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第12章 接続のことば:その2

  1. 「ハ」の研究
  2. 格助詞の研究(10個)
  3. 副助詞の研究(6個)
  4. 接続助詞の研究(10個)
  5. 「ノ」の研究

日本語における助詞の働きはもはや言語を成立するには欠かすことのできないものになってしまいました。これらは詳しく研究しておく必要があります。

「ハ」の研究

「ハ」は助詞の一種ですが、日本語の最大特徴の一つ、<主題>を取り上げるという大変重要な役割を果たしています。主題とはこれから始まる文の話題の提示です。読んだり聞いたりする側にとっては大変ありがたい。そのあとには聞き手の求めている”新情報”が与えられるというわけです。

主題が主語と重複していれば大して問題はないが、そうでないときはいわゆる西欧語文法からみた主語にあたるのはどれかをきちんと確認し、さらに「・・・ハ」で書かれている主題が文中においてどんな位置を占めるのか・・・目的語なのか、副詞的なものなのか、それとも状況をあいまいに述べたものなのか・・・をはっきりさせなければなりません。

例文1;黒木さんはサラリーマンです。Mr.Kuroki is a salaried man. 比較せよ;黒木さんがサラリーマンです。

例文2;日本人はご飯を食べます。Japanese eat rice. 比較せよ;日本人がご飯を食べます。

例1,2におけるこのふたつの「ハ」は「黒木さんに関して言えば・・・ Speaking of Mr.Kuroki.... 」「日本人に関しては As for Japanese.... 」のように、これから始まる<主題>を提示しています。だとすれば一番目の文章は Speaking of Mr.Kuroki, he is a salaried man. と書きそうなものですが、そんな言い方はくどいし、主題がたまたま<主語>と一致していることから英語ではそのまま主語として文章を始めることになります。

一方、「黒木さんガ・・・」「日本人ガ・・・ 」で始めると、まるで「誰がサラリーマンですか」や「誰がご飯を食べますか」の”返答”になっているかのようです。こちらは純然たる主語を表すだけで、主題を扱っていません。

例文3;ビールは飲みますが、ウィスキーは飲みません。I drink beer, but I don't drink whisky. 比較せよ;ビールを飲みますが、ウィスキーを飲みません。

例3の場合の「ハ」は上と同じように<主題>だともいえますが、”対照”的な二つの文を自然につないでいます。そのために英語では but, while, though などがつくのです。どちらも「ビールを・・・」「ウィスキーを・・・」にすることはできますが、他動詞「飲む」の目的語であっても主題になっていないので、話題の展開がむずかしいのです。

例文4;新聞は読みません I don't read newspapers 比較せよ;新聞を読みません。.

例4の場合にはなにか前半にあったはずの文章が欠けているようにきこえます。「ハ」があるために前に例3のような対照的な文、たとえば「テレビは見ますが・・・」とか「雑誌は読みますが・・・」があるのではないかと想像できそうです。「新聞を・・・」も可能だが、これだとほかの情報源に思いを馳せることはありません。

ところで drink beer, drink whisky, read newspapers など、いずれも英語でも日本語でも<目的語>を伴った形として使われています。従って主題の「ハ」は、<主語>も<目的語>も兼用できることがわかります。目的語の場合でも、この「ハ」をつけることによって常に文頭に引き出されています。

<わかりますか?>

次の課題文に<主題のハ>をつけて4通り作ってみてください。それぞれどのような意味を含むと考えられますか?

課題文;昼休みに卓球をします。We (will) play ping-pong at noon recess.

できあがった文

(1)昼休みは卓球をします。(2)卓球は昼休みにします。(3)昼休みに卓球はします(4)するのは昼休みの卓球です。

考察

(1)「昼休みは何をするのか?」の答えとなります。昼休みにするであろう「いくつかのスポーツ」のうちから選んでいます。

(2)「卓球はいつするのか?」の答えとなります。「早朝、始業前、放課後」など、時間帯をあらわす選択肢の中から選んでいます。

(3)「昼休みに卓球はするのかしないのか?」の答えとなります。「肯定・否定」から選んでいます。

(4)「するのは何か?」の答えとなります。「時間帯+スポーツ名」のいくつかの組み合わせから選んでいます。

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格助詞の研究(10個)

日本語の格助詞(後置詞)は英語の前置詞以上に、文全体の構造をとらえる上で重要な要素です。明確な文を作るためには、副助詞などと違って必須の部分です。「ガ格」とか、「カラ格」のようによんでいます。

ガ ヲ ノ ニ デ ヘ カラ マデ マデニ ヨリ

英語では<前置詞+名詞>が副詞句か形容詞句にしか用いられないのに対し、日本語では主語、目的語、主題などさらに多くの機能をカバーしています。おかげで日本語の語順はかなり自由になりました。いや、自由になりすぎたかもしれません。ここで取り上げたのは上記の10個です。「ハ」は特別なので別に述べました。

一方、英語ではそれぞれの格を示す印がないために、主語と目的語の動詞に対する位置だけはきちんと守らなければなりません。英語の初心者が悩むものの一つにどれが主語で目的語だかわからないというのがありますが、まさにこれは単語の置かれる位置の決まりを学ぶ前だからなのです。英語はまさに”語順”がいのちの言語です。

ガ ga

例文1;太郎が来ました。Taro came.

例文2;雪が降っています。It's snowing./ The snow is falling.

