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英語では動詞に劣らず、形容詞の構成が複雑である。動詞では文型やら、前置詞との関係がきちんと整理されているのに、形容詞の方は体系化が今ひとつだ。ひとつどのような観点から形容詞を眺めるべきか考えてみよう。(注)ここでは「限定用法」を扱わない。
注;形容詞の意味が一定の場合
同じ形容詞 red でも、「赤い花」a red flower のように名詞を直接修飾する使い方を限定用法といい、「花は赤い」 The flower is red. 「壁を赤く塗る」 They paint the wall red. のように主語(または目的語)となった名詞を説明する使い方(補語)を叙述用法といいます。
(注1)ハイフン文とは、a five-year-old boy のようなものをいいます。He is five years old. (こちらはold の叙述用法)と比較すると、複数の s が year についていないことがわかります。 (注2)叙述用法には、次の二つの例が含まれます。 She grew old. (She was old. から派生した、第2文型) He made her happy. ( made 以下に、She became happy. を取り込んだ第5文型)(注3)名詞の前でなく名詞の後に置く、つまり「後置用法」の形容詞が少なからずあります。たとえば、involved, concerned, present, alive などがあります。これらの形容詞は、限りなく叙述に近いとでもいえる中途半端な存在です。これらについては前に置いた場合と違った意味になるなど変則的などで、注意が必要です。 上へ実は、冠詞というのは形容詞の仲間なのです。名詞にとりついて、その性質を説明するからです。 a は、中学校以来の「一つ」ではなく、「(いろいろあるうちの無作為の)一つ」と考えます。ですから、特別に指定したものをさすわけではないので、「不定冠詞」と呼ばれるわけです。話題の中で、初めて登場したもの、一例を挙げたいときに、この基本的な用法が使われます。 There is a book on the table.(机の上に一冊の本があるが、実はこの本については初めて紹介したものだ。これまでは言及していなかった。) 注;There構文は、このように不定のものを紹介するための構文です。ですから原則として、そのあとに、the, this, that, these, those 所有格などをつけることはありません。 これに対し、「これしかない」「すでに述べたものの繰り返し」のつもりでその名詞を使うときは the を使います。地球や太陽はこの世に一つしかないから、the をつけることになります。ただし a と違って単数でも複数でも不可算でもかまいません。 The building I told you is on the hill.(この建物については私はすでに言及しているという前提に立っている。世界に一つしかあるはずがない。) 以上は、a と the の基本的な使い方です。これ以外の特殊な意味は、熟語として理解しておいたほうがよいでしょう。
所有格は、形容詞の一種です。代名詞から作られた、my, our, your, his, her, thier, its のほかに、普通の名詞にアポストロフィS をつけてできあがりますが、省略されていなければ、常にうしろに名詞を従えています。ただ、これは定冠詞 the をさらに詳しくしたものと考えられます。ですから 、意味が重複してしまうので、the と所有格を一つの名詞に対して共存させることはできません。
また、前置詞 of で書き換えられるものもあります。ただしどんな場合でもできるわけではなく、「所有関係」がはっきりしているもに限ります。また、イメージがやや「文語的」になります。
所有格を強調するには、うしろに own を添えます。そのあとの名詞は省略できます。
所有格には、また mine, ours, yours, his, hers, theirs, its という所有代名詞というのがあって、所有格と名詞の組み合わせを一語で表すための語です。
指示形容詞とは、this, these, that, those, such の5つのことをいいます。単独で用いれば、指示代名詞ですが、うしろに名詞がつくことになって、形容詞となります。 this, that のあとは単数可算か不可算名詞、these, those のあとは複数可算名詞、 such のあとはどんな種類も名詞でも可。
that と those は、関係詞の前に来る数語からなる先行詞の前につけると、その先行詞の始まりを示す記号になります。 I have read that kind of books which are not legally sold at bookstores. 「私は、本屋では合法的に売れないような種類の本を読んだことがある。」 this, that のタイプは「実物」を示すのに対し、such は「同種」のものを示すのに使われます。some, no, any は such に先行し、such と連結している名詞を修飾する a や形容詞は such のあとに来ます。
数量形容詞とは、漠然とした量や数を示すためにあります。これらは代名詞も兼ねています( every は代名詞なし、 no の代名詞は none ))。
その他、数量ではありませんが、元来代名詞である、one, another, (the) other もうしろに名詞をつけて形容詞的用法になります。 代名詞用法と形容詞用法の違いは、前者が単独で用いるか、 of をつけて名詞と切り離すのに対し、後者は直接名詞と接続する方法です。 使用例(1): some of the passengers (その乗客たちの中には・・・すでに乗客数全体の数が把握されている場合で、けが人の数の記述などに使う)使用例(2): some passengers (乗客たちの中には・・・あらゆる乗り物の乗客を想定し、彼らについての一般論を述べる、たとえば「乗り物酔いをする人もいる」というように) 上へ形容詞のうち、冠詞、所有格、指示形容詞、数量形容詞をまとめて限定詞( determiner )と呼んでいます。これらの語が普通の形容詞と違って、そのあとに来る名詞の文法的性格と使用枠をしっかり決めてしまうからです。
ですから複数の限定詞を名詞の前につけると、競合しあって、きちんとした意味が伝わりません。ですから、必ず一つの名詞につきどれか1種類と決められています。 ただし、所有格だけは「所有代名詞」というものを持っているので、その形に変更すれば、of をつけて名詞のうしろに置くことができます。それでも所有格の項で述べたように the とは共存できません。
