12言語の比較を試みる |
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それぞれの言語を専門に勉強し、それぞれの道を究めた方々は世の中に多いが、できるだけ多くの言語に手を出した人というのは驚くほど少ない。人間の記憶力や理解力からすれば、たくさんの言語をやればやるほど中途半端に終わるという気持ちがあるためだろう。 だが、言語を研究する人にとっては言語の相互比較というのはきわめて興味深いテーマである。英語と日本語を取ってみても、あまりの文法構造の違いに驚くべき事ばかりだ。しかも一方ではその根本に非常に似通ったところがあるのも事実である。 私は今後のライフワークの一環として、12カ国語をそれぞれ比較してみたいと考えている。これらの言語をいわゆる「マスター」する事は物理的に無理だとしても、少なくとも文法構造についての特徴を検討してみることは意義のあることだと思う。 そのようなわけで次のような比較予定表を作ってみた。単純に計算すれば66通りとなるわけである。しかし、自国語つまり日本語をまず中心として11通りを考えてみたい。そのあとで興味深い相違や類似点を発見したらそのたびに書き入れていくことにしよう。 このような試みは今まであまりされたことがないと思われる。しかし人間の使用する言語というものを、細かく分析して調べていく方式とは別に、大局的に総合的に見る方法もあっていいのではないか。下にあるような表を礎にして何か新しい光明が見えてくるかもしれないのだ。まだ何も書き入れなくても見ているだけで楽しい。 さらに、各国語の共通点を見ていると、どの言語にも同じ働きをするものが多数あることに気づく。これらを少しずつ集めて、いずれはまとめてみたいものだ。→世界言語の共通点メモ
2004年8月15日初稿~2010年2月最新稿 NO.3 日本語と中国語 表に戻る 漢字、その読み方、文化の面で多大な影響を日本語が受けているからといって、中国語と日本語が文法的に似通っているというのは大間違いだ。漢文を学習した人は十分に思い知ったように、こんなに文構造の異なる言語の組み合わせはあまり例がない。 中国語の語順はむしろ英語に似ている。前置詞があり、英語の”第5文型”に近いものがあり、語尾変化が極めて少ない。子音の種類は多く、母音についてはもっと変化をつけるために”四声”なるものを作り出し、日本語ではあまりに多い同音異義語を排除した。 日本語には前置詞がなく、逆に後置詞(格助詞)があり、接続詞についても文の最後につくということは誰でも英語を学習する過程で知ってのとおりである。英語の文を「後ろから訳す」というように訓練を学生時代に受けた人は漢文の「返り点」の工夫を同じタイプの構造ではないかと気づいていた人も少なくないはずだ。日本語は朝鮮語、モンゴル語、トルコ語、などと文法構造が似通っており、これらの国々はみな中国を円周状に取り巻いているのが興味深い。このような地理的な分布ができた背景にはどんな歴史的推移があったのだろうか? NO.4 日本語とロシア語 表に戻るたちの悪い語呂合わせ;フトルニーク=水曜日 日本語では、食堂で注文するときに「わたしはうなぎを食べたい→わたしはうなぎだ。」というような、主語と述語の関係を無視した極端な省略表現が普通だが、これはロシア語でも見受けられる。「彼は今日は仕事をしているのです→スヴォードゥニャ・ラボータ(今日+仕事) NO.7 日本語とアラビア語 表に戻る たちの悪い語呂合わせ;ウンム=母、 アンタ=あなた NO.8 日本語とトルコ語 表に戻る たちの悪い語呂合わせ;クズ=少女NO.9 日本語とエジプト・アラビア語 表に戻る 英語では「煙草をのむ」は smoke 、「ジュースを飲む」は drink juice であって同じ「飲む」でも使う動詞が違う。ところがエジプトアラビア語では日本語と同じくどちらも「飲む shirib 」という動詞を使うことができる。 これは取るに足りないことかもしれないが、「飲む」という口の中にものを入れ込む動作をみんな同じ動詞で表してしまおうという点で、両国語は共通しているわけだ(もちろん他の動詞ではまったく違っているだろう)。つまりこれは一つの動作に対するイメージが互いに似通っていることの現れである。2007/10/12 NO.10 日本語とヒンディー語 表に戻る 学界では、まるで異なっているといわれているけれど、この二つの言語は似通っている。語順が非常に似ていること。そして「後置詞」の存在。