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今年見た映画(2008年~2010年)
Sampoganeun kil / Road to Sampo 森浦(サンポ)への道 2008/07/21 3人の風来坊が雪の中で一緒になり、再び未来に向かって別れて進んでゆくというロードムービー。主演女優の演技が魅力的。男2人と女1人という組み合わせは、テレビドラマ「俺達の旅」や、映画「中国の小さなお針子」でも見られる、おたがいの葛藤が生き生きと描かれる。 ある激しい吹雪の夜、韓国中央部の山村を一人の若い風来坊、スーが歩いていた。もう仕事もなく腹ペコで雪の中に行き倒れになりそうだ。そこへチェンという年配の男が通りかかって、タバコの火を求めた。スーはもしかしてこの男と一緒にいれば何かにありつけるのではないかと同行することにする。 ある一軒の飲み屋で食事をとることになったが、そこの女将がここから逃げた若い女を連れ戻してくれたら1万ウォンをあげるという。金を手に入れる機会を得た二人はさっそく雪の中を歩き回り、ベッキという名の女を発見する。 彼女は売春と酒場のホステスをやってきたがこんな田舎は卒業したから都会のほうに向かうのだという。そしてその物怖じせずなんでも思ったことをぶつけてくる態度に、二人の男はたじたじとなり連れ戻すどころではなくなる。ベッキのほうもこの二人が悪い人間ではないとわかったらしくしばらく一緒に旅をすることになる。 チェンは妻に自殺され、仕事はうまくいかず人生の大半を棒にふったのち、海に面した港町である故郷の森浦(サンポ)に向かうところだったのだ。チェンは何かそこに希望があるような気がしてたまらなく懐かしい思いに駆られていたのだった。 スーは偽薬を売ったりして大もうけをしたが、妻に逃げられバクチと酒におぼれ、刑務所にぶち込まれ、もうまともな暮らしをする気にはならなくなっていた。最近では岩山に穴を開けダイナマイトを仕掛けて爆破する仕事をやっていたこともあったが、人生へのわだかまりが常に彼を放浪の旅に向かわせていた。 そんな二人をベッキは温かい目で見つめ始め、そのうち若いスーに思いを寄せ始めてきた。彼女の性格からしてストレートに自分の気持ちをぶつけるのだが、生活に自信を失っているスーはそれを避けようとする。チェンがそばから二人を思いやっているが、スーは一晩ベッキと寝たあとでも結婚して一緒になる気は少しも起きなかった。 祭りの賑わいの中、スーはベッキを人ごみの中に置き去りにし、再び姿を現したときには彼女にソウル行きの切符を渡してなんとかふりきろうとする。だが彼女はその列車に乗ったふりをしてこの町にとどまる。生活力のある彼女はここで何か仕事を見つけるだろう。 いっぽう、スーとチェンはいっしょにサンポに向かうことになったが、乗っていたバスの乗客の一人がスーに目をつけて一緒に建築現場で働かないかと誘う。スーは途中でバスを降りて新しい生活に一歩を踏み出した。チェンはひとり、サンポの町に到着した。港には大きな橋がかかり、町は繁栄への道を歩み始めていた。(1975年/韓国映画) Director:Man-hui Lee Writers:Seok-yeong Hwang (novel) / Dong-hun Yu (screenplay) Cast Il-seob Baek / Jin Kyu Kim / Suk Mun 言語;朝鮮語 上へ瀬戸内海に浮かぶ小島、日永島。ここでも多くの若者が島の外に生活の場を求めたがっていた。一方、昔からここに住む中高年の人々はこの島が気に入り、一生ここにいたいと願っている。亀井竜太はなんとブラジル移住を考えている若者だった。父親千造の反対などまったく耳を貸さない。けれども恋人立花春子をおいていくことは気がかりだった。 春子は両親が死に、まだ幼い妹二人の世話に加えて、食堂の手伝いやら仕入れやらで毎日めまぐるしく働いている。とても島を離れることはできない。春子は竜太に自分の夢を実現するため一人でブラジルに行くようにはっきりと伝える。竜太は父親にも内緒でひとり島を出て神戸から旅立って行った。 