フランス映画その3 HOME > 体験編 > 映画の世界 > フランス映画 > その3 |
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ノルマンディー地方にある、ドーヴィルの町は、イギリス海峡に面するリゾートの町である。目の前には海が広がり夏はヨットが美しい。だが今は冬だ。アンヌは自分の幼い娘フランソワーズを施設に預けている。パリに住み、列車で2時間近くかけてこの町に一週間に一度会いに行くのだ。 一方デュロックも息子のアントワーヌを一週間に一度この託児所にパリから車で訪ねてきていた。それぞれの親子が楽しい日曜日を過ごしたあと、子供を預けて帰ろうとしたとき激しい雨が降ってきた。託児所の女性の紹介で、アンヌはデュロックの車に便乗させてもらう。 パリへ向かう車の中、二人はお互いのことを少しずつ聞き合う。アンヌの夫は映画の俳優兼スタントマンのような仕事をしていた。アンヌは夫を深く愛し、二人でブラジルに行ったり、サルサの音楽に酔ったりしていたが、ある日夫は撮影中に爆発に巻き込まれて死んだ。 パリのアンヌの住まいに送り届けるとデュロックは、テストドライバーとしての仕事をすべく、テストコースへ向かう。そしてアンヌのことばかりが思い浮かぶのだった。翌週もデュロックはアンヌを誘い、いっしょに雨の中をドーヴィルまで運転した。 デュロックのほうはかつてレース中に事故を起こし意識不明の大事故を起こした。精神的に打撃を受けた妻は、病院で取り乱し自殺してしまったのだ。今はどこかの女となんとなく同棲している。こうしてそれぞれ幼い子供を抱える二人は、共に独身であることがはっきりした。 ドーヴィルで一緒にいる子供たちもお互いに仲がいい。船に乗る4人。長い長い遊歩道の続くドーヴィルの海岸。犬を連れた老人。そんな風景の中で、二人の心もいつしか近づいていったのだった。 翌週はモンテカルロラリーだった。デュロックも仲間と共に参加し、過酷なレースを見事完走して祝賀パーティに姿を見せると、そこにはアンヌからの愛を告白した祝福の電報が待っていた。 直ちにパリに向かい、さらにドーヴィルへ行っているアンヌのもとに車を走らせた。海岸には、二人の子供を連れたアンヌがいた。二人はその夜、結ばれる。だがアンヌの目には、亡き夫の姿がちらついて仕方がない。 デュロックもそれに気づく。まだ早すぎたのか。よほどのおしどり夫婦だったのか。アンヌは前の夫によほどのめり込んでいたに違いない。さまざまな考えが頭をかすめたが、結局アンヌは列車でパリに帰ることになった。デュロックは一人で自分の車を運転して帰る。 パリのサン・ラザール駅にひとあし早く到着したデュロックは、急いで到着ホームに向かう。ヘッドライトを明るく輝かせたターミナルに入ろうとする列車を待ち受けるのだ・・・ 他愛ないメロドラマに聞こえるかもしれない。だが、ほとんどスタンダード化したフランシス・レイによるこの主題歌はもちろんのこと、映画そのものの出来もとてもしっとりとしていて、まさに男と女のシンプルな出会いを忠実に描いているのだ。 ドーヴィルの海岸風景がいい。二人が車に乗っているときはいつも雨だ。シーンによってモノクロとカラーとを使い分けている。車の中でのそれぞれの身の上話はじっさいの会話ではなく、なにも前触れもなく新たな映像で示される。気になったのは、たばこを吸うシーンがやたら多いこと。現在の基準から見るとあまりに男も女もよく吸う。(1966年) Directed by Claude Lelouch Writing credits Claude Lelouch Pierre Uytterhoeven Cast: Anouk Aimé .... Anne Gauthier / Jean-Louis Trintignant .... Jean-Louis Duroc / Pierre Barouh .... Pierre Gautier / Valèrie Lagrange ....Valerie Duroc / Antoine Sire .... Antoine Duroc (as Antoine) / Souad Amidou .... Françoise Gauthier (as Souad) / Henri Chemin .... Jean-Louis' Codriver / Yane Barry .... Mistress of Jean-Louis リスニング;フランス語。口数は少ないが、きわめて明快 haut de pageUn homme et une femme 20 ans déjà 男と女Ⅱ 原題は「男と女、すでに20年」である。男と女の役をした俳優がそのまま20年後に映画で現れる。とはいっても、ストーリーは観客の思うような進み方はしない。むしろ期待を裏切る形で進む。だが、これも新たな人生の展開だといってもいい。この続編は従来の続き物と違い、第1作を少しも傷つけず、むしろますます印象の深いものにすることにしている珍しい作品だ。 あのサン・ラザール駅での抱擁のあと、ジャン・ルイとアンの二人は二人は、すぐに別れる。アンの夫の死からあまりにも時間がわずかしかたっていなかったことが原因かもしれない。アンはそのあと結婚するが、夫は彼女のもとを去り、今は映画のプロデューサーとしての仕事に励んでいる。 娘のフランソワーズは美しく成長し女優になって、子供も産まれている。アンは自分の制作した最新作の評判がはかばかしくなく、新しい映画のストーリーを捜していた。そのとき思い当たったのが、あのドーヴィルでの思い出である。 さっそくジャン・ルイと連絡を取り、二人は20年ぶりに会う。アンは、自分たちの思い出を映画化する案をうち明ける。それを聞いたジャン・ルイははじめ、あまり乗り気ではなかったが、スタッフたちと会い、俳優たちを見て次第に協力的になっていく。 ジャン・ルイはずっと独身だった。息子のアントワーヌは結婚し、モーターボート・レーサーになっていた。そして息子と結婚した女性の妹マリーとジャン・ルイは同棲生活を送っていたのだ。かつてのラリー・レーサーから今ではレーシングチームを率いる仕事をしている。 撮影が進むにつれ、アンは当時のことを目の当たりに思い出し、次第に昔の気持を取り戻していく。残念ながら、自分たちのあまりにもプライベートなできごとを扱ったこの映画はお蔵入りとなってしまったが、二人を急速に接近させ、ジャン・ルイも砂漠の彼方から便りをよこすようになる。 アンは、同じ俳優を使って、最近起こった精神異常者による殺人事件を扱ったミステリー事件に取り組む。ある筋から真犯人はその精神異常者ではなく、その男の主治医らしいという情報を得ていたからだ。 一方ジャン・ルイはニジェールの砂漠にチームを組んで出かける。だがいっしょに行ったマリーはパリへ帰りたいと言い出す。わがままな要求を聞き入れ、チームの他の者に留守を頼んで空港のある町まで危険な砂漠を横断して送り届けるべく二人だけで出発する。 だが、ジャン・ルイが昔の女とよりを戻したことを察したマリーは嫉妬に狂い、砂漠の真ん中で真夜中に水を捨て、無線を使えないようにし、タイヤを切ってしまう。二人の捜索は困難を極め、発見されたときは、二人とも死の直前だった。 アンの製作した映画は興行的に成功し、二人は思い出の地ドーヴィルへドライブする。そのときも20年前と同じく雨の中だった。エッフェル塔を望むセーヌ川でのボート・レースを見ながら二人はこうなるのに20年かかったことを痛感する。 