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食生活のリズムを正す

食生活のリズムを正す

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おそらく食のリズムを整えることほど現代人にとって重要なことはあるまい。小学生から「激働」サラリーマンに至るまで食生活は軽視され、忙しさという大義名分のもとに健康がむしばまれている。

最も顕著なのは朝食抜きだ。このことが問題になってからすでに20年ぐらいたち、繰り返し医者や保険関係者や教育者によって警告がなされているにもかかわらずますますこの傾向は大きくなっていく。

ミニトマトかつては人々は一日二食だった。それがいつの間にか昼にもう一回食べるようになったのである。昼食=中食である。ということは朝食は昔からあったのだ。一日のはじめにまず身体をめざめさせ必要なエネルギーを補い出力を最高にする。

それを行わないのなら前の晩に食べたものを無理矢理引き出さなければならない。そうなるとおのずと前の日の夕飯は重くたくさん食べることになる。夕方に食べるものに脂肪分などが多く含まれていると夜の間に吸収されそれは体内の血中脂肪濃度を高めてしまうだろう。

重労働の少ない現代人の生活では、脂肪などの蓄積型の食品は禁物である。豊かな食料が出回っている社会では、「使い切り」型の食事が最もよい。食べてその場で使い、後に残さないのが理想なのだ。

ところが現代では「スナック」というものが売りに出され、「小腹がすいた」と行っては常にネズミのように食べ物を胃に流し込んでいる。これはストレスを低減する効果はあるのだろうが、栄養学の見地からすれば身体はたまったものではない。

きゅうりというわけで正しい食生活のリズムを刻むことを提案する。一日の中のリズム、一週間または一月の中でのリズム、年間リズムそして一生のリズムを本来の自然な形に戻し、楽しく健康に生きるようにしたい。

<一日のリズム>朝は身体の始動と昼過ぎまでに使うエネルギーを補給する。身体のめざめのためにはコーヒーのような覚醒作用を持つものを摂るのもいいが、単に卵のようなタンパク質をとることでも覚醒が促進される。昼は夕方までの当面のエネルギー補給の食物をとる。ここでたっぷり食べたら昼寝が必要になる。おにぎりかかけそば程度でいいのだ。

夕方はじっくりと体調を整え、体を作るための食物を食べよう。ただし、先にも述べたように脂肪は必要ない。酒を飲むにしてもスルメのように乾きものを主体とし、ソーセージやサラミのようなものは酔うと量のコントロールが効かなくなるから極力避ける。

<一週間または一月の中でのリズム>毎日の食事は粗食を基調とする。野菜と魚を中心とし、空腹を覚えるときは穀類、豆類によって満たす習慣をつける。だが、時には変化が必要である。それで昔の人々が考え出した「祭り」を参考にしよう。

つまりふだんは「ケ」の日であり、粗食に徹するが、月に1,2回「ハレ」の日をもうけそこでは脂肪や獣肉をたっぷり摂ったり、山海の珍味を用意したりする。久しぶりの豪華な食事に胃や腸はびっくりすることも多いが、気分転換としては大いに役立つ。また何か欠けていた栄養素が補われることもある。

キャベツ現代人の飽食の最大の問題は、この「ハレ」の日がえんえんと毎日続くことである。これが結局成人病、いわゆる生活習慣病を招くことになるのである。特に祖先が雑穀中心の食生活をしてきて身体がそのように適応している日本人にとっては西洋風の食事を毎日とることは自殺行為である。

<年間リズム>日本はありがたいことに四季の区別がはっきりしており、その季節ごとにいわゆる「旬:しゅん」がある。これは食のリズムを決める上できわめて重要である。温室栽培、養殖によってこれは今めちゃくちゃにされた。暑いとき、寒いときそれぞれに身体が必要とするものは違う。自然界の収穫物は、それぞれに適した時に生じるようになっている。これを薄汚い商業主義が狂わせてしまったのだ。

野菜、くだものの自然にできる時期を、自分の住んでいる場所の緯度や高度も考慮に入れながら調査し、その時期にふさわしいものを食べることだ。地方によっては厳寒期の野菜不足を補うためには多少の温室栽培の野菜に頼る必要もあろうが、そういう場合は八百屋で買わず小さな家庭菜園を維持することによって少しは自給自足も試みたい。

外国から運ばれてくる生鮮野菜やくだものなんてとんでもない。日本国内ですら、あまり遠くから運ばれてくるものは考えものだ。特に野菜の調達はできるだけ自分の住む県内、東京ならまわりに接する県からの産物だけでまかなうようにしたい。結局そうすることが近郊農業をいつまでも維持し同時に自然環境の保持にも役立つことになるのだ。

ふきのとう<一生のリズム>老人がビフテキを食べるのは誕生日だけでいい。老人はご飯一膳で午前中の活動を維持できるのだ。それぞれの年齢にあった食料を取り入れるべきなのだ。いわゆる「中年太り」は運動不足の他に、若者だったときとほとんど変わらない量の脂肪やでんぷんを摂取していることから起きる。

自分が中年にさしかかっていくときにどれだけ体力が衰えて活動が減っているかを厳密に調査して、その分だけ食べる量を減らさなければいけないのに、それを実行する人は少ない。いつまでも若いつもりでいて張り切るのは結構、だが身体の内部では活力がどんどん弱まっている現実があるのだから、若いときの暴飲暴食を40過ぎてもやっているようではまさに自殺行為に他ならない。

おにぎり中年以後の夫人は、午後のおやつと称して砂糖のいっぱい入った紅茶とクリームのたっぷりついたショートケーキを召し上がる。だがちょっと待ってほしい。あなたは生理のまだこない女子中学生ではないのだ。身体に入ったカロリーは片っ端から尻に脇腹にその他身体のあらゆるところに付着してゆく。そのくせテレビのリモコンをとりに行く以外になんの運動もしていない。

こうやって振り返ってみるといかに自分のリズムが乱れているのかわかるだろう。腹一杯食べるのでなく、いつも「何か物足りない」というぐらいの量で正しいリズムを守っていけば、病気などしないし、抵抗力や免疫力も高く保たれるのだ。

<鮮度のある食物が身上>

食べ物で一番大切なことは鮮度である。昨日殺したばかりのブタ(アミノ酸が増えて腐りかけの方がよい、という説もあるが)、とりたての野菜は当然のこと。これを実現するためには家庭菜園が理想だが、それがかなわぬ都市生活者はせめて最低週2回の八百屋通いをすすめたい。

根菜類はともかく、葉ものは10分ごとにどんどんビタミンが失われていくと考えていい。生け花のように水盤につけても仕方があるまい。やはり生き生きと成長しているものを丸ごと食べるのが一番いいのだ。

2004年5月20日初稿

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro
 
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