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甘酒をつくる

こうじ

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甘酒は懐かしい昔の味のように思われているがそうではない。味噌、醤油、額づけ、ヨーグルトなどと同じく、微生物の活躍によってできるすばらしい食品のうちの一つだ。甘酒は大きく二つに分けることができるが、酒粕を溶かして作るものと、麹(コウジ)を使って作るものとになるが、ここでは後者の作り方を取り上げたい。

なぜ甘酒は甘いのか?それはまだ砂糖が十分に手に入らなかった時代に、柿と同じくそれ自体が甘みを持っていたからにほかならない。別に砂糖を加えて作るわけではないのである。誰でも甘酒というと冬のさなかにコタツの中で熱々を飲むのが雰囲気にあっているとされるが、実は真夏の夏ばて防止にもうってつけである。麹菌がさまざまな栄養分を中に溶かし込んでくれているからだ。

材料はもち米(うるちよりも甘くなるという)と同じ重さの麹(乾燥したものが簡単に手に入る)を用意する。もち米を使っておかゆを作る。そしてその中に麹を細かく砕いて割りいれ、8時間の間発酵させるのである。一番の問題は温度管理である。60度よりも高くては麹菌は熱すぎて死んでしまうし、60度より低くては活動が鈍り出来上がった甘酒が少しも甘くない。

ヨーグルトの発酵時間は乳酸菌を含んでいるので、これよりはるかに低い温度だから、そのつもりでやると確実に失敗する。その点昔の人はタオルでくるんだり、炉辺のそばに置いたり、魔法瓶に入れておいて、温度が下がったら暖めなおしたり、試行錯誤を重ねながら相当苦労をしたものだろう。現在では保温温度の調節ができる電気釜がある。これでほぼ温度の問題は解決する。

さて麹菌は8時間が過ぎても温度が極端に低くならない限り、自分の発酵という仕事を継続する。彼らの最終目標は実は”酢”なのだ。つまりみごとにできあがってもそのままにしておくとどんどん酸っぱくなってしまう。すぐに全部飲み干してしまうなら問題ないが、そうもいかないときはいったん軽く沸騰させて麹菌を全滅させる必要があるのだ。これが市販品なら保存料を入れたりするのだろうが、自家製の場合はそんな必要はない。出来上がったら冷蔵庫に入れれば1週間は持つだろう(夏季はその限りではない)。

お米の味に甘みが加わった一種の”くどさ”を避けるために、昔の人はしょうがの絞り汁を加えることを考え付いた。わずかに塩を加えるのもよい。熱々もいいが、よく冷やして飲むのもまた格別。冬よりむしろ夏の汗をかく時期にはナントカ・スポーツ・ドリンクよりもいいかもしれない。ただ欠点はドロドロしていることだが・・・

2009年4月初稿

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

 
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