政治時評

杭州・西湖

法制度や行政によって社会に実現するべきだと思われる具体的方法

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労働組合を再興しよう

高度成長によって人々の生活が向上するにつれて、労働者の組合に対する関心はここ10数年の間に急激に低下した。いい給料をもらっていればそれも仕方がないことなのかもしれない。

だが、時代は変わりグローバル化の波が押し寄せてきた。リストラや失業、賃カツの脅威が日に日に増している。今までのように組合に加わらず、無防備でいると、労働者たちはあっという間に、会社によって意のままに翻弄されることだろう。貧困の時代とは違った新しい形態の労働組合の結成が望まれている。

山崎豊子のベストセラー「沈まぬ太陽」はその点で非常に参考になる小説だ。実際にいた日本航空の社員が、会社の意に沿わない組合活動をしたために、組合委員長を退くと同時に、アフリカの奥地に送られ、それから何年も海外をたらい回しにするという露骨な報復人事がこれで世間に知れ渡ることになった。

主人公は実に忍耐強い人で、もしここで止めたら会社に降参することになるということで、ついに定年までこの会社にいた。今では(実在の)彼は日本の組合運動のために講演を行っている。

この話から得られる教訓は、強大な会社の圧力に対しては、やはり団結する以外に方法はないということだ。第2組合、スト破り、職階制、その他よく考え付くと感心するほど、組合をつぶすための方策を次々と考え出してくる。

確かに会社の業績が良く、会社が社員に対して思いやりがあるような場合は、組合はあまり必要ではないだろう。だが、アメリカ式のむき出し資本主義が入ってきた以上、それに対抗する手段を取らなければ、労働者はイギリスの炭坑スト時代に逆戻りということになる。

現在日本の労働者の置かれている、最大の危機は何と言ってもリストラによる解雇であろう。解雇を有効に規制する法律が日本には存在しない以上、これ以上野放しの状態が続くと、大変な事態を招くことになる。

また解雇されずに残された者たちは、いなくなった人の分の仕事まで抱え込み、残業をすることになるが、これも巧みな会社側の操作によって、全く賃金の払われないサービス残業を、解雇の脅迫のもとに続けることになる。

日本人は、今までのような「お上」に反抗しない性質に加えて、豊かな経済に住んでいるために、ますます労働組合の団結力を近年失ってしまったように思われる。

これからはより戦闘的になり、主張すべきものは強力に発言していかなければならない。かつてイギリスではあまりにストライキが頻発するために国の経済が停滞する有様だった。日本ではそんな大規模なストは起こった試しがない。

政治勢力はバランスが必要だ。今のように大企業が一方的に思い通りに振る舞っていたのでは、労働者の将来は、「総員日雇い」しか見えてこない。ここで団結力を発揮してその力を見せつけて、対等な交渉にたてるようにすることが急務なのだ。

数十年前、イギリスではサッチャー首相による強力な組合つぶしが行われ、これが功を奏して、企業が息を吹き返し、ロンドンは世界金融の中心地の一つを再び占めるようになった。

だがその後の相次ぐ失業、企業本位の政治、国際競争によるさまざまな弊害の噴出により再び労働組合が見直されつつある。しかも企業の引き起こした環境汚染、さまざまな社会的悪影響にも対処するなど、単なる賃金獲得だけでは済まなくなってきているのだ。

この動きを大きな対抗勢力に育て上げるためには有能なリーダーが必要とされている。もちろん既成の政党との連携も必要だが、もっと大きな視野に立った運動へ広げて行くためには、優れた機動性を持った中枢機能が一刻も早くできあがらなければならない。

改稿2000年6月

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