このように「誰かが何かする」という形では「ガ」は明らかに主語を示しています。英語では、「雪が降る」そのものを示す動詞があるために、必ずしも明確な主語を必要としませんが、日本語では「降る」しかないために、必ず雪を先頭に主語として明示しなければなりません。

例文3;太郎は来ませんでした。Taro didn't come. 比較せよ→太郎が来ませんでした。

しかし、否定文では「ガ」ではなく「ハ」になります。この「ハ」は、”これから(みながすでに知っている)太郎について否定の内容を述べるぞ”というメッセージを含んでいます。これをあえて「ガ」にすると「太郎と次郎のうち誰が来ませんでしたか」という質問の返答のようになってしまい、太郎は新情報として取り扱われています。このあたりに「ガ」と「ハ」の明確な境界線が見えてきます。

例文4;太郎がしました。 Taro did it. ( =It was Taro who did it. )

例文5;上海が大きいです。Shanghai is big. ( It is Shanghai that is big.)

「太郎ハ・・・」「上海ハ・・・」の代わりに「ガ」を用いると、すでに例3のところで述べたのと同じように、「誰がしましたか」「どの都会が大きいですか」の返答のようになってしまいます。すなわち、いくつかの選択肢のうちのどれかを新たにとりあげて強調するようになります。そして英語でも日本語でもそれをさらに強調する方法があります(名詞編「ノハ強調構文」参照)。

例文6;誰がこれを書きましたか Who wrote this?

「誰が」では疑問代名詞が主語になっています。書いた本人が不明です。新しい情報が求められています。そのため当然、主題にはならないので「誰ハ・・・」が成り立ちません。同様に「何が・・・」「どちらが・・・」「どこが・・・」などとなります。

例文7;太郎はフランス語がわかります。Taro understands French.

例文8;英語ができますか。 Can you speak English?

例文9;冷たい水がほしいです。 I want cold water.

「ガ」は必ずしも主語だけを示すわけではありません。例7では「太郎」が主語であり、「フランス語」は「理解する understands 」の目的語です。「ヲ」だけが目的語を示すものだと多くの人々が漠然と思っています。でもそうではないのです。

例7,8,9で「フランス語ヲ」「英語ヲ」「水ヲ」にすると、とたんに不自然になってしまうのがわかるでしょう。これは使われている動詞に何か特徴があるようです。よく見ると、これらの動詞は「動作」を伴わないで、能力や心の「状態」を示しているようにみえます。このタイプでは「ヲ」の代わりに「ガ」を使うようになっているらしい。しかし文の構造からすれば英語でも日本語でも依然として<目的語>です。

例文10;太郎はサッカーが上手です。 Taro is good at football.

「ガ」の使用例はナ形容詞にも及びます。形容詞というものは本来、「動作」を伴うものではないから、例7,8,9と同じ理由で「ガ」を必要とすることになると考えられます。(「太郎はサッカーは・・・」と「ハ」を繰り返すのが嫌われるからだという主張もありますが)

英語の表現ではもっとも一般的な be good at を使ってみましたが、この前置詞 at のうしろにある名詞は<(前置詞の)目的語>とよばれています。「太郎」が主語なのは確定的ですから、「サッカー」は「ガ」でつながれている以上、日本語でも目的語として処理するほうがたやすく理解できるでしょう。

ヲ wo

例文11;昨日その手紙を読みました。 I read the letter yesterday.

例11のように、もっとも代表的な「ヲ」の使い方は<動作>をきちんと示している動詞の目的語です。これは中学生でも楽に理解できます。「・・・ヲ・・・スル」というは主体が客体に何らかの”動作”を伴って働きかけている状況を表しているわけです。

例文12;彼はグランドを駆け抜けました。 He ran through the playground.

例文13;山田さんは銀座通りを歩きました。 Mr.Yamada walked along the Ginza.

例文14;佐知子は大学を卒業しました。 Sachiko graduated from college.

「走る」も「歩く」も「卒業する」も動作的なので、日本語では問題なく「ヲ」を使ってしまいます(ただし「卒業する」については抵抗を感じる人も少なくないでしょうが・・・)。したがって「ヲ」の使い方としては問題がありません。

ところがたまたまこれらの英語版はいずれも「自動詞」、つまりそのままではうしろに目的語をつけることができないのです。したがってグランドも銀座も大学もそのままくっつけることができない。どうしてもつなぐためには仲介者である<前置詞>が必要になります。

どの前置詞を選ぶかは例11,12にみられるようにそのあとにくる名詞の性質によって左右される場合があります。グランドは広い面積を持っているので、「・・・の中を通って through 」が向いているし、銀座通りは線状なので「・・・に沿って along 」が向いています。

また前置詞は、前にある動詞と強い結びつきを持っている場合もあるのです。例13がその代表例です。from は college のせいよりもむしろ graduated によって決定されたのです(なぜ from でなければならないかはこの前置詞の特性から考えてみましょう)。「探す look for 」「世話をする look after 」などはますますその傾向が強くなります。

こうしてみると日本語で格助詞「ヲ」をつかっていても、英語となると動詞が他動詞の場合には直接に目的語がつくかたちになるが、自動詞の場合はさまざまな種類の前置詞のあとに目的語がつくかたちになるのです。これに対し、日本語ではたった一つの格助詞で済ませているのです。簡略といえば簡略ですが日常会話では別に困ることはないようです。

ノ no

例文1;私の時計はスイス製です。 My watch is Swiss-made.

