Cooking!

推薦図書

  1. 美味しんぼ索引
  2. 食べ物さんありがとう
  3. ひと月9000円の快適食生活
  4. FOOD'S FOOD 食材図典
  5. 男子厨房学入門
  6. 子供の科学流ー手づくり食品
  7. 美味しんぼ塾
  8. 食品の裏側

マンガ・美味しんぼ

HOME >体験編 > 料理! > 推薦図書

  美味しんぼシリーズ・雁屋哲:花咲アキラ(小学館)索引(111巻まで) <タイトル写真>

いうまでもなく、人々の食物に対する関心をもっとも強く引いてくれるのがこのマンガだ。すでに70巻を越え、あいもかわらず現代的なテーマに意欲的に取り組んでいる。

ただ美味しいものを求めるのではなく、食事に対するある種の「哲学」がなければこれほどの長期にわたる連載は不可能だろう。良い食物を取ることは、すなわち良い「自然環境」を用意しなければならない。

そしてもう一つ感心したのは「複雑な味」への関心である。人間には巨大な大脳があり、訓練次第では、大変なスペシャリストになれる。何千種類物のにおいがかぎ分けられる香水の専門家がいい例だ。味覚についてもそれがいえる。単純な「科学的」調味料でなく、自然が提供する「不純物」の固まりを見分ける、いや味分けることの難しさについて、すっかり引きつけられた。

ここで取り上げられているような食物の「多様性」についての関心も非常に大切だ。どんな国でも、伝統食は地方に行けば、驚くほどのバラエティがある。これに対して、現代人の中には、「近頃は忙しくてハンバーガーばかり食っている」というような人種が増えているのだから。

いらいらしたり、キレたりするのもたいていは、人間らしい食事ではなく、ドッグフードのようなものばかり食べているからなのだ。それで平気だという人は、ここで読むのをやめてもらいたい。そのような人とは縁がない。

美味しいとは単なる小手先の味の良さではなく、そのバックグラウンドに、清涼な環境で育った作物や家畜が存在することを忘れてはならない。つまり食物=環境問題、と直結するのである。

目次へ

食べ物さんありがとう・川島四郎:サトウサンペイ(朝日文庫・全3冊)

食べ物さん、ありがとうサンペイとの対談による、川島先生の食べ物指南。漫画家のサンペイの、全く食べ物についての素人がすっかり先生の考え方に影響されていくさまがおもしろい。もちろん挿し絵もわかりやすくて楽しい。

先生の考えの特長は、カルシュームをしっかり補うこと、白ではなく濃い緑の野菜を食べること、ケモノ肉の脂を控えること、年齢に応じた食物構成の変化を実行することだ。

コンビニ、インスタント全盛の現代ニッポンでは、実行することのきわめて困難な考えではあるが。全3冊だが、まずは最初の一冊はどうしても読んでおくべきだろう。現代日本人の食生活がいかに貧しいか思い知らされる。

味覚を追うだけの食生活、薬に頼っているだけの健康法、このようなおかしな考えが広まっているために、食べ物を普通に食べて楽しく生きることがすっかり忘れられているのだ。

全3冊を読むと、すっかり川島先生のファンになってしまうだろう。残念ながら、先生は、アフリカで拾ったまらりあのために亡くなったが、91歳まで現役で活動していた。

目次へ

ひと月9000円の快適食生活・魚柄仁之助(飛鳥新社)1500円

ひと月9000円の快適食生活複雑で手の込んだ料理ではなく、シンプルな方法と、気の利いた材料を使って楽しい食生活を送るためのヒント集。

宇宙飛行士のようにチューブで食事を済ませたいひとやコンビニ弁当の愛用者には無縁の書。

独身生活をしていて、なるべく外食に頼らず自炊したいが、時間的にも経済的にも苦しい人にはぴったりだ。

食事は栄養を摂取するだけでなく、生活を楽しくするべきもの。この本のヒントを実行するのは、ちょうど日曜大工で家具ができあがってゆくようなもの。

気の利いた節約方法だけでない。何でも既製品に頼らないで、モヤシも、アジの酢じめも作ってしまおう!