Directed by Claude Lelouch Writing credits Claude Lelouch (original scenario & adaptation and dialogue) and Pierre Uytterhoeven (adaptation) Cast: : Anouk Aimee .... Anne Gauthier / Jean-Louis Trintignant .... Jean-Louis Duroc / Richard Berry .... Richard Berry / Evelyne Bouix .... Francoise / Marie-Sophie L. .... Marie-Sophie (as Marie-Sophie Pochat) リスニング;映画製作、ニュース解説、など種々の会話が交錯する。 haut de page1968年のフランス、グルノーブルで開催された冬季オリンピックの記録映画。記録といっても、各競技を詳細に描いたものではない。また、勝者を大々的に持ち上げるような映画でもない。ありのままに13日間をカメラで追ったのだ。 ナレーションもまったくない。場内アナウンスと、市民のつぶやき声だけが聞こえる。あとは、数曲の歌の歌詞だけ。残りはすべて映像に託した。だからカメラの目は、大会のあらゆる所に注がれている。 最初の場面で、アテネで聖火をつけるシーンがあるが、カメラは裏側から撮影して、聖火台の土台が粗末な木の枠であることを皮肉っぽく示している。そのあとつぎつぎとバトンタッチされながら聖火は会場に向かっていく。 普通のスキーリゾートだったグルノーブルの町が、オリンピックのために変身し始める。ブルドーザーが入り、多くの人々がスロープやジャンプ台の建設や雪の運搬などに関わり合う。 いよいよ開会式だ。当時の大統領、ドゴール将軍が開会宣言を行っていよいよ熱戦の幕が切って落とされる。あちこちで演奏する軍楽隊、はしゃぎ回る子供たち、カメラを持って撮影しまくる日本人・・・ 滑降競技はやはり大会の花形だ。しかし必ずそこには事故やケガもつきまとう。カメラはそのような悲惨な場面も、また首位を逃した選手のがっかりした表情も逃さない。選手が立ち小便をしているシーンまである。 当時の最も有望な選手、キリーの活躍が出てくる。彼は3種目で見事金メダルを取り、フランス国民の期待を裏切らなかった。途方もない高速で滑る選手のうしろをカメラが追う。カメラのレンズに雪がこびりついているのがなおさら緊迫感を与えるのだ。 ボブスレー、バイアスロン、長距離競技、スケート、アイスホッケー、と多くの種目の熱戦のさまが撮影されているが、待合室での選手の表情も欠かさず写される。フィギュア・スケートでは見事転倒してしまったシーンがたくさん集められた。 オリンピックは競技だけではない。選手村の表情、ナイトライフで踊り狂う女たちの姿も映される。観客たちは競技の合間に雪の中で転げたり、急な坂を胴体滑走をしたりして楽しんでいる。警備の警官たちも楽ではない。大道芸人も見物人に混じってお祭りの興奮を高めている。 それにしてもこの当時は、選手たちの着ているものに、あのどぎついスポーツメーカーのロゴが何一つついていない。そのさわやかさ。当時は商業主義も、またもちろんドーピングも知られていなかったのだ。13日間は純粋のお祭りであったのだ。(1968年) 監督: Claude Lelouch Francois Reichenbach 脚本: Pierre Uytterhoeven 撮影: Willy Bogner Jean Collomb Guy Gilles Jean Paul Janssen Jean Pierre JanssenPierre Willemin 音楽: Francis Lai リスニング;フランス語、ただし場内アナウンスや、一部の市民の声だけ。 Les Amants du Pont-Neuf ポンヌフの恋人 まるでセックスのない純愛映画だが、ところどころに非常にシュールな場面や不可解な場面が意図的に挿入されていて、普通の筋立てとは違った雰囲気を持っている新しいタイプである。。観客は常にヒロインの生活について好奇心を持つが最後まであかされることはない。 パリの中心、シテ島にかかるポン・ヌフ(直訳;新橋)に住むアレックスはホームレスの青年である。セーヌ川右岸には百貨店「サマリテーヌ」の照明が明るく輝いている。かつて守衛だったハンスと共に、どことなく流れてきたあげく、ちょうどこの橋の橋脚を数年にわたって修理をするところから、通行止めになった橋上部分に二人は寝泊まりしていたのだった。 アレックスは、睡眠薬がないと眠れない。またしたたか酔ったあげく道路の真ん中に寝そべって車にはねられ、ホームレスの収容所から片足を引きずりながら橋に帰ってきた。ハンスはアレックスに、新参者が一人寝ているから明日の朝叩き出せという。 朝起きてみると、寝ていたのは若い女だった。画板を持ち、中に何枚かの絵が入っていた。片目は絆創膏が貼ってあり失明したらしかった。ミシェルといい、過去のことはあかさなかったが、アレックスが自分の絵を描いてくれと頼んだのがきっかけで二人は急に親しくなる。 ミシェルはいったい何の理由があってホームレスになどなったのか。彼女の懐に入っていたルーブル局留めの手紙。差出人の家にあった数多くの絵。かつての男友達ジュリアンをミシェルは本当に射殺したのか。どうして片目を失明したのか?彼女のこれまでの生活は謎だらけだったが、橋の上は心の重荷から解放してくれるようだった。 かつては妻を持ち普通の暮らしをしていたハンスは、女がホームレスになると悲惨な結果になるから早く立ち去るようにすすめるが、ミシェルには行くところがない。だがアレックスと二人で金を手に入れる方法を見つける。アレックスはミシェルに睡眠薬を使わないで眠る方法を教わる。親しさが増すにつれ、二人で海を見に行ったりもした。 7月14日のパリ祭がやってきた。町が祭りの興奮に包まれる中、二人もしたたか酒を飲み踊り狂い、華麗な花火が打ち上げられる中、セーヌ川でボートを盗んで水上スキーをしゃれ込んだ。 だが、二日酔いの翌日は貯金を川に落とし、さらにミシェルを美術館に連れていってくれたハンスは川に落ちた。しかもミシェルの残る片方の目も次第に視力を失い、全盲になる日も近づいていた。ミシェルはいよいよアレックスを必要とし、アレックスも彼女なしには過ごせなくなっていた。 ところが、地下鉄の通路を歩いているときアレックスは尋ね人の掲示でミシェルの顔を大写しにしたポスターを発見する。そこには、行方不明になったミシェルの父親から、手術をすればこの目は治るといっていた。手術をすればミシェルが自分のもとから去ると思ったアレックスはポスターをびりびりに破いてしまう。 同じポスターをたくさん発見すると火をつけて焼いた。ポスター貼りの職人が長大な壁に同じポスターを貼っているところを見つけたときは逆上し、溶剤の入った容器に火をつけてしまった。運悪くその火は職人に燃え移り、焼死してしまった。 だが、ラジオ放送でも尋ね人のことは流されており、たまたまそれをミシェルは聞いていた。翌朝、ミシェルは姿を消していた。彼女は愛していないとメモがあった。落胆する間もなく、自殺をしようとしていたアレックスはポスター職人を焼死させたことで過失致死の罪で逮捕され3年の懲役となった。 刑務所で2年ほどたったころ、ミシェルが面会に来た。手術は成功し、あのポスターのような笑顔が彼女の顔に戻っていた。二人はアレックスが出所してからクリスマスの夜に橋の上で再会する約束をする。 果たして約束の夜、雪の降る中二人はすっかり工事の完了して人通りの多いポン・ヌフの上で会い、改めてアレックスは自分の肖像画を描いてもらう。だが午前3時になると帰ると言い出したミシェルに腹を立てたアレックスは自分もいっしょにセーヌ川に飛び込むのだが・・・(1991年) Directed by Leos Carax Writing credits Leos Carax Cast : Juliette Binoche .... Michèle Stalens / Denis Lavant .... Alex Klaus / Michael Grüber .... Hans リスニング:フランス語。