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第14章 モダリティを考える

  1. モダリティ・ムードとは
  2. 文末語(日)と助動詞(英)
  3. 終助詞(日)の研究
  4. 仮定法(英)
  5. <コラム>英語における仮定法のあらわしかた
  6. <コラム>法とはなにか
  7. 時や条件の副詞内の時制

日本語の文のもっとも大事な部分は動詞を含む文の最後のところ、つまり<文末表現>にあります。これは英語において助動詞や動詞が主語のすぐあとにやってくるのとは大違いです。そして動詞に続く最後の部分を見て、「・・・だよ」「・・・だわ」から話し手が男か女かを判定したり、「・・・だろうさ」「・・・なんだ!」「・・・なの?」などから話し手の気分、つまり<モダリティ>を判断したりできます。

さらに「・・・じゃありません」「・・・というのはだめだ」「・・・とは思わない」など、否定表現も最後の部分に含まれているのですから、それまで延々と述べられていたことが、実はすべて否定だった・・・などということがおこります。

日本語では主語を省略するのがあたりまえだとすでに述べましたが、それによって生じる混乱を未然に防ぐ手だては文末表現にも工夫されているのです。これほど重要な部分が文末に凝縮されているのですから、これをきちんと整理して眺めてみる必要があります。そしてそれらは英語では文の別の場所(特に助動詞)に分散されていることと比較してみましょう。

モダリティ・ムードとは

言語の研究が進むと、人がしゃべるときには、常に2つの面があることに気づくようになりました。「彼は昨日の夜、言いつけられた仕事をしなかった He didn't do the assignment last night 」とは、単に過去の事実を淡々と述べたものです。

これを聞いて、ある話者が「彼は病気に違いない He must be sick. 」と言ったとすると、「彼は病気です He is sick 」とはことなり、外部の情報から自ら”判断”を下して意見を言ったものと考えられます。

または、これを聞いて、ある話者が「あいつはクビだ He must be fired 」と言ったとすると、「彼はクビになっています He is fired 」とはことなり、同じく外部の情報から自ら”判断”を下して意見を言ったものと考えられます。

このように事実を述べる上にあらたに自分の判断を重ねた部分を<モダリティ>と呼んでいます。ただし、この概念は他の文法項目と違い、移ろいやすい人間の気分、感情を表しているので、規則化したり、明確に事実と切り離した形で提示したりすることが大変むずかしいのです。

モダリティをあらわすには、西欧語では動詞部分に語尾変化をつけたり、助動詞を使ったりします。英語では助動詞の使用がもっとも盛んです。これに対し、日本語のように動詞が最後に来るタイプの言語では必然的にモダリティ表現も文末にやってきます。

モダリティをあらわすにはほかにも方法があります。「可能性 possibility 」と「必要性 necessity 」を表す表現なら、英語でも日本語でも形容詞、副詞を問わず可能です。「おそらく、試合に負けるだろう Probably the team will be defeated. 」「きっとこの馬は勝つぞ This horse is sure to win. 」「一刻も早く問題解決が必要だ It is necessary that we solve the problem. 」などは、まさにその例です。

さらにモダリティのあらわれる表現を考えると、「断言」「命令」「疑問」「祈願」「叫び」などがあげられます。それぞれもとになる表現を考えてみてください。

「断言」では、「この世界は滅びます The world will come to an end. →きっとこの世界は滅びるぞ! I'm quite sure the world will come to an end! 」、「命令」では「赤信号では止まります You stop at the red light. →赤信号では止まれ! Do stop at the red light! 」などの例が考えられるでしょう。

どうして「疑問」がモダリティに含まれるかというと、「そのうわさ、誰が知らないというんだい? Who doesn't know the rumor? 」のような<修辞疑問>は、実は「誰でもそのうわさを知っている。 Everybody knows the rumor. 」という事実に、話者の大げさな感情をのせていると考えられるからです。

「祈願」では、「あなたは宝くじに当たる You will win the lottery. →どうか宝くじに当たりますように May you win the lottery! 」、「叫び」では「私は急に痛みを感じる I feel sudden pain. →あ、痛い! Ouch! 」などがあげられます。

