映画の世界

コメント集(36)

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  2. チャップリンの独裁者
  3. 拝啓天皇陛下様
  4. 続・拝啓天皇陛下様
  5. Shall We ダンス?
  6. 野いちご
  7. 雨のしのび逢い
  8. 母べい
  9. ボーイミーツガール
  10. 太陽の帝国
  11. まあだだよ
  12. ダウンタウン物語
  13. にあんちゃん
  14. いいかげん馬鹿
  15. 犬の生活
  16. 夫婦善哉
  17. 喜劇一発勝負
  18. 冬の光
  19. 馬鹿まるだし
  20. 恋の手ほどき
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今年見た映画(2008年)

The Great Dictator チャップリンの独裁者 2008/01/06

ヨーロッパでの世界大戦の末期、ユダヤ人理髪師は戦場でへまを重ねながらもシュッツという操縦士の命を助けてトマニア国に帰還する。戦いのときのショックで一時的に記憶喪失症になるが、隣に住む娘、ハンナの助けでようやく理髪店再開にこぎつける。

ところが記憶喪失にかかっている間に、トマニア国<ドイツのことだろう>はヒンケル<ヒットラーのことだろう>という独裁者が政権を握り、過酷なユダヤ人狩りが始まっていた。国家の危機から国民の目をそらすためヒンケルはユダヤ人をいじめることを思いついた。何も知らない理髪師は町を荒らしまわる”突撃隊”とトラブルを起こし危うくひどい目にあうところをいまやトマニア国の将軍になっていたシュッツに助けられる。

急にユダヤ人狩りがやんだ。ヒンケルは隣のオーストリッツ国<オーストリアのことか?>に侵攻するため大金持ちのユダヤ人に金を借りたかったからだ。借金が失敗に終わると再びユダヤ人たちの住むゲットーは破壊され、ハンナやその周りの人々はオーストリッツ国に国境を越えて移住する。理髪師はヒンケルに叛いたシュッツとともに強制収容所へ入れられてしまった。

だが、バクテリア国<多分イタリアのこと>もオーストリッツ国を狙っており、同じく独裁者であるナパローニがヒンケルのもとに訪ねてきた。話し合いは不調に終わり、両軍ともオーストリッツ国に侵入する。理髪師はシュッツとともに収容所を脱走した。一方、ヒンケルは理髪師と顔が瓜二つなものだから、彼が魚釣りをしている間に脱走者を捜索していた兵士に捕まってしまう。

理髪師とシュッツは軍服を着て何食わぬ顔でオーストリッツ国との国境に出向く。ヒンケルと間違われた理髪師は演台にのぼり、(ここがおそらくこの映画のクライマックスなのだが)大群衆の前で見事な演説を始めるのだった。(1940年)

Director:Charles Chaplin Writer:Charles Chaplin Cast ; Charles Chaplin ... Adenoid Hynkel (Dictator of Tomania) & A Jewish Barber / Paulette Goddard ... Hannah / Jack Oakie ... Benzini Napaloni (Dictator of Bacteria) / Reginald Gardiner ... Commander Schultz

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拝啓天皇陛下様 2008/01/20

昭和8年、岡山の連隊場に新兵が今年も入ってきた。山田正助はカタカナしか書けず、前科があるために苦労してきたが、兵隊の生活は3食つきで寝るところもあるから大喜び。びんたを食らいながら、訓練の2ヵ年を過ごす。そしてある日、演習の最中に天皇陛下の姿を見ることができた。山田はそのときからすっかりファンになってしまい、いつも親しみを感じていた。

訓練で隣同士になった作家志望の男、棟本と親しくなった。また、1年下のもと代用教員、柿内から文字の読み方の特訓を受けてようやく本も読めるようになった。新婚の男も入隊してきて、最初の1年は大変だったが、2年目になると新兵が入ってきて、2年目の連中は先輩面ができるのだった。

やがて2年の満期が来た。堀江中隊長のおかげで山田は知り合いの果樹園に就職できることになる。棟本は結婚して津山に住んでいたが、作家の芽は出なかった。そして数年後、シナ事変が始まった。男たちは再び岡山に招集され、山田も棟本も中国本土に出向くことになる。

激しい戦いの中、負傷した棟本は戦闘の記録が一躍人気の的になり、従軍作家として講演をするほどになった。山田は各地を転戦し終戦を迎える。日本に帰ってみると、売れっ子だった棟本はなりをひそめ、妻とともに千葉県の田舎に暮らしていた。そこに転がり込んだ山田は、けんかをしたりしたが後に日光の開拓村で榎本と再会をして旧交を温める。

棟本夫婦の隣の戦争未亡人に恋をしたりしたが振られてしまい、仕事も定まらなかったが、千住の飲み屋で手伝いをしていたセイ子と知り合い、ついに結婚の約束をする。そしていよいよ明日は式の準備をするという前の晩、千住大橋を酔って歩いていた山田は・・・(1963年松竹)

監督: 野村芳太郎 原作: 棟田博 音楽: 芥川也寸志  キャスト(役名) 渥美清(山田正助) 長門裕之(棟本博) 左幸子(妻秋子) 高千穂ひづる(手島国枝) 中村メイコ (井上セイ子) 桂小金治(鶴西) 葵京子(鶴西の妻) 加藤嘉(堀江中隊長) 西村晃(原一等兵) 藤山寛美(柿内二等兵) 多々良純(浦上准尉) 小田切みき(浦上の妻) 北竹章浩(菊地小尉) 穂積隆信(副官) 井上正彦 (情報部将校) 玉川伊佐男 (ひげの兵隊) 岡部健(戦地の兵隊一) 千葉晃一(被服係下士官) 園田健二(衛生下士官) 森川信(棟本の伯父) 大塚君代 (棟本の母) 山本幸栄(経師屋主人) 遠山文雄 (在郷軍人服の男) 高橋とよ(やりて婆さん) 草香田鶴子(中島の女A) 若水ヤエ子(中島の女B) 津村映子(料亭の女) 上田吉二郎 (朝鮮のとうちゃん) 清川虹子(井上セイ子の伯母) 山下清(街の人)

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続・拝啓天皇陛下様 2008/01/20

これは「続」となっているけれども、前作とは時間的には同じながら、まるで別のストーリーが展開する。普通は前編とつながっているもののなのに、これはまったく独立した作品ということできわめて珍しい例だ。山口善助は子供のころに、自分の田舎の近くをとおりかかかってかすかに姿が見えた天皇陛下のことが忘れらない。そして自分に字を教えてくれた女子(おなご)先生の思い出も強烈だった。

