速読をマスターする

英語構文=文章の効率的な区切り方

モントレマリーナ・藤井正

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ATTENTION!まず読んでください!

必ず(1)から順を追って勉強してください。速読のコツはまず、(1)と(2)の基本構造の理解がなければ、生きてきません。そのあと、英語のブロックそれぞれの持つ意味が分かって、初めて、文を読み解くことができるようになります。そして最終の(5)に達したとき、「英語の全体像」が見えて来て、英語を本当に自分の道具とすることができるようになります。


目次

第1章 文を区切る時の注意点

第2章 副詞節・副詞句を主節から区切る

第3章 名詞句、名詞節を動詞から区切る

第4章 形容詞句、形容詞節の扱い

第5章 その他の注意すべき区切り方

第6章 区切ったあとでの日本語訳の試み

第7章 速読をめざして


はじめに


このページでは英語学習の流れの中で、最初の段階における、文章のいくつかの要素について学んだシリーズ、「ホントに使える英語(1)(2)」に引き続き、その区分け方をもとに、速読への早道となる、「文章の効率的な区切り方」を考えてみます。またできるだけ多くの文例を出してありますから、無意識にできるようになるまで、十分に練習を積んでもらいたいと思います。

第1章 文を区切る時の注意点


これから文章を区切って読む練習をするのは、複雑な文をよりわかりやすい、簡単な文に分割するためです。英語に使われる構文を完全に知りつくし、どの部分を指摘されても的確にその性質を見分けることができるなら、その読みとりスピードが上がるにつれて、英文を読むことがますます楽になってゆくのです。

ただし、むやみやたらに切ってしまうのであっては意味がありません。大切なことは、「意味を持ったかたまり sense group 」に分割できるかということです。その点ではまず、and, or, but, for, so という等位接続詞でつながった「大きな」かたまりは当然、区切りの対象になるわけです。特にこれらにコンマが伴うときは言うまでもありません。

すでに述べたように、動詞中心の文型、形容詞(句・節)、副詞(句・節)というおおざっぱな区分が存在し、それらを基本にして分割方法を決定します。さらに普段は切らないかたまりであっても、内容が多いために、やむを得ず切り離す場合があります。またコンマがつくことによって、そこではっきりと分ける必要も出てきます。このように様々な状況が存在するので、それぞれに応えた、基本的なルールを作っておく必要があります。

また、分割に際して忘れてはならないことはそれぞれに分けたグループのうち「先頭」がそのグループの性質を決定するということです。また、英語という言語は語順がしっかりと固定されるという特徴を持っていますから、そのグループがどのグループの前やうしろに位置するかも、その性質を決定するということも忘れてはなりません。

最後に日本語を使う人にとって、その英文が日本語に転換しやすくなるかということも考慮しておかなければなりません。本当は日本語に限らず、世界のどんな言語に転換するにしても共通の性質を決定できれば、それに越したことはないのですが、残念ながら、当面は日本語に英語の自然な流れを移し替えたときに、あまり不自然ではない、一応通じる文脈を再現できることを目指すことにします。

第2章 副詞節・副詞句を主節から区切る  


最も基本的で、初心者にも受け入れやすいのは、中心となる文(特に主動詞)と、それを修飾する部分とを区分けすることです。なお、副詞の単語1、2個だけなら区切る必要はないでしょう。わざわざそんなことをすると煩雑になります。小さくとも区切るだけの価値があるかはその場の判断によります。そのような「勘」は場数を踏むと自然に身につくものです。

多くの場合、副詞句・副詞節はコンマで切れています。そうでなくとも、すでに副詞節や副詞句の性質を知り尽くしている人であれば、楽に分けることができます。問題なのは、その位置です。次の3種類に分けられることを認識しておかなければなりません。

それは<1>主節の前<2>主節のあと<3>挿入、であり、特に<3>ではさまざまな場所に入っており、注意を要します。では実例を見てみましょう。(区切りの印は今後*とします。)

<1>主節の前

(1)Thanks to her help,* we were able to finish the job.
(2)To learn English,* it is better to read the book aloud every day.
(3)Listening to the radio,* I fell asleep.
(4)Severely hit,* he lost consciousness.
(5)Because I am short, * I cannot reach to that shelf.