このように、モダリティというのは言語生活のあらゆる場面に登場しますから、実際の「事実・内容」ときれいに分離することは困難ではあります。しかし、「顔に表情のない人間」が不気味にうつることからもわかるように、感情の動物でもある人間が自分らしさを発揮するには、絶対に欠かすことのできない要素なのです。

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文末(日)と助動詞(英)

<ウォーミング・アップ>次の文末表現、「ヨ」「ネ」「ヨネ」の違いを言いなさい。

(1)むずかしいよ(2)むずかしいね(3)むずかしいよね

解釈例

(1)比較的親しい、同等または自分より下の相手に新しい情報を伝えるとき。

(2)比較的親しい、同等または自分より下の相手も同じ経験を共有していて、相手に同意を求めたいとき

(3)新しい情報と同意を同時に伝えたいが、同意を求める気持ちのほうが強く、このため「ネヨ」ではな、く「ヨネ」となる。文末表現が2つ以上存在するときは、最も強くて重要なものが最後に来るようである。

このように文末表現はかなり主観的な部分が大きく、時代や年齢、性別、所属集団によってかなり違ってくるようですが、会話では欠かすことのできない要素になっています。母語にしている人はこれも無意識のうちに使い分けています。これらは他国語に言い換えるのは至難の業です。いくつかの例を研究してみましょう。

例文1;明日雨が降る It will rain tomorrow.

例文2;明日おそらく雨が降るかもしれないかもよ Probably it may rain tomorrow.

文はたいてい二つの要素からなっています。一つは<事実>です。もう一つはそれを発した話者の<主観>です。この主観の部分は<推量、疑問、確認、判断、予感、命令、様態>などを含み、これをモダリティと呼んでいます。例1を見ますと、この文は単なる事実を述べているのに対し、例2の文はそこからさらに追加された部分がモダリティの働きをしていると考えられます。

「かも」「しれない」「かも」「よ」の4つの語は動詞「降る」に密着しており、日本語が<膠着語>と呼ばれるゆえんです。これらの要素は助動詞、終助詞などと呼ばれています。さらに「おそらく」は動詞から離れてはいますが、それは副詞的な働きをしているからであって、実際のところは「かもしれない」と相関しています。

日本語を母語とする人は無意識に身につけているのですが、学習者はそれぞれの働きをきちんと覚え、しかも正しい順序と接続形式で動詞、イ形容詞、ナ形容詞、名詞につけていかなければなりません。モダリティ表現はそれぞれの言語に特有のものが多く含まれていますから、正確に他の言語に移し替えることは困難ですが、普遍的な共通部分もあります。これに対して英語では、大きく3つのタイプにわけて考察することができます。いずれももとの文に挿入したり、前やうしろから追加する形をとったりします。

例文2;あなたがそれをした。You did it. →あなたはそれができた。 You could do it.

例文3;昨日雨が降った It rained yesterday. →昨日雨が降ったに違いない。It must have rained yesterday.

英語でのモダリティ表現の筆頭は、<助動詞>そのものです。英語での助動詞は一般動詞と be動詞の原形の前におかれます。助動詞が文末表現に対応するとすれば、この点でも日本語とは逆です。助動詞は will / can / may が代表的です。時制やアスペクトに関していうと、例2のようにこれらの現在形か過去形(もしあれば)、助動詞のうしろは原形か、例3のように have + 過去分詞(もし可能なら)の合計4通りの組合せがありますから、かなり多様な表現が可能になっています。

例文4;彼は金持ちだ。He is rich. →彼は金持ちらしい。He seems to be rich.→彼は金持ちだったらしい。He seems to have been rich.

例文5;この馬が勝つ。This horse wins. →この馬はきっと勝つ。This horse is sure to win.

助動詞だけで表しきれない場合には、例4、5のように一部の一般動詞や形容詞にto V(不定詞)をつけたタイプが”増設”されます。やはり普通の動詞の原形(あるいは have +過去分詞)の前につきますので使い方に大きな変化はありません。例4では、日本語は「ダ」による<断定>から「ラシイ」による<推量>表現に変わっていますが、英語ではそれにあたる動詞 seem を主語と動詞の間にはさんでいるのです。例5では”話者の確信”を表す be sure をやはり、主語と動詞の間にはさんでいます。

例文6;残念なことに、この手術は失敗した。Unfortunately, the operation failed.