両親がすぐに死んで彼は13歳でさまざまな仕事に就いたが、生活は苦しく牢屋にぶち込まれることもあったので、岡山の新兵訓練場に召集されたときはこれでようやく三食と寝るところについては心配の必要がないとなって大喜びだった。召集前日、当時中国人が差別されていたが、山口は近所で床屋をやっている王万林に散髪をしてもらい友達になる。

やがてシナ事変が始まり、山口は中国大陸へ向かう。任務は軍犬の訓練だった。京都南禅寺に住む久留宮ヤエノからあずかった愛犬”はるとも”を大切に育て、戦闘では苦楽をともにする。だが終戦となり、命令で軍犬たちは現地においていかれることになった。悲しみの別れをしたのち山口は帰国してすぐに京都に向かい、ヤエノに報告をする。彼女はあの女子先生に似ていた。

戦後の混乱の中、王万林と再会した。彼は神戸に中華料理店を開き日本人の女を妾にしてどんどん事業を展開していった。そんな器用なことができない山口は困窮しているヤエノのところをたびたび訪れたりしながらバタヤの仕事を始めている。進駐軍がまだ人々の生活を監視していたころで山口もトラブルを起こし、沖縄に連れて行かれてしまう。

ようやく本土に戻れることになったとき、ヤエノの中国で行方不明だった夫が見つかり無事戻ってきた。ひそかにヤエノにあこがれていた山口はがっくりしてしまう。そのころ恵子に再会した。恵子とはかつてスラム街で暮らしていたころ親しかったがアメリカ兵によって誘拐されてパンパンをやっていたのだ。

二人は一緒に暮らすようになったが、ある日恵子がもとのパンパン仲間としゃべっているのを見て怒り狂い、家を追い出してしまう。だがそのとき恵子は妊娠していたのだ。9ヵ月後再び発見されたとき、彼女は女の子を出産した。だがそれまでの無理がたたり敗血症を引き起こしてしまった・・・(1964年松竹)

監督: 野村芳太郎 原作: 棟田博 脚色: 多賀祥介 山田洋次  野村芳太郎 音楽: 芥川也寸志 アクタガワヤスシ キャスト(役名) 渥美清(山口善助) 桑原富久(子供時代) 久我美子(久留宮ヤエノ) 佐田啓二(良介) 宮城まり子(恵子) 岩下志麻(女子先生) 小沢昭一(王万林) 南田洋子(美理) 藤山寛美(加仁班長) 勝呂誉(高見一等兵) 浜村純 (渋川中隊長) 春川ますみ(パンパンの朱実) ミッキー安川 ミッキーヤスカワ(二世の通訳) ロベルト・バルボン(黒人兵) 加藤嘉(刑事)

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Shall We ダンス? 2008/02/02

ダンスを通して実存的な生き方を探る傑作。つまり、この映画を見る人の生きる世界が広がるかもしれない映画なのだ。主人公の杉山正平は平凡なサラリーマンで、結婚し、娘が一人あり、郊外に家を建てた係長である。やっと日本の男として平均的な水準に達したのであるが、何か物足りない。そのためこのごろは何か元気がないのだ。通勤途中の駅から、ダンス教室のガラス窓が見える。そこに美しい女がさびしげに外を見ているのが気になった。

正平は、それからそこを通るたびに気になり、ついにその教室に入門を決意する。妻には内緒で。はじめのうちはまったくやることなすこと初体験であり、無我夢中で練習をつんだが、少しずつそのスタイルは見られたものになって来た。また会社ではのけ者にされている部下の青木もこのダンス教室に通っていることを知る。妻は毎週水曜日の夜に、普段はまじめ一方の夫が遅く帰ることが気になり、探偵社に依頼して事実を知る。

窓の外を見ていた女は舞といい、岸川ダンス教室創設者の娘だった。イギリスのブラックウォーターでのダンス競技会に参加したとき、アクシデントで床の上に転んだのだった。そのためリーダーとはペアを解消し、日本に戻って初心者の指導をいやいやながらやっていた。

正平は舞を誘おうとしたが、すげなく断られた。だがすでにダンスにのめりこんでいた正平は青木とともにアマチュア競技会に出るべく必死に練習を重ねる。ダンス教師の特別レッスンに加えて、舞も指導に参加してくれた。

いよいよ競技会の当日、正平はパートナーとともに勝ち進む。だが、ひそかに見学に来ていた妻と一緒に来ていた娘が大声で声援を送るのをきいてミスをしてしまい、パートナーを転ばせてしまい、スカートも脱げてしまう。

だが、正平は全力を尽くして満足だった。妻にもすっかり知られてしまった。そしてこの日限りでダンスをやめることを宣言する。心配した青木たちが、家までやってきて舞がイギリスへ戻る決心をしたのでパーティを開くことを伝える。彼が携えてきた舞からの手紙には正平がダンスに打ち込む姿を見て、自分の自己中心に気づき、やり直す決心をしたと書いてあった。

パーティに行く気はなかった正平だったが、帰りの電車からふとダンス教室の窓を見ると、”Shall We ダンス?”とかいてあるではないか。パーティの会場に駆けつけるとちょうど舞がラストダンスの相手を探しているところだった・・・(1996年東宝)

監督: 周防正行 原案: 周防正行 脚本: 周防正行 : 大貫妙子 キャスト(役名) 役所広司(杉山正平) 草刈民代(岸川舞) 竹中直人(青木富夫) 渡辺えり子(高橋豊子) 草村礼子(田村たま子) 柄本明(三輪徹) 徳井優(服部藤吉) 田口浩正(田中正浩) 原日出子(杉山昌子) 森山周一郎 モリヤマシュウイチロウ (岸川良) 香川京子(岸川恵子)

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Smultronstallet 野いちご 2008/02/23

引退した老医師が、名誉博士号の授与式に車で向かう一日を描き、人生のさまざまな面をえぐりだす、大変奥深い作品。イサック博士は78歳。10人兄弟で大家族に育ち、もうはるか昔に妻は死んだが、母親は96歳でまだ健在である。医者をやっている息子は離れて暮らしているが、妻サラとの間がうまくいかず、彼女は1ヶ月ほど博士のところに身を寄せている。

授与式の前の晩、イサックはいやな夢を見る。ある街角。時計はどれも針がなくて文字盤だけだ。棺おけを積んだ馬車が街頭に衝突し、棺おけが道に転がり出てふたが開く。中から男の死体が現れるが、その手が伸びてきてイサックの手を握って放さないのだ。

