文明時評

きつね

ライフスタイルに関わる、偏見と独断に満ちた考察

ショッピングを卒業し、
賢い消費者になろう

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現代人は、あまりに自分のことに忙しく、世の中の構造が年々複雑化しているのに、逆に社会の様子を詳しく知ろうという努力はますます低下するばかりだ。だからスーパーやコンビニでお金さえ出せば商品が手にはいるという便利さしか考えず、その製造過程がどうなっているかは「専門家」まかせだ。

ところがこの「専門家」というのがくせ者で、「無知」な我々は彼らのいいように操作されているのである。専門家といえども良心的な人はごく少数であり、大多数は資本の論理や地位関係によって動くのであるから、我々は何も知らないまま、安心して豊かな生活を送っていると思いこんでいる。

だが、原始的な時代ならともかく、このように高度に情報が発達した時代においても、まったく無知のままノホホンとして生活を送っているうち、恐ろしいとばっちりを受けるのではないだろうか。

たとえば食物にしても家畜がどのような餌をもらい育っているのか、開発途上国で作られる運動靴や衣類が何であんなに安いのか、こんなに大量に生産される自動車やパソコンは廃棄されたあとどこへ行っているのか、製紙会社がパルプから紙を製造したあとのヘドロや化学物質はどこへ消えているのか、魚屋に並ぶ世界各地の魚が安いが、それは地元の資源をどのくらい使っているのか、等々・・・

これらの疑問に対して、「わたしゃ知らないよ、専門家に任せよう」と言っているから、東海村の放射能汚染事故のような、あとで手の着けられない重大事態が生じるのだ。現代社会の問題、事故はほとんどすべて人々の無関心、無知に生じたと言っていい。

監視されなければ、専門家たちは自分の持てる知識を好きなように使って、まずいことはいくらでももみ消すことができる。彼らのほうが一枚上手だから、インドの化学工場による毒ガス漏れ事故のように、被害者はまったく無視される。

人々は、「消費者」として最も緊密に現代社会と結びついている。だから我々の監視の窓口は「商品」を通じてなのだ。せめて毎日の買う品物についてもっと敏感になるべきだ。

その好例として、「安い」運動靴の問題がある。アメリカの消費者団体は、各地で売られる運動靴が品質の割にとても安いことに気づいた。その製造元を開発途上国にたどっていくと、現地での「児童労働」が明るみに出たのである。

現地の子供たちをこき使って大儲けをしていることを暴露されたメーカーは自社のイメージが傷つくのをおそれ、大慌てで打ち消しキャンペーンに乗り出した。

このように一般人で、専門家でなくとも丹念に情報を探せば、商品を作る際にいかに多くの犠牲が払われているかが分かる。ましてやインターネットの時代だから、その気になればすべて筒抜けなのである。

賢い消費者であれ。無人島で暮らすのでなく、毎日の生活が現代社会と直結している人なら、これは納税や労働を上回る最大の義務である。

人々が賢くなり、監視の目を強めれば、専門家の不遜は少なくなる。一般人が「主人」であって、専門家は、特に公務員である場合は、「しもべ」であることをひとときも忘れてはならないのである。

高校でも消費者教育は始まったばかりだ。この点日本はきわめて他の先進国に比べて遅れている。参考になるのは、「I You 消費者ー高校生のための消費者読本」;全国高等学校校長協会家庭部会編;教育図書株式会社;ISBN-905708-34-6

2000年2月作成2009年5月追加

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