「私は時計を持って(所有して)います I have a watch./ I own a watch. →私の時計 my (own) watch 」という変化が考えられます。「持っている」という動詞を使った文では、私と時計の間に<所有関係>があることを示しています。すなわち<持ち主+ノ+名詞>となります。これは英語の場合にはすんなりと<所有格+名詞>に移し替えることができます。

例文2;英語の先生は背が高いです。Our teacher of English is tall.

ところが英語と先生の間には所有関係が成り立たちません。「数学の先生」「理科の先生」「社会の先生」などと先生の種類を限定しているから、これは<名詞修飾>の一種であるといえます。英語では of English のように形容詞句を作る前置詞 of をうしろにつけたり、an English teacher のように形容詞を前につけたりします(ただし「英国人の先生」とみなされるかもしれません)。

「石橋 a stone bridge 」のように、 stony という形容詞(「石のような」「冷ややかな」という意味)ではなく、stone という名詞でうしろの名詞を修飾する場合があります。英語ではたびたび見かけます。だから漢語である「日本+文化」を英語で表現するときは Japan culture, Japanese culture, Japan's culture などといろいろあるから、文脈にあうように適切に選ぶことが必要です。

例文3;社長の佐藤さんはお金持ちです。The president Mr.Sato is rich.

例文4;議長の陳さんは横浜に住んでいます。The chairman Mr.Ching lives in Yokohama.

この場合も「ノ」を使っていながら所有関係にはありません。「社長の・・・」「中国人の・・・」がうしろの名詞を限定しているようにも見えますが、実は「佐藤」も「陳」も固有名詞だから、それぞれに付随する社会的地位を追加したと考えられます。これは二つの語が<同格関係>にあるとよんでおきましょう。英語では多くの場合、地位名を先に、固有名詞をあとに持ってきて単語二つを並べるだけです。間には同格を示す何の印もありません。固有名詞が先で地位名があとのときはコンマをつけることが多いようです。

に ni

例文1;大友さんにペンをあげました。I gave a pen to Mr.Ootomo.

例文2;大友さんに話しました。 I talked to Mr.Ootomo.

英語の目的語のうち、特に「人」を指すものを<間接目的語>といいます。なぜ間接かといえば、本来その文には中心となる目的語(直接目的語)=ここでは「ペン」=が存在するか、本来何の目的語も必要としない=「私は話しました」だけでも文は完成する=場合に新たに目的語をつけ加えるからです。日本語では<人+ニ>の形をとります。もっとも、<人+ヘ>の方が使いやすいという人もいることでしょう。英語の場合は前置詞の to がよく用いられます( with の場合も多い)。

例文3;彼女は佐藤さんに尋ねました。She asked Ms.Sato.

例文4;古い友だちに会いました。I met an old friend.

ところが「・・・に尋ねる」「・・・に会う」の場合、日本語ではいずれも例外なく「ニ」を使っていますが、英語では to が見あたりません。それもそのはず、英語では直接目的語としてあえて「人」をとるタイプの動詞が存在するからです。それが ask であり meet なのです。これは動詞の持つ意味としてまず人間が相手だということのあらわれでしょう。

だとすると、「命令する order 」「許す allow 」「説得する persuade 」「納得させる convince 」「驚かす surprise 」も同様でしょうか?その通りなのです。もちろんほかの文型もありますが、これらの動詞はちゃんと<人>を直接目的語にとる文例がまっさきに載っているのです。英語の動詞を覚えるときは、その目的語の種類(人かモノか?)も同時に知っておく必要があるのです。いろいろ調べてみると、意外や意外、「言う say 」「説明する explain 」「提案する suggest 」などは実は人を直接目的語にとらないという発見がありますよ。

例文5;母は近くの店にいます。 My mother is at the nearby store.

例文6;鍵が台所にあります。 There is a key in the kitchen. 比較せよ→ 鍵は台所にあります。 The key is in the kitchen.

日本語で場所を示すための<存在表現>は生物の場合は「・・・にいます」、無生物の場合には「・・・にあります」が使い分けられていますが、どちらも場所を示すためには「ニ」が用いられています。さすがにこの場合に「ヘ」を用いる人はいないでしょう。なぜならば「へ」を使うと<移動>の意味合いが含まれてしまうからなのです。英語でこの「ニ」に該当する前置詞はその広さによってさまざまです。一般に場所を表す前置詞といわれている in, at, on の3つが代表的です。

ところで例6の「鍵ガ・・・」と「鍵ハ・・・」とはどこが違うのでしょうか?すでに述べた「・・・ガ」「・・・ハ」の違いに照らしてみると、前者では聞き手にとって鍵が”既知”のものではないようです。場所のことよりむしろ、新たに現れた鍵のことのほうが話題の中心に聞こえます。そのような場合には、「そこに何があるのか?」が問題となる文になります。英語では There is... とするのが意味的に近いでしょう。

後者の場合ですと、その鍵は何に使うかは了解済みのようです。問題は場所です。この場合には「それはどこにあるのか?」の答えを示す文になります。英語では定冠詞か th- /所有格をつけた key を主語にするのがよいでしょう。

例文7;私の家のうしろに(は)事務所があります。There is an office behind my house.

例文8;私の隣に(は)佐藤さんが座ります。Mr.Sato sits next to me.