授与式の朝、イサックは会場に飛行機ではなく、自分で車を運転していくのだと家政婦に言い張り、大ゲンカになるが、サラが同行するというので出発することになった。彼女はもともとイサックが好きではない。自分たち夫婦の間にもノータッチで学問一徹の冷たい人間だと思っていた。

かつてイサックが兄弟たちと暮らしていた家の前を通りかかる。野いちごの生い茂る森の中で、イサックは思い出すのだった。従妹は自分を好いていたが、生真面目な自分にいまひとつ徹底できず、もっと人間味のある弟がさらって結婚してしまったという苦い思い出である。

途中で、若い女と二人の青年に出会う。彼らはイタリアに向かうので、同乗させてほしいという。総勢5人となった一行は博士の運転で旅をすすめるが、夫婦喧嘩の挙句、こちらにぶつかってきた車と危うく衝突しそうになる。相手の車は裏返しになり、人前でもけんかをやめない夫婦は、いったん乗せてやったがまもなく車を降りてもらう。

この夫婦を見て、サラは自分が妊娠したのに、決して子供を持ちたくないという夫のことを思い出す。夫は父親のイサックに似て、頑固で冷たい人間なのだ。同乗してきた二人の青年は、それぞれ医者と神父志望で、女を自分のものとしたいようだ。二人は宗教と無神論について議論し大喧嘩となる。

かつて自分が開業していた地域のガソリンスタンドに立ち寄る。そこでイサックがかつての献身的な診療のために人々に深く慕われていることを知り、サラは彼を見直す。近くに、イサックの母親が住んでいた。なるほど96歳にしては肉体的には非常に元気だが、自分の遺産目当てに親族が早く死んでくれることを願っていると語り、心はもう死んだも同然だった。かつて兄弟たちが遊んだおもちゃの入った箱を出すと、彼女がイサックに差し出した記念の品は、なんと文字盤のない時計だった!

しばらくしてサラに運転を交代してもらい、うとうとするとイサックはまた夢を見た。自分が医師の試験に不合格だというのだ。それも人間的に欠陥があるかららしい。そして死んだ妻が男と密会しているショッキングなシーンを再び見ることになる。妻はイサックのふがいない態度に不満を持って不倫に走ったのか?

車はやがて町に近づいた。サラのイサックに対する態度はずっとよくなり、自分の悩みやこれからの人生について語り始めた。夕方、授与式に出席する。息子にも再会した。息子はもう一度やり直す気持らしい。すっかりイサックを尊敬するようになった若者3人組は、さらに南へと旅を続けるために別れの挨拶に来た。イサックはその夜、今日一日に起こったことや追想や夢を思い出し、自分の人生もまんざらでもないと思いつつ眠りについたのだった。(1957年・スェーデン映画)

Director:Ingmar Bergman Writer:Ingmar Bergman (written by) Cast (Cast overview, first billed only) Victor Sjostrom ... Dr. Isak Borg / Bibi Andersson ... Sara / Ingrid Thulin ... Marianne Borg / Gunnar Bjornstrand ... Dr. Evald Borg / Jullan Kindahl ... Agda / Folke Sundquist ... Anders / Bjorn Bjelfvenstam ... Viktor / Naima Wifstrand ... Mrs. Borg, Isak's Mother  リスニング;スェーデン語

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Moderato cantabile 雨のしのび逢い 2008/02/25

ボルドーの近く、ジロンド川の流れる地方都市。溶鉱炉会社社長の妻、アンヌは今日もまだ幼い息子をピアノレッスンに連れてきていた。教師が何度言っても、息子は言うことを聞かない強情な子だった。”モデラート・カンタービレ”は普通の速度で歌うように弾くのよ、と何度いわれてもそのとおりにしない。

だが息子は馬鹿なのではなかった。母親と一緒にいるときはごく普通の子だった。問題はアンヌの焦燥感だった。お金に困らぬ生活をして豪邸に住んでいながら、子供を連れての散歩ぐらいしか生活のリズムがない。

その日、レッスンの最中に突然、女の悲鳴が聞こえた。アパルトマンの下の階にあるカフェで女が男に、おそらく恋のもつれから殺されたのだ。様子をうかがいにいったアンヌはそのカフェでショヴァンという、自分の夫の溶鉱炉で働く労働者と親しくなる。ほかに聞く相手もいないものだから、アンヌは彼にさらに事件の情報を知らせてくれるようにと頼んで再会を期す。

カフェで女が一人ワインを飲んだりすれば、当然人目を引くが、アンヌは気にも留めない。そして何度か逢引をショヴァンと繰り返す。ジロンド川を横断するフェリーに乗って対岸で逢ったこともあった。アンヌは自分の生活のむなしさがこの恋によって埋めることができると信じ、ますますのめりこんでいくが、ショヴァンにしてみればはじめは軽い気持ちで引っ掛けただけだら、だんだん重荷になってきた。

やがて、二人の仲は街のうわさになり、ショヴァンはこの町に居づらくなった。自宅でパーティが開かれた夜、アンヌは女主人の役をほおり出して、店を片付けた後のカフェに向かう。ショヴァンは待っていたが、翌日この町を去ることを告げる。アンヌはそのショックを受け止めることができない。悲痛な声で泣き叫ぶと、カフェのカウンターにうずくまるだけだった。探しに来た夫が車に乗せて帰るまで。(1960年)

Director: Peter Brook Writers:Marguerite Duras (play) Gerard Jarlot (adaptation) Cast;Jeanne Moreau ... Anne Desbaredes / Jean-Paul Belmondo ... Chauvin / Pascale de Boysson ... Bar's owner / Jean Deschamps ... M. Desbaredes / Didier Haudepin ... Pierre リスニング;フランス語

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母べい 2008/02/28 (ロードショウにて)2023/03/03(再)

戦前の東京の下町。みすぼらしい家に、ドイツ文学者である父べいと母べい、姉のハツべい、妹のテルべいの四人家族が仲良く暮らしていた。だが、父べいの書いた書物が原因で、治安維持法に触れ、真夜中にやってきた刑事たちに逮捕される。

それからの一家の暮らしは一変した。やがて拘置所に移された父べいは健康を害していった。母べいは代用教員をして生活を支え、隣組の親切なおじさんたちのおかげで何とか暮らしていくことができた。やがて日本は戦争へ突き進み、中国での戦いは、太平洋へ広がりそうであった。