これはまさに日本語の「助詞」に該当するといってもいい。「・・・の上に」「・・・の」など。ヒンディー語はインド・ヨーロッパ語族に属すると言うけれど、たしかに動詞の語尾変化などは似ていても全体の文法構造は、日本語、朝鮮語、トルコ語の方に近いような特徴を備えている。いわゆる日本語の「助詞」と非常に近い関係にある具体例を挙げてみよう。「あなたの写真」での「の」と、「このチョコレートは200円のです。」の「の」は、日本語では機能が違うにも関わらず同じ語を用いている。(前者は「所有」を表し、後者は「形容詞限定」としよう) なんと、ヒンディー語でも、どちらの場合でも「ケ」である。つまりどちらの言語でも名詞を修飾する場合の語は同じ語に任せている。これは朝鮮語の場合にも言える。 日本語では完了形は -ta となるが、ヒンディ語では未完了形が -ta となる 日本語では(1)夜も寝られない(2)私も行きたいの2文のなかで、「も」は発音が同じでも、意味が違う。つまり(1)夜でさえも(2)私も同じく、というふうに使い分けが行われている。ヒンディー語では、この「も」にあたるのが、「ビー bhi 」であり、何よりも”発音が同じなのに使い分けが違う”という点で共通なのである。このことは、日本語と朝鮮語の場合にも言える。 NO.11 日本語とスワヒリ語 表に戻るたちの悪い語呂合わせ(ただし、スワヒリ語ではアクセントはうしろから2番目の母音にある);ソコ soko =市場 ウソ uso =顔 ヌカnuka =臭い ナアニ nani =なあに、だれ ワタリー watalii =旅人(複数)baba kaka jana NO.12 朝鮮語と英語 表に戻る 朝鮮語が、英語より日本語に近いというのは周知の事実だが、単語レベルや発音の点で、ヨーロッパ諸語と似ている点がいくつか見られる。「石橋」は英語では stone bridge となるが、これは名詞を二つ配置し、左の名詞が臨時に”形容詞”的な役割を演じ右側の名詞を修飾している。この場合間に仲介的な語、たとえば前置詞のようなものは不要になっている。すべての語形成がこのようになっているわけではないが、かなり有力な作り方である。この方式は朝鮮語にもあり、「太郎のガールフレンド」は Taro yoja chingu となり間になんら仲介のことばが入っていない。NO.14 英語とロシア語 表に戻る よく言われることだが都会の言葉は簡略化され軽快になってゆくのに対し、田舎の言葉は昔からあった複雑な規則が温存される。このこともあって英語とロシア語は西欧の言語では対極をなしているといっていいほど違う。 英語は徹底的に語尾変化をなくし、厳格な語順によって言語構造を維持している。これに対しロシア語では性の区別はもちろんのこと、動詞も形容詞も名詞も語尾変化をする。しないのは副詞だけだ。語尾変化の最たるものは「格変化」であろう。ひたすらロシア民族の記憶力のすばらしさに驚嘆する。しかし語尾変化を徹底して守っているおかげで語順は自由である。一説によると強調したい部分を前に持ってくることによって普通の文でも20数通りの言い方が可能であるという。 NO,15 英語とスペイン語 表に戻る 英語とスペイン語は意外に共通点があり、もしかすると時制の点では英語とフランス語以上ではないかと思われるふしもある。特に気づくのは<現在完了>であろう。その使い方は<完了・結果・継続>というように英語とほぼ一致する。一方でフランス語における<複合過去>は普通の過去形に近くなってしまっている。 さらに時制において特筆すべきことは英語スペイン語ともに進行形があることだ。これに対しフランス語には進行形はない。また、英語の<過去形>というのはフランス語のすでに書き言葉になってしまっている<単純過去>に相当するが、これがスペイン語になると<点過去(完了過去)>というものが使われており、多くの点で英語の過去形と似ている。 しかし類似点はここまでで、やはりスペイン語はロマンス諸語だから、フランス語やイタリア語に似る。英語では主語を省略することは考えられないことであるが、スペイン語では人称や数、時制によって動詞の形がきっちり決まっているので、主語をつけないのが普通である。 スペイン語「 molestar 悩ます、不快にする」英語「 molest (人に)暴行をはたらく」を例に挙げよう。この二つの動詞を比較してみると、明らかに語源的には共通なものを持っているが、長い年月のうちにすっかり異なる状況に当てはまる単語となってしまったことがわかる。 