位置関係をもっと具体的にするには、「・・・ニ→・・・ノ上ニ」というように「上」「下 」「中」「うしろ」「外」「となり」「近く」などの語を加えてやればよいのです。「ノ」と「ニ」の間にこれらの語を挟むだけでよく、かなり規則的です。これが英語となると、順に on top of, under, inside, behind, outside, next to, near などといずれも前置詞(句)ではあるが形はまちまちです。またこの二つの例でカッコ内に示したのは、<主題化>の「ハ」だと考えられます。

例文9;彼女は一日おきにスーパーに行きます。She goes to a supermarket every other day.

ここでの「(スーパー)ニ」は進行方向を示している。したがって前には<目的地>になる語を入れればよいわけです。この場合、「散歩に行く」や「気晴らしに歩く」ときの”目的”の「ニ」とはもちろん違います(→後述)。

例文10;今度の月曜日に会いましょう。I'll see you next Monday.

例文11;9時に会いましょう。I'll see you at nine o'clock.

例10,11は特定の時間を表す「ニ」です。それは時刻でも日にちでも年号でも曜日でもみな「ニ」になります。ここでも格助詞は例外が少ないといえます。ところが英語では at nine, on Monday, in 2007 などと前置詞にはいろいろあり、そしてまた next や last が day, week, month などの前につくとその前置詞さえつけないことになります。

例文12;私は1時間に850円で働いています。 I work \850 per hour.

例文13;一週間に3日病院に行きます。 I go to the hospital three days a week.

例文14;この飴はひとりに5個ですよ。I'll give five candies per person.

例12,13,14の場合の「ニ」は、割合をあらわす「・・・ニツキ」の省略形といえるかもしれません。すでに述べたように、日本語では複雑な部分を大胆にもばっさり落としてしまう省略が実に多いのです。それでもここでは<単数形名詞+ニ+数字>のパターンとして並べられているので、ほかの「ニ」の用法と取り違えることはないわけです。英語の場合は<数字+per / a +名詞単数形>となり、順序が逆なことをのぞけば基本的には同じです。

で de

例文1;肉屋で買いました。 I bought it at the butcher's.

例文2;教室で気分が悪くなりました。I got sick in the classroom.

ここでの「・・・デ」はいずれも行為が行われた”場所”を示しています。使われている動詞は<行動・変化>を示しています。だから「教室で彼女が好きです」が不自然で、「教室で彼女が好きになる」が受け入れられるのはそのせいなのです。英語では場所の前置詞、 in, at, on などがそれぞれの場所に応じて使い分けられていますが、動詞によって変化を受けることはありません。

例文3;バスで行きました。 I went there by bus.

例文4;バットで殴られました。I was struck with a bat.

例文5;その本で調べました。I checked it in the book.

例3,4,5は”手段”を表す「・・・デ」です。交通手段でも、使用した道具でも、辞書の類でもすべて同じです。ところが英語ではそれぞれ異なる前置詞を用いています。異なる前置詞を使ってしまうと意味が正しく通じなくなります。

例文6;全部で1万円です。 It's 10.000 yen all together.

例文7;結婚式は二人だけでします。We will have a wedding ceremony with nobody attending.

例文8;2泊3日で旅行をします。I will go on a three-day trip.

例6,7,8の「・・・デ」の前にはそこで述べた数字の”合計”が書き込まれています。それはズバリ「全部、すべて」といってもいいし、単位でも、ある数でも、量でもかまいません。英語では用いる単語と位置によって品詞が違います。「 all together 」は副詞だし、「with nobody attending 」は副詞句となっているし、「three day 」は day にかかる形容詞の働きをしています。残念ながらこのタイプの「デ」に相当する適当な前置詞が見あたりません。

例文9;3ヶ月以内で完成します。 I can finish it within three months.

例文10;5分で行きます。I will go in one hour.

例9は”所要時間の制限”を表す「・・・デ」です。例10は「以内」を省略したものと考えていいでしょう。英語での前置詞は in であり、強調形は within となります。これらは範囲内の時間をあらわすのであって、特定の時点以後のことを示す、 after ではありません。

例文11;このクラスで彼が一番背が高い。He is tallest in this class.

例文12;魚で何が一番好きですか。Which of the fishes do you like most?

例文13;中国でどこに行きたいですか。Where in China do you want to go?

例11,12,13はある集合体に”範囲限定”をするための「・・・デ」です。例11,12では最上級の文を成り立たせるために、例13では「(中国)国内」を示すために用いられています。英語の前置詞では in のほかに among, of, within などが見受けられます。

例文14;この時計は金でできている。This watch is made of gold.

例文15;このチーズは新鮮な牛乳で作りました。This cheese is made from fresh milk.

製品の材料、原料を表すのに使われる「・・・デ」です。「・・・カラ」に言い換えることができる場合も少なくありません。英語では前置詞に動詞(自動詞か受動態)を追加した consist of / be made from / be made of などがよく使われています。

へ e

例文1;彼女は一日おきにスーパーへ行きます。She goes to a supermarket every other day.

ここでの「・・・ヘ」は「ニ」と同じく進行方向を示しています。従ってこれも前には<目的地>になる語を入れればよいのです。数ある「ニ」の使い方のうち、これだけが「ヘ」と重なっています。英語では to 又は toward などがあります。なお、「駅へ歩きます」「駅に歩きます」が不自然なのは、使われている動詞「歩く」が”方向性”を持たないからだといわれています。これに対し、「行く」には潜在的な方向性があります。ですから、「駅に行きます→駅に歩いて行きます」とするのがふつうでしょう。ただし、英語では I walk to school. であり、問題はありません。

から kara

例文1;このバスは横浜から来ました。This bus came from Yokohama.

