HIGGINS LANGUAGE INSTITUTE

HIGGINS言語研究所開設の辞

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世界の言語は無数にあるが、自分の住む国の周辺諸国とは特に交渉が多いのであるから、それらの国で使用される言語に親しんでおかなければならない。ヨーロッパ諸国では、国土が狭いため、また陸続きであるため、隣国で使用されている言語に特に関心が深かった。たとえば、ドイツでは、オランダ語、デンマーク語、フランス語、ポーランド語など、大変な数の言語に取り巻かれている。この地域においては3つや4つの言語をあやつるのは当たり前のことであり、それなしには円滑な隣国関係を取り結ぶことができない。

振り返って日本の場合は四方を海に取り巻かれ、中世には鎖国という愚かな制度を採用し、近代の歴史において、隣国と戦争、略奪、植民地化を繰り返し、正常な友好関係を結ぶことがまれだった。そのため、言語学習は特別な利害関係を持つ者を除いてはきわめて関心が薄かった。貿易立国であり、資源のない日本がこれから立ち行くため、隣国との密接な経済、文化、政治など、あらゆる面においての関係を保たなければならない今、今までの言語学習に対する軽視の態度を反省し、新たに、新境地を開拓するため、当研究室を開設するものである。

東には太平洋が控え、その先は遙かな国々が待ち受けているが、西には日本海(東海)があたかも湖のごとく存在し、その対岸には我々が古来、文化を吸収した国々が存在する。そのため、距離的な関係から、まず第一に、中国語、朝鮮語、ロシア語が我々の言語教育体制を整える上で重要な言語と判断した。この3つの言語によって、中華人民共和国、南北朝鮮、ロシア、台湾をカバーすることができるのだ。また国連使用語や、広域に通用する語としての点から、英語だけでなくフランス語スペイン語アラビア語エジプト・アラビア語、トルコ語、ヒンディー語、スワヒリ語も順次追加することとした。

当研究所では英語のほかにこの8つの言語を中心に新たな言語比較、言語理論、教育法を開発するものとする。これらの研究の日本国内での立ち後れは、たとえば英語などと比べると目を覆うばかりで、21世紀の日本が隣国との良好な関係を維持するという点で、我々は重大な責任を感じるものである。

名称の由来;最初の6年間の名称は「環日本海言語研究室」であったが、取り扱う言語の範囲が日本から見て地球の裏側まで達したために、ふさわしくなくなった。そのため2005年11月を期して改名することになった。バーナード・ショーの「ピグマリオン」または往年の名画「マイ・フェア・レディー」をご覧になった方はご存じであろう。言語の専門家ヒギンズ教授である。彼の女性オンチはさておいて、音声学をはじめとする造詣は実に深く、少なくとも発音訓練では見事な成果を上げるのである。

言語研究の新しい視点;たいていの人は一つの外国語をマスターするだけで、とてつもなく苦労の多い作業と思ってしまう。また、言語の研究者は、自分の選んだ特定の(たいていは)一つの言語を深く狭く研究する。だが、このような姿勢では、広い視野にたって研究を進めることが困難である。

ヒギンズでは、あえて数多く(10ヶ国語以上)を研究対象に選び、その選択も広域に用いられていること以外に言語体系や文法構造がなるべく異なるものを選んで、専門性の狭い領域に固まることなく言語への考察を行っている。このような研究方法をとっている人はあまり例がないだろう。

しかもできるだけ海外に出かける機会を持ち、広い見聞の機会を基にした文化的考察も欠かさないように心がけている。旅行の方法も今後は、「フランス語圏」「スペイン語圏」などというように同じ言語を話しながら地球上に散らばっている地域を渡り歩きながら、それらの共通性や相違性に着目したい。

従来の研究論文や成果に頼ることなく、このような新しい視点のもとに言語研究を進めることによって、従来の研究では得られなかった新しい成果の生まれ出ることを期待するものである。

1999年5月26日開室・2005年11月改名・2009年4月最新改訂

HIGGINS言語研究所所長 西田 茂博 Shigehiro Nishida

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

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