<2>主節のあと

(6)She got up * with tears in her eyes.
(7)He hurried home * to take back what he had left.
(8)He tried to spend a lot of money on expensive books, * forgetting he had only \1.000 on him.
(9)They woke up, * bitten by swarms of mosquitos.
(10)I was about to stand up * when she pushed me down.

<3>挿入

(11)She knew that * if he was late, * she would not be able to catch the train.

以上のようにやってみます。例文は単純に作ってあるので、非常に易しく感じると思います。(1)から(5),(6)から(10),はそれぞれ、構文の機能のところでやった、前置詞、不定詞、現在分詞、過去分詞、接続詞による副詞句や副詞節を扱ったものです。コンマの有無に関わらず、ある一定の大きさになっていれば、このように区切ってみてください。また、<3>における例は、if 節は単に主節の前にあるだけですが、本来、knew that she...とつながっているべきものなので、その間に「挿入」されたと見なします。挿入の実例は実にいろいろなパターンがあるので、あとで練習問題の時に経験すればよいでしょう。

第3章 名詞句、名詞節を動詞から区切る  


名詞句、名詞節は主語、目的語として,動詞の前、または動詞のあと、be動詞のあとにつくことになっていますね。単語が1つか2つで構成されている主語、目的語と違い、これらの句、節はかなりの分量がある場合が多く、少なくとも5,6単語を超えるようであれば、動詞から切り離した方が賢明です。この場合の境目にはコンマがついていることはまずありません。従って一つのまとまった文の終着点が区切りとなりますので、文の流れを注意してみておかなければなりません。ポイントは動詞を確定し、その前後に何があるかを見る、また動詞が目的語を伴う「他動詞」か、目的語を直接伴わない「自動詞」かどうかを確認することです。

機能語の話ですでに述べたように、不定詞や ing 形には何種類もの機能が「兼用」されているので、「動詞」との関連からその働きを見抜くことが大切です。特に、文頭にある場合はうしろにある動詞にたどり着くまでその機能の見分けがつかないのが普通です。それでは3つの実例に分けてみてみましょう。

<1>主語

(12)To do your best in everything * is required now.
(13)Traveling around the world * was her cherished dream since her childhood.
(14)What she saw in the park * was a lot of people sleeping in the tents.

<2>目的語

(15)I would like * to have this CD player repaired.
(16)Tomorrow you should avoid * going out in the cold wind.
(17)They will never realize * that the plan costs a lot of money.

<3>be動詞のあと

(18)The most serious question is * whether the construction will be completed in three years.

この実例はいずれも、それぞれの部分が短いものばかりですので、少しでも慣れた人ならば、わざわざ区切る必要のないものですが、動詞の前後両方にこのような名詞句、名詞節がある場合には、少なくとも、「どちらか長い方」に区切りを入れた方が無難です。これはあとで述べる日本語に直訳する場合に大いに役立ちます。

第4章 形容詞句、形容詞節の扱い  


さて、名詞をうしろから修飾する、to 不定詞や ing 形などを使った形容詞句、そして関係詞を使った形容詞節ではどのように区切ったらよいのでしょうか?意外なことに区切りは「必要ない」のです!副詞や名詞の働きをするかたまりと違い、形容詞句、形容詞節は修飾する名詞に対して常に「後置」すると決まっており、しかも、その間に別の要素が挿入される場合が少なく、ほとんどの場合、「直結」しているからです。

