサ、長女のイサベル、次女のアナとの幸せな4人暮らしだったが、スペインの内乱のために妻は行方不明になり、フェルナンドは娘二人を抱えて小さな村にある大きな屋敷で暮らしていた。 村に移動映画館がやってくる。今回の出し物は「フランケンシュタイン」であった。その内容に興奮したアナは姉から平原の空き家になっている一軒家に精霊が出るなどという作り話を聞いて本気で信じ込む。昼間におそるおそるその一軒家に近づき古井戸をのぞき込んだり家の中に入ってみたり、ある日家に入り込んだキチガイ女によって姉が気絶したりしたものだから、ますますアナはその一軒家が気になっていた。 村を通る鉄道から一人の男が飛び降りた。その男は内戦で追われていた。例の一軒家に隠れるとアナによって発見され、彼女からリンゴをもらう。だがその夜彼は撃ち合いの末殺される。死体とともにオルゴール時計が出てきた。フェルナンドはそれが妻のものであることを確認する。ようやく妻と再会することができた。 アナは男が殺されたことを知ってショックを受け一晩荒野を放浪する。翌朝ようやく捜索隊によって発見された。内乱がごくふつうの家庭にどんな傷を負わせたかを描いているが、映像の流れが非常に簡潔で観客に想像力を大いに働かせてにその間の穴埋めをさせるのである。(1973年)・・・資料 Director:Victor Erice Writers:Victor Erice (also story) Angel Fernandez Santos (also story) Cast: Fernando Fernan Gomez ... Fernando / Teresa Gimpera ... Teresa / Ana Torrent ... Ana / Isabel Telleria ... Isabel / Ketty de la Camara ... Milagros, la criada / Estanis Gonzalez ... Guardia civil / Jose Villasante ... The Frankenstein Monster / Juan Margallo ... The Fugitive たそがれ清兵衛 2007/05/30 (再)2020/07/20 (再)2023/02/09 幕末、山形県の小藩に生きた平侍、清兵衛(せいべい)の一生を描く。清兵衛には妻と幼い二人の娘がいたが、妻は長い間労咳(結核)に苦しんだあげく多額の借金を生んでこの世を去った。 その後その借金の返済と、お城での事務職による安月給に苦しみながら清兵衛はボケのひどくなった実の母親と娘たちを男手一つで養っていた。娘たちを愛し、虫かごを作る内職をして貧しいながらも平和な家庭を作ろうとしていた。 無欲な男で出世など望まず家族を第一に生きる男だった。服もよれよれである。たそがれ時になり勤務が終了すると酒を飲むのも断りまっすぐに家に帰るものだから、いつしか彼は「たそがれ清兵衛」というあだ名で呼ばれるようになっていた。 ある日親友の飯沼と再会し、彼の妹で幼なじみの朋江(ともえ)が酒乱の夫と離縁し家に戻ってきていることを聞く。朋江は家に訪ねてきたが、帰りに前夫と出会い、清兵衛は果たし合いをする羽目になってしまった。彼は大変な剣の使い手で、木の棒でもって前夫を打ちのめしてしまった。 そののち朋江はしばしば清兵衛の家を訪れるようになり、母親や娘の世話をしたり家のことをいろいろと面倒を見てくれていた。そのいきさつを知って飯沼は清兵衛に朋江を嫁にもらうことを勧めるが、自分たちの貧しい生活のひどさには耐えられまいと断ってしまう。 藩主が若くして死んだ。上層部の争いや切腹が相次ぎ、そこに巻き込まれた井口という男が切腹を拒否して家に立てこもった。彼も大変な剣の使い手で清兵衛が藩命でもって討ち取ることを命ぜられる。 覚悟を決めた清兵衛はすべて吹っ切れて、朋江にきてもらい服と髪を整えてもらう。そして自分が本当は朋江が好きだったことを告白するのだった。一軒家に入った清兵衛は井口もまたつらい生活を送り自分の娘さえも16歳の時になくしたのだと聞かされる。だが清兵衛の持ってきた刀を見た井口は斬りかかってきた・・・(2002年) ・・・資料 監督 ; 山田洋次 脚本 ;山田洋次 朝間義隆 原作 ;藤沢周平 「たそがれ清兵衛」「竹光始末」「祝い人助八」 音楽 ;冨田勲 主題歌 ;「決められたリズム」 作詞・作曲・歌 ;井上陽水 配役 井口清兵衛 ;真田広之 飯沼朋江 ;宮沢りえ 井口萱野 ;伊藤未希 井口以登 ;橋口恵莉奈 晩年の以登 ;岸惠子 井口藤左衛門 ;丹波哲郎 第1次世界大戦のさなか、パリの踊り子の中でもマタハリは抜群の人気を誇り、彼女の踊るクラブには、各国の外交官や軍人たちがひっきりなしに出入りしていた。