NO.17 英語とアラビア語 表に戻る関係代名詞の使用法が興味深い。 (1)英語では関係代名詞の目的格は省略できる。これに対してアラビア語では主格でも目的格でも省略しないが、先行詞が<非限定>の場合(「・・・がある」のような存在表現に出てきた名詞など)に省略できる。 (2)英語では the girl whom I saw her in the park と書いたら誤りになる( her が余計)が、アラビア語では逆にこれが必要になる。 NO.18 英語とトルコ語 表に戻る トルコ語では日本語以上に英語からまるまる語彙を借りているようだ。「おもしろい interesting 」は enteresan (エンテレサン)であり、「一般的に generally 」が genellikle (ゲネリックレ)であり、明らかに移入されたことが見てとれる。この程度の語彙はトルコ語自体に持っているはずなのに??? NO.20 英語とヒンディー語 表に戻る両方とも単語の語尾の変化形を別の用途に頻繁に転用する。英語では動詞の過去形を「仮定法過去」に転用している。ヒンディー語では「主格名詞の語尾の複数形」を「後置格の語尾の単数形」に転用している。 NO.22 朝鮮語と中国語 表に戻る 隣同士であり、お互いの行き来や戦争でのつきあいが非常に長い両国のこと、言語がよく似ていると思いそうだが、どっこい非常に異なる。そもそも中国語はむしろ英語に近いような語順を持っており、一見西欧系のような印象を受ける。しかも漢字を中心にしてできた言語だから、その書き言葉は非常に奥が深い。 一方朝鮮語は文法的には日本語によく似ていて、格助詞が活躍し、連体形が名詞を修飾し、述語が必ず文末に来る。確かに長い歴史の間に無数の漢語を取り入れてはいるが、それは単なる単語の次元であり、日本語の「音読み」の場合と同じようにもとの中国語の音を彷彿とさせる発音ではありながら、すっかり自国語の音韻体系に取り入れてしまっている。 なんと言ってもハングルという日本のカナにあたる文字体系を発明したのが中国語との決定的相違であろう。漢語を単語として取り入れていながらそれらをさまざまな品詞に使い分けるには、ハングルによる統語体系がなければならない。 このように文法的には大きく異なるが、発音に関しては共通点がある。とくに朝鮮語での「激音(げきおん)」は中国語の「有気音(ゆうきおん)」に相当し、空気を激しく吐き出す。普通の言語では「無声音」と「有声音」の対立があるが、両国語では上記の音がさらに付け加えられる。なお、ヒンディー語にもこのタイプが存在する。 NO.25 朝鮮語とフランス語 表に戻る フランス語と朝鮮語のもっとも大きな共通点はその発音の類似性であろう。具体的にいえば、ともにリエゾンが存在する。フランス語でのつづりは最後の子音字が書かれていても発音されない場合があり、それが母音で始まる次のの語と結びつくと発音されるようになることがある。つづり; ils ont 実際の発音 [ ilzon ] 同様の現象が、ハングル文字で書かれた朝鮮語の単語の場合にも存在する。音節松の子音のことを”終声(しゅうせい)”というが次に来る単語の先頭(初声)が母音だと、ふたつがむずびついてしまう<終声の初声化>。例: san + i = sani NO.33 フランス語と中国語 表に戻るフランス語は歴史的にロシア語と同様、中国ともさまざまな出来事があり、これらを追っていくことは今後興味深いテーマとなろう。 フランス語の「海」をあらわす la mer は「母親」をあらわす la mèr e と同音である。おそらく語源的には同じであろう。ただ区別をつけるために、母親のほうにはアクサン記号がついているし、さいごには e がついている。さらにともに女性名詞である。振り返って中国語の<海 hai >という漢字は日本人なら誰でも知っているとおり、さんずいと上のかんむりを取れば<母>となる。”母なる海”のとおり、発想が同じである。ことばを表面的な、物理的な違いだけで捉えるだけでなく、音声や文字ができる際に働いたこの”文化的”発想にも注目してはじめて、言語の研究は興味深いものとなる。 NO.34 フランス語とエジプト・アラビア語 表に戻る 最上級の形式がなく、冠詞の有無によって比較級か最上級かを決める。形容詞は通常名詞の後ろにつく。 NO.37 中国語とヒンディー語 表に戻る 文法構造は違うが、発音の面での類似がある。まず共に「そり舌音」があるということ。