最近では何でも人任せ。衣食住、何でも金さえ出せばどんなサービスもうけられる。人々の中には家庭教育さえ放棄して、人任せにするようになった。なるほどサービス産業の隆盛は失業者の数を減らすだろうが、おかげで個人のライフスタイルはずいぶん画一化された。
テレビで紹介されるおきまりの「おいしい店」につめかけて疲れ果てたコックの作るエサを食べて何がおいしいのだろう。大企業の作った手抜き料理袋を家で開封し「おいしいわ」と行って食べるその人の味覚はどうなっているのだろう。
一方では世の中には「自作」にこだわる人がいる。太平洋横断のヨットを自作する人、鉄道模型で実物と間違えてしまいそうな機関車を自作する人。セーターを一人で編み上げてしまう人(昔は大勢いたが)。彼らは企業のお仕着せを受け付けない、個性派なのだ。
料理の世界でもまだ「自作」にこだわる人は大勢いる。シェフ顔負けの人もいれば、野菜の栽培の段階からその品質を譲らない人も多い。このページはそういった人々に敬意を表してテーマを選んでいる。
(せめて!)食事だけは市場原理に左右されないようなものを作りたい。世の中には、奥さんに料理を任せっぱなしで、自分でラーメン煮えたのもご存じない男も多い。「生きる力」は自分で食事を作ることから生まれることは、男と女の平均寿命の差で歴然と現れている。
忘れてならないことがある。がみがみ言われながら、あるいは喧嘩しながら、あるいは口もきかないで食べたのでは、一流シェフの味もまるでヌカの味となる。料理が(技術的)に上手なだけではまったく失格である。すばらしい料理も単純そのものの料理も「楽しい食卓」があって初めて成立することだ。
楽しい食卓づくり、これこそ家庭料理(そしてアウトドア料理も!)の基本である。このぺ-ジは、レシピ集ではない。おいしい店のガイドでもない。これは食事、食料、料理、およそ人々が胃袋に入れる過程における”哲学書”なのだ。
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