例文7;時間きっかりに来るなんて、いかにも彼女らしい。It is just like her to come on time.

例文8;夕方には雨が降るらしい。It seems that it will rain in the evening.

また、例6のように一部の副詞も、単独であるいは助動詞と相関してモダリティをあらわすことができます。この場合の副詞は英語では<文修飾副詞>と呼ばれ、特定の語ではなく、文全体の雰囲気をあらわすためのものです。感嘆文につかわれる文頭の「なんと・・・ How...! 」もこの一種と考えられます。例7では前置詞 like が、使われていますが、日本語の「・・・らしい」はもちろん例4タイプとは異なり、<様態>をあらわしています。また、例8では同じ動詞でも、例4の seem to とは異なり、最初の主節部分 it seems that がモダリティを担当しています。

<参考>

主な英語の助動詞 will / would / can / could / may / might / must / ought to / shall / should / used to / dare / had better / had best

一般動詞+to V の形をとる例 intend to / hope to / want to / plan to / decide to / hesitate to / try to

形容詞 + to V の形をとる例(その1) sure to / certain to / likely to / unlikely to

形容詞 + to V の形をとる例(その2) eager to / willing to / reluctant to / proud to

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終助詞(日)の研究

日本語で文末につく言葉は終助詞と呼ばれていますが、動詞部分だけに着目すると、動詞の一部である<接尾辞>と見ることもできます。英語と違い、日本語では必ず文の最後に述語となる動詞、形容詞、名詞のいずれかがくるのでその性格を明らかにしておくことはきわめて重要です。ここでは「カ」「ネ」「ヨ」「ワ」の4個の終助詞をみてみましょう。

か ka

例文1;あなたは先生ですか。 Are you a teacher? ← You are a teacher.

例文2;誰が英語を教えているのですか。Who teaches English? ← Someone teaches English.

「・・・カ」は疑問文を作ります。最大の特徴は英語では Yes/No 疑問文にするために主語と動詞の<倒置>が起こるのとちがって、前の文はいっさい変化なく最後に「カ」をつけるだけだということでしょう。また「いつ」「どこで」「なぜ」などの疑問詞が入っている場合でも同じく最後に「カ」がつきます。疑問詞の位置は特に決まっていませんね。ところが英語の場合には疑問詞は必ず文頭です。しかも疑問倒置は必要です。ただし例2のように疑問詞自体が主語になっている場合だけ倒置がおこなわれないのです。

ね ne

例文1;寒いですね。It's cold, isn't it?

例文2;見通し明るいですね。The prospect is good, don't you think?

話し相手との共通理解や共通体験を経て相手に同意を求める疑問文が「ネ」です。「カ」と同様、本体の部分は変化しません。英語では<付加疑問>がそれにもっとも近いともいえますが、会話ではイントネーションの変化だけですませる場合もあります。

英語の付加疑問はまさに文末表現で、例1のように本文が肯定なら否定の形で付加し、本文が否定なら肯定の形で付加するという原則があります。また主文に使われている動詞が be動詞か一般動詞か、助動詞かで付加部分もそれに同調させなければなりません。ただし、例2のように、shall we / don't you think といった成句表現もあります。

よ yo

例文1;学校に行きなさいよ。Do go to school! / Go to school!

例文2;この映画はとてもおもしろいですよ。 This movie is very amusing!

例文3;ぜひこの仕事をやってもらいたいんだよ。I do want you to do this job.

強調のためにつける「ヨ」です。命令形であれば、念を押すためにつけるのであるが、発語した者が男か女かによって異なるし、なんといっても声の調子によって感情や気分が異なります。命令形でない場合には相手に対する強い勧誘、推薦、場合によっては押しつけの気持ちが込めらます。英語の場合には最後に「!」をつけるとか、一般動詞の前に do をつけるなどのさまざまな表現を追加することになります。

わ wa

例文1;この花はきれいだわ。This flower is beautiful !