また「有気音」「無気音」のくべつがあることNO.39 ロシア語とスペイン語 表に戻る 「気に入る」という動詞表現の場合、主語が気に入る「対象」であり、目的語が気に入る「本人」が来る語順となる。 NO.40 ロシア語とフランス語 表に戻る 17世紀には、パリがヨーロッパの中心で、東の果てのロシアは、文明の流れに後れをとるまいと、一生懸命フランス語やフランス文化を取り入れた。ロシア語にはフランス語の文法や語彙の影響がたくさん見られる。ともに「進行形」をもたない。 NO.43 ロシア語とエジプトアラビア語 表に戻る 現在の場合に共に英語の be動詞に当たるものがないのに、過去・未来の場合には存在する。 NO.48 スペイン語とトルコ語 表に戻る いずれも代名詞主語はあるが、強調したい場合や明確にしたい場合を除いてなるべく使わず、複雑な動詞変化を作り出して、それで人称を表す。したがって学習者はそれらを暗記するのにひと苦労である。 主語を省略して動詞を複雑にするのがいいのか?それとも主語はわずらわしいながらも必ずつけてその代わり動詞活用を簡単にしたほうがいいのか? 日本語のように主語も省略し動詞活用も単純にしてしまうと、敬語や男ことば、女ことばを作り出したりしなければならず、結局のところ何らかの明示する手段が必要なのだ。 NO.51 スペイン語とスワヒリ語 表に戻る いずれの言語でも、動詞の形態が、人称や数によってしっかり決まっているため、人称代名詞をわざわざ示す必要がない。そのため多くの文章では主語抜きで語られる。 NO.55 フランス語とヒンディー語 表に戻るフランスとヒンディー語の共通点は何かと聞かれたならば、何といっても鼻母音であろう。オン、アン、エンなどを発音するときに、口からだけでなく鼻からも同時に吐き出すことによって起こる音は、こんなに離れていながら同じように発現したのである。 NO.56 フランス語とスワヒリ語 表に戻る 多くの西洋語は、複数の場合に語尾変化をしたり、別の形になったりする。フランス語の場合は、語尾にある -s を発音しないために、綴り上はともかく、音声においては単数と複数の区別がつかなくなってしまった。区別の秘密は名詞の前につく冠詞にある。男性名詞、女性名詞のほか、複数につく形がそれぞれ定まっているために、単語そのものが音声的に不変でも不便をきたすことはないのである。ある意味では、音声の面だけに関して言えば、接尾辞変化が接頭辞変化になったのに過ぎないといえる。 スワヒリ語の場合、これと同じことが言える。冠詞はないが、大部分の名詞は単数、複数によって、接頭辞が異なる。ただし、名詞の分類がふくざつで、その接頭辞の種類は多岐にわたる。 NO.57 トルコ語とアラビア語 表に戻る 文化圏が隣り合い、戦争貿易の両面で非常に多くの行き来があって語彙が非常に共通のものが多くありながら、文法構造はトルコ語が日本語や朝鮮語系統に属し、アラビア語は西欧語の系統に属しているために、それぞれの特徴をガンとして変えない。 音声のよく似た語彙;朝「サバーフ」歴史「ターリッヒ」必要「ラーズム」NO.60 アラビア語とスワヒリ語 表に戻る 間にインド洋があり、お互いに盛んな行き来があっただけに似ている単語が多数ある。特筆すべきは数字である。スワヒリ語の6(saba)、7(sita)、9(tisa)は、アラビア語由来である。また木曜日はスワヒリ語で Alhamisi といい、アラビア語の冠詞 al と5を表す khamsa から生まれた「第5の曜日」のことである。ただし他の曜日は少しも似ていない。 ただし語彙の面での発音面での類似があるというだけで、文法面ではそれぞれの起源からしてまったく別のものである。アラビア語はアラビア半島の民族が中心になって作ったものだし、スワヒリ語はタンザニアやケニア周辺の言語と貿易商人たちの言葉が混じってできた、いわゆる”ピジン語 pidgin ”ならびに”クレオール語 creole”である。 その他アラビア語と類似性が見られるスワヒリ語 salama 無事に kitabu 本 shukuru 感謝する elfu 一万 saa 時間 nusu 半分助動詞的なものや、時を現す接続詞の中にまで類似する単語がある。 lazima ・・・しなければならない baada ya ・・・のあとで kabla ya ・・・の前に maktaba 図書館(アラビア語では普通、本屋)NO.61 トルコ語とエジプト・アラビア語 表に戻る トルコとアラビア諸国とはなんといっても地理的に近く2000年以上にわたって戦争、略奪、占領、貿易、布教、移住と盛んに行き来があったために、言語的には非常に近い関係になったはずである。 