わたしの本箱

コメント集(29)

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  1. すばらしい医学
  2. ハマボウフウの花や風
  3. すばらしい人体
  4. 非アメリカを生きる
  5. 天皇とマッカーサーのどちらが偉い?
  6. ガンジーの危険な平和憲法案
  7. なぜ日本は原発を止められないのか?

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2024年に読んだ本

すばらしい医学 * 山本健人 * ダイヤモンド社 2024/01/22

医学知識がヒポクラテス以来どのように発達してきたか、その過程でいかに優れた研究者や医者が、それまでとは全く違う新しい治療法を生み出したか、それが特にまだこの100年のあいだに成し遂げられ、現代の医学が存在することをわかりやすく述べているすぐれた参考書。

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ハマボウフウの花や風 * 椎名誠 * 文藝春秋 * 2024/01/31

倉庫作業員:学校に行くよりお金を貯めたい若者が金属板や金属棒を倉庫に出し入れする仕事を始める。午後に小口の業者にトラックで運ぶ仕事の助手をしていたところ、ある会社の倉庫にとても惹かれる娘がいた。恋してしまった若者は彼女に近づくが彼女から声が発せられることはない。この物語は山田洋一監督の映画「息子」の一部に取り入れられている。

皿を洗う:学生のバイトとしてイタリアンレストランの地下で夜中に皿洗いをする仕事に就いた。何人かの仲間とも友達になり、イタリア人のシェフからスパゲッティのゆで方を教わったりする。だが年末が近づくにつれ職場での人間関係は次第にもつれてくる。

三羽のアヒル:都会の仕事に疲れた主人公が田舎で釣り三昧の生活を始める。自然の生活を満喫し自給自足のやり方を覚えていく。近所からもらった三羽のアヒルをヒナから育てて苦労の末、彼らが自分の力で水に潜りエサをとることができるようになった時点で、再び彼は都会の生活に戻る。

ハマボウフウの花や風:舞浜でかつて地元の非行少年だった水島は友達だった赤石と恋人美緒の手紙の運び屋だったが、今40年たって舞浜の浜辺で美緒と再会した。あのころ地元で暴れた思い出、そして赤石がアメリカやメキシコへ流れて行ってもう日本には帰ってこないだろういきさつを語り合う。

温泉問題:取材のため八丈島にやってきたカメラマンと作家が昔何度も訪れたこの島のことを特に島で湧き出る温泉のことをいろいろ思い出しながら語りあかす。

脱出;大学受験に失敗した若者が過保護で口うるさい母親から逃れようと、家出をして偽名で蘆ノ湖畔の雑貨屋に就職する。辛い仕事にも慣れ、親しい女の子もできた。配達の運転手をしている先輩から運転の訓練を受け見事に合格したのだが、直後にその男は店の金を持ち出して警察沙汰になった。これで両親にも住んでいる場所がばれてしまい、再び東京の退屈な生活に戻ることになった。

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すばらしい人体 * 山本健人 * ダイアモンド社 * 2024/02/06

先に書かれた「素晴らしい医学」の姉妹編。人体のさまざまな驚異を医学や生理学の進歩をたどりながら解説する。治療法ではなく、人体の臓器や様々な組織がどのような働きをしているかが少しずつ解き明かされた歴史をたどった参考書。

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非アメリカを生きる * 室謙二 * 岩波新書1377 * 2024/02/13

アメリカ合衆国はワスプの国だった。しかし時代の変化とともに、そして移民の構成の変化とともに、ワスプでない人々が増えてきた。最後の生き残りのインディアン、フランコ政権を倒すための志願兵、ビートニック、仏教に関心を寄せる人々、ユダヤ人コミュニティとは一線を画すユダヤ人など、様々な”非アメリカ”の例が紹介されている。

我々はワスプの政治家、実業家、研究者だけがアメリカを代表しているという思い込みは変えた方がいいのだ。非アメリカの勢いはこれからますます強まり、その中には狭いナショナリストの国づくりを卒業して、もっと世界に通用する普遍性を持った人々がその中から現れるかもしれないのだ。

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天皇とマッカーサーのどちらが偉い? * 室謙二 * 岩波書店 *2024/02/21