セリフはあまり多くないが、ミシェルのつぶやくような話し方は聞き取りにくい。 ジャンヌ・モロー演じる妖しい女エヴァが一人の男を滅ぼす話。エヴァはいつだって「恋はお断り」と言っているのに、集まってくる男たちはますます彼女をモノにしようと贈り物を次から次へとささげるが、みごとに手玉に取られてしまうのだ。 冒頭に冬のサンマルコ寺院が映し出され、聖書の創世記の一句、「男と女は裸であったが羞恥心がなかった・・・」ではじまる。カンヌ映画祭で高い評価を受けた映画の原作者ティヴィアンは、突然の評判のおかげで大金が転がり込み、ベネチアの町中に最高級品を集めた住まいをこしらえていた。コンスタンツェという婚約者がいるが、映画の監督と張り合っていた。 ある豪雨の日、運河で火事が故障した船が、彼の家の前を通った。二人の乗客が勝手に船を下りると、彼の家の窓ガラスを壊し中に入りこんだ。帰ってきたティヴィアンはもちろん住居不法侵入で追い出そうとするが、エヴァの妖艶な姿を見て考えを変える。 連れの男は何とかエヴァをモノにしようとしていたのだが、ティヴィアンはさっさと彼を追い出すと、エヴァを自分の寝室に泊めた。ところが彼女は決して自分の体に彼を近づけない。しかしもうそのときからティヴィアンはエヴァの虜になってしまった。 エヴァはアフリカのダム建設工事に行っている技師の妻だという。ローマの自宅の他にいくつかの別邸を持ち、ベネチアにも住まいを持っていた。彼女の過ごし方はジャズのレコードを聴くことだ。ビリーホリディの「 Willow Weep for Me 」がお気に入りである。「女はみな同じ」とよく言われるが、彼女は何か違う。 最大の関心は「お金」である。それを明言してはばからない。男たちに次々と高級な贈り物を次々に要求し、彼らの財産を搾り取ってゆく。夫はそんな妻の行動を許しているのか、謎である。普通の女と全く違う雰囲気に男たちは次々とひかれていくようだった。 ティヴィアンは、何度か辛抱強くエヴァに迫り、ようやく少しずついっしょに外出したり食事をしたりすることができるようになった。ティヴィアンが財産をかけてエヴァを待遇すれば、彼女は答えてくれるのだったが、決して彼に対して恋をしようとはしなかった。 もう一度ティヴィアンはエヴァを自宅に連れてきたかった。だが、エヴァはベネチア一の最高級のホテルに連れていってくれるならいっしょに泊まってもいいという。ティヴィアンは自分の財産が残り少なくになっていながらも、友だちの約束も反故にして宿泊を決行した。 普段酒を飲まなかったティヴィアンがホテルでは鯨飲し、したたか酔った。そしてエヴァに実は映画で評判をとった作品は死んだ兄のものであり、自分は単にそれを売っただけに過ぎないと告白する。エヴァはこれに対して「情けない人!」とつぶやく。もはや彼女には軽蔑の気持しかなくなっていた。 いっしょに泊まってくれたことで用意した札束も受け入れない彼女を部屋に残して、ティヴィアンは出ていった。もうエヴァとは縁を切ろうと思った。そして急遽コンスタンツェと結婚式を挙げる。彼女は普通の女で、ティヴィアンに心から頼り切っていた。 だが、新婚間もなくコンスタンツェがローマに出かけている間、ティヴィアンはエヴァの夫が技師などではなく、プロの賭博師であることを知り、実際に賭博場へ出かけていく。そして強引に誘い出すとエヴァを自分の新居に連れてきた。 エヴァは家の中でまるで自分の部屋であるかのように振る舞い、煙草を吹かしてレコードをかけていた。そこへコンスタンツェが帰ってきたのだ。彼女はそれを見て絶望し、モーターボートを衝突させて爆発炎上し自殺してしまった。 ティヴィアンにとってもう何も残されたものはない。エヴァのいるアパートに忍び込むが、鞭で叩かれ血だらけになって追い出された。サン・マルコ寺院から、エヴァが見知らぬ男とギリシャへ旅立とうとしていた。いつ帰ってくるかわからないのに、ティヴィアンはまだ未練があった。最後に再び創世記の一句が語られる。「エデンの園は完全に閉じられたのだ。」(1962年) Directed by Joseph Losey Writing credits Hugo Butler / James Hadley Chase (novel) Cast : Jeanne Moreau .... Eve Olivier / Stanley Baker .... Tyvian Jones / Virna Lisi .... Francesca / James Villiers .... Alan McCormick リスニング;フランス語。男と女の会話は何が飛び出すかわからない。特にエヴァの話す内容は、普通の女とは違う。 haut de page耐え難い夫との暮らしにうんざりし、さりとて有名なハンサム男の求愛にも受け入れられない気持にあった女が、ふと知り合った男に一晩で気持が傾き、出奔する物語。モノクロの画面に男女が愛のひとときを求める。だが、それはその晩限りなのか・・・ ジャンヌはパリの南東、ブルゴーニュ地方の田舎町、ディジョンに新聞社主の夫アンリと大きな館に住んでいる。だが、夫の仕事は忙しく自分は少しも相手にしてもらえない。そのためパリに住む幼なじみのマギーのもとにしばしば泊まり込んで憂さを晴らしていた。 それでいてジャンヌは自らも嫉妬深い変わった性格で、急に夫の新聞社に乗り込み、秘書と夫がいちゃついているのではないかと疑ったりもするのだった。だが、夫は単に忙しいだけだった。そして妻への関心を失ってもいたのだ。夫婦の会話は皮肉のやりとりでしかない。 今はパリではポロ競技が人気で、とりわけその中でもラウムというハンサムでおおぜいの女たちがあこがれている男が、ジャンヌに関心を寄せてきた。ジャンヌも悪い気がしない。マギーの仲立ちもあって二人の間は急速に進展する。 だが、新聞業を営む夫がそんなニュースを知らぬはずはない。家に帰ると、それとなく彼女とラウムとの仲をねちねちと話題にする。たまらなくなったジャンヌはマギーとラウムをわざと自分たちの館に招待することにする。 招待の当日、ジャンヌはパリから一人で運転してきたのだが、川の畔で車が故障する。約束の時間が迫っているのに、為すすべもなく通りがかりの車を呼び止めると、ボロ車に乗ったランベールという若い男が拾ってくれて館まで連れ帰ってくれた。 このランベールという男は考古学者で、実は夫アンリの遠い親戚だったのだ。しかもマギーのようなタイプが大嫌いとはっきり言い、アンリはクマのようだといってジャンヌを大笑いさせる。 館に着くと、妻を送ってくれたということで、ぜひ今夜は食事をして泊まるようにとアンリにすすめられ、嫌々ながらランベールは一晩泊まることにする。その晩、ラウムが話題の中心となったがジャンヌは夫の手前、陰鬱な気分だった。 翌朝は釣りに行くという話になったみんなは早々に寝室に引き揚げた。ジャンヌは一人落ち着かず眠れなかったが、広間に出るとラウムにまといつかれ、それを振り切ると、館の外に出た。 真っ暗な中にランベールがいた。ジャンヌは自分の心に不思議な熱情が生まれてくるのを感じた。それは今まで一度も体験したことのないものであり、ジャンヌは今度こそそれにすべてゆだねてもいいと思った。暗闇の中のシーンは続く。夜が明けると二人は車に乗り、長い旅に出発した・・・(1958年・モノクロ) Directed by Louis Malle Writing credits Louis Malle / Dominique Vivant (novel) Cast: Jeanne Moreau .... Jeanne Tournier /Jean-Marc Bory .... Bernard Dubois-Lambert / Judith Magre .... Maggy Thiebaut-Leroy / Jose Luis de Villalonga .... Raoul Flores (as Jose Villalonga) / Gaston Modot .... Coudray / Alain Cuny .... Henri Tournier リスニング;平易なフランス語。 