山口の警察署長をしている母べいの父親がやってきた。結婚に反対していたが、今度の逮捕には心を痛め、何かの足しにと金を置いていく。奈良からはおじさんがやってきた。歯に衣着せぬ言動に一家の顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまったが、帰り際に自分の金の指輪をそっと渡すのだった。

シューベルトの「野ばら」の得意な山崎という父べいの教え子が訪ねてきて、一家のためにさまざまな手伝いを惜しまなかった。さらに父べいの妹で画学生のチャコもやってきて家事の手伝いをしてくれるようになった。おかげで打ちひしがれていた姉妹たちも少しずつ元気を取り戻してきた。

母べいを中心に5人が家族のように協力し合い、ようやくいつもの生活に戻ろうとしていた矢先、父べいの死の知らせが届く。戦時下でもあり、葬式をそそくさと済ませた。やがて、チャコは広島の母親の病状が悪化したために、故郷に戻ることになった。帰る間際、山崎がひそかに母べいにあこがれていたことを告げる。

ついに太平洋での戦争が始まった。山崎にも赤紙が来た。山崎は姉妹たちに別れを告げるのがつらくて、母べいにだけひと目会って去っていったのだった。これで終戦まで3人だけの生活が続いた。そして戦争が終わった。奈良のおじさんは山の中で野垂れ死にし、チャコは広島の原爆で死に、山崎は太平洋の真ん中で魚雷に撃沈された船に乗っていて海の藻屑と消える。

10数年後、美術の教員となったテルべいのもとに母べい危篤の知らせが入る。医師となったハツべいとともに見守る中、母べいは死の間際に、あの世で再会なんかしたくない、この世で再会したかったと嘆きの声をあげたのだった。

聖書では、アダムとイブが神様にうそをついたとき、「あなた方は塵から生まれたから塵に返る」と言われてエデンの園を追い出されている。人間生きているときがすべてなのだ。そしてその短い人生そのものが貴重なのである、と監督は言いたかったのだろう。(2007年)・・・資料外部リンク

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Boy Meets Girl ボーイミーツガール 2008/03/02

題名は英語だが、フランス映画。パリの街に、恋人のできない青年、アレックスがうろついている。彼は映画の台本を書くことが志望らしい。彼は親友に自分の恋人を取られてしまったばかりだ。自分の部屋に戻っても自分の心のむなしさはどうしようもない。

一方、ミレーユという、もう一番いい時期が去った女が、やはりパリの街に暮らしている。恋人と一緒に暮らしているものの、彼はミレーユにうんざりして口さえも利いてくれない。彼女はタップダンスの練習をして気を紛らわせているが、やはり孤独感はどうしようもないのだ。

アレックスは、ふと手に入れた名刺のメモから、あるパーティに参加してみる。そこにはミレーユが来ているはずだった。親切な女主人のおかげで台所でミルクを飲んでいると、ミレーユがやってきた。二人は話し込み、お互いに極めて孤独であることを知る。

真夜中が過ぎて、二人はいったん別れるが、気になったアレックスは彼女のアパルトマンに向かう。ドアの向こうには風呂場の水が出しっぱなしになっていて、ミレーユは手にはさみを持っていた・・・(1984年)

Director:Leos Carax / Writer:Leos Carax (writer) / Cast (Cast overview, first billed only) Denis Lavant ... Alex / Mireille Perrier ... Mireille / Carroll Brooks ... Helen リスニング;フランス語

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Empire of the Sun 太陽の帝国 2008/03/05

日中戦争が始まるころの上海。当時、上海には大勢のイギリス商人が、やってきていて成功した者たちは運転手つきの豪邸に住み、毎週パーティを開いてすごしていた。少年ジムもそのような家庭に育ち、父母の下で何一つ不自由のない生活をすごしていた。彼は日本の零戦に憧れ、野原にあるその飛行機の残骸をなでては大空への夢を広げるのだった。

だが、日本軍がついに大陸に侵略を開始し、上海にも上陸を始めた。一家はまだ大丈夫だろうとたかをくくっていたのがいけなかった。いざ逃げ出す段になって中国の民衆が町にあふれ、外国人たちは波止場に向かったのだが、そのすさまじい大混乱の中でジムは父母からはぐれてしまった。

いったん家に帰り着いたものの、家財道具は運び出され、残っていた缶詰を食べて食いつなごうとした。だがついに食料は尽き、町に出ると人買いにさらわれ、どこかに売られそうになる。たまたま通りかかったアメリカ人の若者に救われるが、彼らとてボロトラックで廃材をあさって何とか生きながらえている境遇にあった。

ついに日本軍の本格的な占領が始まり、上海に残った欧米人は全員収容所に入れられる。ジムは旺盛な生命力で収容所生活を乗り切っていく。大人たちに必要な品物をどこから仕入れてきたり、野菜を見つけたりしてみんなに重宝がられる。

ジムはまた、青年医師の手伝いをして、ラテン語も習う。毎日のように死人が出るが、死にかける人が出てくるとその靴をいただこうと準備するのもジムだった。ひどい食糧事情の中で、ジムは与えられたジャガイモに入っているイモムシもビタミンの補給だといって食べてしまうのだった。この医者の影響を受けて彼は今の生活は”人生学校”だと思っているのだ。

別の棟に住むアメリカ人たちとも親しくなり、雉(キジ)のわなを仕掛けに滑走路にまで出て行くときに、日本軍の司令官に危うく射殺されるところを、模型飛行機が縁で親しみを覚えた日本人の少年兵のおかげで免れたことから、みんなから尊敬まで受けるようになり、ジムの猛烈さにうんざりしているイギリス人たちの棟から離れて、アメリカ人棟へ引っ越す。

1945年になり、戦争は終わりに近づいた。上海でも日本軍は追い詰められ、戦闘機が空爆する。収容所から全員が南へ移動させられた。その過酷な道のりの中で、多くの人々が命を失ったが、ジムがはるか北のほうに長崎の原爆が炸裂した閃光を見た翌日、戦争は終わりを告げた。

一人再び収容所に戻ってみると、落下傘から投下された食料を見つけ、ようやく一息をついた。日本人は少数残っていたが、特攻攻撃に出ようとした、ジムが親しみを感じていたあの少年兵がアメリカの若者によって射殺されてしまう。

やがて欧米人たちは再び家族との再会が可能になった。大きな廃屋でおおぜいの子供と両親たちの対面が行われた。ジムがぼんやりしていると、両親が見つけてくれ、長年のつらい放浪生活はやっと終わりを告げたのだった。(1987年)