例文2;会合は3時から始まります。The meeting begins at 3 o'clock.

例文3;水曜日から雨模様になります。Starting on Wednesday, it will become rainy.

移動の出発点を示す「カラ」が第1の例文です。これに対して、例2の時間の場合には英語の表現とはかなり発想が違っています。日本語でも「3時に始まる」ともいいますが、始まる時間そのものを示すのが英語でのやり方なのです。したがって from ではなくて at となります。ただし、「3時から5時まで」とはっきりと期間が示されていれば from three to five ということになります。また、3番目の例でも「・・・になる」という、継続ではなく瞬間的な表現が使われているために、from を用いることができません。代わりに「・・・ニ始まって starting... 」を用いたのはそのためです。

まで made

例文1;鹿児島まで行ってみたい。 I want to go as far as Kagoshima.

例文2;3時まで勉強しました。 I studied until 3 o'clock.

最初の例では距離に関係する「・・・マデ」ですが、英語の場合 from と組になっているときは to を使っても、到達点のみを強調して示したいときは「・・・マデ遠く→・・・マデ as far as 」を用います。これも前置詞の一種と考えてよいでしょう。第2の例では時間に関係する「マデ」であり、from と組になってもならなくても until が好まれています。

までに madeni

例文3;5日までにそれを提出できますか。 Can you turn it in by the fifth?

例文4;月曜までに必要です。I need it by Monday.

時間について述べるときは締め切りや完了時点を示しています。ということは until や to と違って出発点をまったく想定に入れていないし、締め切りまでに一連の動作が終了または完了していなければなりません。「・・・マデ until 」の場合にはある時間まで継続するけれども、「・・・マデニ」ではそこで途切れてしまうのです。英語でもその違いをきちんと区別して、前置詞の by (場合によっては before )を使うことになります。

より yori

例文1;彼は私よりたくさんの本を持っています。He has more books than I do. (← He has many books. )

例文2;ウィスキーより焼酎の方を飲みたい。I would like to drink shochu rather than wine.

例1の「・・・ヨリ」は比較の対象を表しています。これは than にあたりますが、日本語には英語における<比較級>というものがないから、<・・・ヨリ+副詞・形容詞>の形で多くが用いられているのです。もっとも、日本における英語教育での訳では、本来比較対象をつなぐはずのこのヨリが一人歩きして、「より大きい」「より赤い」というようにまるで単語として比較級が前から存在しているようになってしまいました。

一方、具体的な副詞・形容詞を伴わない比較の形式もあります。2番目の例文にあるように好みや重要度を天秤(てんびん)にかけた場合です。その場合には英語では rather than や more than など、定型的な表現を用いることになります。

まとめ

ここまでで、副詞句や形容詞句を作る格助詞がいくつか出てきました。また、主語をとることのできる格助詞は2つあり、「ガ」「ハ」です。また、目的語をとることのできる格助詞は3つあり、「ガ」「ヲ」「ニ」です。問題はそれぞれに使い分けがあり、ふだん日本語を母語とする人はそれをいちいち意識してはいません。

これに対し、すでに述べたように英語の主語には格助詞のような印がついていません。動詞の前に置かれるなど「位置」で判定するしかありません。目的語の場合にはあらかじめ他動詞とわかっている動詞のうしろ(直後とは限らない!)か前置詞のうしろにつくことになります。両国語の間を行き来するためにはこの根本的違いをしっかりと認識しておく必要があります。

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副助詞(7個)の研究

モ マデ ホド バカリ クライ ダケ ズツ

副助詞はいわゆる英語の副詞に似て、文の名詞要素以外を修飾するためについています。そのため、その語がなくとも文そのものは立派に成立する、つまり”取り外し自由な語”だといえます。また、格助詞なのかそうでないか判定に苦しむ語もあります。「モ」はその典型で、こちらのグループに入れておきます。

も mo

例文1;私も食べたいです。I want to eat it too.

例文2;犬も猫も好きではありません。 I don't like dogs or cats.

すでに出てきたことを前提にして同じ内容の繰り返しを表す「・・・もまた」の省略形ともいえる「・・・モ」ですが、この使われている位置を見ると本来は「ハ」「ガ」が用いられている場所、つまり主語や目的語のうしろについています。他の格助詞を「・・・モ」に置き換えるという特殊性から、当然のことながら英語には通用しません。too も also も共に副詞であって、主語のあとや文末においています。さらに否定の連続、「・・・も・・・も・・・ない」では2番目の例文にあるように not...or... の組み合わせや、neither... nor... を使っています。

例文3;猿も木から落ちる。Even a monkey sometimes falls from a tree.

例文4;千円も持っていません。I don't have so much as one thousand yen.

この二つの例は明らかに繰り返しではありません(と常識的に判断できます)。ここで使われている「・・・モ」は「・・・でさえも」の省略形です。すなわち、極端な例を引き合いに出して強調する形式です。。これらも主語や目的語を示す格助詞の代わりに用いられていますが、英語では例4の so much as のほかに、副詞 even などが使われています。

だけ dake

例文1;息子はひとりだけです。 I have only one son.

例文2;勉強だけすればいいのだ。All you have to do is study.

例文3;好きなだけ飲んでください。Please drink as much as you want.