銃の暴発事故によって花婿を殺された女が復讐に燃えて5人の犯人たちをひたすら殺してゆく。ヒロインを演じるジャンヌ・モローの目に迷いはない。殺しを重ねると世間に顔を知られる危険が増えるが、彼女は驚くほど冷徹で、目的を遂げるためには警察も恐れない大胆な行動をとり続ける。単なるサスペンス映画ではない。むしろ女の一途さが前面に出ている。 5人の軽率な若者たちが銃をもてあそび、暴発した弾がちょうど向かい側の教会から結婚式をして出てきたばかりの花婿に命中した。5人は誰にも知られることなく逃げおせた。今はフランス各地にお互いに連絡を絶ったまま暮らしている。 残された花嫁は、幼なじみの夫を失い一時は自殺も考えたが、5年の歳月をかけて5人の行方を突き止めたのだった。準備が整うと、さっそく復讐にとりかかった。1番目の男はプレーボーイでもうじき結婚を控えていた。高層アパートのパーティ会場に姿を現した女は彼をバルコニーに引き寄せ、スカーフをとってもらうふりをして下に突き落とす。 2番目の男は、安アパルトマンに住んでいた。女はコンサートの切符を彼にプレゼントして知り合うと、彼の部屋を訪問し、持参したレコードをかけ、毒入りの酒を飲ませて殺す。彼女のアドレス帳には5人の名前が控えてあるが、一人ずつ横棒をひいて消してゆく。 3番目の男は郊外の一戸建ての家に住んでいた。まずその家の子供を手なずけ、「母危篤」の偽電報を送って妻を家から去らせたあと、子供の小学校の先生になりすまして男の家に向かう。食事の手伝いや子供を寝かしつけたあとで階段の下にある物置に男を閉じこめて窒息死させる。 妻からの電話がかかってこないように電話線を包丁で切っておく周到さだ。捜査の過程で小学校の先生が逮捕されるが女は空港から電話をかけて自分が犯人だと名乗り、先生の潔白を証明してやる。わざわざ教会に立ち寄って神父に懺悔をして、殺しを続ける気持を奮い立たせるということまでする。 4番目は自動車の解体業を営む男だったが、ふだんから悪行をしていたらしく、彼女がピストルを向けようとする直前に警察に捕まり連行されてしまった。仕方なく彼女は5番目の男の家に向かう。画家だったのでモデルを装って近づいたが、その画家は彼女を気に入って採用してくれた。 毎日アトリエに通ううち、画家は次第に女にひかれてきた。だがなかなか殺すチャンスが見つからない。そのうち画家の仲間が大勢訪ねてきて、その中にマンションのバルコニーから突き落としたときに、女から人払いを受けた男が混じっていたのだ。彼はどこかで見た顔だと思うがはっきり思い出せない。 その男がマンションの転落事件を思い出したのと、彼女が画家を刺殺したのとはほとんど同時だった。彼女は顔を知られぬように画家が描いた自分の肖像画をキャンバスから切り取るが、画家は女の裸体をベッドの横の壁にも描いていたのだ。もはや顔を隠してもしょうがない。そこで彼女は名案を思いつく。 大胆にも画家の埋葬に参列し、顔を覚えていた男がその場にいたので、もちろんすぐ警察に捕まる。だが彼女は誰を殺したかは素直に認めるが、その動機については一切口を割らない。刑務所に入れられた彼女は配膳係をやることになった。そしてその刑務所には、4番目の男も入れられていたのだ・・・(年) Directed by Francois Truffaut Writing credits Jean-Louis Richard / Francois Truffaut Cast: Jeanne Moreau .... Julie Kohler / Michel Bouquet .... Coral / Jean-Claude Brialy .... Corey / Charles Denner .... Fergus /Claude Rich .... Bliss / Michael Lonsdale .... Rene Morane (as Michel Lonsdale) /Daniel Boulanger .... Delvaux / Alexandra Stewart .... Mlle Becker リスニング:フランス語、ヒロインがそれぞれの男たちに話しかけるときの巧みな言い回しに注目。 Le Salaire de la Peur / Wages of Fear 恐怖の報酬 爆発物を満載したトラックを運転する男たちの恐怖との戦いを描く。高額の報酬のためにあくまでやり遂げようとする男たちの執念と、困難を切り抜けるさまざまな知恵や工夫、そしてすさまじい恐怖感の中での人間として結びつきが画面からあふれる傑作だ。1977年にリメイクも出ている。 ここは南アメリカ、ベネズエラの首都カラカスに近い小さな町。開発を目指して作られた町の例にもれず、ここもヨーロッパ各国から食い詰めた男たちが仕事を求めて集まっていた。埃だらけの街路には仕事のない男たちがたむろし、暇を持て余していた。 陸の孤島とも言えるこの町から脱出するには飛行機しかない。しかし失業者たちにはまともなパスポートもなければ、航空運賃を払う金もない。それでも何とかしてもっとましなところに行こうともがいていた。 若いマリオもその一人だったが、ある日飛行機が着陸して、ジョーと名乗る謎の男がこの町に降り立った。なんと二人は同郷だった。共にパリで暮らし近所同士だったのだ。異国での出会いは二人を親しくする。マリオは大切にしてあるパリのメトロの使用済み切符を見せたりした。 もうすでに中年も終わりに近いジョーはかつて暗黒街の顔役だったらしく、この町の酒場でも幅を利かせようとした。だが、さすがに金がもうなくなり何としても仕事を見つけなければならない。そこへ300キロ以上離れた石油採掘現場で爆発事故があり、原油の噴出口から火災が起こった知らせが届いた。この火を消し止めるには爆破によってその爆風で吹き消す以外に方法がない。 この町に作業所を置くアメリカの石油会社 SOC はニトログリセリンを現場へ運ぶトラック運転手を募集した。報酬は2000ドルだと聞いて、大勢の男たちが応募したが、テストに合格したのはマリオを含めて4名。ジョーは、そのうちの一人を何とかしてあきらめさせ、自分がその仕事に収まった。 マリオ、ジョーは組になって10トントラックに乗り込み、珪肺でもう寿命幾ばくもないルイジ、ナチの収容所で苦汁をなめたことのあるビンバの組がもう一台のトラックに乗務した。一台でよいのだが、もう一台は事故にあったときのための保険だ。4人は SOC の所長に見送られて早朝3時に出発した。 ニトログリセリンが爆発しないように大きな揺れを起こさないでゆっくり進む時の極度の緊張のため、年をとっているジョーはさっそくからだの調子がおかしくなった。もたもたしているうちに、後発のビンバ組に途中で先を越される。 次第に夜が明け、なだらかな道はまるでトタン板のように波打つ道に変わった。むしろある程度のスピードを出した方が震動が少なくて済む。そのうち山岳地帯に入り、トラックの横幅すれすれの登り道が続く。工事のため木製の張り出しで車をスイッチバックさせなければならなかった。 ビンバ組のトラックの重みで、すでに半分腐っていた材木はタイヤの当たるところがつぶれて穴があいてしまった。後に続くマリオ組はきわめて困難な状況に直面したが、ここでジョーは怖じ気心を出し、山の中に逃げ出した。仕方なくマリオは一人でトラックをとり回す。 ジョーは道ばたにうずくまっていた。