もう一つの理由は日本語でそれを区切って表現するとき、「公園で遊んでいる女の子」を、「女の子、公園で遊んでいる」とすると、修飾関係がきわめて理解しにくい文になってしまうからなのです。へたをすると「女の子」が主語で、「遊んでいる」は述語だと取られかねません。副詞句、副詞節ですと、不自然ながら、さほど支障をきたしません。たとえば、「数日間にわたって重労働をする」と「重労働をする、数日間にわたって」のように。

そういう場合、むしろ区切りが必要なのは、修飾されている「名詞の前」、または、形容詞句、形容詞節の「終わったあと」なのです。そのわけは、名詞は必ず、主語、目的語などの役割を果たしているからです。それでは実例を見てください。

(19)People in the village * is fearful of the invisible monster.
(20)I want * a knife to cut the paper with.
(21)In the evening, she used to watch * people passing by.
(22)The milk bottle put out in the sun for hours * should be thrown away.

例文(19、22)では、それぞれ前置詞と名詞、過去分詞によって修飾された主語をひとかたまりにして、あとにくる動詞から区切りをつけています。例文(20、21)では、それぞれ to 不定詞と ing 形が前にある目的語とひとかたまりになって、前にある動詞と区切りをつけています。

(23)I saw * the cattle which were grazing in the field.
(24)The building she went into * was at the corner of that street.

例文(23)では普通なら区切る必要もない、saw と the cattle の間に、*を入れたのは、うしろにある関係代名詞の文によって修飾された大きなかたまり、つまり目的「部」になっているからです。また例文(24)では、 The building was...と一続きになっている間に、形容詞節がはさまったために、それら全部を大きな主「部」と見なして、動詞 was の手前で*を入れたわけです。

このように名詞を中心としたかたまりとして取り上げることは、第3章で述べた、名詞句、名詞節をかたまりにしてとらえたことに通じるところがあります。これら全部を「名詞のかたまり」としてとらえることにより、区切りのルールをより単純化することができるのです。
なお、注意すべき点として、次の例を見てください。

(25)They arrived at Narita airport, * where their boss was to meet them.
(26)The time will come * when your children will no longer depend on you.
(27)He took a knife * with which he tried to cut the wood.

関係詞の前に「コンマ」がついている場合があります。このコンマは接続詞でいえば、and, but の働きをしますので、前の名詞を修飾はせず、文は前へ進んでゆくので、例文(25)のようにそこではっきり切るべきです。また、例文(26)のように、途中に動詞がはさまって、修飾される名詞と関係詞が離れている場合は、関係詞の直前で区切るほかには方法はないようです(または区切らない!)。また例文(27)では、前置詞+関係代名詞になっていますが、これは元々前置詞+名詞の副詞句であり( with the knife )すでに副詞句のところで説明したように、このような場合は思い切って区切ってしまったほうがよいでしょう。

但し、関係代名詞のあとに長い文が続き、それを日本語に翻訳するとき、先行詞が出てくるまでに、きわめて「長い」文章を聞かされることがあります。これは聞き手の記憶容量のことを考えれば決して好ましいことではありません。「赤い花」を「花、赤い」では極端で不自然ではあるにしても、例文(25)での where 以下が長いかそうでないかは、人によって違うかもしれません。そこはコンマの有無に関係なく、各自でケースバイケースで判断してもらいたいと思います。

第5章 その他の注意すべき区切り方  


このほかに、長い文のために区切る必要性のあるものをあげてみましょう。そのためには4章以前に述べた区切りを無視する必要が出てくる場合があります。たとえば、他動詞の文型は、目的語がただ一つだとは限りません。次の例文を見てください。

(28)She gave me * this beautiful clay pot of her own making.
例文(28)では、他動詞のあとに目的語が2個ありますが、前にある相手を表す名詞(間接目的語)より、あとの物をあらわす名詞(直接目的語)の内容のほうが長いので、区切りを入れたわけです。一般にふたつの目的語は境界線を見定めにくいことが多いのでなおさらです。 このとき gave と me の間の区切りは無視されても差し支えないでしょう。