Director:Steven Spielberg / Writers:J.G. Ballard (novel) Tom Stoppard (writer) Cast Christian Bale ... Jim 'Jamie' Graham / John Malkovich ... Basie / Miranda Richardson ... Mrs. Victor / Nigel Havers ... Dr. Rawlins / Joe Pantoliano ... Frank Demarest / Leslie Phillips ... Maxton / Masato Ibu ... Sgt. Nagata / Emily Richard ... Mary Graham, Jim's mother / Rupert Frazer ... John Graham, Jim's father / Peter Gale ... Mr. Victor / Takatoro Kataoka ... Kamikaze Boy Pilot リスニング;英語

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まあだだよ 2008/03/08

夏目漱石の弟子、内田百;ケンの伝記的映画。昭和19年、旧制高校の教師を辞めた”先生”は念願の執筆生活に入る。広い家を借りて、奥さんと二人暮らしだが、弟子たちに慕われ、訪問客が絶えることがない。先生は諧謔(かいぎゃく)精神の持ち主で、家の中に「泥棒入り口」とか「泥棒休憩室」などの張り紙を張っている。

弟子たちもその先生にふさわしく、「まだ死なないのか?」に対する答えとして「まあだだよ」となるところから、摩阿陀(まあだ)会などというものを立ち上げて毎年先生の誕生日に宴会を開くことになった。第1回目は先生が還暦になったときである。

やがて戦争が激化し、先生の家も空襲で丸ごと焼けてしまった。近くの男爵(バロン)が持っていた守衛の小屋を借りて、しばらく夫婦で1畳間暮らしを続ける。それでも弟子たちの訪問が続いていた。弟子たちは相談して、もっとましな家に住んでもらおうと計画し、何とか土地を借りドーナツ型の池までついている家をプレゼントした。

先生はその家で、「ノラ」という名の野良猫を拾って妻とともにたいそうかわいがっていたが、あるとき突然姿を消してどんなに捜索しても戻ってくることはなかった。たぶん三味線の皮になってしまったのだと思われる。先生は憔悴しきって毎日お風呂場のふたの上にあるノラの寝床を見るたびに涙を流すのだった。

弟子たちも心配したが一向に見つからないのであきらめかけていたころ、別のくろぶちの猫が先生の庭に現れた。先生は気持ちを切り替えて今度はこの猫に愛情を注ぐようになった。そうして17年。先生はもう77歳になったのだ。摩阿陀会もついに17回目を迎え、弟子たちの娘、息子、そしてバースデーケーキの贈呈には孫たちまで出てきた。。

先生はいつものように大杯を飲み干したが、不整脈の持病のため気分が悪くなり、会の途中で家に帰る。家まで送っていった4人の弟子が酒を酌み交わす中、先生は布団にもぐって幼いころのかくれんぼの夢を見て、「まあだだよ」と叫んでいた。(1993年)

監督: 黒澤明  原作: 内田百?(ウチダヒャッケン・・・ケンは門構えの中に月を書く特殊字体) 脚本: 黒澤明  キャスト(役名) 松村達雄(先生) 香川京子(奥さん) 井川比佐志(高山) 所ジョージ(甘木) 油井昌由樹(桐山) 寺尾聰(沢村) 小林亜星(亀山;和尚) 日下武史(小林;主治医)

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Bugsy Malone ダウンタウン物語 2008/03/13 (再)2013/12/01

この物語が変わっているのは、登場人物がみな少年少女だということだ。大人が登場しないミュージカル。舞台は20世紀前半のニューヨークのダウンタウンで、子供たちが運転する自動車はペダルで踏む形式。ギャングたちの持っている銃は、中からパイやクリームが飛び出してくる。男の子のほうはみな幼く見えるが、女の子たちは大人顔負けの化粧と色気を持っているのだ。

主人公、バグジーは頭がよくて、女にもてる好男子。これといった職業は持たないが、町のボス、ファット・サムやその女、タラーたちと仲がよい。ある日、バグジーは歌手志望でハリウッドを夢見る女の子、ブラウジーと知り合い、何とか口説こうとするがなかなかうまくいかない。

町に新しいライバルがやってきた。ロイ・スミスをボスとするグループで、彼らは、漆喰(しっくい)が飛び出す新式機関銃を持っていた。これにあたったらひとたまりもない。ロイはファットのシマを乗っ取るつもりなのだ。機関銃の威力により、次々とファットの施設が陥落する。なすすべもなく、あとはファットの酒場が襲われそうになった。

ファットはバグジーに助けを求めた。ファットはバグジーの運転で森に向かい、ボスたちはトップ会談をするが、ロイたちの裏切りでファットたちはほうほうのていで逃げ帰る。バグジーは町の暴漢からの襲撃から守ってくれたスモルスキーと仲良くなる。パンチ力では彼は誰にも負けない。

波止場の倉庫に例の機関銃が隠されていることを知ったバグジーはスモルスキーをつれて出かけ、ニューヨーク港に着いたばかりで行くあてのない移民たちを動員して機関銃を奪い取る。ファットの酒場は、ロイたちを迎え撃つため、準備万端整えた。そこへロイ一味がなだれ込む・・・(1976年)

Director: Alan Parker Writer:Alan Parker (writer) Cast Scott Baio ... Bugsy Malone / Florrie Dugger ... Blousey Brown / Jodie Foster ... Tallulah / John Cassisi ... Fat Sam / Martin Lev ... Dandy Dan / Paul Murphy ... Leroy Smith / Gangster / Sheridan Earl Russell ... Knuckles (as Sheridan Russell) / Albin 'Humpty' Jenkins ... Fizzy / Paul Chirelstein ... Smolsky / Boxer Language; English・・・資料外部リンク

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にあんちゃん 2008/03/15

戦後、日本の炭鉱は急激にその生産を下げ、別のエネルギー資源に取って代わられようとしていた。佐賀県の炭鉱も例外ではない。この町では葬式が行われていた。炭鉱夫が一人死んだのだ。すでに妻はなく、4人の兄弟姉妹が残された。

末の末子はまだ小学校低学年。とにかく学校に行くしかない。その上の兄、高一は2番目だから妹から”にあんちゃん”と呼ばれている。父親の棺桶を載せた船が去っていくのを見て海に飛び込んで泳ぎだす。高一は”生きる力”の塊のような子で、小学校ではガキ大将だし、早く何か仕事をしたくてたまらなくてバタヤの手伝いをしている。

