Cooking!

 一日一杯のみそ汁を

(別名;味噌仕立てのちゃんこ鍋)

鰹節削り器

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野菜の宝庫

日本人の大豆利用法は、実に多様でうまくできている。醤油、豆腐、味噌、納豆と、たかが豆なのに、このように全く違った食品に変身する例は、牛乳以外にない。

この中での味噌は、納豆の持つ豊かなタンパク質と、醤油の持つ調味料の働きを兼ね備えた傑作だ。北日本、西日本では、その気候の違いによって色と香りが全く違うが、米食の副菜としては、最も優れたものだ。

最近、納豆もそうだが、このみそ汁のにおいが「クサイ」と敬遠する者が多い。言語道断である。それどころか日本の農地で生産される、さまざまな材料を取り込むには、これ以上の調味料は考えられない。

昔から質素な食生活を「一汁一菜」と呼ぶが、実は中に入れる具の工夫次第によっては、日本の平均寿命が世界一になった原因の一つかもしれないのだ。なぜならみそ汁とは一種の「ごった煮」だからだ。

相撲取りが食べるちゃんこ鍋、キャンプ場でお目にかかる豚汁、東北の秋の野外料理イモ煮、料亭で食べる石狩鍋や牡蠣鍋、これらすべてみそ汁を起源に持っている。何でも入れるからバランスがいい。

つまり、エネルギー源はゴハンで間に合うとして、その白米に足りない栄養素を追加しようと思ったら、みそ汁に何でもぶち込めばよいのだ。入れ物もどんぶり二つで済む。

だからスーパーで売っているインスタントみそ汁は絶対良くない。あれは大量の「グルタミン酸等」を溶かしたお湯に過ぎない。具なんてただの飾りだ。そんなものを飲むくらいなら、お茶か水のほうがよっぽど気が利いている。

みそ汁は特に野菜嫌いには朗報である。なぜならかさばる葉物類は、みそ汁の熱い汁の中では、体積が何十分の一にも縮んでしまうからだ。その上、熱を加えて柔らかくなっているから、サラダなんかより、はるかに消化がいい。大量の野菜をとれば、ビタミンCは問題なく摂れる。

みそ汁を飲むときはやはり朝食時がいいだろう。起きたばかりの時は、水分が不足しているし、一日の活動の前だから、少々塩分をとっても尿や汗でじきに外に出される。昼食では、作る時間や手間をかけるのがもったいないという人がいるし、また、夕食の時はほかのおかずがたくさんあるために、みそ汁はとかく軽視されがちなのである。

みそ汁は「ダシ」がいる。恥ずかしながら18歳の時に友人に指摘されるまで、ダシを入れていなかった。具そのものから出る微量のダシで満足していたのである。だが、「昆布」「煮干し」「かつを節」「椎茸」のいずれか、またはすべてを入れて食べたほうがずっとうまい。濃厚なダシが入っていると、塩分が薄くても平気なのである。

私は、煮干しを粉末にしたものを入れたことがあった。宮城県気仙沼市の市場で売っているものだが、新鮮なので、少しも魚臭さがなく少量でも効果が大きい。また、一番一般的なのは鰹節だろう。もちろん機械で削った真空包装などは使わない。写真のように、削り器を使う。これは安くない。最低5千円ぐらいする。料理前の1分間、無心の境地でひたすら削る。茶道と同じく、心のゆとりを生む。忙しいサラリーマンには無縁の世界である。

化学調味料について

化学調味料は絶対入れないことにしている。その成分は天然のダシの材料にも入っているものだが、塩やビタミンCの場合と同じく、純粋なものはからだに悪い。しかもその原料は石油かもしれない(企業はそうでないといっているが、今まで信用できたためしがない・・・雪印事件を思い出せ)。ペットフードじゃあるまいし、人間様は純正自然食品を食べるべきだ。

食品のうまさの神髄は「不純物」にあるのだ。またその不純物同士の相互作用がまだ現在の栄養学では解き明かされていない栄養のもとを作るのだ。純粋の塩、砂糖、グルタミン酸ソーダ、イノシン酸はやめよ!手抜き料理の元祖、化学調味料製造会社は早く倒産せよ!

最近久々に「インスタント・ラーメン」とやらを買って食べてみた。どんな味だかすっかり忘れてしまうほどご無沙汰していたからである。その麺はいろいろあるにしても袋入りの「スープ」のまずいこと!鰹節に慣れた舌には、何かとげとげしい、ざらざらした味しか感じない。不純物の入っていない、化学物質だけの、つまり結晶の味がもろに出ているのだ。 これでは犬猫の餌以下である。

朝の忙しいときだ、大急ぎで適当に人数分の水をコンロにかけて、ダシをひと振り、それから火にかけて沸騰するまでおく。その間に、大根、蕪、庭に生えている雑草、何でも食べられそうな野菜をたくさん用意し、すぐに煮えるように小さく切っておく。

根菜類は早めに入れて長く煮るし、葉物は鍋に入れたらビタミンが壊れないように、すぐ火を切ってしまう。あとは余熱でしんなりするのを待つぐらいがいい。

ふきのとう庭に生えている雑草とは、菜の花のつぼみ、ふきのとう、水菜、などだ。普段からそのような草が豊富にあれば、外で買うより遙かに新鮮で、しかも無料である。人参のような香りの強い洋菜でない限り、何でも受け入れてくれるのがみそ汁の良さだから、できるだけ多くの「草」を実験してみるとよい。

朝起きて寝ぼけ眼で庭を一巡し、みそ汁用の野菜を適当に摘んで台所に戻ってくる頃には目が覚めている。なんて最高の贅沢だろう!

