NO.46 スペイン語・フランス語比較 |
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NO.46 フランス語とスペイン語 表に戻る さすがにかつてラテン語から別れた兄弟同士の言語ではある。だが、連結動詞(be動詞)についてはすっかり異なった様相を示しているし、スペイン語の方がラテン語に近く昔の構造を色濃く残している。もっとも、フランス語の連結動詞 être の三人称単数現在 est は発音は違っているものの、つづりはラテン語のままである。例えばスペイン語ではほとんどローマ字読みで、母音が5つしかないこと。接続法が幅を利かせている。これに対してフランス語では近代語としての特徴、つまり語尾の省略や英語的な語順重視が目に付く。 動詞の時制については両国語は違った道をたどった。過去についていると、完了した過去についてはフランス語は<単純過去>、スペイン語では<点過去>が該当するものと思われる。また不完了の過去については、フランス語は<半過去>、スペイン語では<線過去>が該当するように思われる。 ところが近年になって、フランス語では<複合過去>の台頭がめざましく、これが現代語においては単純過去に取って代わってしまった。ところがスペイン語では<複合過去>同じ原則に基づく<現在完了>も存在し、これは点過去の地位を脅かしてはいない。これは英語における<過去>と<現在完了>と関係に似ている。 スペイン語では<進行形>が歴然として存在する。ところがフランス語ではいわゆる<進行形>というものが存在しない。現在形や、半過去形が副詞の利用によって、進行形のような役割をかねているといっていいだろう。 過去における未来を示す方法であるが、これについてはスペイン語では<過去未来>形が存在する。これに対し、フランス語では<条件法現在>を使っている。条件法は未来形と形もやや似ているが、仮定的状況を述べるのに使っており、それは同時に相手にソフトな感じを与える婉曲的用法も兼ね備えている。この用法でも過去未来とよく似ているのである。<命令形>に至っては、その作り方についての根本的考え方は大きく違っている。フランス語では、英語と同じく現在形の主語のない形を命令としている。ただしフランス語では<1人称複数、2人称単数、2人称複数>という3種類の命令形が存在する。 一方、スペイン語では、まず「あなた usted あなたがた ustedes わたしたち nosotoros 」における肯定命令の起源は<接続法現在>である。ところが「あんた tu 」における肯定命令は<命令法>として別に名づけられた形を用い、否定命令ではやはり接続法現在を使うという、非常に変則的な形をとっている。
兄弟同士のように似ているといわれるが、語源的にまるで違う単語も多い。特に日常生活に密着していればいるほど、その違いは顕著であり、逆に抽象的で世間離れしている単語、学問的、専門的になると、共通な単語が増えてくる。ストライキ(仏; grave 西; huelga ) <所有格>の比較 たとえば、3人称「彼の、彼女の」という所有格を取り上げてみると、フランス語、スペイン語の間には驚くべき違いがある。参考として英語の場合と比較してみる。 スペイン語では su はその後の来る名詞が男性、女性であることは関係がない。単数であるかだけが問題だ。そしてその複数形 sus はやはり男女に関係なく、複数であることだけが問題だ。だからスペイン語の場合、 su/sus だけを見てそのあとに来る名詞の性がわからない。 フランス語では son が男性、母音で始まる女性名詞につき、 sa が女性名詞につく。複数形である ses は男女の関係がない。このため、母音で始まる女性名詞の場合を除いて、フランス語では son/sa によりうしろにつく名詞の判定が可能である。複数につく ses では判定のしようがない。 両国語とも、冠詞を見れば、性数いずれもわかる場合が大部分であるが、このように所有格では部分的な情報しか得られない。 これに対して、英語ではそもそも男性・女性名詞の区別がないので、それらを表す機能は所有格にはまったく存在しない。そのため”所有者”が男ひとりなのか、女ひとりなのか、複数者なのかを示すだけの記号となってしまっている。
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