長女の良子はおとなしい性格だったが、父親の死後、料理屋の手伝いをするために唐津へいってしまった。長男の喜一は父親の仕事のあとを継げるはずだったのだが、不況のため本雇いはおろか、臨時の職までクビになって、どこか外に仕事を見つけなければならなくなった。

そうなると末子と高一を誰か預かってくれる人を探さなければならない。最初親切な社宅の人が引き取ってくれたが、炭鉱で怪我をしてしかもクビになった。山奥の朝鮮人夫婦に引き取られることになったが、ものすごく辛い食事に耐えられず、二人は脱走して町に戻ってくる。そして末子は産児制限普及の仕事をしている若い女性、かな子に一時引き取ってもらい、高一は住み込みで港の干物製造の手伝いをすることになった。やがてかな子も東京へ帰っていく。

喜一も一向にまともな仕事が見つからないまま、高一は東京に出れば自分も仕事があるだろうと思い込み、勝手に列車に乗って都内の自転車店に仕事を求めるが、すぐに補導され送り返されてきた。それでも高一はまったくめげない。東京に行ったことを自慢して見せるのだった。妹とともに早く小学校を卒業して、大いに仕事をしてやるのだ!(1959年)

監督: 今村昌平 原作: 安本末子 脚色: 池田一朗 今村昌平 音楽: 黛敏郎  キャスト(役名) 長門裕之(安本喜一) 松尾嘉代(安本良子) 沖村武(安本高一) 前田暁子(安本末子) 北林谷栄 (坂田の婆) 小沢昭一(金山春夫) 殿山泰司(辺見源五郎) 浜村純(西脇) 芦田伸介(鉱業所長) 吉行和子(堀かな子) 二谷英明(松岡亮一)

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いいかげん馬鹿 2008/03/19 (再)2020/06/19

昭和19年、東京から空襲を逃れて瀬戸内海の春ケ島に疎開してきた、母娘があった。母親は程なく死んだが、娘の水上弓子はまだ小学校低学年の身で、この島の親戚に預けられて育った。近所にいつも親父に怒鳴られているどうしようもない悪ガキの海野安吉がいた。だが弓子には何かと親切で、一緒に遊んでくれたりしたものだ。

ある日安吉は弓子を連れて勝手に船を漕ぎ出し、離れ小島で水中を乱舞する魚たちを見せてくれたのはよかったが、船のとも綱が解け、大騒ぎとなった。安吉は父親にこっぴどくしかられ、その晩、ぷいと島から姿を消してしまった。

それから10数年。弓子は岡山の大学に合格し、一週間岡山に住んで週末には島に帰る生活を始めていた。そこへひょっこりドサまわりの楽団が島にやってくる。なんと渉外役が安吉だったのだ。ところが翌朝、楽団長の夫婦が色恋沙汰を引き起こし、その弁償のために安吉は島の旅館で働く羽目になる。

はじめは厄介者になっていたが、弓子の説教で少しはましになろうとした矢先、島出身のブラジル移民が帰郷したのを機会に、自分も開拓民になると言い出す。だが、捨て子だった彼には戸籍がない。仕方なく密航を企てるがあえなく逮捕され、その後行方不明になっていた。

数年後、安吉はひょっこり島に姿を現す。一緒に連れてきた放送作家が書いた春ケ島における滞在の思い出がラジオで全国に流れたものだから、それまでジリ貧に苦しんでいた島は一躍観光地になり、安吉は英雄としてあがめられるようになってしまった。

安吉はかつて弓子に見せてやった美しい海底を思い出し、グラスボートのアイディアを実行に移す。ところがガラスが割れ、観光客たちは危うく溺れるところだった。安吉は島を追われるような形で再び姿を消した。その後、春ケ島にはホテルが建ち、本格的に観光地として繁栄を始めたが、弓子が懐かしんだような昔ののんびりしたところは失われてしまった。

弓子は大学卒業後、島で先生になった。修学旅行を引率して大阪へ行くと、安吉が道端で商いをしているではないか。再会はしたものの、父親の死を告げる暇もなく、仲間同士の抗争に巻き込まれていた安吉はたちまち姿を消してしまった。(1964年)・・・資料外部リンク

監督: 山田洋次 脚本: 山田洋次 熊谷勲 大嶺俊順 キャスト(役名) ハナ肇 (海野安吉) 岩下志麻(水上弓子) 花澤徳衛(海野源太) 桑山正一(海野茂平) 松村達雄(舟山和彦) 殿山泰司(海神丸)石黒達也(竜王丸)犬塚弘(鮫島巡査) 渡辺篤(悪い男) 荘司肇(浩)

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A Dog's Life 犬の生活 2008/03/22

街の空き家に浮浪者が寝ている。何も食べるものがないから、塀の横にたまたま物売りが置いた入れ物から失敬しようとするが、それを警官に見られてしまう。うまく逃れたが空腹はたえがたい。一匹の浮浪犬が、たくさんの犬たちに自分の見つけたえさを横取りされようとしたところを救ってやる。協力して屋台の食べ物を巧みにつまみ食いするのに成功する。それ以後一緒に行動することになった。

酒場に入ろうとするが、犬を懐に入れているところが見つかってしまう。たまたま店に働き始めたばかりの歌手が悲しい歌を歌った。彼女の歌のすばらしさに浮浪者は惚れ込んでしまう。彼女と親しくなるが、酒を買ってやることができないためにバーテンに犬と一緒に店の外に放り出される。

2人組の辻強盗が登場する。大金持ちの男を襲うと、懐から札束のたっぷり入った財布を奪い取った。ところがその直後に警官に追われたために、強盗たちは空き家の庭にその財布を埋める。たまたまそこをその夜のねぐらにしようとしていた浮浪者だが、連れていた犬が掘り出してくれたおかげで一躍大金持ちになる。

ところがうまくいかないもので、その金を持って酒場に行くとあの強盗たちがいるではないか。簡単に財布を取り返されてしまうが、浮浪者は持ち前の”特技”を使って一方の強盗を操り人形のごとく動かし、まんまと金を取り戻す。再び追いかけられ、また強盗たちに奪われてしまうが、そこであの賢い犬が飛びついて財布を取り戻し、浮浪者と歌手は、犬とともに田舎で幸せに暮らすことになる。(1918年・サイレント)

Director:Charles Chaplin Writer:Charles Chaplin (writer) Cast ;Charles Chaplin ... Tramp / Edna Purviance ... Bar singer / Syd Chaplin ... Lunchwagon owner

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喜劇 夫婦善哉 2008/03/27

「めおとぜんざい」と読むが、1955年に作られた森繁久彌主演の映画とは異なり、表題の頭に喜劇がついている。「ぜんざい」は「善き哉」のことであるが、二人のお気に入りでよく行くゼンザイ屋の名前をかけている。