目次へ

FOOD'S FOOD 食材図典(小学館)5800円

食材図典人名辞典のことを WHO'S WHO というが、これはそのもじり。非常に優れた、食品材料の図鑑。

いわゆる料理の図鑑ではない。観ているだけでも実に楽しいが、八百屋や果物屋にある材料を確かめてみるにはとても便利。

トマトの種類など、改めて食品に興味を起こさせる。食材の「多様性」の重要さを改めて考えさせられる。かなり高価な本だが、いったん買えば、百科事典と違って、古びることはない。むしろどんどん衰えてゆく日本農業の思い出に保存すべきものなのかもしれない。

日本国内でのその食材の多様性にも驚かされる。これほど豊富な材料の大部分を日本人は大昔から育ててきたのだ。最近の食料の単調化や輸入依存は人類の退歩に他ならない。

目次へ

男子厨房学入門 * 玉村豊男 * 文春文庫 03/06/02

男子厨房学入門映画「クレイマー・クレイマー」では、妻に去られた主人公のクレイマー氏が、最初はおぼつかない手つきで料理を作っていたが、悪戦苦闘するうち、次第にうまくなり、映画の終わりごろには慣れた手つきで料理を作るようになった。

料理ができることは、自立の第1歩である。女の自立が叫ばれて久しいが、現実は包丁を持ったことのない若い女の子が増えているのだ。爪を1センチも伸ばしてマニキュアをしたら、それで食べ物がつかめるはずもないが。

男たちの自立も遅い。なぜならコンビニやお総菜売場や、安易な食品が巷にあふれて、手間をかけるな、面倒なことをするなと日夜連呼しているからだ。にもかかわらず、食物の獲得と、自分の胃袋のあいだをつなぐ「過程」に無関心ではいられない諸兄も多いはずだ。

和食の概念についての説明がおもしろい。和食とは、リキッドAと、リキッドBによってできているのだという。リキッドAとは、鰹や昆布のダシの溶けた液体のこと。リキッドBとは、醤油とみりん(または酒と砂糖)の溶けた液体のこと。すべての和食は、この液体をさまざまな割合に混ぜ合わせて作ったものなのだと。

旅行ガイドで有名な著者が、本当に基礎から、それも包丁のにぎり方から教えてくれる。そして、男の書いたものに特有な「哲学」も含まれているのだ。和食、中華、西洋のそれぞれの料理の特長を生かした、「例題」付きである。

目次へ

子供の科学流ー手づくり食品 * 増尾清 * 誠文堂新光社

手づくり食品もう70年ぐらいも「子供の科学」という雑誌を出している会社がある。鉄道模型、自然観察、科学実験と、今のようにゲームをはじめとして何でも高度に進歩してしまう前のエキサイティングな世界を少年たちに紹介してくれた雑誌だった。

子供がどんな訓練を経て成長するのがいいかについて一定のスタンスを持っている会社だから、その出版物は大変に魅力があふれている。切り抜く直前のボール紙を本にして売っている紙飛行機入門などもある。

この手づくりと銘打った食物の作り方の本も、今の大量生産大量消費で、出来合いのものしか知らず、昔の人が知恵を絞って作り上げた発明の結晶だということも想像だにできない子供や大人だらけになってしまった日本社会には、ぜひ読んでもらいたいものだ。

豆腐、味噌、たくあん、梅干し、手打ちうどんといった伝統的な日本的食品から、ヨーグルト、トマトピューレ、マーマレード、ビスケット、ババロアという洋風なものに至るまで、全部で34品目の作り方が興味深く、だが子供でも楽しみながら作れるように易しく書いてある。

