Basic Japanese

Fuji-yama by Yamashita Kiyoshi

蜘蛛の糸

(listening)

目次
作品と注 (1) (2)

原稿 Script

作品解説

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蜘蛛の糸(著者撮影)
お釈迦様がくださった救われるわずかなチャンスを生かすことなく、むなしく地獄の底へと転落してゆく罪人を通じて、自分の利害の及ぶ狭い範囲しか見ることのできない人間の悲しさを描き出す短編の傑作。中学校の国語の教科書に載るほどの平易な文章で書かれており、蜘蛛の糸が天上から降りてくる設定は過去の教典に収録されているさまざまなたとえ話や説話に勝るとも劣らない。

作者紹介

芥川竜之介 1892‐1927(明治25‐昭和2)

芥川龍之介東京の生れ。生後7ヵ月にして母の発狂のため,その実家芥川家に養育され,幼少年期を下町の本所に過ごす。府立三中,一高を経て1916年,東大英文科を卒業後,海軍機関学校の英語教官として19年まで勤めた。

16年2月発刊の第4次《新思潮》に発表の《鼻》で文壇に登場。翌17年には第1創作集《羅生門》を刊行。短編の数々に独自の世界をひらき,大正文壇の新星となった。

その題材も《羅生門》(1915),《芋粥》(1916),《地獄変》(1918),《六の宮の姫君》(1922)など王朝の説話集に材をとった王朝もの,《奉教人の死》(1918)や《神神の微笑》(1922)のごとき切支丹もの,《戯作三昧》《或日の大石内蔵助》(以上1917)など江戸時代を舞台としたもの,《開化の殺人》(1918),《舞踏会》(1920)など明治初期に材をとった開化ものなどをはじめ多岐にわたる。さらに22年以後書き出される保吉もの(《保吉の手帳から》ほか)から《大導寺信輔の半生》(1925),《点鬼簿》(1926)などがある。

《玄鶴山房》や《河童》,珠玉の小品《蜃気楼》(以上1927)などに最後の輝きを見せ,やがて《或阿呆の一生》をはじめとする一連の遺稿の内にその作家的宿運の何たるかを語りつつ,27年7月24日未明,〈ぼんやりした不安〉の一句を遺書に残し,36年の生涯を閉じた。

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蜘蛛の糸(1)speaker

注;
  1. ごくらく/極楽 : 主に仏教の教えの中で述べられている、死後善人が行けるところ。
  2. はすいけ/蓮池 : 水中に根を張って水面に大きな葉を浮かべる蓮を一面に敷き詰めた池。花が咲いたときには見事な眺めになる。仏教ではよく登場する場面。
  3. ずい/蕊 : 花びらにある、おしべとめしべの総称。
  4. おたたずみになって/お佇みになって : 少し立ち止まって、歩くのをやめて
  5. おもて/面 : 表面
  6. すいしょう/水晶 : 六角柱と、氷のような透き通った色が特徴の岩石。磨くと宝石になるものもある。
  7. さんずのかわ/三途の川 : この世からあの世へ死後に渡るとされている川。
  8. はりのやま/針の山 : 地獄にあり、針が垂直につき立っているので、罪人はそこに体を突き通される。
  9. のぞきめがね/覗き眼鏡 : 望遠鏡。
  10. カンダタ : 人名
  11. うごめいている/蠢いている : あちらこちらへと定まった方向もなく動き回っている
  12. おもいかえして/思い返して : 思い出して
  13. むくい/報 : 善行や悪行をした後でそれに対するほうびや罰のこと。
  14. ひすい/翡翠 : 鉱物。硬玉の一種で深緑色。飾り石にする。
  15. せめく/責苦 : つらい目にあわされること
  16. むせびながら/咽びながら : 息が詰まりそうになりながら
  17. かわず/蛙 : 両生類のカエル
  18. すがりついて/縋りついて : 離れようとしないで、しっかりつかんで
  19. そういございません/相違ございません : 違いありません、きっとその通りです
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蜘蛛の糸(2)speaker

注;
  1. なんまんりと/何万里と : 一里は約4キロ。大変な遠距離であること
  2. かいがあって/甲斐があって : 努力しただけあって、苦労をしただけあって
  3. このぶんでは/この分では : この調子なら、このままいけば
  4. ぞんがいわけがない/存外わけがない : 思ったより簡単だ
  5. しめた : 物事がうまくいったときに自分に言い聞かせる言葉
  6. かずかぎりもない/数限りもない : 数えることができないほどたくさんの
  7. いっしんに/一心に : 一生懸命、わき目もふらず
  8. さかおとしに/逆落としに : まっさかさまに、頭を下にして
  9. こまのように/独楽のように : 真ん中に木の細い棒を通して回転するようにしたおもちゃ。それが回るように急回転しながら
  10. むじひな/無慈悲な : 思いやりのない、情け容赦しない
  11. ばち/罰 : 悪いことをしたときに受ける苦しみ
  12. あさましく/浅間しく : 考えが浅く、自分のことしか考えないで
  13. おぼしめされた/思召された : お思いになられた
  14. とんじゃくいたしません/頓着いたしません : 少しも構いはしません、どうでもいいことです。
  15. うてな/萼 : 花びらの周りについている小さな葉。がく。
  16. ずい/蕊 : 顕花(花が咲き種を作る)植物の生殖器官。しべ
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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

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