当然のことながらここは諜報活動の中心であり、マタハリもその一人であった。 すでに彼女の秘密を握った男たちがスパイ活動のために銃殺されており、彼女の身辺にはいつも危険がつきまとう。彼女ともっとも親しいのがロシアの軍人、シュービン将軍である。彼はマタハリに惚れ込んではいるが彼女の態度は常に彼に対して距離をおく。 ある日、ロシアの戦闘機パイロット、ロザノフ中尉が機密書類を持ってパリに着陸する。彼はマタハリを一目見て惚れ込んでしまい、彼女の住まいまで押し掛けて求愛する。マタハリも彼が嫌いではなかったが、自分の職業柄恋に落ちることはできない。すでに同僚はそのために消されている。 ロザノフは再びロシアへ、新たな機密書類を持って帰ることになった。命令を受けたマタハリはシュビンとのデートを途中でうち切りロザノフの家を訪れる。女は強い。マタハリはロザノフが母親の命令で常に点灯している聖母の絵の前のろうそくを吹き消させた。家の照明はすべて消されて二人が愛の床にいる間、他の諜報員がまんまと書類を偽物と取り替えた。 放っておかれほかの男にマタハリを取られたシュービン将軍は憤懣やるかたなく、マタハリのスパイ行為を暴き立てる。彼女は彼が警察に電話しているところで拳銃で撃ち殺してしまう。もはや彼女はパリで活躍することはできなくなった。 マタハリへの思いを忘れられないロザノフは、任務を帯びてロシアに向けて飛び立つが途中で飛行機は墜落する。失明したロザノフはマタハリの看護を受け二人の愛は再び燃え上がる。だがマタハリは逮捕され裁判で死刑を言い渡される。 何も知らないロザノフは、マハタリが病気で手術をするのだと言い聞かされて監獄につれてこられる。二人は最後の別れを惜しんだ後、マハタリは銃殺隊に付き添われてロザノフから去っていった。(1931年)「マタハリ」とはマレー語で”太陽”のこと。・・・資料 Writers: Benjamin Glazer and Leo Birinsky Cast; Greta Garbo ... Mata Hari / Ramon Novarro ... Lt. Alexis Rosanoff / Lionel Barrymore ... Gen. Serge Shubin / Lewis Stone ... Andriani (pavilion owner) / C. Henry Gordon ... Dubois (French Secret Service chief) どですかでん 2007/06/13 (再)2014/08/17 終戦間もないどこかのスラム街。横を路面電車が走っている、天ぷら屋があった。おかみさんは朝からお経を唱えているのは息子の六ちゃんが頭が弱く、一日中「電車ごっこ」をしているからだ。 今日も朝早くから六ちゃんはきちんと姿勢を正すと、裏のゴミ捨て場から「どですかでん」と轟音をあげながら出発する。夕方までには何往復もしていることだろう。 電車の折り返し地点は同じくゴミの山にできた、スラム街だ。おかみさんたちが水道の蛇口のまわりに陣取り洗濯をしながらおしゃべりをしている。さまざまな住民が出入りしている。 壊れた車の中に住む父親と幼い息子。父親はいつも自分が建てる予定の「邸宅」のプランを考えており、食料あさりをするのは息子の役割だ。 土木作業に出かける二人の若い男は酒によって帰ると、しばしば妻を交換して寝てしまう。無欲ですべてを悟ったような老人も住んでいて、泥棒が深夜忍び込んできてもわざわざ現金を渡してくれる。 丘の高みにブリキ板で作った家に住んでいるのは目の見えない男。妻に裏切られたらしいのだが最近、見知らぬ女がこの家に入り込んでこの男の世話をしているので、近所のうわさ話になっている。 客をけなし、まったく接待もしない妻。客の一人は憤慨し、夫にそんな妻なんか放り出せと詰め寄るが、癲癇(テンカン)が持病の夫は、これまで大変な苦労をかけたのだと自分の妻を弁護する。 酒飲みでぐうたらな男が自分の姉が入院したのを機に、自分のところに姪を住まわせ、内職の重労働をさせた上に、彼女を妊娠させてしまう。 話は多くが悲劇の方に向かってゆく。車に住む幼い息子はしめサバを食べて下痢を起こし死んでしまった。姪は包丁で、いつも親切にしてくれる男に斬りつけ、警察に出頭を命じられた叔父はどこかへ逃亡する。盲目の男を世話をしていた女は、結局一度も声をかけてもらうこともなく、彼の家を出てゆく。 夕方がやってきた。六ちゃんは無事自分の家に帰り着き、おんぼろ”電車”は明日までにきちんと整備をしてもらわなければならない。(1970年)・・・資料 監督: 黒澤明 原作: 山本周五郎 脚本: 黒澤明・小国英雄・橋本忍 企画: 黒澤明・木下恵介・市川崑 キャスト(役名)頭師佳孝(六ちゃん)菅井きん(おくにさん)加藤和夫(絵描き)伴淳三郎(島悠吉) 虹をつかむ男 2007/06/24 (再)2023/04/21 平山亮は両親と妹と東京葛飾柴又のマンションに住む。