(29)They deprived him * of the long cherished hope.
例文(29)では、目的語のあとに、前置詞と目的語の組み合わせがあります。この場合の of は動詞 deprive とセットになって、ひとつのまとまった意味を持っていますので(動詞句のパターン)、普通の副詞句と違うわけですが、一つの独立した意味のかたまりと見て、長い場合には区切りをつけると便利です。

(30)Did you ask * them not to smoke in the waiting room?
最後に例文(30)では、目的語 them とそのあとの to 不定詞との間には、主語と述語の関係が成立しています。従って、you と ask との間の主語と述語の関係と区別するためにも、ここで区切るのがよいのです。

さて、もう一つの注意すべき点は、比較文における区切りです。比較級のあとに出てくる、than や、as のあとは普通の副詞句・副詞節、形容詞句・形容詞節の区分けが難しい語ですのでその実例を見てください。

(31)The sound of the explosion was far greater * than I thought it would be.
例文(31)にあるように、than は比較対象を示すための境界線(接続詞)です。その中が複雑な構造であればあるほど、than を先頭としたかたまりに区切る必要があります。

(32)The weight of that machine is twenty times as much * as that of the ship on which it is transported.
また、例文(32)では than の代わりに、as が用いられていますが、境界線である点では同じです。

(33)They have different ways of cooking rice * from the way we do.
また、比較ではなくても、例文(33)にあるように、from が境界線の役割を果たしているときも同様です。

それでは複合体、たとえば副詞句の中に形容詞節が含まれるような場合はどうでしょうか?区切りの作業になれない人には頭を悩ます問題かもしれません。次の例を見てください。

(34)Social order is not maintained * only by an organization that prevents the breakout of crimes.

この例文(34)では、関係代名詞 that 以下の形容詞節は、by による副詞句に含まれます。また、only は by を修飾しています。この*の位置でわかることは、あるかたまりがより小さなかたまりを含むときは、「大きい方」のかたまりを優先して区切りをつけるということです。また、句や節の先頭となるものにさらに副詞などが修飾しているときは(ここでは only )、それも含み入れるということになります。 この辺もいろいろなパターンが多く、練習問題で経験を積んでください。

また、すでに「英語力はこれでのびる(2)」で紹介した文ですが、*** We are free to buy any commodity if we can pay the price asked, * and we decide the amount we think we can afford.のような文の場合、 and が if 節とdecide の文とを結んでいるのではなく、are の文と decide の文を結んでいることに注目するために、あえて and の前に切れ目を入れておいた方がいいでしょう。

第6章 区切ったあとでの日本語訳の試み 


さて、理論ばかり述べても実際に役立たなければ何もなりません。そのためには実際の練習が必要ですが、母国語がじゃまをして、どうしても日本語の語順になおしてから、文を理解しようという傾向が初心者には数多く見られるのです。これを防止するためには、英語の語順に沿った流れに日本語を変化させてしまうことです。それほど違和感を感じない程度に。

その一つの手法は短い文に分けてしまうことです。その短い文を作り上げるのに、今まで述べてきた区切りのルールが威力を発するのです。しかし、ただ区切るだけでは幼稚園児の作文になってしまいますから、なるべく全体の流れを切断せずに、修飾関係を損なわずに、表現してゆく必要があります。同時通訳の人が実行しているのがまさにそれです。彼らは耳から入ってくる英文を、反射的に日本語で表現できる程度の適当な長さの単位に切り、日本語に切り替えができた時点で、どんどん口から外に流していきます。頭の回転もさることながら、ある程度、伝統的な日本語の流れを無視しなければやれない作業なのです。では例文を見ながら「伝統的訳」と「流れ訳」との違いを考えてください。