日本語には、「男ことば」「女ことば」の違いがかつてははっきりありました。その多くは現在、激しく変化していますが、この「ワ」に関してはまだまだ広く使われているようです。日本語の主語が省略されることが多い状況から考えるとこの「ワ」がつくだけで話者が女であると推定しやすい(最近そうでもなくなりましたが・・・)。これには強調する役割と、女らしい柔らかさを演出する役割の両方が考えられる。英語ではこれに該当する表現を考え出すことができるでしょうか?

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仮定法(英)

日本語では文末に表される部分の多くが、英語では前後の助動詞、副詞によって示されていることを説明しましたが、動詞それ自体の特別な形についても述べておかなければなりません。英文法書ではその動詞の特性を「法」と名づけて分類しています。モダリティとの関連を知るために、それらについての知識をいくつか持っておく必要があります。

想像状態を示す英語での<仮定法>も日本語では文末表現で表されています。しかし日本語には仮定法そのものはないので、なんらかの(話者の)心の状態をあらわす表現で代用しなければなりません。それらには「(た)だろう(に)」「(た)ものを」「(た)とおもわれる」などが含まれます。

例文1;もし雨が降れば試合は中止だろう。If it rains, the game will be called off.

例文2;仮に石油の輸入が全面的に停止したならばわれわれの生活はどうなるだろうか。If the import of oil should be completely stopped, what would our lives be like?

例文3;もし泳げるならその旅行に参加するだろうに。If I could swim, I would take part in the tour.

例文4;もし財布をなくしていなかったらその旅行に参加していただろうに。 If I had not lost my wallet, I would have taken part in the tour.

西欧語では仮定法(条件法)の形式が確立しており、実際にありそうもないこと、想像の世界、実際になかったことをあらわすために、動詞を中心とする特別語形な変化のルールに従います。ところが日本語の場合にはそのようなものは一切なく、「仮にも・・・」「万が一・・・」などの語句と文末表現との組み合わせでその状況を表現することになります。

ですから日本語を英語に直す場合、未来の予想(例1)、ありそうもない未来について(例2)、現在についての想像(例3)、過去のできごとについての想像(例4)の4つのうちどれにあてはまるかを吟味しなければなりません。それぞれの形式が異なっているからです。

日本語における仮定的な状況で気をつけなければならないのは「タ」の存在です。すでに述べたように「タ」には<過去形>としての用法と<完了>としての用法があります。ここのところが日本語では使う人の間にきちんとしたルールの統一がありません。

たとえば、現在についての仮定について「水がなければ」と「水がなかったら」のいずれも許容されています。しかし過去についての仮定では、必ず「水がなかったら」が使われます。そこにははっきりとした意識的な使い分けの基準がないのです。そこのところを考えながら西欧語との比較をしていかなければなりません。

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<コラム>英語における仮定法のあらわしかた

英語では2タイプの仮定法、つまり現代についての仮定(仮定法現在)と過去のできごとについての仮定(仮定法過去完了)の作り方については非常に興味深い方法をとっています。というのも他の言語で仮定法(条件法)を採用している場合、それぞれの新しい独特の語尾を作り出しているわけですが、英語の場合、”手抜き”をしました。

つまり、こういう方法です。現在における仮定をあらわすには、普段使っている現在形をわざと過去形にしてしまう。聞き手や読み手はすぐにその異変に気づきますから、それがひとつの信号となって伝えられるわけです。「おかしい、これは現在についての文なのに、ここで急に過去形が使われているぞ!」というぐあいです。

一般動詞はただ過去形にするだけ、be動詞は was を使わずすべての主語に対して(正式には) were を用いる、そして過去形が可能な助動詞(would/could/might)についてはみなその後に動詞原形をつける、という方法になりました。多くは if 節と主節の組み合わせででき上がっていますが、主節では助動詞が必ず使われます。

過去における仮定も同じ発想です。つまり普段なら過去形を使うところをわざと had + p.p. つまり過去完了の形を使うことにしました。これも上と同じ理由で聞き手、読み手の注意を引きます。なお、助動詞についてはたとえば would +原形で書くところを would have p.p. の形にしてあります。