町の酒場であれほど威勢の良かった面影はどこにもない。年齢が彼から体力も気力もすっかり奪ってしまっている。マリオから臆病者呼ばわりされてすっかり意気消沈して助手席に座って旅が続く。 さらに先の方では大きな岩が転がり落ちて道をふさいでいた。先行しているトラックのビンバはたっぷりあるニトログリセリンを使って岩を砕くことを考える。すぐれた工夫によって岩は吹っ飛び、トラックは先を急いだ。 だが、ビンバ組のトラックは、大きな穴に誤って落ち込みトラックは大爆発を起こした。マリオたちのトラックからは大きな噴煙が見えた。現場に着いてみると、すべて吹っ飛びトラックの跡形もなかった。そしてその大きな穴には破れた油送管からの原油が流れ込み、その池はどんどん大きくなっているのだった。 これ以上深くならないうちにトラックはその池の強行突破を試みるが、先導役をしていたジョーは池で転んでトラックのタイヤに足をひかれてしまう。何とか池は渡り終わったものの、ジョーはもう疲労と怪我で虫の息だった。やがて日が暮れ真っ暗になるとジョーはパリの街角のことを思い出し始めた。 真っ暗な中に燃え上がる油井が見えてきた。ついに到着したのだ。だが、そのときジョーはすでに息絶えていた。マリオは全身油だらけになりながらもついに最後まで仕事をやり遂げた。 ジョーの分も報酬をもらい、マリオは意気揚々と空のトラックを運転して帰途につく。町ではマリオは英雄となり、恋人のリンダが今か今かと待ちわびているのだ。やがてトラックはカーブの多い山道にさしかかった・・・(1953年) Directed by Henri-Georges Clouzot Writing credits Georges Arnaud (novel) Henri-Georges Clouzot Cast: Yves Montand .... Mario / Charles Vanel .... M. Jo / Peter van Eyck .... Bimba (as Peter Van Eyck) / Antonio Centa .... Camp Chief (as Centa) / Véra Clouzot .... Linda / Luis De Lima .... Bernardo リスニング;中心はマリオとジョーのフランス語なのだが、開発の町だけあって、スペイン語、イタリア語、英語が入り乱れる。 小さな女の子ザジのシュールなパリでの3日にわたる冒険談。とりたてた筋があるわけではないが、にぎやかなパリの街角を舞台に彼女を巡って次々とあらわれるパリの人間たちが引き起こすさまざまな騒ぎはコミカルだが不思議な後味を残す作品。1960年のパリの街並みは今とほとんど同じで、車がクラシックなだけだ。パリめぐりの映像としてだけでも十分楽しめる。 ザジは、お母さんに連れられてパリのリヨン駅へ到着した。お母さんはパリにいる恋人の所へ直行。ザジは待っていたおじさんのガブリエルに預けられる。ザジはメトロに乗るのを楽しみにしていたのに、スト決行中だという。 ガブリエルは口数の少ないが美人の妻と居酒屋の上にアパートを借りている。ガブリエルは女装をしてみんなを楽しませるダンサーなのだ。居酒屋に入ってきた時に口汚いしゃべり方をする。それを飼っているオウムがまねをしてしまった。居酒屋のおやじはびっくり仰天。 翌日早起きしたザジは心配して後を付けてきた居酒屋のおやじを人々の前で私におかしなことをしたと言いふらすものだから、おやじは戦々恐々で帰ってきた。こんどこそメトロに乗ろうとするがいまだにスト中。泣いていると、おかしなおじさんがやってきてザジを町中に連れていってくれる。 のみの市を回ったり、ジーパンの店を訪れたり。ザジのお父さんはお母さんに殺された?とまじめに語る。すばしっこいザジをこのおじさんは追いかけようとするが、ちっとも捕まらない。実はこのおじさんは警官だったのだ。ジーパンを自分のものだと言い張るザジをやっとの事でガブリエルのもとに送り届けた。 翌日ガブリエル自身がザジをパリの町中に連れ出す。エッフェル塔にのぼるが、ここでもザジの言動に大人たちは手を焼き、いっしょについてきたお母さんの恋人である運転手も途中で逃げ出してしまう。 ガブリエルの友人で観光バスの運転手、交通渋滞の中で声をかけてきた未亡人、そして前日の警官が加わって騒動となるが、ガブリエルはダンスのリハーサルに出る時間が近づいてきた。妻に電話して大急ぎで練習場まで衣装を送り届けるように頼む。妻は必死で渋滞の中で自転車をこぐ。 居酒屋の女が結婚することになった。みんなでレストランに集まり食事を始めたのはいいが、どうも味が気に入らない。腹を立てた客たちはギャルソンたちに文句を付けるが、かえって逆襲される。乱闘の末、レストランはめちゃくちゃになり、そこへ前日の警官が部下を引き連れてやってくる。疲れ果てたザジはテーブルの上で寝入ってしまっていた。 翌日になってやっとメトロのストが解決した。恋人にも飽きたお母さんと共に、ザジは帰りの列車に乗り込む。ガブリエルがパリはどうだったかと尋ねると、「私少し歳をとったみたい・・・」とザジは答えた。(1960年) Directed by Louis Malle Writing credits Raymond Queneau (novel) Louis Malle Cast ; .Catherine Demongeot .... Zazie / Philippe Noiret .... Uncle Gabriel / Hubert Deschamps .... Turandot / Carla Marlier .... Albertine / Annie Fratellini .... Mado リスニング;フランス語。ザジをはじめとして、大変歯切れが良く、聞き取りにはとても良い教材となる。 haut de pageなんと4時間にわたる絵画映画である。「ナポレオン」や「アラビアのロレンス」のような歴史を扱った大作ではない。商業主義にとらわれた映画では決してこんなことはできないだろう。こんな長いのでもあえて見ようという映画ファンだけを相手にしている。 場面のほとんどは古い屋敷を改造したアトリエの中であり、登場人物は3人を中心にして動く。しかし絵心のある人なら、画家がデッサンをして、次第にその作品を作り上げていく過程に時のたつのを忘れるだろう。 パリで成功している画家のニコラと小説を書こうとしているマリアンヌの若夫婦が、南仏へバカンスへやってきた。泊まった宿屋でポルブスという絵の好きな化学者に連れられて近所の老画家エドアルドのところに招待される。 エドアルドは、妻のリズとともに古い屋敷を改造した中にたった二人で暮らしていた。リズはかつてエドアルドのモデルをしていたことから恋に落ち夫婦になった。エドアルドは、10年前までは希望と熱気にあふれる画家だったのだが、問題作「諍い女」を描こうとして行き詰まってからというものの、あまり制作にも力を入れていないようだった。 招かれた3人は家の中やアトリエを見学し食事をして楽しんだが、その会話の中でエドアルドはニコラにマリアンヌを「諍い女」の新たなモデルとして頼めないだろうかとそれとなく口にする。 ニコラは宿に帰るとマリアンヌのそのこと話す。その晩は怒ったような顔をしていた彼女だったが、なんと翌朝は早起きしてさっそくエドアルドのところに駆けつけたのだった。モデルとしてきてくれることをあまり期待していなかったエドアルドは、デッサンの道具を調えるとさっそくマリアンヌをさまざまなポーズで描き始めた。 マリアンヌは今までモデルをやったことがない。ポーズの取り方の初歩から教わった。そして全裸になってポーズも取るようになった。エドアルドはあらゆる角度から描き、自分の納得いくアングルを研究し始めた。 