昭和19年、大阪の問屋を営む維康柳平はもう年なのに、長男の柳吉は妻が死に、娘もいるが、女を作りあいも変わらず遊びほうけている。だが今度ばかりは使い込みがまたばれて、柳平の堪忍袋の緒が切れた。勘当を言い渡される。

柳吉は蝶子と一緒になるつもりだったが、家を追い出された今二人は駆け落ちということになる。とりあえず、てんぷら屋を営む蝶子の実家に駆け込んで生活を始めることにした。蝶子はそれまでの水商売の経験を生かして関東炊き(おでん)の店を始める。柳吉の味付けがよかったせいもあって客がつき始めた。

だが柳吉は、少しでも景気がよくなるとすぐに遊びを始めてしまい、蝶子の気苦労は絶えない。おでんやからサロンへ、そして喫茶店を開き次々と危機を乗り切っていくが、突然柳吉が腎臓結核で倒れる。手術代は、柳吉の妹が援助してくれた。だが手術の夜に自分の母親が癌で息を引き取った。

ようやく柳吉は回復し、湯治から帰ってきたころ、柳平危篤の知らせを受ける。だが妹の養子婿となっている男は頑として蝶子を家に入れない。絶望した蝶子はガス自殺を企てるが未遂に終わる。柳平の死後柳吉は姿をくらまし、自分の父親のところに届いた手紙には満州へ行くと書いてあった。

これを読んで、蝶子は柳吉がいなくなってせいせいすると父親の前で強がりを言って見せたが、やはり気持ちは落ち着かなかった。しかしある日、飲み屋のカウンターの上に汚い茶色の鞄がおいてあった・・・(1968年)

監督: 土居通芳  原作: 織田作之助  キャスト(役名) 藤山寛美(維康柳吉) 野川由美子(蝶子) 松本染升(維康柳平) 御陵多栄子(やす江) 河村有紀(筆子) 平山謹子(久子) 中村是好(種吉) 初音礼子初音麗子(お辰) 萬代峰子(おきん) 南田洋子(金八) 長門裕之(隅田) 

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喜劇 一発勝負 2008/04/03 (再)2020/06/14

「ひなだ」という名前の駅がある、川の流れる田舎町に、代々やっている古い旅館があった。当主である二宮忠は、息子の孝吉を勘当にして家を追い出してしまった。まだ学生なのに妾を囲っていたからである。孝吉が女に産ませた娘、マリ子は二宮家の養女となった。

それから数年のうちに忠の妻は心労で死去し、今日はその一周忌だというとき、突然、この町に孝吉が再び姿を現したのだ。忠はトラブルを起こされるよりも、再びどこかに行ってもらいたかった。孝吉の妹、信子は大学に進み、将来は画家になりたいので、孝吉のことにはあまり関心がない。マリ子はまだ小さくて自分の父親だということを知らされていなかった。

ただ、ふみという旅館に長く奉公した女中だけが孝吉に理解があり、味方だった。これは若大将シリーズでの”おばあちゃん”に似ている。一周忌の宴会で飲みすぎた孝吉はアルコール中毒を起こし、死んだと思われて葬式までが執り行われる。

いったん死んだとなれば、腹が決まった。何も怖くない。孝吉はこの町に温泉が出そうだといううわさを聞き、仲間を組んで掘削作業に取り組んだのだ。もちろん町の人は半信半疑で、父親は一刻も早く撤退してもらいたいと願っていた。

温泉はどこを掘っても出てくることがなく、資金は窮乏し、山に行ってとってきた茸がワライタケだったために危うく命を落としそうになったり、信子からお金をせびったりして状況は苦しくなってきた。ふみをだまして家から高価な壺を持ち出したりしたものだから、ふみは責任を感じて郷里の青森に帰ってしまった。

そしていよいよ仲間がこの町を去ると告げたときだ、突然井戸からお湯が噴出したのは。最後のぎりぎりのところで孝吉は一発勝負に勝ったのだ!ふみを郷里から呼び返し、町に一大リゾートセンターを作った。ところがマリ子が悪友たちと車に乗って東京へ行くといってきかない。「なんとなく」を歌いながら出て行ってしまった。親不孝のかたまりみたいな孝吉はこうして今度は娘から親不孝の目にあう番になったのだ。(1967年・松竹)・・・資料外部リンク

監督: 山田洋次 脚本: 山田洋次 宮崎晃 音楽: 山本直純 キャスト(役名) ハナ肇(二宮孝吉) 倍賞千恵子(二宮信子) 加東大介(二宮忠) 露原千草(二宮礼子) 瞳ひかる(二宮マリ子) 北林谷栄(清野ふみ) 三井弘次(石丸先生) 犬塚弘(赤山) 桜井センリ(青田) 谷啓(山口大三郎) 左とん平(葬儀屋) ザ・スパイダース(悪友たち)

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Nattvardsgasterna 冬の光 2008/04/07

ここはスウェーデンの寒村。ここにある教会にはわずか5人しか日曜礼拝に来ていない。それというのも、ここのトーマス牧師は5年前に妻を亡くして以来、人を愛することができなくなり、”神の沈黙”により、神の存在すら信じられなくなってしまっているからだ。

学校教師のマルタはそんなトーマス神父を何と救いたいと思っている。というよりは、もう独身生活もこのくらいにしないと一生結婚ができなくなる恐怖からもしれない。だがトーマスは死んだ妻のことを美化し、そのかわりはいないとして何かと世話を焼こうとするマルタを邪険(じゃけん)に扱う。

信者の主婦が、自分の夫を連れて相談に来た。どうやら彼はうつ病らしい。中国で原爆を開発したから心配でたまらないという。だがトーマスは自分の悩みをさらけ出しただけで、少しも彼の助けにならなかった。がっかりした男は家を出ると川岸で銃を撃って自殺してしまう。

神父はマルタを邪魔に思いながらも、その日の別の場所で開かれる日曜礼拝に連れて行く。だが、行ってみるとオルガン引きだけがきていて、信者は一人もいない。そんなときその教会の管理人が、キリストが処刑されるときにすべての弟子に裏切られ、神にも見捨てられた”神の沈黙”の話をする。これはまさにトーマスの悩みと同じだった。時間が来た。今日もトーマスはマルタ以外に誰もいない空っぽの教会堂に向かって説教を始める・・・(1962年)

