政治時評

杭州・西湖

食糧を燃料に使うな!

素人から見た資本主義の暴走:その2

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石油をはじめとする化石燃料はもうじき枯渇する。ただその前に大幅な価格の値上がりがあり、そのためにこれまで石油に依存してきた人々はすぐにライフスタイルを転換することができずに今までの浪費習慣にしがみつこうとする。

相も変わらず中国やインドでは自家用車を持とうという人が激増し、その要求に応えるために広大な土地が収用されて広い道路になり、沿道には巨大モールが作られて集客が始まり、その道路はまたたくまに自動車で埋まって、さらに広い道路を造ろうとし・・・。

その一方通行の流れは後ろを振り返ることなく突進するのみである。この動きを止めるわけにはいかない、と誰でもがまじめに信じている。自動車は走らせなければならず、すでに生活はそれを中心にして回るように作り上げられている。徒歩や自転車や公共輸送機関では代わりがきかないとかたく信じられている。

その結果生まれたアイディアがバイオ燃料である。2006年の中頃、石油価格が極端に値上がりした頃から急に話題に上るようになった。燃料電池の実用化への道は遠く途方もなく高価だ。巧みな宣伝により、人々は枯渇する石油に代わる救世主であるかのように思いこまされている。

そしてそのトレンドにのっているのはベテランの経済学者も例外ではない。サトウキビ、わら、トウモロコシ、その他植物の生み出す物質がメチル、エチルなどのアルコールに代わる見込みが大いに喧伝されている。

バイオは、資源に限りがある石油などと違い、太陽がある限り無限に生み出すことができるものだという。早速ブラジルあたりでは生産に拍車がかかった。今後バイオ燃料を生み出すために森林が伐採され広大な農園が作られることになる。

人間の視野の狭さは、今に限ったことではないが、経済活動が今日のようにグローバル化すると、そのもたらす結果は致命的なものとなる。誰でも知っているとおり、世界の人口は65億を超えたらしい。そして地球温暖化が毎年その激しさを増し、2006年にはオーストラリアで大干ばつがあった。

この人口を養うためには十分な食料生産とさらに数倍もの備蓄が必要である。だが地球規模での穀物価格の上昇と下落はそのような長期的な備えを不可能なものにしている。

幸い2007年の初頭の段階ではこの地球上で深刻な飢餓に陥っているところは比較的少ない。だが、気候異変が間近に迫っている将来が火を見るよりも明らかな以上、実際にはぎりぎりの状態で推移していると言ってよい。

そこへバイオ燃料の話が出た。本来食糧になるべきものが燃料にされ、本来食糧を作付けすべき土地が、燃料を作り出すために使われ、バイオ燃料にも使える穀物類は国際価格を上げてゆく。その結果貧しい国ではそれらの穀物を買うことができない。

先進国が、バイオ燃料をせっせと作る一方で穀物を買うことができずに餓死者が出る状況が予想される。エイズの予防薬にしても先進国が開発した新薬はなるほど効き目があるが、高価すぎて肝心の開発途上国ではとても買うゆとりがない。同じことがバイオ燃料にもいえる。

さらに事態を深刻にしているのは、食糧問題と直接に関わっていることなのだ。もし今後この調子で燃料を消費し続ければ、地球温暖化はいうに及ばず、かつてない規模での食糧不足が起こるおそれがある。これを人道的見地だけでとどめることができるだろうか?

恐るべきは今の経済成長を二酸化炭素が増えようが、人々が運動不足になろうが、貧しい国の人々の食料が不足しようがお構いなく目前の利益をごり押ししようという暗黙の、いやもしかして操作された政治的意志である。

人類の取るべき手段は二つに一つしかない。それは今までの浪費のやり方を貧しい国々も巻き込んで、破滅の淵まで突き進むか、それともここで浪費を一切止め、停滞経済の道を歩むかどちらかである。もちろん、残念ながら誰でもわかっているとおり、我々は前者の道を選んでいるし、後者の道を押し進めるほどの強力な政治体制はこの地球上に存在しない。

2007年3月初稿

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