政治時評

杭州・西湖

法制度や行政によって社会に実現するべきだと思われる具体的方法

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日本にもキブツを実現させよう

  

日本では、学校教育の問題ばかりがやり玉に挙がって、家庭教育の中に潜む重大な欠点について議論されることは滅多にないのはなぜだろう。外国の家庭との最も大きな違いは「しつけの甘さ」だといわれている。母子密着、父親軽視、愛情を金銭で渡す、極端な甘やかし、独立心の抑制、公衆道徳を教えない、右へならえの生活スタイル、などが特に目立つ点だ。「甘え」という名で全体を表現した評論家もいる。

今の親たちは、一様に学校の仕組みが悪いだの、社会がおかしくなっているだの、テレビのせいだなどとそとの世界を非難してばかりいるが、実際のところ家庭内の状態は核家族となり、近隣とのつきあいも減って、明確な基準も存在しないだけに、かなり恐ろしい状態になっていることが予想される。

おそらく、おぞましい人間関係が、閉ざされたドアの向こう側に多く存在しているのだろうが、プライベートな世界だけに調査も困難を極め、それこそ盗聴やのぞき見でもしない限りは実態の把握をすることは無理だろう。ただ、幼児虐待のような家庭内暴力の形になってはじめて外部にその姿が明らかになるだけなのだ。

誘拐した少女を9年間も自宅に監禁した男が最近逮捕されたが、これはまさに今述べたような「聖域」へ足を踏み入れることの難しさを物語っている。親権や所有権の前には、警察も手が出ないのだ。そして、今もなお日本全国で、子育てを全く知らない親たちが、ただ生かしておくだけの家庭教育を行っているのだろう。

何を持って正しい家庭教育とするのかを定義することができない以上、子育ての「不得意な」または「向いていない」人は、進んで自分の子供をもっと責任ある集団に任せたらどうだろうか。はじめから子供を産まなければそれでいいという議論は成り立つけれども、実際に不幸な境遇に、たとえば母親がパチンコに夢中で、子供は自動車の中で熱死したというような事件が後を絶たない以上、何らかの手を打たねばなるまい。

そこで参考になるのがキブツの制度である。イスラエルが建国され、世界中のユダヤ人たちがパレスチナの地に集まってきたとき、彼らは共通の文化を育てることもあって、自分の子供たちを寄宿舎に入れた。これはイギリスのパブリックスクール、ドイツのギムナジウムでも広く行われてきたことだが、10歳以降の子供に独立心を植え付け、最低守らなければならないルールを身につけさせるには格好の環境なのだ。

かつては寄宿制度が特権階級を生むと批判されてきた。だが日本では、むしろ集団生活になじめない若者が増えている現状からすれば、新しい展望が開けてくるのではないだろうか。寄宿制度では、一人一日中自分の部屋に閉じこもることなど許されないし、食事や洗濯も母親まかせという惨めな状態から脱するためにも、さまざまなタイプの寄宿学校が日本に誕生してもらいたいものだ。

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