Director:Ingmar Bergman Writer:Ingmar Bergman (writer) Cast (Complete credited cast) / Ingrid Thulin ... Marta Lundberg, Schoolteacher / Gunnar Bjornstrand ... Tomas Ericsson, Pastor / Gunnel Lindblom ... Karin Persson 言語;スウェーデン語

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馬鹿まるだし 2008/04/10 (再)2020/06/15

終戦間もない中国地方の海に面した町、芦津。そのころ大勢の引揚者が日本に戻ってきていた。あるお寺にも安五郎というシベリア帰りの男が食い詰めて本堂に泊めてもらいたいといって来た。その夜、付近を荒らしまわっていた札付きの泥棒が本堂に忍び込み、盗みをしようとしたところを安さんに見つかり御用となった。

それ以来、お寺にいることを許され、和尚さんのお供や、家の手伝いなど、とても重宝がられた。このお寺の嫁さん、夏子は夫が結婚後わずか3ヶ月でシベリアに出征し、その後行方不明である。夏子は安さんをかわいがって、何かと世話を焼いたり説教をしたりしてくれた。

しばらくして安さんは寺を出て町内の辰巳屋という旅館で働くことになったが、この時期にこの町にあった工場のストライキにかかわって、煙突から降りられなくなった男を救い、賃上げを会社の会長から勝ち取ることに成功してしまったものだから、一躍町の英雄になってしまった。

どこかからやくざ流れの八郎という男がやってきて、安さんを主人に持ちたいというものだから、町の真ん中に事務所を持つことになった。ここも人々の人気を集め、賭博によって警察に捕まったこともあったが、町のお偉方が顔を利かせてすぐに釈放してくれたのだった。また、町のボスの娘が旅回りの芸人と駆け落ちしそうになると、刀を持って乗り込み、その娘を救い出したりしたものだからますます喝采を浴びることになった。

だがよいことは続かず、やきもち焼きの男のことばを真に受けて、その男の妻に手を出したといわれる中学校教師を痛めつけたりしたり、賭場を開いて刑務所送りになってしまった。しかも八郎が安さんと夏子の間に何かがあるといううわさを流したこともあって、出所すると町の人間は冷たい視線を安さんに向けるのだった。

その状態を挽回するチャンスがやってきた。辰巳屋の娘に縁談ができ、いいなずけと二人でいるところを、ダイナマイトを持った暴漢たちに誘拐されたのだ。警察も怖がって犯人たちのところに近づくこともできない。安さんが呼び出された。夏子がとめるのも聞かず、安さんは山の中に単身出かけて誘拐された娘を救出する。

だが、犯人たちの投げたダイナマイトの爆発で重傷を負い、失明してしまった。夏子の看病を受けてけがのほうは回復したが、安さんは”無法松の心境”だったのかもしれない。それから15年、お寺に安さんが死んだ知らせが届いた。夏子は再婚して大阪に暮らし、安さんのことを覚えている人々は町には少なくなった。(1964年)・・・資料外部リンク

監督: 山田洋次 原作: 藤原審爾  音楽: 山本直純 キャスト(役名) ハナ肇(安五郎) 桑野みゆき(夏子) 花澤徳衛(浄閑和尚) 高橋とよ(きぬ) 清水まゆみ(静子) 関千恵子(小万) 犬塚弘(八郎) 三井弘次(主水屋) 石黒達也(辰巳屋) 桜井センリ(伍助) 長門勇(日之出巡査) 渥美清(万やん) 藤山寛美(宮さん) 小沢栄太郎(赤木会長)

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Gigi 恋の手ほどき 2008/04/14

灯台下暗しという。幼いときからかわいがっていた少女がいつの間にか女に成長しており、プレーボーイで鳴らした青年もついに降伏するという物語。「マイフェアレディ」「プレティウーマン」につながる、「醜い女から絶世の美女への変身」タイプのドラマといえよう。主題曲がスタンダードになっているミュージカル。恋愛小説「シェリ」を書いた女流作家コレットの原作だ。

舞台はパリでモーリス・シュバリエが好演しているが、脚本はまさにアメリカ文化そのもの。何しろフランスなのに、ワーテルローの戦いでのウェリングトン将軍に願をかけるほどである。この映画は、「女の幸福は結婚にあり」という考えに疑いがもたれていない時代に作られた。

1900年のパリ、ガストン青年は有り余る財産を持ち、社交界切手のプレーボーイで、彼の失恋や恋人たちの自殺未遂や、豪華な晩餐会の話は、新聞に尽きないネタを提供していた。だが、その生活にも飽きがきていて最近では常に退屈だという言葉を連発し美女の前であくびをしたりしているのだった。

ガストンのおじ、オノレのかつての恋人であるマダム・アルバレは、孫娘のジジとボロアパートに住んでいる。ジジの母親はオペラ歌手で仕事に打ち込んでおり家庭にことには見向きもしない。ジジはちょっと変わった子で、物欲が何もない。ガストンは小さいころからジジをかわいがり、お土産にはキャラメルを買ってきて一緒にトランプをするのだった。

あるときトランプに負けて、ガストンはジジとマダムを連れて海を見せてやる。そのときの大喜びの様子を見て、ガストンは退屈な社交界の女たちににはない、新鮮な驚きと若さをジジにを感じるのだった。マダムは自分の姉にジジの特訓を頼む。いずれは素敵な男性を見つけて幸せな結婚をさせてやりたいのだ。

しばらくぶりにガストンが訪問してくる。出迎えたジジのドレス姿を見てびっくり。もはやジジがベッドから飛び降りるやんちゃ娘ではなく、女になっていることを発見していた。早速ジジを人々の集まる場所に連れ出そうとするが、ジジは有名人であるガストンのこれまでの素行を十分知っており、首を縦に振らない。

ガストンは今までの女に対するように遊びの気分ではジジと会うことができないと思い知る。ようやくジジの同意を取り付けてレストランに連れて行くことに成功するが、「何ヶ月かは楽しめるよ」というオノレのことばに腹を立て、そして決心する。ジジと結婚することを。(1958年)

Director:Vincente Minnelli Writers:Colette (novel) / Alan Jay Lerner (screenplay) Cast Leslie Caron ... Gilberte aka 'Gigi' / Maurice Chevalier ... Honore Lachaille / Louis Jourdan ... Gaston Lachaille / Hermione Gingold ... Madame Alvarez / Eva Gabor ... Liane d'Exelmans / Jacques Bergerac ... Sandomir / Isabel Jeans ... Aunt Alicia / John Abbott ... Manuel  言語;英語

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