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ウィルスの時代がやってきた

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ウィルスの時代が来た。ウィルスは、どこにでもいるが、これまではじっと息を潜め生物界の表舞台に出ないものがほとんどだった。しかし、人間が森林を切り開き、土砂を削ってダンプトラックで別の場所に運び、これまで土中に埋もれていたところが大気に触れるようになり、タンカーに積まれて海水が遠距離を運ばれるようになって、ウィルスにとっての新しい活躍の場所が急に広がったのである。

人間の大量生産による動植物の密集もウィルスにとっては、害虫と同じく都合のいいものに違いない。たとえばエビの養殖。タイやマレーシアのような温暖な地域での池の中でのエビを育てること。ニワトリを鶏舎に閉じこめて日にも当てず文字通り足の踏み場もない場所で飼われている実態。生息地を次々と人間に奪われ、わずかに残された自然の中に、渡り鳥や小動物が集まってきて恐るべき密度になっている。そして温暖化によって、これまでは寒い地方の種類しかいなかったところに、南国生まれの生物が押し寄せてきている。

これらは、すべてウィルスにとってはまたとない活躍の場である。なぜなら異常に集中した場合にはそれぞれの個体の抵抗力は落ちる。そしてウィルスの一大進化の実験場になるからだ。ウィルスはもともと極端に単純な生物だから、寄生しなければ生きていけない。免疫力の弱まった個体は、早速餌食にされる。しかも個体数が多いから、それぞれの個体に凄んでそれぞれの異なる環境で独自の進化を遂げるようになる。

ちょうどダーウィンが目を付けたガラパゴス諸島のように、それぞれの島にはもともと同じだった生物が環境のわずかな違いに応じてそれぞれ少しずつ違った変異が生じるのだ。そのような変異種の中にはきわめて強力で毒性の強いウィルスが生まれるかもしれない。これまでの生物の進化の歴史をたどってみると、ある種が爆発的に種類が増えた時期があった。ウィルスにとっても現代はまことに絶好のチャンスなのである。

エイズ・ウィルスはもともと免疫面で無防備の人間を狙う。アフリカの森林で眠っていた種類が今目覚め、交通手段の発達と共に遠くへ運ばれていく。それはちょうど果物の種が鳥に食われ、鳥の糞となって遠くへ落とされるのと似ている。このようにして各地に広がったウィルスは、自分にとって最適の環境を見いだし、ここで爆発的に増えるのである。

インフルエンザ・ビールスは、すでに人類の歴史が始まって以来、多くの命を奪ってきたが、ここにきてもっと抵抗力の弱く密集して生活させられているニワトリも狙われた。これは近いうちに犬やネコ、そして豚にも広がるだろう。こうしているうちに人間にちょうど当てはまるようなウィルスが登場することになる。

もし強力な毒素を持つ人間向けのウィルスが発生したら、そしてそれが空気伝染が可能ならおそらく死者数は想像を超えるだろう。ワクチンの開発がとても間に合わないほどのスピードで伝染し、ワクチンが完成する頃には別のタイプがすでに生まれている。

もっと怖いのは、ウィルスに即、殺される個体と、ウィルスと「共存」できる個体と差があることだ。ある人はインフルエンザにかかって高熱が出て大変な目にあう。一方ではウィルスは体内に入るものの、症状はまったくでないが人にうつすことができる「保菌者」になってしまう。罹患した鳥や牛なら「屠殺」することができるが、人間の場合はどうするのだろう?菌をばらまく人がおおぜい街を歩いていたら?病気の大規模な蔓延が予想される。

そうなると、人類の歴史もいよいよ終わりに近づいているのだろうか。どうもそうらしい。最近のレッドデータブックに載る生物の種類が急増しているとおり、もしこのままでいけば21世紀の後半には人間以外の脊椎動物はほとんど絶滅してしまうだろう。地球生命にとって隕石衝突に匹敵するかそれ以上の危機に直面している。自然は当然のことながら防御反応に出るだろう。

自然が自ら生み出してしまったこの間違った方向に進む生物、人間を消滅させない限り、この地球の他の生命が危ない、となれば何か強力な手段がとられることになろう。かつて途方もなく増えて地球を占領していたアンモナイト、三葉虫、恐竜の類がこの地級から姿を消したのはいかなる方法によってであろうか。今回はウィルスがその役目を引き受けているのではないだろうか。そろそろ支配種交代の時が来たようだ。

2004年2月初稿

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