はじめはただポーズを取るだけでやっとだったマリアンヌも2日目になると次第に絵描きとモデルの関係を理解し始めた。絵描きが心に描く「真理」を描くのには、実際のモデルをみてなければならない。ただそこに横たわっているだけではモデルの仕事は勤まらない。人間のある面が突然キャンバスの中に描き出されるような瞬間があるのであって、そのきっかけを生み出すのがモデルの仕事なのだった。 マリアンヌはこの仕事にのめり込んでいった。じっとしているのはつらいことだったが2日、3日とたつにつれ次第になれてきた。ニコラは自分の妻がたとえ老人とであっても一日中アトリエの中に一緒にいるのを心配し始めた。その姿を見てマリアンヌは軽蔑のまなざしを投げ始める。 リズは忠実な妻だった。ニコラの不安を気遣い、夫の仕事が今度こそ最後まで完成することを願っていた。しかし一方では、かつての自分が勤めていたモデルの仕事をとられてしまったというかすかな不安を彼女自身も感じ始めていたのだった。 たくさんの習作を作ったが、どうもエドアルドは気に入る一枚を見いだせないでいる。そこに自分の力の限界や老いによる力の衰えからくる苦悩があった。だが、ある時ふとひらめくポーズに出くわした。エドアルドは倉庫の中から、かつてリズを描きかけてやめた古いキャンバスを取り出すと、その絵の上に絵の具を重ねてマリアンヌの肢体を描き始めたのだ。 そのポーズははいつくばり、尻と背中だけで首や頭の部分が見えない角度で描かれていた。エドアルドは、古いキャンバスに描くことによって過去との決別をはかろうとしたのであるが、この絵をかいま見たリズは自分の姿が消されていることに大きなショックを感じる。 ついに「諍い女」の絵は完成した。それを初めてまともに見たマリアンヌは、その絵の真っ赤な背景の中に自分の冷酷さ、残酷さだけがさらけ出されているのにショックを覚える。リズもこれを見てキャンバスの後ろの木枠に赤い絵の具で十字のマークを書き入れる(おそらくワラ人形にくぎを打つのと同じ目的でか)。 しかしエドアルドは女たちにショックを与え、彼女らからどんな言葉を投げつけられても動じなかったが、この作品は自分の死後ずっとたつまで人目に触れることがないように、セメントと煉瓦で、壁の中に塗り込めてしまった。 改めてニコラや化学者も含めてみんなに正式に公開する日が来た。みんなの前に出された「諍い女」は、明るいブルーが背景の誰にも親しみやすい作品だった。マリアンヌもリズもこれを見て何となく安心する。それはよい絵だったし、壁の中に塗り込めた作品のような陰惨さはどこにもなかった。エドアルドの機知で、自分たちの間やニコラとマリアンヌの間に生じた危機もここで何とか切り抜けることに成功したのだ。(1991年) Directed by Jacques Rivette Writing credits Pascal Bonitzer (scenario) & Christine Laurent (scenario) Cast: Michel Piccoli .... Edouard Frenhofer / Jane Birkin .... Liz / Emmanuelle Bêart .... Marianne / Marianne Denicourt .... Julienne / David Bursztein .... Nicolas / Gilles Arbona .... Porbus / Marie Belluc .... Magali / Marie-Claude Roger .... Françoise リスニング;フランス語であるが、せりふの数は絵を描く過程の撮影に大部分とられて少ない。 haut de page「シンデレラ」のような童話ともいえる。ただ、その教訓は子供向けではない。これはディズニーではないのだ。愛はどこから始まるかといえば、ほとんどのフランス映画で言っているように、言葉でも仕草でもなく「まなざし」である。ただそのことだけに集中して観るだけで、この映画はすてきなことを教えてくれるのかも。 時は18世紀の頃のフランス。末娘のベルは、父親、長女、次女、弟との5人暮らし。だが父親の持つ商船が沈んでしまったために、一家の財産は風前の灯火になった。姉たちはこれまで甘やかされて育てられたためにこれまでの贅沢癖が抜けない。弟も父親の財産を抵当にして遊び金を借りる始末。 ベルは、姉たちが遊びに行くのに、家で雑用をやらされている。そこへ弟の友だちアブナンがいつもやってきて結婚を迫る。ベルは彼が嫌いではないが、苦境に立つ父親を見捨ててお嫁に行くわけにはいかないので、いつも返事を延ばしている。 父親は、行方不明になった船のうち一隻が戻っているといううわさを聞き、港まで出かけて行く。だが期待は裏切られその晩港に泊まる金もないため仕方なく暗い森を夜中に帰る羽目になった。だが、昼間でも暗い森の中ですぐに迷ってしまった。 見ると暗く不気味な館の前に出た。入り口に近づくと扉がひとりでに開いて、中へ招き入れるようだ。疲れ果てていた父親はそのまま中に入ってしまうが、ろうそくの燭台を持つのは人間の手であり、テーブルにつくと同じく人間の手がワインをついでくれた。彫像には目がありこちらをじろじろ見ている。 勢いよく燃える暖炉の火と、ワインを飲んだせいもあって父親はしばらく眠ってしまった。目が覚めて外に出ると、美しいバラが目に入った。ベルが一輪のバラがほしいと言ったのを思い出して一本折り取ると目の前にライオンのような顔をした男がいる。この館の主である野獣だ。 野獣はバラを勝手に取ったのは許せないという。父親の命をすぐにいただくか、さもなければ娘を一人身代わりによこすなら命を助けるという。白い馬をもらい無事に家に帰り着いたものの、娘を一人差し出さなければならない心痛で父親は床についてしまった。 バラをほしいと言ったのは自分なのだから、父親の命を助けるために野獣のもとに行かなければならないと考えたベルはすぐに白い馬に乗って野獣の館に向かう。迎え出た野獣は世にも醜い姿をしていた。だが野獣はベルの美しい姿にうたれ、毎晩7時になるとベルに結婚をしてくれと頼む。 はじめは恐怖感しか持たなかったベルだが、野獣の善良な性質がわかってきて少しずつ慣れてきた。だが、結婚の約束をするというほどではない。館での生活が長くなるにつれてベルは父親のことが心配でたまらなくなった。 ある日ベルは野獣に、一週間でいいから家に帰してくれと頼む。野獣は大変悲しんだが、ベルを完全に信頼することにした。近くにある財宝のあふれる館をあける金の鍵と、行きたい場所を思い描いて手にはめればどこにでも一瞬に行ってしまう手袋を渡して、もし約束の時までに戻らなかったら自分は死んでしまうだろうと告げた。 必ず戻ると野獣に約束をしたベルは実家に到着する。父親は病気で寝ていたが、ベルの流した涙がダイヤに変わり、父親は暮らしをたてていくことができるようになった。弟の借金のかたに高利貸しに家具を持っていかれ、家は破産状態で姉たちは洗濯女の仕事をしていた。 そこへベルが美しい衣装を着てあらわれたものだからみんなは驚き怪しみ、何とかして野獣の持つ財産を奪おうと考える。約束の一週間が終わろうとする頃、白い馬がベルを迎えにやってきた。鞍には魔法の鏡が積んである。姉たちがその鏡を覗くと老婆の姿が映るのだった。 約束の時間が迫った。ベルは手袋をはめて帰ろうとするが、金の鍵が見あたらない。弟とアブナンが鍵を盗み出して白い馬に乗って野獣の館に向かってしまったのだ。ぐずぐずしているうちに時間がたち、ベルが館に着いたとき野獣は虫の息だった。 野獣が静かに息を引き取ろうとするとき、ベルは必死で死なないでくれと頼む。野獣はベルのまなざしがこれまでと違い、愛が込められているのを知って安らかに死ぬ。そのときアブナンが天窓から侵入しようとしていた。庭園にあった弓を持つ彫像が大きく弓を引いて彼を射抜いた。 