解説部分には、大量に生産していくために、保存料、着色料、その他さまざまな名称の改良材を食品にぶち込まなければならない現実を、事あるごとに説明している。手づくりの良さは、本当に必要な素材だけで作れることだ。

もっとも、今の子供たちがこの良心的な本を喜んで買い、作り始めるとは思っていない。ごく一部の子供たちは別として大多数は、コンビニでおにぎりを買い続けるだろうし、なんと言ってもその母親たちが食べ物に手をかけることをとっくの昔に放棄しているからだ。

目次へ

美味しんぼ塾 * 雁屋哲 * 小学館

美味しんぼ塾「美味しんぼ」の原作担当者が、自らのプライベートな話を通じて食についての講義を載せている。漫画のストーリーとはなれて取材や制作のときの苦労話、自分の家族のこともいれて楽しく食べ物談義を行っている。

そのほとんどは自分が毎日食べる日本食についてである。たとえ最初は外国から取り入れられたとしても日本人が見事に日本料理にしてしまったトンカツやラーメンについても漫画に出てきた挿絵を使いながら説明してくれる。また漫画のバックナンバーの中でそれぞれのテーマを扱ったところも集めてあるので、再び漫画を読み直すのにも便利だ。

ストーリー中心の漫画とはまったく違ったアプローチで食の話に耳を傾けるのもまた面白い。一方で漫画の登場人物はみなこの著者の分身なのだ。なおこの本は漫画の第81巻が刊行された時点で出された。

目次へ

食品の裏側ーみんな大好きな食品添加物 * 安部 司 * 東洋経済新報社

食品の裏側この本の著者は以前、ベテランの食品添加物のセールスマン、そしてコンサルタントだった。ある日我が家の食卓に、自分の工夫で作った肉団子を娘が食べるのを見て、作る人間も同じく消費者だということに気づき、会社を辞めて食品添加物についての「情報公開」を追求するようになったのだという。

世の中に、添加物の毒性について書かれた本はたくさんあるけれども、まずなんと言っても消費者に、その実態がきちんと知らされていない。食品業界は、安売り競争に勝ち抜くために、ありとあらゆる薬品を食べ物に入れて売れる商品を作り上げようとする。しかしそのことを消費者は知らないだけでなく、安ければよい、見栄えが良いという程度の判断力で買い物をしている。

毎日をコンビニ弁当だけで過ごすか、無添加無農薬だけで食事をするかは、それぞれのライフスタイルが決めることだ。大部分の人々はその中間に位置し、ある時は自分で作ったり、ある時は総菜を買ってきたりするわけだが、その判断のための正しい表示がなされていなければいけないのだ。

添加物の中には、毒性がまだはっきりわかっていない者もおおく、動物実験だけでは人間にどういう影響があるかはわからない。だがそれ以外にも、添加物は「モラル・ハザード」を引き起こす。つまり作るのが面倒、忙しくて手間を掛けたくない、という気持ちに迎合した「便利な」食品が次々と出てきて、消費者はそれが正しい方向だと勝手に思いこんでいることだ。

さらに小さな子供は「アミノ酸等」「たんぱく加水分解物」などの強力なうまみにすっかり鳴らされて、本来のもっと弱い味を物足りなく感じるようになる。まさにこれは「洗脳」ならぬ「洗舌」であろう。手作りより加工食品を愛する人間ができあがる。

そして「モラル・ハザード」の極めつけは、食品添加物入りの食品を造っている工場の人自身の「俺は食べないよ」という言葉だろう。人々の食生活は本当にひどいところまで来ている。だがそれを止めるものは何もない。少数の気付いた人だけが本来の食事を取り戻すだろうが、大部分の人々はこれからも朝から30から40種類以上の添加物を胃袋に流し込むのである。

目次へ

HOME >体験編 > 料理! > 推薦図書

© 西田茂博 NISHIDA shigehiro
 
inserted by FC2 system