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冷凍イチゴはいかが?

冷凍イチゴ

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このホームページでは、生の果物の輸入品は決して食べないように勧めている。特にかびの生えやすい柑橘類はやめたほうがよい(目次参照)。ところが今回おすすめするのは、実は輸入品なのである。

ただし生ではない。冷凍品や缶詰ならば、添加物や保存料、ましてやかび防止剤は必要ない。そしてなによりも「旬」のものがいただける。しかもハウス栽培ではない。鮮度が落ちないように大急ぎで出荷したり、その際の「予冷」も必要ない。出荷時期の調整もないから化学肥料による促成栽培の可能性も少ない(ないとは言えないが)。

現代農業の狂ってしまった点は、実は上記の条件を満たすために、生産者が必死になって「顧客」の要求に応えようとしたことにある。そして価格。われわれは、市場至上主義によってゆがんだ農業生産の及ばない部分を探し求める必要がある。

もちろん自分のベランダや家庭菜園で好きなイチゴを栽培できればそれに越したことはない。だが、それがかなわぬ時消費者としてわがままを言うと、とんでもないものをつかまされる。生産者はまず第一に利潤を考えるものだからだ。

それは意外に、缶詰と冷凍の領域に見つかった。今回の冷凍イチゴは、スーパーのかたすみに、ほかの冷凍食材と共に目立たぬ所に陳列されてあった。手抜き人間お気に入りの調理済み食品全盛の中、素材だけを瞬間冷凍したものが出回っている。

かつて中国から輸入された冷凍ほうれん草に、多量の農薬が検出されたために油断も隙もないが、一年で最もその地域で自然に生育する品種でしかも多量に生産できる野菜は、その時に出荷しても市場では安く買いたたかれるだけだ。これを大量に捕れたイワシと同じく、すぐその場で加工してしまうのだ。

イチゴは瞬間冷凍が向いている。長距離を大急ぎで運ぶ必要もなく、産地で直ちにその盛りで冷凍してしまう。栄養的にも、味の点でも最も望ましいときにだ。ハウス栽培により、人工的な空間で病害虫の発生を薬剤によって防止し、温度を保つために貴重な石油を燃やしている異常な作り方に比べてなんと自然であることか。

いったん冷凍してしまえば、その冷凍を解かない限り世界中どこに送っても大丈夫。賞味期限は1年近くある(多くは2年以上に設定しているようだが)。このようなわけでさっそく買い求め試食してみた。

アメリカ産で、アメリカ大陸に適した品種を使っているが、常温に置き溶かしてゆくうちに、強烈な香りが漂ってきた。かなり甘みがある。しかも内部まで真っ赤に熟している。ヨーグルトや牛乳ともよく合うが、イチゴだけで食べても酸味はもちろん、十分な甘みを持ち、砂糖をかける必要がない。

八百屋には国産のイチゴがあふれんばかりに並んでいるとき(5月)に、わざわざ冷凍品を買うのはなぜだかおわかりだろうか?そう、福岡県や栃木県で栽培され、大急ぎでトラック便で首都圏に運び込まれるイチゴのまずさがきっかけなのだ。

あのまずさはいったいなんだ?まず甘みも酸味もゼロ。内部の色は白っぽく、ふかふかしていてまるでスポンジのよう。そして香りがまったくない。八百屋の店頭で山と詰まれて初めて「総合効果」が現れ、かすかに匂う程度。いったいどうやって食べればいいのだろう?

静岡の石垣イチゴでの「イチゴ狩り」では、必ず濃厚で甘みの強いコンデンスミルクが配られる。実はこれなしにはまずくて食べることができないからだ。さわやかな酸味もなく、ただひたすらボリュームがあるだけ。化学肥料の固まりである。イチゴ狩りではそれでも熟したものを入念に選べばましなのを食べることができる。

長距離輸送を経たものはそれすら許されない。出荷前に十分に冷やして熟成を遅らせることはできるが、所詮生もの。青いままで出荷し、輸送する船の中で熟すバナナと同じく、露地栽培の味からはあまりにも遠い。

このまずさには品種も関係している。お菓子を食べることに慣れた現代人にとって果物もお菓子の一種だ。酸っぱくあってはいけない。香りがある必要はない。ただ甘ければよい。消費者の愚かで、自然から乖離した欲求が今日の品種の全盛をもたらした。

そして何より、化学肥料中心の栽培。図体だけが大きく肥満児そのもののイチゴが市場で我が物顔で出回っている。なるほど化学肥料は生育を早め、重量を増やす。だが、トマトの場合で思い知らされたように、現代人はイチゴの本来の味など何も知らないし、年寄りたちも昔の味をすっかり忘れてしまったようだ。

冷凍品を通じて、世界のイチゴの味を調べてみよう。合州国だけでなく、EUでもイチゴを作っているから、近日中にまたその味を報告したい。東南アジアの場合はまだ時期尚早のようだ。農薬や化学肥料に関する規制についての社会制度がまだ十分に整っていないようだから。

<資料> 冷凍ストロベリー300グラム 販売者;ライフフーズ株式会社 品種;バラ科オランダイチゴ(バージニア・イチゴとチリ・イチゴとの交配種)

なお、缶詰果物も悪くない。グレープフルーツといえば、表面に防カビ剤をふりかけて今にもガンを引き起こしそうな製品がスーパーで堂々と売られているが、タイ、トルコでは缶詰にして日本に輸出している。缶に入れてまさか防カビ剤をいれたりはすまい。

しかも缶詰にするときは、冷凍食品の場合と同じく常に”旬”のものを収穫しているはずだ。安く、新鮮で栽培に無理のかかっていないものが選ばれて製品化される。このことは「魚の百円缶詰」の項でも述べたが、とても大切なことなのだ。

それでなくとも人間の栽培するものはさまざまな要求(より大きく、より甘く、より季節はずれに、など)にあわせて大変な”奇形”栽培を強いられていることを忘れてはいけない。サクランボを作り上げるのにどれだけの大量の農薬が必要なのか調べてみるとよい。

2005年6月初稿2009年4月追加

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

 
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