千造はそれ以後酒びたりになり、たまにしかこない竜太からの手紙を待ち望んでいた。ある日、春子は仕事中にめまいを起こして倒れる。地元で、ばあやとの二人暮らしでまだ独身だがもうすでに中年の域に達した吉永伊作は医者で、春子が妊娠していることを知る。いうまでもなく父親は竜太だった。春子はどうしても子供を生むといってきかない。 みかねた伊作は春子を自分の家に引き取った。やがて元気な男の子が生まれ、その子は伊作の養子となった。いつしか島では伊作が春子と一緒になるのではないかといううわさが立つ。そこへひょっこり竜太が帰ってくる。サンパウロでの生活に見切りをつけ、大阪の工場で働くことにしたのだ。 はじめ、伊作は子供だけは島においていけと言い、千造も病んだ体をおして、自分の息子に一人で大阪に行くように命じる。だが竜太が島を去ったあと、千造は死ぬ。伊作は子供が両親と水入らずで暮らすことの大切さに気づく。春子を説得すると、彼女は子供をつれて大阪に向かうのだった。連絡船を見送る伊作の目には泪がたまっていたのだが、それでよかったのだ。(1967年) 監督: 山田洋次 脚本: 山田洋次 森崎東 音楽: 山本直純 キャスト(役名) 倍賞千恵子(立花春子) 中山仁(亀井竜太) 伴淳三郎(亀井千造) 有島一郎(吉永伊作) 千秋実(船長) 太宰久雄(備後屋) 渡辺篤(千家五平) 小沢昭一(郵便屋) 北林谷栄(おりん) 桜京美 (ハツ) 青柳直人(清) 中島玲子(信子) 内田由美子(文子) 大杉侃二郎(長吉) タミール語で発表されたインド映画。ハリウッドとは違ったミュージカルである。インド南端東部にあるタミール語が話されている地域での物語。広大な農地を持っている領主の館があり、そこには大奥様とその息子が大勢の使用人や小作人を使って暮らしていた。使用人のかしらがムトゥである。彼は主人には忠実で、部下からは大きな信頼を得ていた。というのも彼は金に淡白で、正直で、その上すばらしい運動神経と腕力を持っていたからだ。 領主の息子は小太りで芝居見物が唯一の楽しみという男だった。母親である大奥様の度重なる要求にもかかわらず、伯父の娘との結婚にも見向きもしない。せっかく彼女がこの館にやってきても親しいそぶりすら見せない。実はこの伯父はこの館とその財産を狙っていたのだ。娘を甥と結婚させようというのもそのためであった。 ある日、領主の息子はムトゥを従えていつものように芝居見物に出かけた。そこで高慢だが恐ろしく美しい主演女優ラガナはムトゥが客席でたてつづけにくしゃみをするのに腹をたて、舞台の上からけんかを仕掛ける。だがこれに応じたムトゥは踊りも演技もたいしたものだ。一方、これを見ていた息子はすっかりラガナに惹かれ夢中になってしまう。 再びラガナの芝居を見に行ったとき、暴漢の闖入でラガナがさらわれそうになる。ムトゥは大活躍。息子の命令でラガナを救い出し、馬で追いかける大勢のならずどもの追跡をかわして山奥へ逃げ延びる。ラガナはムトゥのことにまだ腹が立っていたから、自分が救われたのにまだつれない態度だ。 やがて二人はケララ地方のどこかの村に出るが、多言語国家インドのことだから、住民の言葉がムトゥにはさっぱりわからない。ところが現地語で「道順を教えてください」という言い方をムトゥに教えるとき、普段から巡業をして各地の言葉に通じているラガナはひとつからかってやろうと、代わりに「わたしにキスして」を教える。 さて、何も知らないムトゥは村人たちに質問をするや、若い女性からはビンタを食らうわ、男からは殴られるわ、ついには村の広場につれてこられてリンチにかけられそうになる。これを見てあわてたラガナはこの男は自分の夫で頭がおかしいのだと現地語で村人たちに説明し、やっとのことで彼は放免してもらった。 あるときタミール語を解する男に出会い、初めて自分が教えられた現地語の意味を知ったムトゥは突然心に火がついてしまう。いきなりラガナにキスをすると二人はそのときから熱烈な恋人同士となる。 二人は領主の館に戻った。一刻も早く結婚式を挙げたいのだが、まずは領主の息子が従妹と結婚しないことには彼らを差し置いて一緒になるわけにはいかない。