わたしの本箱

沢木耕太郎・著作

深夜特急

「深夜特急」によって、小田実の「何でも見てやろう」に匹敵する、青春の旅を世の中に知らしめた。その後、ボクシング選手や農園主、テロリストなど、さまざまな職業の人々に迫るノンフィクション作家として活躍している。青字ー既読

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1号線を北上せよ * 沢木耕太郎 * 講談社

1号線を北上せよ深夜特急」以来、久しぶりの旅の本である。しかも前作では若さにまかせたバス旅行の中での自分探しのような魅力を持っていたのに対し、中年になった作者が、(体力が衰えて?)旅をもっと違った角度から見ようとしているのが特徴的である。その点ではずっとふつうの紀行文らしくなった。

いくつかの雑誌に載った文章をまとめてあるが、大きく分けると、ベトナムのホーチミンシティ(旧名;サイゴン)から南のメコン川流域のツアーに参加したこと、さらにバスに乗って国道1号線をハノイまで北上した文が中心である。

ここには林芙美子の「浮雲」のストーリー展開と重ね合わせて旅が進む。その分だけ旅は内省的になり、かつて小説の主人公達がたたずんだであろう場所に自分も立ち、物思いに耽るのだ。

ほかに、ポルトガルの町、サンタクルスでは自分が自伝的な文を書いた「火宅の人」で有名な檀一雄が滞在した場所ということで、彼の行動を思い出しながら旅が進み、もう一つの町、マラガではかつて長旅の最後にたどり着いたこの町で味わった樽に入ったワインを飲ませる酒場を再び訪れる。

残りの作品には、写真家キャバのいたころのパリを忍んだもの、アメリカアトランティックシティーでのヘビー級タイトルマッチ観戦記、そしてオーストリアでのアルペン滑降競技大会の観戦記が加えられている。

それにしても、「深夜特急」となんと違うことであろう。この間に、おそらく100ヶ国ぐらいを訪れた筆者はもはや新しいものに驚くことが少なくなった。確かに若い頃の旅のやり方を続けようとはしているが、途中で見かけた日本人ツアーのはしゃぎぶりをうらやましいとさえ思っている。

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深夜特急(1~6) 新潮社

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

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