<制限>を表す「・・・ダケ」には、常に「ほかにない・いない」という否定の雰囲気が漂います。「息子は一人だけしかいません」も可能です。英語の only という副詞も同様に not がなくとも否定的意味合いが大きい。

制限の他の表現方法としては「これがすべてだ→ほかにない→それだけだ」の発想から、英語では(形容詞や副詞ではなく)名詞の all を形容詞節の先行詞にして用いる方法がよく見られます。この場合は否定的な意味合いはずっと減ります。「好きなだけ」の場合は「好きな(酒量?)」と考えて述べているのでしょうが、ここではもはや制限というよりも<程度>を表しているので否定からはほど遠いといえます。英語では「好き」が本来は動詞ですから節を作ることになり、その前に接続詞としての働きを持つ as much as がつくことになります。

ほど hodo

例文1;彼女は彼ほど若くありません。She is not as young as he is.

例文2;あの人は家を3軒持っているほど裕福です。He is wealthy enough to have three houses.

<程度、範囲>を表す「・・・ホド」です。最初の例のように「・・・ホド+否定」の組み合わせになる場合も多いですが、本来「彼女は彼(が若い)ほど・・・」だったのですから「・・・ホド」の中身そのものは肯定なのです。2番目の例のようにはじめから肯定文に組み込まれる場合もあります。

いずれの場合でも、「・・・ホド」の前は厳密に言えば名詞ではなく文なのであり、これは後置詞の定義からはずれるかもしれません。むしろ接続詞に近いでしょう。英文で言えば、いずれも<程度>の構文と呼ばれるもので表現されます。まず not so/as ... as (he is young). のうしろの部分が「・・・ホド」にあたります。また enough の場合は本来「十分な」の意味ですが、うしろに文をつなぐ代わりに動詞の前に to をつけることによって不定詞にしていますが、そこが「・・・ホド」の部分です。

例文3;5分ほどかかります。It will take about three minutes.

例文4;500円ほどです。It is about 500 yen.

代わりに「約・・・」と言い換えられるところから<概数>を表す「・・・ホド」です。これに該当する前置詞は英語には見あたりません。いずれの文例でも about は approximately も同じく副詞として数字の前に置かれています。

しか shika

例文1;息子は一人しかいません。I have only one son.

例文2;日本語しか話せません。I only speak Japanese.

「ダケ」と同じく<制限>を示していますが、非常に否定の気分が強いといえます。英語では just はちょっと弱くて、むしろ副詞の only のほうが近いといえます。2番目の例での英文は、 I speak only Japanese. I speak Japanese only. というように only の位置が変わると only がどこに強調をおくかが変わってきます。

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接続助詞(10個)の研究

か と や (語と語の結合にも使える・・・別名<並立助詞>) 

が から けれど のに  と ながら ので (文と文の結合のみ)

格助詞とは異なり、文の最後につけてほかの文と結合をはかるのが接続助詞であり、英語では(従属)接続詞と(等位)接続詞の大部分がこれにあたります。すでに述べたように日本語では、接続助詞と接続詞とは別のものです。

か ka

例文1;イチゴかオレンジが食べたいです。I want to eat strawberry or orange.

例文2;彼女にパーティに来るか来ないか聞いてみなさい。Ask her whether she will come or not to the party..

「あるいは」の意味を持つ「・・・カ」です。いくつかの選択肢を列挙するためにあり、 or の働きに近いといってもよいでしょう。英語では either や whether とともに用いられることもあります。

と to

例文1;ボールペンとノートを持っていってください。Please take a ball-point pen and a notebook with you.

「・・・ト」は2つ以上のものを列挙、結合するのに使われています。もちろん、英語では and に相当しますが、英語の場合、A, B, C and D というようにいくら結合するものがあっても and は最後の単語の前に一個しかつけないルールですが、「・・・ト」は「 A ト B ト C ト D 」のように”単語の数マイナス1”回だけ繰り返さなければなりません。

例文2;妻と旅行に行きました。I went on a trip with my wife.

この場合の「・・・ト」は「・・・と一緒に」の省略形と考えられます。英語では前置詞の with 、もっと正確には 副詞を追加した together with に近いでしょう。

例文3;まことは「おなかがすいた」と言いました。"I'm hungry” said Makoto.

例文4;まことはおなかがすいたと言いました。Makoto said that he was hungry.

例文5;彼は私に傘を持ってきてくれるように(と)頼んだ。He asked me to take an umbrella with me.

例文6;彼は私に何がほしいのか(と)尋ねた。He asked me what I wanted.

直接話法にせよ、間接話法にせよ、伝達動詞の直前にこの<引用>の「・・・ト」をつけます。この「・・・ト」があるために伝達動詞が最後に来てしまうのです。英語では直接話法の場合、said Makoto は Makoto said として文頭に持ってきてもかまいません。間接話法では接続詞の that だけが「ト」を示しているように思えますが、その後の例を見てわかるように、疑問詞やto不定詞の場合も間接話法である限り、「ト」をつけることは可能です。

や ya

例文1;肉や魚や野菜を買いました。I bought meat, fish and vegetables.

これも「・・・ト」の例1と同じく、接続詞的な使い方をしていますが、「・・・ト」が列挙するものを正確に述べているのに対し、「・・・ヤ」のほうは、まだ述べていないがほかにもまだ多数のものが存在することを暗示しているか、又は述べているものが代表格であることを示しています。この言い方をさらに押し進めると「・・・やら・・・やら」などという表現に行きあたります。英語では「ト」と同じく、 and を使うことになりますが、以上のようなニュアンスを出すためには「 ... and so on 」「... and others 」「such things as ... 」「among others ... 」というような表現を使う場合もあります。

が ga

例文1;雨が降っていますが、出かけます。Although it is raining, I'll go out. / I'll go out although it is raining.