さて、あと豆腐だ、ワカメだ、油揚げだ、麩だ、と入れていたらみそ汁椀からあふれてしまうから、適当にして、火を止める。火を止めて、沸騰が静まったら、味噌を溶かす。

究極の健康味噌汁レシピ
必須材料は次の4つ。
  1. 一把(わ)の青菜;雪菜、ほうれん草、小松菜、など緑の濃いもの。野草、山菜も試す価値がある。とにかく”旬”であること。ただし、白菜やレタスのように色の薄いもの不可。もやしなど問題外
  2. きのこ;しいたけ、なめこ、まいたけ、エリンギ、えのき、奥山の名も知れぬきのこ類、なんでも可。アガリスクもおいしいかも。毒キノコだけはごめんこうむりたい。山梨県などでは秋になると道端でたくさん売りに出されている。きのこのよさは地中に含まれる不思議な微量成分を含んでいることなのだ。
  3. 海藻類;わかめ、ひじきを代表とするが、のりやめかぶなど、砂浜で拾えそうなものでも野趣があってよい。浅いところのもの、深いところにあるもの、それぞれ含まれている栄養素が異なる。
  4. 豆腐などの植物性たんぱく質;ナマの豆腐はもちろんのこと、凍り豆腐、湯葉の類も OK 。大豆のたんぱく質が青菜の物足りなさを救ってくれる。小麦を材料とはしているが、麩(ふ)も悪くない。

    一人前の手順はまず210cc の水に適量の鰹節、干ししいたけ、だし昆布を放り込み、弱い沸騰状態で3分煮出す。そのあと上澄みを取り、残りのカスは納豆に混ぜるか、愛猫にプレゼントする。上澄みを鍋に戻し、再び汁を沸騰させ、青菜以外を入れてふたをする。やわらかくなったら、大雑把に切った青菜を入れて再びふたをする。青菜がやわらかくなりかけたら、火を最低に弱めて、味噌を入れる。

    これが基本であるが、青菜は大量に取るとよい。体積を気にする必要はない。熱すれば縮んでしまう。青菜は茹でるのではなく、”蒸す”という気持ちで。栄養素はすべて味噌汁の中に溶け込み、無駄がない。このために入れ物は普通のけちな味噌汁碗ではなく、丼にすべきだ。これに加えるとうまいのは、細切れの豚肉(脂ぎっているとなお可)、牡蠣(加熱用で十分)、その他の貝類、など。これに麦ご飯と、何らかのたんぱく質(焼肉や焼き魚など)で3点セットにすれば、栄養的には完璧である。これにさらに副菜として果物とヨーグルトを加えれば言うことなし。

石狩鍋のような鍋物なら、冬のさなかグツグツとやるのだろうが、味噌汁を煮立てていけないのは料理の常識といわれている。実際煮立てると香りが飛び、具もクタクタになって、実にうまくない。「野菜の水煮」に味噌を少々加える、というのがうまいみそ汁のコツなのだ。

朝のみそ汁に、卵、豚肉、魚のようなタンパク質を入れるのは余り食欲をかき立てないようだ。これらのアミノ酸が、味噌のアミノ酸の邪魔をする。特に汁に溶けた卵は味噌の味を損ない、別の味を作ってしまうから、茹でるか焼くかして別に用意した方がいいようだ。

ただ、納豆は違う。納豆と味噌は同じ大豆が原料だから、実に良く合うのだ。納豆は糸が引くようによく練って、醤油を入れず、そのまま野菜汁の中にぶち込む。これも煮立てることはせず、いいあんばいに暖まったら、火を止めて味噌を溶かせばよい。納豆はみそ汁の中で実に目立たず、味噌豆と区別がつかないほどだ。

またシジミは最高のダシを生み出してくれるが、残念ながら、大量の野菜の具とは合わない。これだけはシジミだけにして、豚カツなんかの添え物としておいたほうが無難なようだ。

ゴハンとみそ汁、シンプル・ミールの代表格。作るのは楽で、材料は多様で、言うことなし。なお、毎日同じ味噌では飽きる。味噌もいろいろ変えてみるのもいいし、他の種類の汁を加えてみると変化が楽しめる。

たとえば、ショウガを加えて作ったフライドチキンのつけ汁の残り、冷やしうどんやそうめんのつけ汁、缶詰のサバのみそ煮の残り、これらはダシがたっぷり入っているだけでなく、余った汁を下水に捨てることなく、すべて我が家で回収できるために、環境汚染防止にも一役買っている。

2000年4月初稿・2004年6月・2008年11月追加

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

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