また、all, both, half は所有格や th-のつく語と共存できます。ただし本来は all of, both of, half of だったので、語順は、常にこの三つが先頭です。また、such も他の限定詞と共存できるタイプです。
使用例(1);every man, every flower, every Monday, every chanceこのいずれの場合でも「すべての・・・、あらゆる・・・」という意味を持ち、all との相違点は、 all が「全体」に注目するのに対し、 every は「個々」に注目することにある。 使用例(2);another man, another flower, another Monday, another chance このいずれの場合でも「もう一つの・・・」という意味を持っている。元来これは、不定冠詞 an と、other が結合したものだからである。従って other だけであれば、other students のように、そのうしろに複数可算を持ってきても差し支えない。ところがこの二つには別の意味があって、それは文脈でもわかるが、それぞれのあとに来る名詞が違った性質を持つことでわかるのです。 使用例(3);The train comes every 3 minutes. The Olympic Games are held every four years. となるように、「・・・ごとに、・・・おきに」の場合は、every のうしろに「時間量」が入るのであって、単数とか複数という問題はありません。 使用例(4);Would you like to have another cup of coffee? I want to study another 3 hours. He wants to play another three rounds of the game. ここにあるように、「さらに・・・」というような「追加」の意味の場合にも、お代わり数や、時間量や、回数が入るのであって、単数とか複数という問題はありません。 上へ suchについて知っておくべきことは、基本的には限定詞としての形容詞なのだけれども、ほかの形容詞の前やうしろにつくことができること、the と共に用いることは、性格がよく似ているのでできないということです。
ついでながら、ここまでの語順の点に関しては、形容詞としての what も同じです。疑問文や感嘆文に利用します。
再び such だけの話に戻ります。下の例を見て下さい。
「この計画は新しいものに変える必要があった」という文を表すとき、X The project was necessary to be changed into a new one. とするのが誤りなのはなぜでしょう? 問題なのは「必要だ」に対する主語が何かということです。もし「計画」そのものが必要というのであれば、The project was necessary. とすればよい。ところが、「変えること」が主語ならば、別の書き方が必要になってきます。(For them) to change the project into a new one was necessary.としなければなりません。ここでの them とは変更を行う「当事者」のことを指す。 ただこれだと読みにくいので、it~to構文にすると、It was ncecessary to change the project into a new one.となり、changeを受動態で表すのならば、For the plan to be changed into a new one was necessary.となり、これもまたit~to構文にすると、It was necessary for the project to be changed into a new one.となります。 このような事例は、possible, impossible, probable, inprobable, rare を使った場合にも見受けられます。it が受ける主語が to不定詞のものもあれば that節のものもありますが、とにかく主語が何かを明確に設定することです。
最初に紹介した X の文は、不定詞である to be changed がとなりの necessary に係るべきか、それとも project を主語とすべきか中途半端になってしまうので使わないのです。necessary が形容詞で主語を必要とするからこんな問題が生じるわけですが、need to とか must のように助動詞表現にしてしまえば、この問題は解決します。The project must be changed into a new one. というように。 easy, difficult, hard などならこんな問題は生じません。これらはto不定詞がそれぞれの形容詞に係っていくだけしかないからです。
able, ready, willing のタイプも同様です。He is able to swim. は He is able.「彼は有能だ」と He swims が結びついたもので、主語が共通なので、 be able toはまるで助動詞のように使えることになりました。 上へX I am convenient. が誤りで、It is convenient for me. が正しいのは、この「都合がよい」という意味の形容詞が「人間」を主語にとらないからです。同様に possible, necessary, probable なども人間を主語にしないことが感じられます。 一方、I am sure of his success. の場合、この「確信している」という意味の形容詞は、「人間」しか主語にとらないことがわかります。ところが同じような意味を持った certain では I am certain. もあるが His success is certain. もあるという具合です。 This movie is exciting. と He is excited. という例文を見ると、それぞれexciting の主語は「物事」、 excited の主語は「人間」と思ってしまいそうですが、He is exciting. とは「彼は(周りの人間を)わくわくさせるような人」であるという意味で使えます。 このように形容詞の主語は奥が深く、英語独特の活用を持っているので、日本語での基準を勝手に当てはめてしまわないようにすることが大切です。 上へtoughというのは「難しい、きつい」という意味の形容詞で、同じ性質を持つ一連の形容詞の代表として使われているだけです。