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にがり豆腐を作る

こしだされた豆腐

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豆腐は安い。スーパーに行っても100円で大きな固まりが買える。だがちょっと待てよ。どうしてこのとなりの棚のやつは値段が4倍もするんだ?ずいぶん値段に差があるなあ。

その秘密は水増し。極端に薄い大豆の汁を無理に固まらせたもの。手でつまんだだけで崩れる。健康に実害はないが、これではタンパク質なんぞ含まれているはずがない。食品はお金をケチるととんでもないものをつかまされる。これが日本社会の現実。

今たいていの豆腐ではスムーズな出来上がりにするためか、泡消し(消泡剤)を入れているようだ。だから絹のように舌触りが滑らかなのだ。消化の良い、大豆100パーセントの豆腐が食いたい!

納得のいく豆腐なら自分で作るに限る。ある豆腐屋さんでしぼりたての豆乳を売っていた。一袋に200ccなので、2袋買う。一つ120円。飲んでみると非常に青臭く、どろどろしている。どおりでスーパーで売っている豆乳は砂糖やら香料がたくさん入っているわけだ。

濃度は判らないが、ほとんど水で薄めていないようだ。どろっとしている。原料の大豆は残念ながら国産ではない。店の扉に証明書が張ってあって、アメリカからもってきており、遺伝子操作はしていないと明記してある。

にがりにがりを手に入れる。「塩田産にがり」10グラムの小袋15個入りで290円。400ccの豆乳なら5グラムで十分。塩田から取ってきたわけだが、市販の豆腐では純粋な塩化マグネシウムを使っているだろう。

鍋に水を張り、沸騰させる。その中に400ccの豆乳を入れた容器を入れて摂氏70度を超えるまで待つ。つまり湯煎(ゆせん)するのだ。そのわけは鍋に入れて直接加熱すると急激な熱によってタンパク質が固まり、鍋の壁にこびりついてしまう。ゆっくり加熱することでなめらかに温度が上昇し、あとで容器を洗うのも楽であるし、せっかくのタンパク質が無駄にならない。

70度を超えると表面に牛乳を熱したのと同じように薄い膜が張り始めるから、直ちに湯から出してにがりを入れる。このときににがりはあらかじめ5グラムなら100ccの冷水で溶いておく。これは溶かすために豆乳をやたらかき回さないためだ。

電子レンジの場合なら、「強」で6分。ただし続けて6分加熱するのではなく、3分・2分・1分二分割し、その合間にスプーンで上下かき混ぜて全体の温度が均一になるようにする。これをきちんとやれば一番上に薄い膜ができるのを防ぐことができる。

これから凝固が始まるので、なるべくそっとしておきたい。従ってにがりを入れたらできるだけ素早く全体に行き渡らせて静かに15分ほど待つ。すると豆乳の内部でタンパク質がどんどん固まりだし、全体がどろっとしてくる。これをいきなりごくごくと飲んでもいいのだろうが、今回は固まらせるのが目的だから別の容器に移すことにする。

ガーゼが必要だ。ガーゼを30センチ四方用意し、これがちょうど底面と側面を覆うような大きさの容器の内面に張る。うまく張るためにはあらかじめガーゼを濡らして固く絞れば、うまく付いてくれる。豆乳を入れたときその重みでガーゼが容器のふちからはずれないように、輪ゴムで止めておくとよい。

さて固まりかけた豆乳を最初の容器からくみ出してゆっくり、ゆっくりそのガーゼの中にそそぎ入れる。この時点で食べればいわゆる「くみ出し豆腐」だ。これは最高にうまい。大豆の香りが非常によい。ただ完全に固まっていないからみそ汁に入れると汁が濁る。それが気にならないなら、どんどんスプーンでくみ出せばよい。

ガーゼの中に入れることによって豆乳は、豆腐の部分と余った汁とに完全に分離される。このあと豆腐はお互いにくっついて急激に堅さを増す。水だらけの豆腐では想像もつかない堅さだ。分離した汁にはにがりが含まれており、これが豆腐にも含まれていると味が悪いというがどんなものだろう。私は気にならないが。

こしだされた豆腐豆腐屋さんのように、大きな入れ物に水を張って、豆腐を入れできるだけ長い時間流水に浸してにがりを抜く。そのあと冷蔵庫にしまっておき、再び一部を使うときにも水をまめに取り替えるようにすれば傷みも遅らせることができる。

かくしてできた豆腐は固くて歯ごたえがあるほどだ。濃いので味と風味がある。400ccの豆乳から150gグラムぐらいの豆腐ができた。ガーゼの包み方によっては泡が含まれ、不格好ではあるが毎回使うごとに大きなスプーンで削って利用している。味のポイントは豆乳にあるようだ。いい大豆ならきっと美味しい豆腐ができる。

今後、よい大豆が手に入ったら、これを一晩たっぷり水に浸したあとでミキサーにかけ、いったん煮立ててから、「おから」と「豆乳」に分けることまでさかのぼって自前の豆乳を作ることができる。そうするとさまざまな風味や味のバリエーションが楽しめるだろう。

注;その後、「くみ出し豆腐」のことを聞き、豆腐が固まったあとできることなら流水で流さない方がいいと知った。というのもせっかくの豆に含まれている栄養分がにがりと共に流されてしまうからである。この方法ならガーゼもいらない。いきなり熱い豆乳に、にがりをちょっと水に溶かして投入すればよい。

にがりそのものは無害だし(海水から作ったのならミネラルが豊富だ)、みそ汁の具に入れることが主な目的なので、黄色みを帯び多少の柔らかさと毎回汁が出てくることには目をつぶって(豆腐屋さんはそうはいかない)器に入れ、必要なときはスプーンですくって使っている。水を流す手間もいらないし栄養分もあるならこれで満足だ。

2003年5月初稿・2004年3月補足

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

 
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