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サンマの刺身

新鮮なサンマ

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サンマをどうやって食べる?と聞かれて100人中99人までおそらく「塩焼き!」と答えるだろう。確かに秋になりサンマが捕れ出すと、多くの家庭でサンマを煙を上げながら焼き、大根下ろしを添えていただくというのが常識になっているらしい。

確かに塩焼きは旨い。だが焼いた肉というのはいつか飽きが来るもの。内臓の苦さがあるからかなり救われるが、焼いたサンマの身というのは大部分の油が抜けてしまっており、はっきり言ってうまみが抜けてしまっている。

ある日JRお茶の水駅周辺を歩いていると、立ち食いの寿司屋があった。立ち食いのそば屋はどこにでもあるが寿司屋はあまり聞かない。間口が2メートルもないような細長いカウンターがあって、忙しいサラリーマンは鮨をほおばってそうそうに出ていく。

そんなに安いわけではなかったが、「サンマ寿司」の札が目を引いた。鯖寿司ならともかく、サンマの鮨は、シーズンでないとお目にかかれない。しかもたいていの寿司屋はトロとかをやたらに珍重するから、サンマなどバカにする店が多い。

3枚におろしたサンマそのときの生のサンマの味は忘れられない。どんぶりご飯の上に乗っているのを食べた。以来サンマは刺身に限ると決めている。毎年夏が終わってサンマの季節が来ると、毎週平均8匹は消費する勢いである。

ちなみに鰯の刺身も素晴らしい。残念ながら不漁だということで、気軽に食べることができないが、鯖、サンマ、鰯の刺身のうまさに比べたらトロなんかまったくのクズといってよい。江戸の人々はそのことをよく知っていた。鰹節はあるがマグロ節はない(あるかも!)。現代人は味覚が落ちたのか?

そのうまさは脂にあるだろう。魚の脂は新鮮なときは、肉の脂身の比ではない。醤油をほんの少しだけつけ、食あたりをしないようにとちょっとだけワサビかショウガを加える。この場合ビールよりも焼酎や泡盛のようなアルコール度の高い蒸留酒が合うようだ。

まず魚屋で目の青い、皮のつやつやしている、ハリのあるサンマを選ぶ。目の周りが赤くなっていたらちょっと危ない。しっぽの方にすり傷があってもかまわない。大量にとれ出す前は刺し網でとるので、どうしてもその網から逃れようと魚体に傷が付くのだ。

できるだけ早く台所に持ち帰り、低温を保ちながら三枚におろす。ただしサンマは内臓が命だから、おなかの部分に傷を付けてしまわないように慎重におろしてゆく。従って刺身用に切り取った部分はおなかの部分が大きく抜けて少々変な形になる。

身をはがしたサンマ皮はすぐむける。頭の方からめくって尾の方へ持っていくと、ツルツルとまるでイカの皮をむくような感じでむけてしまう。皮は実に薄いのだが丈夫だ。鱗がないのでもちろん食べてもいいが。これであとは冷蔵庫に入れて食べる直前まで冷やしておく。

一方、内臓と骨だが、これは荒塩をすり込み魚焼き器に入れて普通の塩焼きの要領で焼く。骨はいわゆる肉つきだから最高に美味だ。内臓は新鮮だから旨いのは当然。だがその日はなるべく食べないでおいて、いったん冷凍庫に入れておく。

というのは再び取り出して食べるときにもう一度焼くからだ。つまり「二度焼き」をするのだ。こうすることによって骨はほとんどもろくなりいっしょに食べてしまえるし、内臓の方も、水分が抜けて食べやすくしかもコクが増している。こうなれば本当に頭しか残らない。猫はカケラしかもらえない。

2003年9月初稿

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro
 
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