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われわれは雑食動物

ハマグリの網焼き

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牛や馬は草食動物、トラやライオンは肉食動物、と我々は習った。自然界では、全体がうまく機能するように、それぞれが専門化、特殊化を遂げ、コアラのように、ユーカリなどという、普通の生き物にとっては、まずくてかたくて、毒が入っているようなものを喜んで食べる連中もいる。

では、人間はどうか?人間は、豚やゴキブリと同じく、雑食動物である。おかげで世界中のあらゆるところに住み着き、環境に適応することができるようになった。しかし、言い換えれば、雑食している限りは健康を維持できるが、いったん何かの食物に偏ると、途端に健康が脅かされるという具合になる。

最近の食物と健康に関する書物では「…をぜひ食べなさい」か「…を決して食べないように」という風に、何か固い信念に基づく主張が貫かれている。これは、現代人の要求にあっているようだ。現代人とは、ニューヨークのマックで食べたハンバーグが、チリの寒村のマックや、コンゴ川のほとりのマックとまるで同じ味であることに喜びを見出す人々である。つまり、世界共通、言い換えれば、”画一性”を愛好する連中なのだ。

だが、そのような性向が、実は現代人の健康に悪影響を及ぼしている。量産化や、効率的な供給を目指すとなれば、勢い食物の品目は少ないほうがよい。現代人の偏食は、あるところでは本当に深刻に進んでおり、食生活は主として親から提供されるものをもとにし、食への関心が、ほかのことによって薄れるにつれ、ますます食べるものの種類は減ってきている。かつて日本の八百屋は、世界で最も種類が豊富であったが、今ではそれも怪しくなってきている。

現代の中学、高校生に、例えば、「アジ、サンマ、マグロ、サバ」という名前を挙げてもキョトンとするだけである。彼らにとっては食卓に上がる、食べやすい形になった「魚肉」についてしか知識も経験もないし、その親といえば、子供の健康についてまじめに考えたことのあるものはほとんど皆無といっていいザマだ。

しかし、今になってもう遅いということはない。雑食動物であることを再び自覚し、何でも食べる、ある種類の食べ物に偏らない、ある種類の食べ物を忌避しない、という態度を貫けば、適応力のある、粘り強い体を作ることができるのではないか?キーワードは”食物多様性”である。もちろんそれに適切な運動も必要ではあるが。

2012/11/14 初稿

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

 
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