井伏鱒二 いぶせますじ 1898‐1993(明治31‐平成5)
小説家。広島県生れ。本名満寿二。早稲田大学仏文科中退。1929年《山椒魚》その他で文壇に登場し,翌年には創作集《夜ふけと梅の花》を刊行。その後《ジョン万次郎漂流記》(1937)で直木賞を受賞,38年には歴史小説の佳作《さざなみ軍記》を完成した。
駐在巡査の日誌の形をかりた《多甚古村》(1939)は多くの読者を獲得した。《川》(1932),《集金旅行》(1937) 42年から1年間陸軍徴用員としてシンガポールに滞在した体験は傑作《遥拝隊長》(1950)となった。
敗戦後は46年から作家活動をはじめ,《本日休診》(1950)その他により第1回読売文学賞を受けた。以後、《漂民宇三郎》(1956),《駅前旅館》(1957),《珍品堂主人》《武州鉢形城》などがある。
《黒い雨》(1966)では原爆の大惨事を描き出して野間文芸賞を受け、映画化もされた。《厄除け詩集》(1937)など独自の詩集もある。また、児童文学の傑作「ドリトル先生物語全12巻」(岩波書店)の訳者としても知られ、今日でも愛読されている。
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