文明時評

ライフスタイルに関わる、偏見と独断に満ちた考察

きつね

なぜ冬にトマトを食うのか

なぜトマトジュースを飲むのか

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季節感がなくなって久しい。農家が金儲けのために、季節をずらして作物を無理に作ることになったからだ。温室の中で石油を炊き、真冬でも夏の野菜や果物を栽培している。もちろん市場では高く売れるが、作るためのコストと労力も多い。

不思議なことに高く売れると彼らは儲かったと思いこむらしい。そのために彼らは残業をし、多くの機材を借金して買い入れ、体力をすり減らして「高付加価値商品」を一生懸命になって作る。

だが消費者が買うから作るのだ。消費者の中には、珍しいものを食べたいという欲求があり、そのためには金に糸目を付けない者もいる。まあ結局彼らの存在によってそのような種類の農業が繁栄しているわけだが、私はそのようなやり方には組みしない。

トマトがなるのは太陽のぎらぎら輝く真夏。太陽の恵みによって痩せ地にでも育つトマトは勝手になる。人はそれを勝手にもいで食べる。冬にはトマトがない。だがそのかわりリンゴがある。蜜柑がある。何も無理しなくとも自然に1年が巡り、ごくふつうの収穫をしていればリズムを持ってすべてを食べることができるのだ。

ここのところが多くの人々はわからない。というよりは巧妙な宣伝によってそういうものではないと思いこまされている。洗脳である。宣伝といえば、最近清涼飲料水の宣伝が激しい。「・・・式」とか「・・・系」というようなはやりの言葉をつけて巧みに売っている。

真夏のトマトしかしこれらはみな工場で作られたものだ。人々は清潔な環境でのペットボトルによる製造行程を信じているらしい。しかし実際に我々の目の見えないところで動いている。弁当類もそうだが、ますます我々の目の前から作る過程が遠ざかっていく。そんな製造方法を信じていいものだろうか。

何か異物が混入すればその被害者は一人二人でなく、何万人となる危険性も秘めている。そして何よりも恐ろしいのは、事故が起こったときの責任者を特定することがきわめて困難なことだ。

飲料でも驚くべき事にジュースが大流行。野菜ジュース、果物ジュースが出回っている。特にトマトジュースは健康にいいということで評判がいい。だが、せっかくの美味しいトマトをなぜ粉砕し、栄養を破壊し、水にしてしまうのか。噛むことができないほど歯が弱いのか。なるほどそういう人もいるだろう。

だが人々は真夏でさえもトマトジュースを飲む。生のトマトが安い値段で出回るにも関わらず。トマトに含まれるビタミンCは霊験あらかただと信じているらしい。だが、ビタミンが単体でその効果を発揮するわけではない。トマトに含まれその細胞の中に秘められた何億、何兆という化学物質が互いに反応し合ってその効果を生み出すわけだから、これをぐちゃぐちゃにしたのでは元も子もないではないか。

なるほど、登山、ヨットでの海洋横断、極地ではトマトジュースは貴重なものだ。だが、一雨降れば更地にあっという間に雑草が生えてしまうモンスーン気候に属する日本でどうしてわざわざ新鮮ですばらしい歯ごたえの果物をどろどろにしてしかも時間もたったものを金出して買わなければならないのか。

まったく不思議な世の中である。自然のサイクルを無視し、金儲けと利便性だけが優先される世界である。これでは子供たちが狂うのも無理はない。大人たちも子供を産みたくなくなるのも当然だ。少子化とはホモ・サピエンスがもう終わりが近いですよという人々の中からの合図である。

2004年8月初稿

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