例文2;頭が痛いのですが、起きます。I'll get up though I have a headache.←→ I have a headache, but I'll get up.

二つの文の内容が食い違っているときに結びつけるのが「・・・ガ」です。一般に「A であるが B である」の形式で書かれますが翻訳調の影響を受けたらしい、「 B である。A であるのだが」というふうに後置する言い方はまだ少数派でしょう。「・・・ケレド」によく似ています。

英文では先頭に接続詞 though / although をつけた文が代表的ですが、今のように A が先か Bが先かの順番は内容によって決まるので、例1の文のように2通りが考えられます。ただし英文では頭に接続詞のついていない方が<主節>、頭に接続詞がついている方が<従属節>と呼ばれるので、内容的には主節が中心的位置を占め、「・・・するつもり」などの助動詞もこちらにつくことが多いのです。

では例2のように接続詞を but に換えてみたらどうでしょう。内容的にはほとんど変化がないといえますが、but は<等位接続詞>といわれ両側にある A B の文の重要度は等しいことになっています。A は決して B からみて付属品ではなく、対等で対立する流れを作っているのだといえます.状況によってより適した方を使う方がいいでしょう。

例文3;映画に行きましたが、楽しかったです。 I went to a movie, and I had a good time.

例文4;ステーキを食べましたが、高かったです。I ate steak, and it was expensive.

この場合の「・・・ガ」の前後の内容は少しも食い違っていません。むしろ流れは順調です<順接>。「・・・ガ」のこのような使い方も多く見受けられ、これは単に<息つぎ>のためにすぎないと見てよいでしょう。それでも注意してみると、「ステーキはそんなに高いと思ってなかった!」などと、後の文はわずかながら<意外性>が含まれているようにも見えます。英語の but は純粋に前後が矛盾する場合だけですからこの場合には使えません。and のように流れを妨げない接続詞を選ぶことになります。

から kara

例文1;気分が悪いから行けません。Because I'm sick, I can't go.

例文2;疲れたから寝ます。I will go to bed because I'm tired.

「・・・カラ」は<理由>を表しています。英語では because か since が先頭につく従属節ができるので、because 節は主節の前に出たりうしろについたりします。ところで「(私は)行けません。なぜなら気分が悪いからです」は基本的には例文1と基本的には同じです。このようにあとで追加するような書き方がこの「カラ」には可能です。

例文3;結婚してから私は太りました。Ever since I got married, I have put on weight.

例文4;夕飯を食べてからお風呂に入りました。After having s, I took a bath.

もう一つの「・・・カラ」は<時間の経過>を示す場合です。「・・・(した)のちに after 」「・・・(した)あとで after 」「・・・(して)ずっと ever since 」の意味で用いられます。

けれど keredo

例文1;雨が降っているけれど出かけます。Although it is raining, I'll go out. / I'll go out although it is raining.

例文2;頭が痛いけれど起きます。I'll get up though I have a headache.←→ I have a headache, but I'll get up.

「・・・ケレド」は though / but の役割をする「ガ」に似ています。ただし口語的な雰囲気があるようです。「降っているけれど」「痛いのだけれど」に比べて「降っていますけれど」「痛いのですけれど」がすこし不自然なのはそのせいでしょう。

例文3;映画に行ったけれど、楽しかったです。 I went to a movie, and I had a good time.

例文4;ステーキを食べたけれど高かったです。I ate steak, and it was expensive.

このタイプは and の働きをする「ガ」に似ています。逆説的な雰囲気はほとんど感じられません。

のに noni

例文1;眠いのに起きました。I got up though I was sleepy.

例文2;待ってくれているのに行きませんでした。I didn't go though he was waiting.

「・・・ノニ」はthough の意味としては基本的には「・・・ケレド」「・・・ガ」と同じですが、<対比>や<正反対>の文脈で使われることが多いのです。英語でも、完璧な対比となると though の代わりに while やwhereas を使ったりします。

と to

例文1;まっすぐ行くとバス停がありました。When I went down the street, I came to a bus stop.

例文2;明日ピクニックに行くと午後に雨にあうよ。If you go on a picnic tomorrow, you will be caught in a rain.

<条件>を表す「・・・ト」です。「まっすぐ行った」のように行為の選択が実際には一通りしかないとき、「・・・ときに when 」に該当し、「ピクニックに行くか行かないか」のように選択の余地がいくつかある場合は「もし・・・すれば if 」に該当します。

ながら nagara

例文1;新聞を読みながら夕食を食べないでください。Don't have s while reading a newspaper.

例文2;コーヒーを飲みながら私たちは話し合った。We talked over a cup of coffee.

「・・・ナガラ」は<付帯状況・同時進行>を表します。「夕食を食べながら新聞を読まないでください」でもわかるように、どちらが行動の主体なのかを意識する必要があります。英語では2文の主語が共通である場合、<分詞構文>の形式がもっともポピュラーですが、読みづらいときには例文1で使っているように、先頭に while や as をつけたりもします。また例文2にあるような成句表現を借りることもあります。

ので node

例文1;気分が悪いので行けません。Because I'm sick, I can't go.