まず、誰でもが日本語に訳して気がついていることですが、副詞句、副詞節が文頭にあるときは日本語と全く同じ語順ですので苦労はありません。

(2)To learn English,* it is better to read the book aloud every day. 「英語を学ぶためには*毎日その本を声を出し読むのがよい」

ところが副詞句、副詞節がうしろにあるときは無理にそれらをあとで訳す必要が出てきます。いわゆる「訳し上げ」です。これをできるだけ避けるようにします。少々不自然な感じは我慢することです。

(6)She got up * with tears in her eyes. (流れ訳)「彼女は起きあがった、*目に涙をためて」 (伝統的訳)「彼女は目に涙をためて起きあがった」

さらに挿入されている場合は、主節とのかねあいがあり、一層工夫がいります。

(11)She knew that * if he was late, * she would not be able to catch the train. (流れ訳)「彼女が知っていたのは、*もし彼が遅れたりすれば、*自分が列車に間に合わないだろう(ということだった)」 (伝統的訳)「もし彼が遅れたりすれば、自分が列車に間に合わないだろうということを彼女は知っていた」

伝統的訳と比較してわかるように、「・・・のは」という形で主節を表現するとそのまま続けやすいのです。また、「ということだった」という補助的表現をつけてもわかりやすくなります。 次に、主語と動詞を区切った場合ですが、これも日本語とほとんど同じ語順なので問題はありません。ところが、動詞と目的語を区切った場合の日本語表現を見てみますと困ったことに、日本語では最後に動詞が来て文を閉じます。そのところが英語と全く違うために困難が生じるのです。

(16)Tomorrow you should avoid * going out in the cold wind. (流れ訳)「明日避けておくべきなのは、*冷たい風の中を出て行くことだ」 (伝統的訳)明日は冷たい風のの中を出て行くのは避けるべきだ」 ご覧の通り、例文(16)では、伝統的な訳に比較して(11)と同じく「・・・のは」を使ったために不自然な感じは防ぎようがありませんが、意味が不明になることはないようです。 さらに今度は形容詞句や形容詞節によって修飾された名詞について考察してみます。

(21)In the evening, she used to watch * people passing by. (流れ訳)「夕方彼女がいつも眺めていたのは*通り過ぎる人々であった」 (伝統的訳)「夕方彼女は通り過ぎる人々をいつも眺めていた」

(23)I saw * the cattle which were grazing in the field. (流れ訳)「私が見たのは*野で草をはむ牛たちであった」 (伝統的訳)「私は野で草をはむ牛たちを見た」

例文(21、23)の場合はともに、伝統的訳よりむしろ自然に感じられるくらいです。名詞をそれに修飾する部分と一緒にまとめる手法は、実に理にかなっています。 最後に2組の主語述語の連続と、比較文、副詞句と形容詞節の複合体の表現を試みます。

(30)Did you ask * them not to smoke in the waiting room? (流れ訳)「あなたは頼みましたか、*彼らが待合室で煙草を吸わないようにと」 (伝統的訳)「あなたは彼らに待合室で煙草を吸わないようにと頼みましたか」

この訳し方は、すでに述べた、know that...のやり方と同じで、それぞれの主語述語のグループをまとめて訳せばよろしい。伝統的訳では、主動詞を最後に持ってくるという約束に縛られているために、them 以下が長いときは、大変難儀します。

(33)They have different ways of cooking rice * from the way that we do. (流れ訳)「彼らは米の料理法が違っている*私たちのやり方と比べて」 (伝統的訳)彼らの米の料理法は私たちのやり方とは違っている」

ここでは from より前を思い切って訳してしまい、そのあと、from を「・・・と比べて」とまとめる方法です。これは ( different ) from だけでなく、(原級)as, や(比較級)than にも通用します。

(34)Social order is not maintained * only by an organization that prevents the breakout of crimes. (流れ訳)「社会秩序が保たれているのは*犯罪の発生を防止する組織だけによるのではない」 (伝統的訳)「社会秩序は犯罪の発生を防止する組織だけによって保たれているのではない」

