英語力を磨く

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外国語を熱心に学ぼうとする人たちは苦労してそれをマスターしようとする。日本人は、会話をすすめることが苦手だということで有名だが、学生時代に学んだ英語をなんとか実用に供しようと必死だ。しかし、どんなに努力をしても、英語のどんなに優れた参考書を用いても、役立つ英語の知識を得ることがいかに難しいか思い知らされる。

読解能力 読解能力は外国語学習の最も静的な面に思われるけれども、最もなじみ深い分野であり、それというのも日本では英語教育の中で訳読が、あまりに重視されているからだ。文法的分析が徹底的に行われるが、専門用語をあまりに煩雑に使うと、文全体の理解の妨げになることもある。問題なのは、教師が英文の解説を行うと必ず、「副詞句、前置詞、形容詞句、等々」といった文法用語を使ってしまうことである。

文法用の決まり文句は外国語学習者の上達を阻害するだろう。そこで提案したいのは、カッコを用いて副詞句や形容詞句を他と区分してみることだ。一つの文を意味を持ったいくつかの部分に分割することは、全体の流れを把握する最も効果的な方法といえる。まず第一に、テキストとして、非常に凝縮された内容の文を選んで読み、それがほとんど暗記されるまで繰り返し読む。いったんその文が自分のものとなれば、次には手当たり次第いろいろな文体を試みるとよい。

もし1ページにつき5回以上も辞書を引かなければならないとすれば、いやになってしまうだろう。児童向けの図書から、それも自分の子供時代に(もちろん日本語で)読んだことのある本から、はじめればよいのだ。読んだことのある本なら、何年も前にわくわくしたり感動したりしているから、なおさら英語学習が楽しくなることだろう。

語彙の数を増やすことは重要だろうか。重要だ。いったん使用に耐えるだけの数の単語や成句をものにすれば、単語を増やすのはずっと楽になる。日刊(英字)新聞は大いに役立つだろうが、一人一人の持つ時間的余裕はわずかしかないだろうから、週刊誌を利用する方がよい。

文章を作る 読解という受動的な過程も、あるレベルに達すると、文章づくりという能動的な過程に切り替えることができるようになる。まず第1段階は、基本例文を暗記することである。慎重にえらばれた、約120ぐらいの文で十分である。次の段階では、その覚えた文に新しい単語を代入して、これらの文型に慣れることである。この過程は最も重要であるが、それというのもこの練習が、文を作る速度が上がることに役立つからである。

まず第一に、毎日日記をつけてみよう。印象に残ったことを何でも書き付けてみるのだ。また新聞や雑誌に気のきいた表現を見つけたら、ただちに使ってみなければならない。ただ、メモを取るのだけはやめなさい。メモを取ることで、かえって頭にたたきこむのが面倒くさくなるものだからである。

人間の脳は、絶えず刺激し、正常な使い方をすると、最高の機能を発揮するようにできている。だからこそ毎日、文章を書くことは欠かせないのである。欠かさずやることを守れば、アイディアが浮かぶようになり、覚えたことも思い出しやすくなる。

聞き取り練習 電話やテープレコーダのような音声によるコミュニケーションの手段が利用できるようになったおかげで、聞き取り能力を高めるのには高価な器械は必要なくなった。聞き取り能力を高める最も安価な方法は、短波ラジオを聴くことである。

VOA(アメリカの声) ,BBC(英国放送協会), ラジオオーストラリアの定時放送は日本中ではっきりと聞き取れる。FEN(極東放送)と比べると、これらの局の英語は分かりやすく、ゆっくりだ。たぶんこれは、英語を母国語としない人々が聴取者の大部分を占めているせいであろう。

真夜中になり、家族が寝静まったころ、さまざまな短波局の音声が聞こえてくるし、幻想的な世界に浸れる場合もあろう。聞く時間の長さが聞き取り能力の大切なポイントである。いかにアナウンサーの話が早口であろうとも、長く聞けば、それだけ聞き取り能力は高まってゆく。
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しゃべる 文章を書く練習をしてはじめて、次に自信を持って英語をしゃべることができるようになるものなのだ。いったん話す内容ができれば、あとは発音にさえ気をつければよい。自分の発音に悩んでいる人も多いようだ。th と s や、r と lの区別ができないと言う人は多いが、言うより為すが易しである。

外国人が日本人と話すときは、日本人は発音が正しくできないことはもとからよく分かっているので、それだけ注意深く聞いてくれているはずである。気にすることはない。気楽にいこう。抑揚にさえ気をつければ、言いたいことはうまく伝わるものなのだ。

かつて、カンボジアの(元)王子のシアヌークが人々の前で英語で話すのを聞いたことがある。彼の発音は下手で、自分の母国語による、ひどい訛りがあった。それでも彼の言いたいことははっきりと分かるのである。。彼が話すときは単語一つ一つにはっきりとしたアクセントを置いている。「エコ ノ ミック」と彼が言えば、みんなそれと分かってくれるのである。

イディオマチックな表現は、それほど多く使わなければならないということでもない。これらの多くはアメリカで生まれ、英語が母国語でない者にとっては、その多くは知らないものばかりだ。人と話すときは、いわゆる「正統的」な表現の方がよい。

終わりに 子供が自国語を覚えてゆくところを考えてみると、聞き取り能力が言葉を覚える最も基本的な過程であるようだ。耳が聞こえない以前に、口が利けないなんてあり得ない。また、話したり聞くことができてはじめて、次に読み書きができるようになる。もちろんいくつかのまれな場合を除いての話だが。

日本人が英語を使う機会がほとんどないことを考えると、まるでニューヨークにいるかのように錯覚するような人工的な環境を作ることが必要である。たとえば、英字の日刊新聞をとり、VOAを聞き、毎日1分間のスピーチを実行し、少なくとも一ヶ月に1回(週に1回の方がいいのだが)エッセイを書くことだ。

このような忠告があっても、多くの日本人が英語が得意になるわけではないのは驚くべきことだ。なぜなのか。私には分からない。大変多くの優れたアイディアや、書物や、カセットや、英語学校があり、財布の許す限り、好きなものを選べるのに、それでも日本人の英語は明治時代のレベルと比べて、何も変わっていない。

おそらく、日本人は英語が(外国語が)嫌いなのかもしれない。孤立している民族ともいえる。国際社会の一員になるには特殊すぎるのかもしれない。一つの文化の一部に属していることに満足し、他の民族とつきあうことが、こわくでできないのかもしれない。

今のところ日本人のごく一部だけが外国語とうまくつきあっている。しかし皮肉な言い方をすれば、大多数が外国語を使えないおかげで、少数の人がお金儲けのチャンスを得ているともいえなくもない。教えたり、翻訳をしたり、通訳をしたりして。当分の間、独占を続けられるようだ。(笑)

1986年 1月

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