矢で射抜かれたとたん、アブナンは野獣に変えられ死ぬが、その姿は野獣に乗り移ってベルの前に王子として姿を現した。王子は、自分の両親が妖精を信じなかったためにこれまで野獣の姿をさせられていたのだ。ベルのまなざしにより、人間に戻るチャンスを得たのだ。ベルは王女として迎えられる。(1946年) Directed by Jean Cocteau Writing credits Jean Cocteau (also story) (also dialogue) Jeanne-Marie Leprince de Beaumont (story) Cast: Jean Marais .... The Beast - The Prince-Avenant / Josette Day .... Belle / Marcel André .... Belle's father / Mila Parély .... Felicity / Nane Germon .... Adelaide / Michel Auclair .... Ludovic / Raoul Marco .... The usurer リスニング;きわめて聞き取りやすいフランス語。そもそもセリフが少なくしかもゆっくりである。 haut de pageモンパルナスの灯 Les Amants de Montparnasse (Montparnasse 19) 20世紀初頭の画家、イタリア系エコール・ド・パリの画家モディリアニ(Amedeo Modigliani 1984-1920)の伝記的映画。モンパルナスに移り住んでから、ジャンヌと知り合い結婚して最後に行き倒れになるまでを描く。この映画に登場する人物は妻のジャンヌをはじめとしてほとんど彼の作品に同名で見つけることができる。 モジは今日も飲んだくれている。あちこちの酒場を巡りツケを申し込むがどこでも断わられてばかり。だがパリの女たちはみんな彼に優しい。ウェイトレスはとれかかったボタンを付けてくれるし、何よりも生活の面倒を見てくれる女がいつもいる。 昨晩も金持ちの女ベアトリスを酔った勢いで殴ったりしたが、翌朝再び会うとけろっとした顔で自分がどのくらい酔っていたかを尋ねたりしている。アパルトマンに帰ればモジが家賃をため込んでいるにもかかわらず管理人のおばさんは洗濯物を届けてくれる。 向かいの部屋に夫婦で住むスブロフフキー氏は才能はあるがまだだれも認めてくれないモジのことを何かと面倒を見て、ポーカーで儲かったからと家賃を代わりに払ってやったりした。 ある日美術学校のデッサン授業で前から気になっていた女の子が教室にいるのに気づく。ジャンヌといい、前からモジに恋いこがれていたのだ。二人はすぐに結婚の約束をするが腹を立てた父親は娘を自分の部屋に監禁してしまう。 愛するジャンヌに会えずすっかり気落ちしたモジは相変わらずすさんだ生活が続き、ついに倒れてしまう。医者の見立てによれば結核を患っており、パリの気候ではあと半年しかもたないだろうという。ベアトリスはすぐにモジを南欧のニースに送る。 明るく温暖な気候でモジはすっかり元気になった。制作にいそしむ毎日だったが、ある日家を抜け出したジャンヌが現れた。彼女は二人での厳しい生活を覚悟している。夫婦になった二人は再びパリに戻った。 モジは妻や友人の絵を次々と描いていった。しかしまだ人々は彼の絵を理解していなかった。ベアトリスを描いた裸婦の絵も警察がわいせつだとして撤去するように命じる。せっかく個展を開いても第2日目からはまるでお客が来ない。スブロフスキーが画廊で留守番をしていると、画商がやってきた。 その画商はモジの絵が非常に独創的で、まだ人々が認めるには早すぎるということをよくわかっていた。モジは運がないのだ。死んだあと有名になるのだ。彼はモジが死ぬのを待っている。その瞬間その絵をすべて買い占めるつもりだと言った。 モジとジャンヌはますます苦しい生活に追い込まれていった。そこへスブロフスキーが商談を持ち込んできた。これから帰国しようというアメリカの金持ちがモジの作品に興味を持ったのだという。早速3人は作品を抱えて出かけていく。 金持ちはセザンヌの作品を手に入れていた。スブロフスキーがモジの作品の説明をした。あのうつろな目は別世界を見ているのだ・・・アメリカ人はモジの作品を見ると気にいったようだが、製品の登録商標にするつもりだと言った。それを聞いてうんざりしたモジは部屋を出ていってしまう。 再び火の気のない部屋に戻るとジャンヌを一人おいてデッサンを持って居酒屋に出かけていった。これを売って食費にしようと思ったのだ。だが誰も買ってくれなかった。気落ちしたモジは霧の立ちこめるパリの街路をよろめきながら歩いていった。そのうしろには偶然あの画商がついていたのだ。 体力を使い尽くしたモジはそのまま路上に倒れ、病院で息を引き取った。画商はそれを見るとすぐにモジの部屋に行き、何も知らないまま驚き喜ぶジャンヌを前に居並ぶ作品を次々と買い取っていくのだった・・・(1958年) Directed by Jacques Becker Writing credits Michel-Georges Michel (inspired by novel 'Les Montparnos') Cast : Gérard Philipe .... Amedeo Modigliani / Lilli Palmer .... Béatrice Hastings / Lea Padovani .... Rosalie (as Léa Padovani) / Gérard Séty .... Léopold Sborowsky / Lino Ventura .... Morel / Anouk Aimée .... Jeanne Hébuterne / Lila Kedrova .... Mme. Sborowsky Arlette Poirier .... Lulu / Pâquerette .... Mme. Solomon (as Madame Pâquerette) / Marianne Oswald .... Berthe Weil / Judith Magre .... La fille du jockey / Denise Vernac .... Mme. Hébuterne / Robert Ripa .... Marcel / Jean Lanier .... M. Hébuterne / Chantal de Rieux (as C. de Rieux) リスニング;フランス語、非常に聞き取りやすい。 1914年、第1次世界大戦前夜のパリを舞台として、男と女が次々とベッドに潜り込む話。輪舞というよりも「恋のしりとり物語」といった方がわかりやすい。特にストーリーはない。前のエピソードに出ていた男か女が次のエピソードに登場するのがおもしろおかしい。 こういう言い方だと単なるポルノ映画だと思うかもしれないが、裸のシーンはほとんどなく、すべて観客の「想像」に任せてある。映画で描くのは、二人の間のユーモラスで機知に満ちた会話である。動物的な臭いのまったくしない映画である。 偽善者だらけのアメリカのように、大統領の不倫で騒ぐような国では絶対できない作品だろう。フランスでは大統領に隠し子がいようといまいと誰も大した関心すら示さない。 夕暮れ、門限の時間に間に合うようにと急ぐ兵士の目の前に売笑婦が現れる。時に彼女は「ただで」させてくれるということで近隣で有名になっているのだ。門限に遅刻すると禁足を食らうため兵士は断ろうとするが、ただでできることを知って思い直し彼女について行く・・・ パーティ会場。シャンソン歌手、コラ・ボケールがステージで見事な歌を歌っている。ここにいるのは先の話に登場した兵士の男だ。手持ちぶさたにしている女に声をかける。誘いに彼女はまんざらでもない。