ところが息子のほうもラガナにぞっこんほれ込んでいるのだから厄介なことになった。 男二人がラガナに恋していることを知った伯父は、財産乗っ取りのチャンスと見る。地方のならず者を連れてきてムトゥを痛めつけようとするが失敗する。次にやったことは力持ちの使用人を買収して、領主の息子にムトゥは裏切り者だと吹き込むことだった。作戦は成功し、息子はムトゥをたたき出そうとする。つぎに夜陰に乗じて息子を誘拐し、崖から川に投げ落とした。そしてムトゥが殺したのだと触れ回る。 そのころ村に一人の聖者が現れた。それはなんと昔この伯父にだまされて領地を出家したかつての領主だったのだ。ムトゥはその聖者の息子だったのだ。彼が領地の正当な継承者だったのだ。聖者は息子を川から救い出した。しかも従妹が彼のそばについていた。聖者は再びどこかに姿を消してしまったが、ようやくムトゥとラガナは一緒になることができた。(1995年) Director:K.S. Ravikumar Cast Meena ... Ranganayaki / Senthil ... Thennappan 言語;タミール語 都内のホテル、ヨーロッパはせっかく立派な会議場や設備を作っても国際会議の場所にあまり利用されない。それというのも、このホテルにはやくざや暴力団がしきりに出入りしていたからだ。従業員たちは恐れるあまり、彼らに多額の金を渡すことによってなだめていたものだから、日本中のよからぬ連中が甘い汁を求めてこのホテルにやってくるようになってしまった。 何とかこのホテルを格式のあるものにしたいと願う総支配人は経理の鈴木勇気と新入社員で閣議の得意な若杉太郎に命じてやくざの撃退をさせる。だがフロント課長をはじめとして社員たちの協力も得られず、少しも形勢は好転しない。それどころかますますつけこまれることになった。鈴木はストレスのあまり血尿が出てくる有様だった。 自分の設立したホテルの将来を憂えた会長はプールサイドでお忍びをして働いていたときに見かけたミンボー(民事介入暴力)専門の弁護士、井上まひるをホテルの専任として雇うことにした。彼女の知力をつくした戦いが始まる。 暴力団はお互いに抗争をするときは殺しあうことがあっても、また部下の指をつめたりすることがあっても、一般人に対して暴力を振るうことは少ない。つかまって懲役となれば年間2000万円が必要となり、日常的に稼ぐお金と比べたら到底引き合わないからだ。 彼らに対して強要罪、脅迫罪がどのような場合に成立するかをきちんと知っておく必要がある。条件さえ整えることができれば、「民事不介入」といっている警察を動員することができるし、営業妨害となれば、きちんと撮影や録音した記録をそろえれば裁判所に「代執行」の命令を出させることも可能なのだ。 総支配人はゴルフ場でやくざのわなにかかり、一人で銀座に行き睡眠薬を飲まされて、まるで自分が強姦をしたということにされてしまった。損害賠償を求められたり、自分の写っている性交写真を送り付けられたりしたが、まひるの尽力で撃退することに成功した。 しかし、彼女は公園で若杉の代わりに暴漢の刀で刺され、命を危うく落とすところだった。しかし彼女の訓練を受けて強くなった鈴木と若杉は見事にやくざの集団強要をはねのけ、警察は彼らを一網打尽にする。それからのこのホテルは従業員が勇気を持って暴力団の入館を阻止することができるようになったのである。(1992年) 監督: 伊丹十三 脚本: 伊丹十三 キャスト(役名) 宮本信子(井上まひる) 宝田明(総支配人) 大地康雄(鈴木勇気) 村田雄浩(若杉太郎) 三谷昇(フロント課長) 渡辺哲(明智) 大滝秀治(プールの老人・会長) 伊東四朗(入内島) 中尾彬(伊場木) 我王銀次(若頭) マルサの女、第1作に続く、税務査察の仕事に取り組む、ベテラン板倉亮子の物語。時は1980年代のバブルの真っ最中。東京などの大都市で地価が異常に上昇し、そこに目をつけた銀行や不動産会社の大手は、「転売」という手で大もうけをしていた。 そのためには一等地をどんなに金を積んでも住民を追い出し、まとまった土地として買い取らなければならない。