イランの自動車交通:
イランの運転者は、お世辞にも上手とは言えない(タクシー運転手を除いて…)というよりは、きちんと交通規則の躾けがなされていないと言っていいのだろう。一時停止、左折(右側通行だから)、歩行者保護、などの点で、もしイランに運転教習所があるとすれば、何も教えていないに等しい。
オートバイは歩道を通ってよい。無茶苦茶だ。
人口1200万のテヘランの町には、信号機がほとんどない。あったとしても10本前後だろう。この驚くべき事態は、カイロにもイスタンブールにもない。かといって、ネパールのカトマンズのように、そもそも信号を設置する資金や技術がないというのでもない。立派なメトロを建設する余裕はあるのだから。 だからメトロ駅の中は、横断地下道を兼ねている。そこだけは安心できる。
最大の理由は、「完全自動車優先社会」だからであり、歩行者は車の流れの中を、病人、老人を問わず、すり抜けていくしかないということにある。外国人がイランの町を安全に歩くには、地元のすばっしこそうな若者を”盾”にして道路や交差点を横断することだ。
歩道の設置はまずまずである。
信号機のないもう一つの理由は、第二次世界大戦後、イギリスの進駐があったせいか、円形広場とそれを取り囲む Roundabout が多数設置されているためである。このためテヘランでは、交通渋滞は朝夕のラッシュ時を除いて、比較的円滑である。だが、歩行者にとっては依然として命がけである。
長距離バスに乗っていると、立派な造りではないが、大都市間の自動車専用道路は良く機能している。小さな村で降りる客があると、バスはいったん高速道路から降りて、村の中心部へ向かい、乗客を降ろし、再び高速道路に戻っていく。なお、荒れ地ばかりで土地に余裕があるため、多くの上り線と下り線は思いっきり離れて作られている。別の道路のようだ。だから日本のように事故を起こして対向車線に飛び込むなどという心配は少ない。
BRT というと、東日本大震災では津波で破壊された鉄道線路の代わりに活躍して、一躍脚光を浴びたが、路面電車のように線路を作る必要も、電線を張りめぐらす必要もなく、ただ決められた専用ルートを進むだけだから渋滞もなく、極めて効率的だ。ちゃんと停留所があり、乗客は車両に乗り込む前に、ICカードをかざして料金を払う。もちろんそれぞれの停留所には係員がいて見張っている。
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