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朝鮮映画

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激動の国、若い国、発展する国には、優れた映画作品が出てくる。映画はその社会の活気と矛盾を映す鏡の一つなのだ。朝鮮半島もその例に漏れない。一見荒削りな作品群の中に、光るものあり、将来への希望にあふれるものあり。

  1. Swiri シュリ
  2. Christmas in August 八月のクリスマス
  3. Sampoganeun kil / Road to Sampo 森浦(サンポ)への道

シュリ Swiri 쉬리  January 01, 2003

シュリ 国全体が良かれ悪しかれ、活気にあふれているときは、そこで作られる映画もそれを反映して、緊張感のあるものができあがるようだ。韓国映画が、国際的な注目を浴びるようになったのも、監督たちが次々と社会の雰囲気を取り上げて、意欲的に表現するようになったからだ。

「シュリ」とは韓国の河川に生息する淡水魚の名前だという。この話の影の主人公は水槽に飼われている魚たちだ。そして敵対しあうのは、韓国の情報部員たちと、北朝鮮から送られてきた工作員たちだ。

北朝鮮には腕利きの女工作員、リーがいてそのめざましい働きのために、特命を受けて韓国社会に潜入する。目的はこともあろうに情報部員の一人の妻になることなのだ。彼女はすでに何人かの重要人物を射殺しているほどの銃の達人でもある。

情報部員の一人は、ペットの魚を売っている店をやっている女性と知り合い、二人は恋仲になる。彼は自分の職場に水槽をたくさん持ち込み、そこには多数の魚が泳いでいるのだが・・・

同僚と共に、工作員の行方を突き止めようとするが、武器の取引相手に会いにゆく寸前に、その相手は射殺されていたり、液体爆弾の研究員も事前に殺され、爆弾も待ち伏せによって奪われてしまう。

このような事件が次々と起こるのだが、どうして自分たちの情報が漏れるのか不思議でならない。情報部員たちは互いに疑心暗鬼になり、長年の仲間を疑うようになってしまう。

爆弾を奪ったあと、工作員たちは爆弾を脅迫の材料にして韓国社会を混乱に陥れ、北朝鮮による半島統一の野望を遂げようと行動を起こす。一方水槽の魚が一匹死んで、体の中に盗聴器が埋め込まれているのがやっとわかり、婚約者だった女は、実は済州島に住む少女(一人二役)そっくりに日本で整形手術を受けていたリーだということが判明したのだ。

捜査が進み、工作員と情報部員が遭遇し、激しい戦いを繰り広げ、さらに南北の親善サッカー試合が行われているスタジアムが爆破される危険に陥る。彼らのもくろみはスタジアムのライトを昼間ながら点灯して、爆弾が爆発するまで温度を上げようというのだ。そしてイーは、もし爆破が失敗したときには、南北首脳を狙撃する役目だった。

情報部員たちが工作員の占拠する操作室に入り、激しい銃撃戦のあと、危機一髪でライトを消すことができたので、スタジアムの爆破は免れたが、今度は首脳たちを守るためにイーを射殺しなければならなかった。

「祖国統一」のためには、どんな事件でも起こす北朝鮮の工作員たちの様子が、情報部員との戦いの中で浮かび上がる。イーは、本当に恋をしてしまったのか?それとも最後まで「任務」に忠実だったのだろうか。(1999年)

Directed by Je-gyu Kang Writing credits Je-gyu Kang Cast: Suk-kyu Han .... Yu, JongWon / Min-sik Choi .... Park, Mu-young / Yoon-jin Kim .... Lee, Myung-hyun (Lee, Bang-hee) / Kang-ho Song .... Lee, Jang-gi リスニング;朝鮮語。きわめて明瞭で、日常語が多く初学者にもおすすめ。

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八月のクリスマス Christmas in August 8월의 크리스마스 January 11, 2003

八月のクリスマス ジュウォン青年は30歳を過ぎたばかりだ。まだ独身で写真館を経営している。自分だけで撮影、現像、配達をやり、裏の建物で自分の父親や兄、妹と暮らしている。母親はまだ彼が小さい頃死んだ。

自分の出た小学校が近くにあり、もうずっと同じ場所で暮らしている。お客との接触、友達との飲み会、ハイキングと、何とはない日常がすぎていくが、実は彼は自分が致命的な病気を抱え込んでおり、余命幾ばくもないことを知っている。

ある日、駐車違反の取り締まりをする、タリムという名の婦人警官が、急いで現像をしてくれと店に駆け込んできた。それは暑い日で、できあがるまで外で待っているタリムにジュウォン青年はアイスキャンデーをご馳走する。

二人はこれをきっかけに急に親しくなった。タリムはかなり年下なので、ジュウォン青年を「おじさん」と呼びつつ、少しずつ恋心をいだいてゆく。仕事の途中で立ち寄ったり、急な写真の焼き付けを頼んだり、一緒に遊園地に行ったりと、二人が一緒に過ごす時間は増えてゆくが、タリムは彼の病気のことは少しも知らない。

ある日、大家族が写真を撮りに来た。みんなで撮ったあと、おばあさんが一人で撮影してもらった。その夜遅く、そのおばあさんは綺麗ななりをして再び写真館を訪れ、もう一度撮ってほしいという。自分の葬式写真はきちんとしたのが欲しいからだという。

