(2013年3月) |
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先に長崎へ行き、港町の良さを満喫した。南の長崎に対して、北の函館。ともに江戸末期から貿易港として栄え、神戸、横浜とは異なり、長崎は南シナ海、東シナ海との結びつきが強く、函館は北海道の付け根として、そしてまた北洋(オホーツク海)への基地としての重要な働きをしている。残念ながら、ロシア、中国という二つの大国による利益争いのため、その動きはいまだにうまくいっていないが、将来的にはヨーロッパにおける北海のように、沿岸各国の有機的な結びつきが生じてほしいものだ。 青森市から函館に向かうには、昔ながらのフェリーがある。青函連絡船の廃止後、今では二つのフェリー会社(青函フェリーと津軽海峡フェリー)が自動車やトラックの輸送を引き受けているが、どちらの会社も旅客運送も行っている。しかし何と言っても荷物が主体なので、車を持たない旅客はそれぞれの駅からかなり遠い乗り場まで徒歩、タクシー、バスなどを利用しなければならないので、もともと海峡横断に4,5時間かかるところを、さらに所要時間が加わることになる。 今回は「青函フェリー」を使い、夕方5時半ごろに函館の港に着いた。トラックや車が下船するのが先で、旅客はそのあとガランとした車庫の中をてくてくと歩いて上陸しなければならない。すぐそばを通る国道228号線にはバスが走っているので、いったん乗れば10分ほどで函館駅前に着く。函館市の港町らしい部分は江戸時代から活気のあった、港に面して緩やかなカーブを描く旧市街の集まりで、東京湾などと同じく「ベイエリア」と呼ばれるようになっている。そこには赤レンガの倉庫が立ち並んでいたが、今やそれらの外観はそのままに、中がショッピングの場として活用されている。 函館駅は青函連絡船が廃止されてからは、その活気が失われてしまい、駅前にはデパートが一つもなく、ホテル群に囲まれている。町の魅力は、市電によって作り出されている。かなりの頻度で行きかう市電の進む様子が、車だけの殺伐とした風景を救っている。市電は軌道があるので観光客にとっては迷いのない目印となるし、「一日乗車券」を使えば3回乗るだけで、もとが取れるので大変経済的である。
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