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煮豚を作る

煮豚

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なぜ、焼き豚ではなく、煮豚なのか?それは作る工程にはどう見ても「焼く」という部分が含まれていないからだ。一般にラーメン屋で出てくるチャーシューはほとんどが煮豚らしい。本物の焼き豚なら、中華風の食品を扱っている店に行った方が見つけやすい。

さて、豚の肩バラ肉のランプが500グラムほど手に入ってので、しかもそれほど脂身もなく、豚カツにするよりも、日持ちの良い食品にしようと、さっそくタコ糸を使って、細長い棒状に形を整えた。

このあと、これをつけ汁につけ込むのだが、この汁こそ、さまざまな店が「秘伝」と称する見事な味のもとになる。今回は第1回目なのだから、そんなテクニックは思いもよらず、普通の料理書に書いてあるとおり、醤油、日本酒、砂糖を同量ずつ混ぜて用意した。

ここでいろいろな人が工夫をしている。あとで知ったことだが、この肉のかたまりに箸で深さ1センチほどの穴を開け、その中に、同じく1センチの棒の形に切ったニンニクを打ち込むのだという。全部で10カ所ぐらいに打ち込むのだとか。

今回はネギ(万能ネギ)を細かく刻み、さらにショウガを一かけおろして汁に混ぜた。ウイキョウとか八角とか、いずれ試してみよう。また、つけ込む前に、肉に表面に砂糖(三温糖など)をなすりつけておくとよい、という話も聞いた。

さて、肉のかたまりをつけ汁に4時間ほど浸ける。だが、肉が大きく、これがすっかり汁の中に浸かってくれるためには相当多量の汁を用意しなければならない。それで考えたが、普通の平たい鍋では氷山のごとく大部分が空中に出てしまう。

だからドンブリを用意して、その中に肉のかたまりを巻いてとぐろ状に敷き、その中に汁を注ぐことにした。これで肉全体の8割以上が汁の中に浸されることになる。

まんべんなく汁を吸収するように、途中で肉を引き上げて上下をひっくり返し、スプーンで汁を上からかけた。4時間後、ドンブリから引き上げてこれを強火で熱くしたフライパンの上に載せ、表面に焦げ目をつける。

これはなぜかというと、表面だけを硬くして、この先煮ているときに美味しい肉汁が外に逃げ出さないようにするためだろう。ステーキを焼いたり、鰹のたたきを作るときと同じ理屈だと思われる。

焦げ目を付けるときに使ったサラダ油はじゃまだからさっとふき取り、底面積の比較的狭い鍋に移し、はじめ沸騰させさきの浸け汁を再びいれて、そのあとは弱火で40分ほど、時々ひっくり返しながら煮た。

まさにこれが煮豚の名前のゆえんである。これで表面から相当汁が吸収されたことだろう。先ほど焦げ目を作ったおかげで、肉汁が、浸け汁の中に少しも溶け出さない。

40分後、火を止めてふたをして一晩おく。これは味をもっとしみこませるためだ。翌日、鍋から引き上げて汁を良く切り、オーブンの中に入れ、250度に設定して約10分間焼く。

オーブンに入れたのは、せめてここだけは焼き豚らしくしようと思ったのと、肉の表面からよけいな水分を蒸発させて保存が利くようにするためだ。もっとも今回の肉の量はたかがしれているから、すぐになくなってしまうのだが。

包丁で、薄く切ってみる。中も適度に汁の色に染まっている。味は少し濃いめぐらい。ショウガとネギ以外特別な香辛料を入れていないから癖のない味だ。さめたら冷蔵庫で保存する。イノシシ狩りに行って一頭倒し、大量の煮豚を作ったらさぞうまいことだろう。

2003年2月初稿

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

 
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