大学を卒業したのだが就職先がいっこうに見つからず、日本各地をアルバイトしてふらふらしているだけだ。今回も父親に殴られて家を飛び出しやってきたのが徳島県光町。 町中をぶらつくうち、映画館のオデオン座の前に出た。そこでは映画館の社長がちょうど「ニュー・シネマ・パラダイス」の看板を取り付けているところだった。亮は無理矢理手伝わされ、もうけのことぬきでこの町に文化と映画の楽しさを伝えたいという情熱に燃える社長の社員になってしまう。 映画館は映写係の常さんと二人でやってきたが公民館などでの出張映画会を行うためには、もうひとり手伝いが必要だったのだ。亮は手伝いをして町の人々に接していくうち人生のさまざまな姿を学ぶ。そしてもちろん感動的な映画を何本も見る機会を持つことができた。「かくも長き不在」「雨に歌えば」「東京物語」など 社長は亡き親友の妻だった八重子さんに惚れ込んでいたが、寅さんと同じくその気持ちを何年にもわたって彼女にぶつけることができずにいた。八重子さんが社長の妻と間違えられてそれでも妻になりすましてくれたときもそうだった。 やがて八重子さんの父親が死去し、葬儀に訪れたかつての夫の同僚の強い望みで彼女は大阪で再婚することになった。社長は振られたことで、それまでずっと堪え忍んできた映画館の赤字問題も一気に浮上し、これを機会に映画館を閉鎖することにした。 ところが常さんはこれまで貯めてきた1200万円のお金をぽんと投げ出し、映画館はピザ店を併設して継続されることになった。すっかり社長と映画への情熱に惚れ込んでいた亮だったが、社長は東京への航空券とそれまでの給料を渡すと亮はクビにされた。亮は東京に戻り、ふつうの青年と同じく「まともな」仕事を探さなければならない羽目になった。(1996年)・・・資料 監督: 山田洋次 原作: 山田洋次 脚本: 山田洋次 音楽:山本直純 ・山本純ノ介 キャスト(役名)西田敏行(白銀活男)吉岡秀隆(平山亮)田中裕子(十成八重子)田中邦衛(常さん) 倍賞千恵子(平山春子) 裏切りがテーマ。世の中には良いことをしている集団の中でそれを破滅させる裏切りもあれば、悪いことをしている集団の中でそれを破滅させる裏切りもある。 フランスのある刑務所でのできごと。ガスパールは妻とのつまらない口論の果て妻が脅すために持っていた猟銃が暴発し、彼女の肩にけがをさせてしまった。判決は殺人未遂。この時代には20年ぐらいの刑期が待っていた。 ある日彼は別の部屋に移される。そこには4人の男たちが入っていた。彼らはとても気分よくガスパールを迎えてくれた。しかも囚人には珍しく段ポールの箱づくりという労働を自ら進んでやっていた。 実はそれには訳があって首領格の男は脱獄の名人で今回も箱づくりは穴掘りのためのカモフラージュだった。部屋の床の板をはずすと石の板が現れた。看守の目をかすめながらそれをうち砕くとその下にぽっかりと穴があき地下室に降りることができた。 地下室の鉄格子をはずすと通路に出たが壁沿いにあった扉はパリの下水道に通じていたのだった。だが下水道は水の流れる溝を残してセメントと石で塗り固めてある。男たちは交代でその壁に穴を開け始めた。 合い鍵を作り、時間を知るために診察室からちょろまかしてきたグラスと吸い殻入れの砂を使って砂時計をこしらえた。金属の棒をツルハシ代わりに、そしてどこかから手に入れたカナノコで次々と金属を切ってゆく。 男たちの幾夜にもわたる苦労は実りついに壁が貫通した。地下下水道をたどって行くと、刑務所の外にあるマンホールに出た。道路から頭を出すとタクシーが通ってゆく!自由の世界が目の前なのだ! いよいよ明日脱出決行と言うとき、ガスパールは所長の部屋に呼ばれる。妻が告訴を取り下げたというのだ。その知らせを聞いてもあまりうれしくなさそうな顔をしているガスパールに所長が心配して相談に乗ってあげようと申し出た・・・(1960年)・・・資料 Director:Jacques Becker Writers:Jean Aurel (screenplay) Jacques Becker (dialogue) Cast ; Marc Michel ... Claude Gaspar (as Mark Michel) / Jean Keraudy ... Roland Darbant / Philippe Leroy ... Manu Borelli / Raymond Meunier ... Vossellin/Monseigneur / Michel Constantin ... Jo Cassine H O M E > 体験編 > 映画の世界 > コメント集(34) © 西田茂博 NISHIDA shigehiro |