エジプト・アラビア語入門

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音声できくエジプト・アラビア語のあいさつ エジプト・アラビア語のあいさつ

as-salaam 'alee-kum (暫定つづりによる)

(アッサラーム・アレークム = こんにちは)

w alee-kum is-salaam

(ウ アレークム イッサラーム = こちらこそこんにちは)

エジプト・アラビア語とは エジプト・アラビア語とは、北アフリカ西端からインド西部に至るまで様々な種類がありますが、このページで扱うはテレビやラジオで最も広域に普及がすすんでいる、エジプトで話されている口語体のアラビア語のことです。

2007年1月にエジプトに行ってきました。さっそくエジプト・アラビア語を使ってみました。もちろんはじめのうちは「おいくら?」「これをください」「カイロ息は何時に出ますか?」などというじつに簡単な言葉から出発しましたが、現地の人は外国人だということで注意深く聞いてくれましたし、こちらのへたくそな発音も、「勘」を使ってうまく理解してくれました。

「案ずるより産むが易し」とはよく言ったものです。エジプトは英語もよく通用するので、いざとなればなんとかなるという安心感でもって、積極的に話しかけてゆくことにしました。たった10日間の旅行でしたが、現地の人との接触度はじつに頻繁を極め、大いに成果が上がったと思います。

コーランの記述言語である正統アラビア語(フスハー)と異なり、口語アラビア語はちまたの人々の話す言葉です。アラビア語は中東のほかに北アフリカ、東アフリカ、インド西部の方まで広がっている国際言語ですが、買い物やおしゃべりに使ういわゆる口語は別に発達してきました。

これはフスハーが、しっかりしてはいるが非常に複雑な文法規則に基づいており、宗教の大切な教義の記述には向いていても、「おい、高いぜ」とか「まけろよ」とか「これいくら」というような日常会話をスピーディに進めるには難しすぎるといったことが考えられます。

ちょうどヨーロッパでローマ帝国の公用語であるラテン語が、キリスト教会の内部で使われるようになり、人々の話すいわゆる「俗ラテン語」がそれぞれの地域でイタリア語、スペイン語、フランス語などに分かれていったのと事情がよく似ています。

二重言語 問題なのは、フスハーが今でも宗教界のみならず新聞や書物の世界で今でも生きていて、人々はいわゆる二重言語生活(ダイグロシア diglossia )を強いられていることです。今後アラビア語が情報社会の中にあってどのような変容を遂げていくのかまだわかりません。

ただ少なくともカイロの町でオレンジを買うのに、正統アラビア語では何か自然ではないでしょう。というわけでアラビア語の世界で今最も広く認識されるようになっているエジプト・アラビア語を選んで勉強することにします。実際海外旅行のガイドブックに載っている挨拶やちょっとした単語などはみなこのタイプの言葉です。

そのようなわけで、アラビア語学習者は2種類の言語を勉強する必要があります。これは大変なことに聞こえますが、すでに一方をある程度学んでいる人にとってはそれほど困難なことには見えないはずです。でも日本人の場合を考えると、源氏物語や枕草子を自由自在に読める人は少ないですが。ただし多くの語彙は共通しますし、異なっている場合でもある程度の規則性がありますから比較的容易に類推することが可能です。

庶民の言語 民衆の言葉はそのエネルギーによってどんどん変わっていきます。かつてはフスハーから発した言語が、次第にその文法的規則を簡略化し、発音しやすくなり、隣の国、たとえばトルコ語などから単語などの借用を経て今日に至りました。

現代ではほとんどの人がテレビを見ています。ここで話される言語はエジプト・アラビア語といわれていますから、エジプトのみならずその放送を視聴しているほかのアラブ諸国でも次第にこの言語を理解するようになっています。これほど多くの人々が同時に、そして遠距離にもかかわらず同じ言語に接するようになったのは今までにないことなので、ここで急速に言語の統一が進むと思われます。

口語というのはどんな言語でもそうですが、長年人々が「話しやすい」「聞き取りやすい」「早口でも正確に伝わる」という改善を話し相手との間での切磋琢磨の状況を経てきただけに、文語体よりも発音優先、ダイナミックです。その結果簡略化できるところは極限まで簡略化し、どうしても必要なものはきちんと残すというような形が生まれました。ですが時代も変わり人々の考え方も変わるので、言語は生き物のごとく絶えず変身を続けるのです。

文字と発音  アラビア文字による表記は可能でも、正式な正書法がまだまとまっていないので、暫定的なαベッド表記で発音を確認します。少なく今のところは表記と発音との間の乖離がないので、初学者でもいったん読み方さえ心得れば誰でも規定通りの発音ができます。

このアルファベット表記は、いわゆる海外旅行のガイドブックにも採用されているもので、最小限のルールさえ覚えれば誰でも容易に発音が可能になります。むしろ英語のように昔のしがらみで発音もしないのについて来る文字がない分だけ余計な労力がいりません。