ジュウォン青年も、そのころから自分の死後のためにいろいろ準備を始める。写真館の跡継ぎがスムースに仕事ができるように。そしてそのショーウインドウには自分の撮影したタリムの写真が飾れるように・・・

青年は倒れた。しばらく入院している間、主のいない写真館の前を何度も言ったり来たりしていたタリムは、自分が捨てられたと思ったかもしれない。退院してみると、タリムは別の場所に転勤していて、その姿を見ることはできなかった。ジュウォンはいよいよ自分の死期が近づいたのを知り、自分の写真を撮る。

そして、タリムのことを胸に抱いたままこの世を去った。父親が写真館を引き継いでいた。ある日店のショーウインドウに近づいたタリムは、自分の写真が飾ってあるのを見てにっこりほほえむのだった。

撮影は、韓国の町並みが多い。普通のドラマの場合と違って、警笛やトラックの通り過ぎるときなど、「町の騒音」が飛び込んできて、ドキュメンタリー風だ。

また、ハリウッドの制作方式に慣れた人にはとまどうような構成だ。身近な日常のシーンが短くつなぎ合わされているだけだからだ。むしろフランス映画のようなつくりかたになっており、テレビドラマの安易な展開と違って、観客に想像力を要求する。(1998年)

Directed by Jin-ho Hur / Writing credits Jin-ho Hur Seung-ook Oh Cast: Suk-kyu Han .... Jung-won / Eun-ha Shim .... Da-rim / Goo Shin .... Jung-won's father / Ji-hye Oh .... Jung-sook / Han-wi Lee .... Chul-goo リスニング;朝鮮語、日常会話の短い取り合わせだから、初心者のリスニング訓練には理想的。

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Sampoganeun kil / Road to Sampo 森浦(サンポ)への道 2008/07/21

3人の風来坊が雪の中で一緒になり、再び未来に向かって別れて進んでゆくというロードムービー。主演女優の演技が魅力的。男2人と女1人という組み合わせは、テレビドラマ「俺達の旅」や、映画「中国の小さなお針子」でも見られる、おたがいの葛藤が生き生きと描かれる。

ある激しい吹雪の夜、韓国中央部の山村を一人の若い風来坊、スーが歩いていた。もう仕事もなく腹ペコで雪の中に行き倒れになりそうだ。そこへチェンという年配の男が通りかかって、タバコの火を求めた。スーはもしかしてこの男と一緒にいれば何かにありつけるのではないかと同行することにする。

ある一軒の飲み屋で食事をとることになったが、そこの女将がここから逃げた若い女を連れ戻してくれたら1万ウォンをあげるという。金を手に入れる機会を得た二人はさっそく雪の中を歩き回り、ベッキという名の女を発見する。

彼女は売春と酒場のホステスをやってきたがこんな田舎は卒業したから都会のほうに向かうのだという。そしてその物怖じせずなんでも思ったことをぶつけてくる態度に、二人の男はたじたじとなり連れ戻すどころではなくなる。ベッキのほうもこの二人が悪い人間ではないとわかったらしくしばらく一緒に旅をすることになる。

チェンは妻に自殺され、仕事はうまくいかず人生の大半を棒にふったのち、海に面した港町である故郷の森浦(サンポ)に向かうところだったのだ。チェンは何かそこに希望があるような気がしてたまらなく懐かしい思いに駆られていたのだった。

スーは偽薬を売ったりして大もうけをしたが、妻に逃げられバクチと酒におぼれ、刑務所にぶち込まれ、もうまともな暮らしをする気にはならなくなっていた。最近では岩山に穴を開けダイナマイトを仕掛けて爆破する仕事をやっていたこともあったが、人生へのわだかまりが常に彼を放浪の旅に向かわせていた。

そんな二人をベッキは温かい目で見つめ始め、そのうち若いスーに思いを寄せ始めてきた。彼女の性格からしてストレートに自分の気持ちをぶつけるのだが、生活に自信を失っているスーはそれを避けようとする。チェンがそばから二人を思いやっているが、スーは一晩ベッキと寝たあとでも結婚して一緒になる気は少しも起きなかった。

祭りの賑わいの中、スーはベッキを人ごみの中に置き去りにし、再び姿を現したときには彼女にソウル行きの切符を渡してなんとかふりきろうとする。だが彼女はその列車に乗ったふりをしてこの町にとどまる。生活力のある彼女はここで何か仕事を見つけるだろう。

いっぽう、スーとチェンはいっしょにサンポに向かうことになったが、乗っていたバスの乗客の一人がスーに目をつけて一緒に建築現場で働かないかと誘う。スーは途中でバスを降りて新しい生活に一歩を踏み出した。チェンはひとり、サンポの町に到着した。港には大きな橋がかかり、町は繁栄への道を歩み始めていた。(1975年/韓国映画)

Director:Man-hui Lee Writers:Seok-yeong Hwang (novel) / Dong-hun Yu (screenplay) Cast Il-seob Baek / Jin Kyu Kim / Suk Mun 言語;朝鮮語

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