文明時評

きつね

「サトウキビ畑」の島へ

2017年6月

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沖縄の今

今回3度目の那覇市に着いたのは、梅雨明け直前だった。このため到着の翌日は激しい雨が打ちつけ、島の一部に警報が出ただけでなく、一番の繁華街である「国際通り」に隣接する公設市場のアーケードは激しく雨漏りし、中には渡ることのできないほどの水たまりができたところもあった。

6月23日の「慰霊の日」直前であっただけに、地元の新聞は隅から隅まで72年前の沖縄戦の話題を取り上げてあった。戦争の記憶をとどめるためには、若い人に繰り返し伝えなければならない。ちょっとでも手を緩めると直ちに風化してしまう。島全体が23日の準備に向かっていた。

20年前、そして40年前の那覇と比べると、格段に経済状況はよくなっている。特にモノレールの開通や、モール街の建設があちこちで行われているのを見ると、修学旅行生と外国人観光客の激増が追い風になっているのがわかる。貿易や観光で生きる東南アジアの大都市の仲間入りをしそうな勢いであった。

ただ、以前と比べて何も変わっていないのは、アメリカ軍基地の存在である。「例外状態の常態化」は続き、雨があがるとすぐにジェット機の爆音が都心部でも聞こえてくる。サイレンを鳴らす緊急自動車が近づいてきたので、パトカーか消防車かと振り返ってみると、「不発弾処理班」と大書された幕をつけたアメリカ軍のジープだった。

21世紀の今でも、あの時の“鉄の雨”だった不発弾は工事のたびに出てくるのだ。日本政府が、先達のやったことを忠実になぞった基地政策を続けるなら、70年後もまだ沖縄には軍施設があり続けるのだろうか…

那覇港付近を歩いていると、「沖縄独立」のノボリが目に入った。沖縄のことは自分たちで決めたいと考える人々が増えているのか。市内の本屋に入ってみる。「沖縄の方言」「沖縄の文化」についての本がいかに多いことか!

そして出版社がこの那覇市内に実にたくさんあることがわかる。これだけの本が置いてあるということは、それに応じた読書人口が多いということで、日本の他の地方の本屋のさびしい状況を考えると、大きな驚きだ。

それにしても那覇市とその周辺は、地方都市ではすっかり忘れ去られた“賑わい”があった。そして高齢者はもちろん多いのだが、町にあふれる若者の数が非常に多い。だからラッシュ時のモノレール車内は身動きがとれないほどだ。

いずれも日本一の出生率、そして日本一の起業率の数字を裏付けている。基地のせいで狭い土地に押し込められたために、人口密度も、首都圏と近畿圏を除けば日本一である。こんなところから、日本国内では過去のものとなった、香港のようなエネルギッシュな雰囲気が息づいているらしい。

おわり

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