なお、発音の中にはフスハーと同じく日本人には「うがい」をするような特殊な音が混じっています。つまり kh や gh の音です。それぞれ「フ」「グ」と比べてずっと喉の奥でこするような音を立てることになります。フスハーとはずいぶん音が違うように聞こえますが、実は多くが規則的に変化しているので、方言の音を聞いただけでフスハーのもとを比較的容易にたどることが可能です。当面これらの音は日本国内にエジプト語を話す人が少ない以上、暫定的に「ウ」のような音で代用しておいて、いざエジプトあたりに旅行したときに、現地の人に見てもらいましょう。

簡素化された文法 他の多くのインドヨーロッパ語族と同じく、現在形では英語の be動詞にあたるものがありません。ただし過去形の場合には存在します。また、冠詞の有無がヨーロッパ語以上に主語述語か修飾かを決める重要な決め手になっています。

しばらく勉強を続けていると痛感することですが、文字も発音も違いながら、また「セム語」系統に属すると言われながら、たとえばフランス語などになんと「文法」的に似ていることだろうかと驚かされます。語順といい、形容詞、副詞のような品詞の使い方、関係代名詞の存在など、、語彙を入れ替えれば何とか通じるのではないかと思われるほどです。

どんな言語でも口語化によって簡素化されると複雑な語尾の変化が減ってゆきます。代わって重視されるのが語順であり、前置詞(または後置詞)の活躍です。エジプト方言にも例外なくこの傾向が現れています。前置詞は必修科目です。

動詞の変化も簡素化されています。それでも「完了形」「未完了形」の違いははっきりしており、主語に関しても2人称(あなた)と3人称(彼、彼女)に男女の別がありますから、覚えるべき動詞活用は少し多めに感じるかも知れません。しかしヨーロッパの大部分の言語と違って現在、過去、未来というような時制の区別がないために、しかもかなり規則的な変化をするので、さほど頭が痛くなるほどではありません。通勤電車の中で何度も唱えていれば自然に身に付く程度です。

名詞に関しては男性形と女性形があるのはフランス語やスペイン語ですでに慣れている人も多いだろうし、それを修飾する形容詞もそれに応じて男性形、女性形が変化しますがほとんど規則的です。少しやっかいなのは名詞の単数形と複数形とではかなり形の違うものがあり、規則性はあるものの新たな暗記が必要です。また、フスハーでも使われている「双数形」はその重要性を失ってはいますが規則的な語尾に変化させれば容易に作り出すことができます。

形容詞は修飾する名詞に後置されます。名詞が男性、女性であるのに応じて、形容詞も一致します。このとき(赤い花ー限定用法)名詞に定冠詞が付いているときは、形容詞にももうひとつ付けます。また、be動詞がないのだから、主語となる名詞のあとに直結ですが、その場合には(花は赤い_叙述用法)形容詞には冠詞を付けないでおくことによって、上の場合と区別します。

冠詞に関してはあのフスハーではあまりに有名は「al アル」がエジプト方言では皆「il イル」になってしまっていることです。同じ l の音であり後に来る名詞の最初の音と連続する際の規則は存在しますが、なぜいつの間にか al が il になってしまったのでしょう?

副詞(的表現)に関してはさほど問題はありません。活用はないしフスハーとほぼ同じものがたくさん見受けられます。

特殊表現 アラビア語の中には前置詞や動詞などの概念ではどうしても説明ができないような表現がいくつか存在します。例えば「・・・を持っている・身につけている」という表現の、'and や bita' や ma'a などです。これらはうしろに人称代名詞がつき、さらにそのうしろにいわゆる「目的語」として何らかの名詞がつくという形を取ります。これは英語での前置詞に慣れた人にとっては少し違和感を覚える用法です。この点はトルコ語との共通点が目につくようです。

学習書 白水社の「CD エクスプレス・エジプトアラビア語」を使いました。ほかのエクスプレスシリーズと同じく、20課の構成で、基本的な会話例がのっており、文法の基礎が一通り学べます。

いまのところ海外旅行の簡便ガイドブックをのぞいて本格的な文法書が見あたりません。そもそも表記が統一されていないので、音声のみでの解説にならざるを得ないのです。しかし欧米で出版されているガイドブックにはポケット版ながらなかなかきちんとした文法事項が整理されているものもあります。

spoken arabic of cairo辞書 V.Stevens & M.Salib, A Pocket Dictionary of the Spoken Arabic of Cairo ( The American University in Cairo Press )

エクスプレス・エジプトアラビア語にも紹介されていたポケット版で、<英語→エジプトアラビア語>だけである。価格も安いし、カイロのアメリカン大学の書店にはもちろんのこと、カイロ空港の書店にも売っていた。くわしい文法的説明や語法がこと細かに載っているわけではないが、語彙を増やすには最適の辞書。ずいぶん前から出ているらしいが、改訂版が出ているので安心できる。値段も手ごろ。

その他の参考書(英語版)
ガイドブック(1)Arabic At a Glance : Phrase book & dictionary for travelers ( Barron's ) ガイドブック(2)Arabic for Reading and Speaking (Barron's) ガイドブック(3)Egyptian Arabic Phrasebook ; with two-way dictionary ( Lonely Planet )
arabic at a glance arabic for reading and speaking egyptian arabic phrasebook

音声できく口語アラビア語のあいさつ エジプト・アラビア語のあいさつ  

ma' as-salaama

(マアッサラーマ = さようなら)

2004年8月初稿・2008年6月最新更新

以後随時更新します

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

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