サブタイトルの「日本が自由であった頃の回想」からすると、現代の日本は自由でない。それは万人が感じるところだろうが、著者は終戦直後からべ兵連のメンバーとしてアメリカ人脱走兵の出国を手伝った時期に至るまでのさまざまな体験を9つの章に分けて述べている。

その中には父親マサルと母親ユキコにさかのぼって著者の人間形成に影響を与えたことも含まれている。また「ジラード事件(1957年)」のように現代の日本においても未解決にされ放置された問題の指摘もされている。著者の考え方は、日本を出てアメリカで市民権を得てユダヤ人の妻を持つ今の状態を反映して、普通の日本人とは全く異なった視点から発している。

特に、彼の重視する“革命思想”とはマルクス主義でも毛沢東主義でもなく、ジェファーソンらの起草した独立宣言、権利の章典に発している。それらはアメリカ合衆国が生まれるときに宗主国イギリスに対して発せられたものであるが、それは世界中で大国や宗主国の圧政や攻撃に苦しむ人々が持っていいはずの普遍的な価値を持つ。

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ガンジーの危険な平和憲法案 * C. Douglas Lummis * 集英社新書0505A * 2024/02/25

ガンジーについての書物は数多くあるが、上にある「天皇とマッカーサーのどちらが偉い?」を呼んでいて見つけたもので、その最大の特徴は、インド独立が達成された後について述べられていることだ。というのもガンジーの非暴力によるイギリスの植民地支配を追放したことについては多くの人々が注目していることであるが、いざインドが国家と独立した際にガンジーの姿は急に見えなくなってしまっていたのだ。

ガンジーはインドの新しい憲法についての案をだしていた。しかしそれらは国民会議派のあいだではいつの間に無視され、そしていくらもたたないうちにガンジーは暗殺された。あれほどの強力な独立指導者であったガンジーは一つの国家の成立の際にはメンバーとして加えられることはなかった。

その最大の理由はインドが通常の国と同じように、国家権力を掲げ、そのための暴力装置、つまり軍隊や警察を備え、また必要に応じて戒厳令も可能なシステムをめざしていたからであり、ガンジー以外のメンバーはそれが“当然の成り行き”だ他思っていたからだ。

ガンジーが考えていたようなインドにある70万に上る村を独立国として機能させ、村民の一人一人がちょうど現在における市民社会と同じように強い意志と意識を持って運営するという発案が、戦いと虐殺に明け暮れる人類社会にとってはあまりにも先進的過ぎたからであろう。

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なぜ日本は原発を止められないのか? * 青木美希 * 文春新書1433 * 2024/03/08

ヨーロッパ各国で原発を廃止したり、制限したりする動きがみられる中で、日本は“原発回帰”への道を突っ走り始めた。広島長崎に原爆を落とされても、福竜丸の船員が放射能を浴びても、各地の原発で事故が起きても、そして今回の福島第一の事故があっても、原発を増やそうという動きが止められることはない。

一つにはそれは巨大な利権の集合体である“原子力ムラ”の存在があり、収益だけを唯一の目的にしているこの化け物にはブレーキというものはない。さらに悪いことには権力と密接に結びついている。金の暴力とでもいえる装置が社会のあらゆる面に浸透している。

さらに悪いことには、批判的立場をとるべき大手メディアがその”ムラ”の一員であることだ。したがってメディアに属する人々は”ムラのおきて”に反することは書けないし、それを通そうとする場合には失職を持って脅迫する体質だ。言論の自由は徹底的に破壊され、ジャーナリストを目指す人々は、若いうちから徹底的に脅されて臆病な体質にさせられてしまう。

もちろん裁判所も原子力推進の権力の流れには徹底して従順である。このようにブレーキが完全に壊れているから、たとえ福島第一を超える事故が再度、起こったとしても原子力への道は途絶えることは決してない。日本列島が高度放射能汚染に覆われて住む人がいなくなるまで続くのである。

もし私に金があれば、勇気のあるジャーナリストたちにベーシックインカムを支給して生活の心配なく巨大クズ・メディアから退職させ、達筆をふるわせることができるのに!

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

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