政治時評

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アメリカ人は生活水準を今すぐ下げよ!!

アメリカ人は生活水準を今すぐ下げよ!!

おそらく、「生活水準を下げよ」と言われて、ハイそうですか、じゃさっそく実行いたしましょうと言うような人は、地球上にほとんど存在しないだろう。これまで営々と築き上げてきた富と便利さを捨てられる人は、よっぽど悟った修行僧でもない限り、到底不可能だろうから。

だが、事態は緊急を要している。このままいけば、地球の環境は、躍進するインド、中国の経済により、まったく取り返しのつかない状態に陥る。いやもう陥っているのかもしれない。各国に頻発する洪水と干ばつは、もはや止めようのない地球全体の狂いの現れかもしれない。

では、中国とインドに向かって、あなた方は、地球に悪影響を与えるから、経済発展はやめろといえるのか?我慢して今までの貧困に甘んじていなさいといえるのか?まさか頭の中で本気でそう思っている人はいないだろう。インドの寺に凄む無数の物乞いたちや、中国の山村に暮らす農民たちの最低生活、そして、アフリカ大陸での栄養不良の状態をそのままにしておきましょうという人はいまい。

だが、頭の中ではそう思っていなくても、実際の行動で独り占めにしたいという態度を明白に表している人々がいる。それがアメリカ合衆国の国民だ。夏はオーバーを着るほどに冷房を効かし、冬はシャツ一枚でいられるような暖房をかけ、SUVのようなガソリンを喰うが、性能が格段にパワフルな車を乗り回しているのが彼らだ。

彼らは、新天地に定住したときから、自分たちのライフスタイルは、その土地にふさわしいものであるべきだという信念を持ってきた。だから、途方もない広さの家を造り、自然の恵みが提供できる限りの資源を欲しいままにしてきた。彼らに言わせれば、自分たちの生活は自分たちで築き上げたものだから、当然それを享受する権利があると思いこんできた。

だが、その時代は、1950年代、20世紀の真ん中で終わりを告げたはずである。そのときから地球の資源は有限であり、アメリカより遙かに人口の多い国がほかにいくつも存在し、もし彼らがアメリカと同じ生活水準に達したら、この地球は支えきれずに終わりを告げることは、簡単な計算でもわかってしまったはずである。

それから50年以上が経過した。あいも変わらずアメリカは経済発展のために奔走し、金がすべての価値の最上であるという信念をかたくなに守って、ここまできた。その間に世界中に敵を作ったが、自分たちの軍事力を信用して、まったく意に介しない暮らしを続けてきた。

世界中には、アメリカに輸出をすることによって自分の生計を立てている国々がたくさんある。アメリカの経済が衰えれば、自分たちの経済も一緒にだめになる。それを承知で、輸出依存に陥っている代表が、日本だ。

だが輸出量は、アメリカ人の消費にかかっている。アメリカ人が富を持ち、世界中の資源を買い上げて、それを豪勢に使っているからこそ、輸出代金としての現金収入が、それぞれの輸出国に入ってきているわけだが、そこには恐ろしいまでの資源の浪費が行われていることを、だれもまともに直視しようとしていない。なんとしても自分たちの収入が優先されるからだ。

このままこの状態が続くと、各国は自分たちの資源を、現金化するために持ち出し、すべてがアメリカの消費のために捧げられることになる。もちろん自分たちの国内への潤いはあるが、世界全体の視野で見れば、まったく不必要な消費がアメリカによって行われ、アメリカと、そこに輸出する国との間の格差はますます広がるばかりだ。

アメリカは、安くて良い品物を大量に国内の消費者の届けるのが、自由市場にとって最高の価値あることだと信じて疑わない。彼らの考えは、資源が無限にあるというまったく架空の仮定の下に成立している。それが最終的に地球環境にどのような影響を与えるかといったような長期的問題にはいっさい目をつぶってきた。