例文2;疲れたので寝ます。I will go to bed because I'm tired.

これは<理由>を表す「・・・カラ」とほぼ同じ用法です。しかし「・・・ノデ」のあとには文章がこないと収まりません。だから「それは・・・だからだ。」はあっても、「・・・だ。それは・・・なので。」とすると途中で中止したように聞こえるのです。もちろんその効果を狙ってわざと使う人もいるわけですが。英語では接続詞の because / since / as が代表的です。

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「ノ」の研究

「・・・ノ」は主に形容詞句を作る、便利なことばですが、誤解される危険性と隣り合わせです。。「 A の B 」とやれば、Aという名詞によって Bの内容を詳しくします。ただ、あまりに気軽に使えるので乱用が目立つようです。英語の前置詞 of が盛んにこの「ノ」を使って訳されるのも、そうやっておけば何とか体裁が立つからでしょう。しかしながら、ここにある15個の例を見てわかるように、「・・・ノ」にはさまざまな用法があり、それに応じて英語での表現も大幅に違ってきます。いくつかのグループに分けて観察してみましょう。

所属をあらわす例;(1)私の母 my mother (2)山田建設の佐藤さん Mr.Sato, who works for Yamada construction company (3)海岸の道路 a road along the beach

(1)は所有関係であり、英語でも<所有格>という用法があります。(2)固有名詞「佐藤さん」はこの会社の社員でここに所属していることを示します。英語ではコンマつきの関係代名詞を用い、その後に、「・・・で働く」とか「・・・に所属する」というような動詞表現を用いることになります。(3)こういう場合、道路は山でも市街地でもなく、海岸に存在することを示しています。場所や位置関係をあらわす前置詞「 in, along, by 」などを工夫する必要があります。

性質をあらわす例;(4)病気の少年 a sick boy (5)笹の葉 a bamboo leave (6)始発の電車 the first train (7)一杯のコーヒー a cup of coffee

(4)その少年がどういう(健康)状態にあるかを示すには、英語では形容詞が最も広く用いられます。関係代名詞でうしろに節をつけることもできます。ここでは an ill boy といえません( ill は叙述用法のみ)ので、代わりに sick を使ってみました。一方、日本語ではこれに該当する形容詞がありません。まさにこういうときこそ、「名詞+ノ」の出番なのです。

(5)「笹の」という形容詞もありません。したがって名詞の左側に該当する名詞をおいて形容詞代わりに使います。英語にもそんな形容詞はありませんが、ある名詞を修飾される名詞の前に置くことによって形容詞のような働きをさせることができます。「石(製の)橋 a stone bridge 」が最も有名な例です。

(6)これは電車の種類を表しています。英語では形容詞の first や last がついた名詞が順番を表すときには定冠詞 the が必要です。

(7)「コーヒーの一杯」というと、[紅茶の一杯]や[緑茶の一杯]と区別した表現になりますが、「一杯のコーヒー」であれば、「2杯のコーヒー」や「3杯のコーヒー」と区別した表現になります。英語では< a 単位名詞 of ... >の表現が使えるならそれが最も簡単です。この場合の of の用法は普通と違い、前からうしろの名詞にかかる関係となります。

同格をあらわす例;(8)幼なじみの千恵子 Chieko, my childhood friend (9)部長の山田氏 Mr.Yamada, the manager (10)兄の俊郎 my borhter Toshio

(8)「千恵子は幼なじみである」のですから「幼なじみ=千恵子」です。同じものを指しています。同格です。英語では同格の関係にあるものをコンマつきまたはコンマなしで横に並べるだけです。英語でも日本語でも、同格とは二つの名詞のうち、一方が形容詞の働きをしているとも考えられます。

(9)これも「部長=山田氏」であり、職業上の地位をあらわす同格です。

(10)「兄=俊郎」で親族関係をあらわす同格です。英語では普通はあいだにコンマを打ちません。

動詞の文型を表す例;(11)稲の成長 the growth of rice (12)客の紹介 the introduction of a customer

(11)もとは「稲が成長する Rice grows 」という S+V 構造だったのが、動詞を名詞化することによってできた句です。英語でもその原理は同じで、主語だった名詞をつなぐためには(主格の) of を用います。

(12)もとは「客を紹介する introduce a customer 」という V+O 構造だったのが、同じく動詞を名詞化することによってできた句です。英語の場合には、目的語だった名詞をつなぐためには(目的格の) of を用います。また、(11)(12)は共に正式な形容詞句を作るための of なので、文頭に定冠詞 the が必要です。

<助詞+ノ>を表す例(13)青森県からのお客様 a visitor from Aomori prefecture (14)黒磯までの普通列車 a local train bound for Kuroiso (15)よし子さんとの食事 a dinner with Yoshiko(16)札幌での仕事 an assignment in Sapporo

「青森県カラお客様が来ました」にあるように、もともとは副詞句だったのが、「ノ」をうしろにつけることにより名詞への修飾を可能にしています。英語ではそれぞれの時間・場所に適した前置詞を選んでやればよろしい。英語ではof 以外は原則として副詞句と形容詞句とは形が同じです。

このように「ノ」は大変便利ですが、使い道が多すぎて、できることならばこれに代わるもっと明確な表現に変えた方が望ましいといえます。英語での of をはじめとする前置詞もすべて「ノ」にすることなく、結合されている二つの名詞の関係がよくわかるような表現にした方が誤解を生むことがありません。

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

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