一緒にダンスをするうち、彼女と待ち合わせをしていたメイドの仕事をしている友だちがやってくる。男はあとから来た女の方が気に入ってしまう。二人は意気投合し空き家にある庭園の茂みに入り込む・・・ 場面は変わってこのメイドは、昼間大きなお屋敷の中で留守番をしている。老夫婦が出かけてしまい、書斎には法律の勉強をしている息子だけしかいない。息子は些細な用事のために何度も何度もメイドを呼び出す。下心を承知でメイドも書斎に向かい、二人で夢中になっている間に家庭教師がやってくるがいくら呼び鈴を鳴らしても誰も出ないので怒って帰ってしまった。 あるアパルトマンでは先の息子が女の訪問を今か今かと待っている。教会で知り合い、スケート場で親しくなった女がやって来るのだ。ただし「何もしない」という約束で。夫も子供もある身だが、二人は奥にある寝室に滑り込む。そのあとで男はスタンダールの「恋愛論」を持ち出して彼女を絶賛するのだった。 女は家に帰り、夫とベッドに入っている。女は夫に結婚前何人の女と関係したか、その中には人妻もいたかどうかしつこく尋ねるが、夫は答えをはぐらかして「快楽」はいけないのだた説教するばかり・・・。 ホテルには「特別室」というのがあり、ボーイ長はボーイたちに、その場合の客の扱い方について説明している。もし男性客が女性を部屋に入れようとしてもボーイはまったく関心がありませんという顔をしていなければいけないと。ちょうどそのときに特別室にいたのは妻に浮気されていたあの夫だ。ちょうど、街で声をかけてついてきた19歳の少女を部屋に入れたところだった。 場所が変わって、ある作家のアパルトマン。部屋にいるのは、ホテルの特別室にいたあの19歳の少女だ。作家は自分のアパルトマンに連れてきてその美しさに惚れ込み、自分が彼女を女優に育ててみせると宣言する。 作家であるこの男は大勢の女優を「手塩」にかけていたらしい。今マキシムのレストランでかつて別れた女優とよりを戻そうとしている。何であのとき別れたのだろう。彼女は男にほだされ彼のアパルトマンに出かけて行く。その夜は久しぶりに二人は同じベッドで寝ることができたのだ。 自分の家に戻った女優は寝過ごしてしまったようだ。正午をすぎた頃、士官をしている前途ある若い伯爵がやってきていた。彼女を夕食に誘おうとやってきていたのだが、彼女の願いでその前に寝室で午後の甘美な時間を過ごすことになる。 伯爵はその夕方彼女との食事の待ち合わせをするはずだったのだが、親友の故国でその皇太子が暗殺され二人は敵国同士として殺し合う運命になってしまった。運命の過酷さに耐えかねて二人は酒場を飲み歩き、泥酔した。 翌朝伯爵が目を覚ますと、あの「ただで」させる売笑婦が横にいる。何も覚えていない伯爵に向かって「昨晩のこと」を尊敬のまなざしで語る女は、戦いで戦死しないようにと別れの言葉を贈るのだった。これで物語はひとまわりしたわけだ。(1964年・フランス映画) Directed by Roger Vadim Writing credits Jean Anouilh Cast Jane Fonda .... Sophie / Cora Vaucaire .... La chanteuse リスニング;フランス語。男と女の寝物語なので、かなり難しい内容。ジェーン・フォンダのフランス語はよく聞くとやはり英語訛がある。 Les enfants terribles 恐るべき子供たち 「恐るべき」といってもこの作品が発表されて半世紀後では、もっと恐るべきことが次から次へと怒っているから、さほどショックを受けることはないかもしれないが、当時詩人コクトーが世間を騒がせたこの作品が、実は現代の子供たちの特徴を実に正確に予測していることに驚かされる。この映画では彼自身がナレーターをつとめている。またバッハやビバルディのBGMがこの映画にぴったりだ。 エリザベスとポールの姉弟は病気の母親とともにアパルトマンに暮らしている。ポールはおそらく結核で、雪合戦で雪が胸に当たっただけで失神し医者から安静を命じられてしまった。姉弟はお互いにののしりあいながら狭い部屋に暮らしているがポールは姉の世話がなければ生きていけないし、エリザベスはこまめに弟の面倒を見ているが自分の思い通りにしないときが済まない。 ポールは結局中学校をやめてしまい毎日家に閉じこもる生活を続ける。エリザベスもぶつぶつ言いながらもそれにつきあって買い物以外に外に出ることもない。おじさんのすすめでいとこのジェラルドとともにしばらく南フランスの海辺の近くで保養することになった。 ここでもエリザベスは弟とジェラルドを命令を下して生活を取り仕切る。物がほしいからではなく単なるスリルのために土産物屋での万引きを試み、これを二人にも強要するのだった。ポールは暖かい気候のおかげですっかり元気になってパリに戻った。 だが、まもなく母親が死ぬ。残された姉弟とジェラルドもまじえての暮らしが始まる。しかしお金が不足してきたのと、外の世界の空気を吸いたいのとでエリザベスはモデルの仕事を見つけた。仕事はうまくゆき、アガーテという女の子と友だちになり、いやがるポールにもかかわらず自分たちのアパルトマンに住まわせる。 さらにエリザベスは、ミシェルという大金持ちの若い男と恋仲になり、結婚することになった。彼は18も部屋のある大邸宅に住んでいた。結婚後はポールの面倒も見てくれると言う。二人は無事結婚式を済ませたのだがミシェルは一人で車を運転中事故を起こして死んでしまう。 期せずして後家となったエリザベスには膨大な遺産が転がり込んできた。ポール、ジェラルド、アガーテを引き連れてミシェルの邸宅に移り住む。だがふつうの金持ちのように贅沢三昧をするわけではない。部屋でごろごろするだけだ。息苦しくなったポールは自分だけの時間を求めて数ある部屋の一つを自分の居室と決め、中国風のインテリアで統一した。 しばらくして何かアガーテの様子がおかしい。エリザベスが問いただすとポールに恋をしてしまったのだという。恋煩いでベッドから起きあがれない。そこで様子を探りにエリザベスはポールの部屋に行くと、彼もアガーテを恋してしまい苦しんでいた。恋文を「速達」で出したのだがアガーテは何も言ってこないのだろうかと悩んでいた。 しばらく旅行をしていたジェラルドが戻ってきて、かつて雪合戦でポールの胸に命中させた中学校時代の友だちから預かってきた毒草をポールに渡す。毒草は「宝物」を入れるための引き出しの中に鉄の箱に入れてしまわれた。 エリザベスは恋文の宛先をポールが自分宛に書いてしまったためにアガーテに届かなかったことを知る。エリザベスは勝手にその手紙を捨てて、アガーテにはジェラルドが彼女を恋していると告げ、ポールにはアガーテはジェラルドのものだと伝える。 絶望したポールは毒草を食べて自殺を図る。駆けつけたアガーテが真相を語るが時はすでに遅し。ポールは目の前で事切れた。アガーテにとってすべてが明らかになる。エリザベスは弟が自分から奪われることに我慢ならなかったのだ。彼女は引き出しからピストルを取り出した・・・(1950年) Directed by Jean-Pierre Melville Writing credits Jean Cocteau (also novel) Jean-Pierre Melville Cast: Nicole Stéphane .... Elisabeth / Edouard Dermithe .... Paul / Renée Cosima .... Dargelos/Agathe / Jacques Bernard .... Gerard / Melvyn Martin .... Michael / Maria Cyliakus .... The Mother / Jean Cocteau .... Narrator (voice) haut de page |