この方法を用いることによってフランス語やスペイン語などと違い、英語では新たに「仮定法語尾」というものを覚える必要がなくなりました。外国の初級英語学習者にとってはありがたいことになりますが、しばしば注意深く読んだり聞いたりしていないと、普通の過去形なのか仮定法なのかとまどう場合も少なくありません。そして話はあくまで助動詞中心で進みます。

英語ではたとえば、準動詞( toV, Ving, Ved)でもひとつの形に何役もの機能をもたせてありますから、「形は少なく、機能は多く」というのがこの言語の選んだ特徴的な変化の方向だといっていいでしょうが、そのような道を選ばなかったほかの言語と比較して長所もあるが、短所も出てきています。

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<コラム>法とはなにか

西欧言語系統の文法では「法 mood 」と呼ばれるものがあり、文の内容についての話者が持っている心の中の態度を示すことになっています。英語では普通におこる”事実”について述べるのが「直説法」であり、ほかに「仮定法」と「命令法」があります。

例文1;どんなに貧しくとも我が家ほどいいものはない。Be it ever so humble, there is no place like home.

例文2;彼女は日曜日にピクニックに行こうと提案した。She suggested that we go on a picnic on Sunday.

例文3;その問題はすぐに解決する必要がある。It is necessary that the problem be solved at once.

英語での命令法は単純そのものです。中学校時代に学習したように、「止まれ!Stop! 」のように、主語をつけないで動詞の原型をおけばいいだけです。かつては例1に表されている”譲歩”のようにもっと複雑な用法もありましたが、少数の慣用表現を除いては現代では詩以外にはほとんど使われていません。

多くのヨーロッパ言語には「接続法」があります。これは自分の心の中を示すための動詞形(動詞語尾)で、願望、推測、命令、提案など実際の場面で「実行」されていない事柄を示します。日本語には存在しませんから、なかなか理解しにくい形式です。ですから、イタリアあたりに行って、自分の話すイタリア語の中にこの接続法をたくみにまじえたりすれば、地元の人から尊敬を受けること間違いなしです(梅棹忠夫著「世界言語紀行」岩波新書より)。

英語では「接続法」の用語など、どこの文法書にものっていません。ではなくなってしまったのかといえば、そうではなく<仮定法現在>という名前の非常に単純化された形で残っています。これは例2、例3にあるように接続詞 that の中の文で使われる動詞を should 原形、または原形の形にするだけです。英語では三人称単数現在以外の現在形はみな原形ですから be動詞以外はほとんど目立ちません。ただし that の前の主動詞が過去形であったりすれば、本来従属節の中身は過去形になるはずですからすぐに気づきます。

接続法などとはまるで縁がない日本語を母語とする者にとってはあまり利用価値がなさそうですが、「現実のできごと」と「心の中の思い」がしっかり区別されているのは、そのことに重点をおく、ラテン語やギリシャ語などを源流とする文化的背景が大きな影響を及ぼしているからでしょう。

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<参考>時や条件の副詞節内の時制

英語では when / while / until / by the time / as soon as などの時の接続詞、if / unless などの条件の接続詞によってつくられる副詞節の中では未来形の代わりに現在形を、未来完了形の代わりに現在完了形を使う規則になっています。いったいこれは何のためでしょうか?

例文1;彼が到着したらあのレストランに連れて行こう。 When he arrives, we will take him to the restaurant.

例文2;もし明日晴れていればピクニックに行きます。If it is fine tomorrow we'll go on a picnic.

これは厄介な決まりに見えますが、よく考えると一種のモダリティをあらわすのには、なかなか理にかなった方法だといえます。というのも主節のほうは実際に起こりそうな未来(場合によっては命令形)だとすれば、一方で when や if 節の中身は話者が勝手に”設定”した世界だからです。ですから「述べたい内容」と「その前提になるための内容」とを区別するために、時制をわざと1段階引き下げたのだと考えられます。

もしそうだとすれば(学会に定説はない)、これは前述の仮定法を作るのに現在形をわざと過去形に、過去形をわざと過去完了形にしたのと”同じ発想”だということになりましょう。なお、このようなシステムは、たとえばスペイン語ではわざわざ<接続法>という動詞のかたちをつかってあらわしています。英語では動詞の新たな形式を増やさないように、普通の動詞の現在形や現在完了形を接続法の代用として用いていると考えられます。

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

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