(35)From the fact * that the people buried their dead with food and useful objects, * we assume that they believed in a life after death. (流れ訳) 「得られる事実は*その民族が自分たちの死者を食物や道具を供えて埋葬していたことだが、*(それによると、)彼らは死後の命を信じていたと仮定してよい」 (伝統的訳)「その民族が自分たちの死者を食物や道具を供えて埋葬したという事実からすると、*彼らは死後の命を信じていたと仮定してよい」

例文(34)では、すでに述べた、副詞句の訳し方(例文の(6))で続けてゆけばよい。問題は、例文(35)のように、that 以下が長い場合です。「得られる」とは from から引き出した表現です。(速読や同時通訳をしているときにうまく出てくるかどうか??)しかしあとで「それによると」という補助的表現をつければ何とかなります。

(36)Scarcity springs from * the fact that the material resources of the world are limeted. (流れ訳)「欠乏というものをさかのぼってゆくと*世界の物的資源は限られているということになる。」 (伝統的訳)「欠乏というものは世界の物的資源は限られているという事実から生じている」

もう一つの例では、spring from 「・・・から生じる」を「さかのぼって・・・に」と逆さまに訳すことにより、先に訳すことができました。このように、反対語の利用、否定から肯定へ、肯定から否定へと工夫すれば、英語の流れを乱さずに済むことが多いのです。

第7章 速読をめざして  


区切り方をマスターした人は、ここで勇気を得て、英語の長文の海へ乗り出すことができます。まだ語彙や文法の面で不安があっても、機能語の働きはすでに頭に入っているわけですから、それぞれのセンスグループの大まかな意味をとることは容易になっているはずです。早速、実際の英文に挑戦して一層スピードを付けた読み方に移ってゆくようにすべきです。

数多くの文を読めば読むほど、機能語の働きをつかむことが容易になり、容易になることが、区切りをつける作業をスムースにするという相乗効果を生んでいきます。この技術を中学生や高校生の諸君が身につけてしまったら、予備校の英語教師は失業するかもしれません(一番困るのは実は私ですが)。また、TOEICに備えて勉強している人は、筆記問題の得点を一気に増やすことができる可能性が開けてきます。今までいちいち文を一つ一つ日本語と照らし合わせながら意味をとっていたのが、これからは英語の流れに逆らわずに、まるで川下りをするように先へ進むことができるのですから。

しかしなんといっても上手な区切り方の最大の利点は、抵抗なく長文に取り組むことができ、英字新聞や、原書のペーパーバックが身近なものに感じられるということでしょう。これら英語の長文から、人々を遠ざけていたのは、一つは語彙力、そしてもう一つは解釈に時間がかかるために、思うように読書の時間を割り当てられないということです。 毎日英文の読解に、受験生でもないのに2時間も3時間もあてなければならないのでは生活に支障をきたします。

毎日楽しく続けられるのは30分、多くても1時間です。この程度の時間であれば、さほど苦痛を感じずに英文に次第になじんでゆくことができ、またなんといっても語学の勉強の最大の敵は「とぎれること」ですから、これを未然に防止することができるのです。

このようにして、長文に抵抗感を覚えなくなったとき、英文に対する「勘」みたいなものがあなたの中に自然に形成され、文を読む量が増すと共に、語彙も次第に増えてきて、TOEICに出てくるような読解問題も内容をつかむことが次第にできるようになってきます。

このシリーズによる、今までの勉強の過程は、まず全体を見回して、その「大まかな構造」をとらえようとしました。次に全体がわかったところで、「細部にわたる理解」を深めようとしました。そして細部の個々にわたる性質が把握できたところで、文に実際にあたって、それを細部の法則にかなった「区分法」を学んできたわけです。ここに読解法の基礎を完結します。 あとは実質的な練習でどんどん読解力を鍛えてください。

おわり

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