ところがトルコ語はアルタイ語族に属し、日本語や朝鮮語に近く、アラビア語はインド・ヨーロッパ語族ではないが文法は英語やフランス語に近い。 文法構造の違いはそう簡単に埋まりはしない。文法構造は脳内に幼少時に埋め込まれてしまい思考方式の基本をなすからである。これに対し語彙の面では容易に交換が可能である。 基本語はあまり共通のものがないのは普通だが、最も顕著な例として「本」ではエジプト・アラビア語ではキターブ kitaab 、トルコ語ではキタップ kitap という具合にまるで同じである。 「いつも always 」という副詞ではエジプト・アラビア語ではダイマン dayman 、トルコ語ではダイマ daima といい、これらは典型的な日常語、重要語だ。また、語彙が異なっていても動詞の語尾の形式が非常に似通っている。 NO.62 トルコ語とヒンディ語 表に戻る 共に人間を表す単語は「アダム」である。トルコ語、ヒンディ語共に、日本語、朝鮮語に似て後置詞をつかい、動詞が最後にくるタイプでありながら、共にペルシャ語由来らしい、ki に代表されるような、西洋言語における関係代名詞、接続詞に酷似した形態が見受けられる。 両言語とも、シルクロー沿いにあっただけに、アラビア語と音韻の似た単語が非常に多い。また、動詞活用は、人称による変化がきちんとあり、これまたヨーロッパ系、セム系と共通点が多い。NO.63 トルコ語とスワヒリ語 表に戻る 所有格の語を名詞のあとにつける点が似ている。注;トルコ語では単語として合体しているが、スワヒリ語では分かち書きされているのとされていないのがある。トルコ語「金 para →私の金 param 」スワヒリ語「こども mtoto →わたしのこども mototo wangu 」「仲間 mwenzi →私の仲間 mwenzangu 」アラビア語とスワヒリ語の間の語彙は共通なものが非常に多いが、トルコ語との間にもかなり近い関係があるようだ。ただし文法体系はまるで違う。 (左がトルコ語、右がスワヒリ語) ニュース haber - habari 父 baba - baba動詞の人称による変化を見るとまるで逆であり、トルコ語では<接尾辞>を、スワヒリ語では<接頭辞>をつけることによって、主語をつける手間を省いている。 NO.64 ヒンディ語とエジプト・アラビア語 表に戻る このふたつの言語の話されている地域は、遠く隔たっているけれども、緯度の点では比較的近い。またインドはイスラム教徒がたくさんいる。古代にはかなり頻繁に東西方向に交易があったと思われる。 文法構造はヒンディ語と比べると、エジプト・アラビア語ははるかに英語やフランス語に近いが、語彙の中にはいくつかの共通するものが見受けられる。 「建物」は共に imart という音に近い。「試験」も imtiHehn (エジプト) imtahaan (ヒンディ)と、似通っている。そして「本」kitaab はもはや中東世界の共通語彙といってもいいくらいだ。 ヒンディ語ではニュースを「カバール」新聞を「アクバール」という。これに対し、エジプト語では「ハバル」khabar であって、先頭の音は異なっていても、語源的には明らかに同じである。 NO.65 エジプト・アラビア語とスワヒリ語 表に戻る エジプト・アラビア語ならびにアラビア語と類似性が見られるスワヒリ語 salama 無事に kitabu 本 shukuru 感謝する elfu 一万 saa 時間 nusu 半分 助動詞的なものや、時を現す接続詞の中にまで類似する単語がある。 lazima ・・・しなければならない baada ya ・・・のあとで kabla ya ・・・の前に maktaba 図書館(アラビア語では普通、本屋) (特設)世界言語の共通点メモ存在文 存在表現「そこに何があるか」(未知のものの存在)「それはどこにあるか」(既知のものの存在)をそれぞれ規定する構文が存在する。それぞれを示すためにいろいろな工夫が見られる。 前者は冠詞を持つ言語の場合、冠詞をつけない。初めて登場する存在だからである。これに対し後者では必ず冠詞か、それに相当する語句をつけて特定のものであるという限定を行う。冠詞を持たない言語でも所有格を示すものがあるのでそれを使う。
© 西田茂博 NISHIDA shigehiro |