わかりやすい数字をあげれば、アメリカ人はインド人の6倍の食糧を消費する。その多くは自分が消費している量の重大さを自覚していない。アメリカやカナダのお菓子屋に行ってみよう。そこには直径10センチを越える巨大な「ショートケーキ」が売られている。それを買う人々をみると、100キロを超える肥満体があちこちにいる。

一方カルカッタのケーキ屋に行ってみよう。とてもカラフルで可愛いが、2センチちょっとの、クラッカーにも及ばないサイズの「甘いもの」が並べられている。甘いものを食べられること自体がごちそうなのだ。

このような不公平が、それぞれの国内の平均的庶民の間に存在することが許されるだろうか?このままの格差がいつまでも続けられてもいいものだろうか?しかも、アメリカでの肥満体の率は30パーセントをついに超え、政府がファストフードの店に野菜や果物を追加することを要求したり(さらに食欲が増すのでは?)、カルフォルニアの公立学校ではソーダ類の持ち込みを禁止する動きもあると聞く。

もしアメリカが滅びるとすれば、それはテロや破壊活動によるものではない。内部からの腐敗、国民の健康の悪化、究極まで進められた自己家畜化のもたらす社会機能の混乱と停止であろう。そして、自分たちだけが世界の資源をむさぼり食うことによって引き起こされる、世界各国民の抱く反感によって。

アメリカ1国と、他の国々のエネルギーや資源消費のアンバランスを解消するためには、今すぐ行動をとらねばならない。自家用自動車の排気量は1000cc以下にする。大量の農薬や肥料を投入する農業をやめる。エアコン、暖房、巨大な冷蔵庫、誰も住んでいない部屋だらけの邸宅を止めさせる。自動車交通の中で、強制的に大部分を鉄道に転換する。

かつて、アメリカの自動車会社は、自分たちの車の売れ行きを恒常的なものにするために、ロサンゼルスなどの大都市の鉄道会社を意図的につぶした。今度は、その逆をおこなうときが来た。アメリカ人の得る食料は、今までの少なくとも3分の2まで減らさなければならない。肥満を減らすよいチャンスだ。石油を使っての化学肥料、乾燥地帯での地下水を汲み上げての灌漑など、力任せの農業生産は直ちに止めなければならない。

アメリカ人の生活水準を、たとえば台湾ぐらいに引き下げられれば、ようやく、中国やインドの人々が経済的に今までよりも向上するすきまができあがる。忘れてはいけない。今の状態でさらに世界の人口の半分が消費を大々的に増やすことは、地球と人類にとって、まったくの自殺行為なのだ。

もちろん、日本や西ヨーロッパの国々も相応に水準を引き下げなければならない。これらの国々にも、アメリカ人並に浪費を生活信条としている者たちが少なくないからだ。なるほど、「後進国援助」は大切だろう。だが、先進国がその消費の絶対量を減らさないことには地球の育んできた大自然は救われない。

だが、見通しは暗い。ブッシュ大統領が就任したとたん、温暖化防止策には協力しないと宣言し、アラスカの原野での石油掘削にゴーサインを出した。選挙で多額の献金を受けた恩返しだろうが、世界で最も権力を持つ人間は、結局企業の言いなりになるのだ。

もっと暗いニュースは、WHOの発表した肥満か防止策について、アメリカはケチをつけた。なぜなら肥満を防ぐために、砂糖、食塩、脂肪の含有量を規制すべきだという防止策案について、アメリカの食品業界がこぞって反対したからだ。

2004年はアメリカの金利が大幅に下げられたために、住宅建設に拍車がかかった。前年と比べると8%も増加したという。これはかつてカウボーイが徘徊した広々とした谷が、コチャコチャした一戸建てによって埋められていくことを意味する。ここで途方もない量の資材が浪費されるのだ。そしてこれが再び取り壊されるときに、それと同じだけの廃材が生じる・・・

これらは人々の健康よりも金儲けを重視する、あまりに露骨な意思表明であるが、このように生活のあらゆる面で進む、消費への追い立てに人々は羊のように従うだけなのだろう。。

2002年9月初稿2004年1月21日追加

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