やはり日常生活で最もなじみがあるのは easy , difficult, hard の三つでしょう。 ここではまず easy を題材に取り上げてみます。 (1) It is easy to swim and ski.. (2) It is easy to solve this problem. 何の変哲もない普通の it~to 構文ですが、このふたつの英文のうち(2)には別の書き方が可能です。それはproblem を取り上げて強調点(焦点)の異なる文を作ることが可能だからです。それにはこの problem を主語にします。 (2)~ This problem is easy to solve. これによって全体の意味は変わらないものの、ニュアンスが変わってしまいました。これはどのようにして作ったのでしょう。the problem は(2)では他動詞 solve の目的語だったのですが、これが取れて前に行き主語となっています。そのおかげで仮主語の it は姿を消しました。もし複数でThese problems であるならば、後ろに来る動詞も is ではなく are となります。 このようにこのタイプの文の変形は「目的語→主語」への移動によって行われることがわかります。なぜこのようなことが可能なのか?それは形容詞 easy の持つ特殊な性質によるものです。(2)の場合ですと、easy なのは「この問題を解くこと」であり、(2)’の場合ですと、easy なのは「(別の面ではなく)解くという面で易しい」というように使い分けられています。 では少し変形練習をしてみましょう。 It is tough to reach the peak. → The peak is tough to reach. It is difficult to please these women. → These women are difficult to please. It is interesting to listen to his story. → His story is interesting to listen to. It is dangerous to swim in this river. → This river is dangerous to swim in. あとのふたつの例でわかるように、「目的語」とは必ずしも他動詞のそれである必要はなく、自動詞のあとの前置詞の目的語でもかまわないのです。 形容詞のうちで、ing形や過去分詞からは制した形容詞のことを分詞形容詞と言って区別することがあります。ただしこれらの中のあるグループは一定のパターンが共通しており、その事を普段から理解しておくことが必要です。その代表格は何といっても surprise でしょう。 The news surprised the people.→ The news was surprising. / The people were surprised. surprise という動詞はもともと第3文型であり、主語は、「驚かせるもとになったもの」が来るし、目的語は「それによって驚いた本人」が入っています。というわけで日本語での直訳は「SがOを驚かせる」となりますが、別に言い方を変えて表現してもかまいません。 ある他動詞の現在分詞というのは「能動態」の印、過去分詞は「受動態」の印と考えます。したがって the news を主語とした場合には能動態ですから現在分詞形の形容詞が、 the people を主語とした場合には、受動態ですから過去分詞形の形容詞が使われることになります。 形容詞化することにより、「(驚く)動作・変化」よりも「(驚いている)状態」に比重が移ります。したがって形容詞形の surprised はもはや「驚かされた」ではなく、「驚いてしまっている」ことになります。 The news was surprising.→ surprising news / The people were surprised.→ surprised people cf. surprised look なお、この例で示したように、この原則は、形容詞の叙述用法のみならず、限定用法でも適用されます(本ページ目次参照)。又、 cf でも示したように、「本人」の部分を look や face で置き換える場合も見受けられます。ではいくつかの例を見てみましょう。 The movie amused the audience.→ The movie was amusing . / The audience was amused. The result disappointed the members. → The result was disappoing to the members. / The members were disappointed at the result. The fall of the fence injured many people.→ The fall of the fence was injuring. / Many people were injured by the fall of the fence. 上のふたつの例のように、このパターンはもっぱら「感情」を表す他動詞に多く見受けられます。一方で injure, wound, hurt のように「傷つける」の意味の他動詞にもこのパターンがあります。 He is young. / He is old. これを見た人は、それぞれその人の年令がどんなものであるか容易に想像がつく。ところが、 He is younger than she is. / He is older than she is. という文を見ただけでは、その人が老人なのか若者なのかわからない。このように、ある種の形容詞はそれが単独で使われているときは本来の性質を示すことができるが、他との比較をするときにはその意味が失われ、単に「差」を示すだけになってしまう。 前者を絶対的形容詞とし、後者を相対的形容詞と名付けよう。このようなタイプには先の old, young のほかに tall, high, heavy などが考えられる。これらははなす時の状況に十分気をつけないと思わぬ誤解を招くことがある。 このためか、昔の人はちゃんと専用の形容詞を作っていた。 senior(年上の), junior(年下の), senile(年老いた), juvenile (年若い)などである。もちろんこれらは今でも使われているが、old やyoungの簡便さに負けてか、影が薄くなった。 忙しくなって言葉の一つ一つにじっくり時間をかけて考察することがなくなると、言葉はどんどん単純化され、その言葉の重みがどんどん失われる危険性があるのだ。 |