ミラー級ヨット自作記

(2)

ミラー級ヨット

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製作の手順(つづき)
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べニア板の継ぎ目に、張ってある白いテープはガラス繊維。幅は4センチぐらいで、織り方が縦横いずれに引っ張っても大丈夫になっている。このため、ほつれが出ることが少ない。これを板の表面に仮止めするには、画びょうが一番だとわかった。
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船底にも同様のテープを張っていく。角度に合わせて折り目をつけながら、できるだけ板の表面に密着させる。
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船尾のほうも、大体テープを張り終わった。
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次に始まるつらい仕事が、ポリエステル樹脂に、硬化剤を適度混ぜてそのテープに塗っていく作業である。30分もたつと硬化が始まるので、大量に塗ることはできない。小さな器に少しずつ作って塗っていく。写真のように、透明な樹脂なので、ちょうどニスを塗ったような感じになり、塗りすぎると垂れたり、山になったりするが、これらは船の内部で、完成後は日の目を見ることがないので、気にしない。
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船尾のほうも順次塗っていく。べニア板の継ぎ目だけでなく、補強材を固定するにも使われる。つまり一種の接着剤なのだ。
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先につけた銅の針金も一緒に塗りこんでしまう。見栄えは悪いが、これも皆、船の内部となる。こうして船全体が、樹脂を含んだガラステープによってしっかりと固定された。この方法がなかったら、とても素人に水漏れのしない船など作れはしない。昔の船大工が正確に材木を組合わせて、水の漏らない船を作っていたことは実に驚嘆に値する。だから自作と言っても、現代のプラスチック技術にしっかりおんぶしているわけで、あまり自慢にならないのである。
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とはいっても、よくできた設計図のおかげで、手際よく隔壁を入れ、その間に見える正方形をした、マストの重量を支える板を入れ、すべてガラス繊維とポリエステル樹脂によって固定されていく。隔壁がすべて済んだら、あとは上にデッキの板をかぶせるだけなのだ。
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舳のほうを見る。先ほどの白いべニア板に、すべて念入りにポリエステル樹脂をペンキのように塗って、防水を完全にする。つまり完成後はべニア板が海水と触れることは決してないのだ、あってはならないのだ。
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船尾部分も塗り終わった。後は上にデッキ板をかぶせて固定させるだけ。デッキ板をかぶせると、大部分が、「水密タンク」となり、転覆しても沈没することはない、実に安全な構造だ。
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 そうしておいて、ボートは郷土の面でもしっかり出来上がったから、裏返す。こちら側はまだ白いべニア板のままだ。また継ぎ目には同の針金が生々しく見えている。
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 その針金はニッパーで、どんどん切り取ってしまう。そしてできるだけ平面になるように、突起物がないように表面処理をしていく。てっぺんに見える溝はセンターボードを出し入れする穴。そして、継ぎ目には、内側と同じようにガラス繊維のテープを張り、ポリエステル樹脂を含ませていく。これで内側からも、外側からも、継ぎ目はしっかりと防水されることになった。荒れた海では、どんな力が働くかわからない。ボートを引きちぎるような力がかかるかもしれない。ボートは最悪の場合を想定して、できる限り丈夫に作るのだ。そしていよいよ塗装の下準備
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 第1回目の塗装。色はネイビーブルー。これはセールが真っ赤であるためだ。このあと2,3回塗り重ね、十分乾燥させる。冬が迫ってきた。気温が下がる。気温が下がると塗料の硬化が遅くなる。気が気ではない。
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 そして11月になったころ、外部塗装は完了し、再びデッキを上にして船台に置く。
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 残る仕事は船尾に舵を取り付ける金具をつけること。そしてマストを立てたときにそれを支えるワイヤーを止める金具3か所を取り付ける事。また、セールを引っ張るロープ(シート)を通す滑車や留め金具(クリート)の設定。いずれも設計図通りに指定された場所に取り付けていく。
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 あらかじめ組み立てた舵(ラダー)を取り付けてみる。さらに舵棒(ティラー)をつけてみる。
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 船台は折り畳み式で、車付き(ゴムタイヤではなく、硬質プラスチック製)。いずれも同じ英国のボート販売会社から輸入。輸入して運送料を払っても、日本で売っているものを買うより安いのはなぜだろう?
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 マストを立て、横棒(ブーム)を取り付け、前の小さい帆(ジブセール)とうしろの大きな帆(メインセール)を張る。セール番号は、世界のミラー級ヨットにそれぞれ割り当てられ、私のは70747だ。ようやくヨットとしての体裁を整えた。
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 中央には横方向にベンチがつき、それと垂直方向に船に縦の穴が開けられていて、そこにセンター・ボードを差し込む。風向き、水深に応じてその板を上げ下げする。また、ジブセールにはジブシートがつき、左右に振り分けられている。
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 船尾の方向にはラダー、ティラーが取り付けられ、ブームを出し入れするメイン・シートが滑車でつながっているのが見える。
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 舳(ヘサキ)(バウ)の方向を撮影。の方向を撮影。この通りバウは尖っていない。逆三角形であって、これが波を乗り越えていく。ただのべニア板が、設計図通りに作ると船らしい曲線を帯び、引き締まったデザインになっているのがわかる。
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 船尾方向から撮影。船体の黄色い部分は、「Champong 」号と書いてある。
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 マストとブームの作りはシンプルで、ロープを使ってセールを上げ下げし、強風のときにブームが跳ね上がらないように、抑えのロープもついている。
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 いよいよレンタトラックで、自宅より50キロ離れた新しい港に運搬開始。この船は全長が3.4メートルあるから、普通の2トントラックではだめで、2トンロングを借りることにした。普段、軽自動車を運転している身で、こんな大型のトラックの運転席に座ることはたいへん怖い。しかも今年2017年から、新たに普通免許を取る人は、この種のトラックは、「中型免許」を持っていないと運転できないのだ。それほどまでに運転間隔は乗用車とは違う。

コロ付きの船台に乗せた、船体の重量は60キロ強なので、一人でも荷台に持ち上げることが可能である。写真のように、厚い板を渡し、引っ張り上げる。荷台の高さは臍に届くぐらい。人を頼むと高くつくので、すべて自分でやることにする。(2017年5月)

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 緊張の連続だったが、事故もなく目的地の港に無事到着。ただしその先はトラックの通れない、狭いトンネルなので、いったんここでボートを下ろし、あとは手で引っ張っていかなければならない。
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 荷台に載せるときより、むしろ降ろすときのほうが大変だった。ボートが自らの重みで暴走しないように、そろりそろりと降ろしていかなければならないし、厚い板のせいで、段差が生じ、それを和らげるために、硬質の発泡スチロールを用意した(白い正方形の部分)。
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 それだけでなく、船台が、いざ暴走した時に備えて、うしろからロープで押さえておく。いずれにせよ、運搬は成功。車のレンタル代は、保険、燃料も含めて2万円弱だった。
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 新しい港にひとまず置いてみる。水に浮かべると、センターボードのところから水漏れがしている。慌てて陸に挙げ、その部分にポリエステル樹脂を塗布した。
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 ここは2011年の津波で破壊された港で、もう使われることはない。かつては船の修理所や牡蠣などの洗浄を行っていた。公衆便所さえあったのだ。深く入り組んだ入江であるが、津波のときは、奥にまで水が入り込み、山にぶち当たったらしい。
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 セールを挙げて、風向を確かめる。あと必要なのは、アンカーと、もやいのための金具だ。こののち、随時追加
 

2017年1月初稿

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