政治時評

杭州・西湖

法制度や行政によって社会に実現するべきだと思われる具体的方法

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でたらめ表示の国

制度の一刻も早い確立を

最近の新聞によると、イスラエルでフォアグラと称する缶詰にドッグフードが使われていることがわかりその業者が検挙されたという。ここまでくるとあきれてものがいえないが、最近の日本でも食品に関するうそつきが絶えない。食物はこと体の中に入るものだから特に許せないことだ。

だが食品に関するインチキは今に始まったことではない。江戸時代、いやもっと前からその被害は跡を絶たない。世界中どこに行ってもこの種の話は跡を絶たないのである。それは一つに人々の味覚や食べ物に関する判別能力が非常に低いことがあげられよう。

貴金属、機械類、美術品などについてはそれぞれの道に優れた鑑定家がそろっている。疑問を感じた人々はそれらの専門家に相談することができる。ところが食品はあまりに日常的なものなので生活に密着しているためにフォアグラのような高級品以外ではあまり人々の関心が高くないのだ。

さらに、食中毒の場合のようにすぐにその影響が現れる場合は別として、その害毒が長年にわたって蓄積しすぐには自覚症状が出ない場合には、人々の関心は皆無に近い。最近はコレステロールや食塩の害がさまざまな場で騒がれるようになったおかげでこれらに関してはかなり人々は真剣になってきている。

だが、遠海マグロの水銀の蓄積、沿海に住む魚によるダイオキシンの蓄積、家畜の肉に含まれるホルモン剤の影響などに関しては、報道されたときだけですぐに人々はその重大性を忘れてしまう。

アメリカで狂牛病の牛が発見されてからほぼ半年が経った。アメリカではそろそろ日本人は危険性を忘れた頃だろうと輸出再開の機会を狙っている。アメリカでは牛の数が多すぎて全頭検査ができないという。だから生後あまり時間のたっていない幼い牛の検査を免除してくれるようにと言い出している。

ところで日本では数年前から全頭検査を実施し、今のところ13頭(2004年9月23日現在)のBSEに感染した牛が発見されている。大して牧畜の盛んでもない日本でこのくらい出ているのだから、アメリカでこの100倍以上のBSEに感染した牛がいても少しもおかしくない。しかもあの国は日本よりもずっとおおっぴらに血液や死肉など「さまざまな飼料」が牛に試みられている。

単に検査の基準を甘くすることによって「BSEに感染した牛がいなくなりました」と言われてはたまらない。実際にいるのに調べなくするというのは、我々消費者に食品によるロシア式ルーレットを強いているのに等しいではないか。これはまさに金儲けが人間の健康よりはるかに優先していることのあからさまな表明である。

人々がつねに厳重に監視していなければ、食品への不正は解決しないのだろうか。これまでの不正の歴史を振り返ると、この種の問題は決して途絶えることなく現代に至るまで続いてきたことがわかる。おそらく食品の製造が続く限りつねに不正は存在するであろう。

たとえばこれを自動車の欠陥と比較するといかに抜け道が多いかがわかる。自動車の場合には日本においては車検制度があり、さまざまな安全基準がしっかりと定まっている。これに違反してリコールを届け出ることを怠れば、会社そのものの存立が危うくなる。事故においてその欠陥が誰の目にも明らかな形で報道されるからだ。

これに対し、食品問題では常にうやむやにされる。責任の所在がはっきりしない。食品製造会社の団体が政治に圧力をかける。安全基準がそれぞれの国ごとにまったくまちまちで、「自由貿易」という名の無責任体制が有毒食品の国内流入をまったく歯止めのないものにしている。

発ガン性があるとして国内では柑橘類に使用することが禁止されているカビ防止剤は、フロリダで大量に振りかけられて日本に運ばれてくる。おかげで国産の夏みかんは日当たりのよい窓際に2,3日も置けばすっかり青カビだらけになってしまうのに、海の向こうからやってきたグレープ・フルーツはピカピカでいつまでも鮮度を保っているように見える。

消費者の意識は低く、カビさえはえなければそれで問題はないと思っている。彼らの大部分にとっては食品のポイントはは味や健康度ではなく、単なる見かけなのだ。これがいつまでも緩い規制のままに放置される原因となっている。

鹿児島の「黒豚」にしても同様だ。名前だけを信用し、確かめようとしないし、確かめるすべもない。いちいち保健所の職員に分析してもらう人はあまりいない。しかしこの「黒豚」は偽物であることが発覚するまで生産量の少ない製品にしてはなぜか安かった。もし本物であるならば、大量生産が効かないし、飼料代も高くつくからこんなに低価格なはずはないのだが・・・・

もうだまされてはならない。今、消費者は徹底的な「不信」に基づいて食品の管理に当たらなければならない。つまり業者は「必ず不正を働く」という前提である。確かに正直者はいるだろうが、そんなのは全体のなかの0.2%もいればいい方だ。「不正を働かない者は業者ではない」と言い直してもいい。

予告なしの抜き打ち検査をする。違反者は、全国紙に特別コーナーを設けて公表する。罰金は、会社の経営が傾くほどに徴収し同時に経営陣の給料に重税を課す。食中毒事件を起こしたら即閉店。最近開発された高精度のDNA検査によって、食肉、魚肉、野菜のあらゆる品種について検査を絶えず行う。

おそらくこれでも足りないかもしれない。法の網をくぐる者は常にいるのだ。だがこれにめげてはいけない。すでに述べたように、食物は体内にはいる。有機水銀、ダイオキシン、砒素、PCB、カドミウムなどは、長年の間に体内に蓄積し、BSEは潜伏期間が10年以上に及ぶ。

いったんこれで人体に障害が起こったあとではもう遅いのである。厳罰主義と、そして何よりも公明正大な表示主義を貫くべきである。悪人は常に隠れたがる。遺伝子組み替えをしたトウモロコシなどの表示を食品商社がかたくなに拒否するのも、それが人体に悪影響を及ぼすことを専門家の立場からはっきり知っているからだ。

有毒であることを知りながら安全だとうそぶきしかも消費者に対して表示をしないというのは、決して許される行為ではない。あらゆる面で消費者を欺いている。こんな会社や商社は一刻も早くつぶさなければならない。彼らにとって消費者の健康のことなどまったく念頭にないのだ。彼らの唯一の目的は利潤をあげることのみ。

まずは遺伝子組み替えを使っているかいないかを完全に表示させること。そういうトウモロコシを食べてもいいという人ならそれを買えばよい。これに対して買いたくない人の選択の自由が保障されなければ何にもならない。表示を怠り買いたくない人に買わせるというやり方は、卑怯この上ないではないか。特に自由貿易の「障壁」などと言い出す国には禁輸措置をとるべきだ。

このような厳重の監視のもとにおけば、安易な金儲けの目的で食品製造業界に入った連中は早々と撤退することだろう。これはこちらの望むところだ。世の中には、食品製造を自動車の部品と同じレベルで考えている悪人が大勢いるのだ。

2004年9月初稿

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