札束が舞い、「地上げ屋」たちが抵抗する住民をあの手この手で追い出していた。大企業はそのような汚れた仕事をすればイメージが崩れるから、下部組織に金を流してやらせる。 新興宗教の管長、鬼沢鉄平は妻に教祖をやらせ、一大教団を率いていた。宗教法人に税金がかからないことをいいことに巨額の金をため、これを地上げ屋を動かす資金に使っていた。政治家に献金をして、税逃れを見逃すように仕組み、超高層のオフィスビルを作るため近くの住宅地域を次々と買収していった。 板倉は彼らの集まりの会話を録音し、新任職員の協力を得て、少しずつ脱税の全貌を明らかにしていくが、複雑な仕組みによって運営されている宗教団体の動きを追うのは容易なことではない。板倉は夫から暴力を受けたと称して寺院の内部にもぐりこみ、祭壇の後ろに秘密の部屋への入り口があることを発見する。 確証を得た査察の課長はついに総動員令を出して寺院の家宅捜索を行う。なかなか決定的な証拠が出てこない。だが、証拠品を保管する倉庫に侵入した男を取り押さえたあとで、帳簿の秘密の仕組みが明らかになる。鬼沢は巨額の重加算税を払うハメになるが、同時に命を狙われる。彼の上で出資をして自分たちの利益が失われることを恐れた者たちが背後に大勢隠れているのだ。(1988年) 監督: 伊丹十三 脚本: 伊丹十三 キャスト(役名)宮本信子(板倉亮子)津川雅彦(花村)丹波哲郎(佐土原)大地康雄(伊集院)桜金造(金子)益岡徹(三島)マッハ文朱(秋山)笠智衆(元僧侶)三國連太郎(鬼沢鉄平) Les Enfants de Lumiere リュミエールの子供たち 2008/10/11 フランス映画約百年の歴史をさまざまな作品の代表的な場面を見せながら流れをたどっていく。題名は、史上初めて本格的な映画撮影の行われたリュミエールという名の工場で、工員たちが仕事がひけてぞろぞろと門から外に出てくる様子が映し出されたことにちなんでいる。 フランス映画はありとあらゆる題材に取り組んだ。それは必ずしも娯楽一点張りとは違い、その点はハリウッドなどとかなり異なる。ある映画のせりふにもあったように、「ハリウッドでは99%はセックス描写に使われ、残りの1%が心理描写である」と揶揄されている。 フランス映画になじんでいる人々なら、そこに見覚えのある場面を幾多も見つけるであろう。タイトルは本編の終わったあとで紹介されるが、いずれもその映画が思い出させられる典型的な場面ばかりが現れる。(1995年) Directors: Andre Asseo / Pierre Billard Cast; Jacques Perrin ... Recitant / Narrator (voice) 主題曲はたいへん有名になった。1945年6月、華北の戦場では、敗戦による日本軍と日本人入植者たちの撤退が始まっていた。慰安婦、矢吹秋子は日本に帰る仲間たちと別れてそれまで住んでいた町に戻った。軍医で中尉である関三郎に惹かれていたからである。二人は再会し、破壊された町の中で夜来香の花が香る中、激しい恋に落ちた。だが空襲のために二人は別れ別れになる。 5年後、三郎は医学博士として、神戸の医薬品研究所に勤めていた。神戸での勤務を望んだのは、秋子の故郷がここであり、もしかしてどこかで会える望みを捨てていなかったからだ。三郎の弟分、利夫の両親は医院を開き、彼はそのあとを継ぐはずであったが、得体の知れない闇屋と結んで、何か悪いことをしているようだった。しかもその闇屋の妹がこの医院で看護婦として働いていたのだ。 ある日、三郎は自分の目が見えなくなっていることに気づく。戦争で受けた損傷が、彼の目を失明させるに至ったのである。将来を嘱望されていた三郎は深い絶望に陥る。皮肉にもその時彼は秋子と再会できたのだった。秋子と出会っても幸せにはできないと思った三郎は姿を彼女の前から消すが、のこっていた勤務先の便箋から再び発見された。利夫のおかげで、三郎はは再び秋子と再会できた。 利夫は麻薬容疑で警察に捕まり、三郎は闇屋に保釈金10万を貸してくれるようにたのみこんだ。闇屋は、三郎と利夫に二重の要求をして、それと知らぬ弟は神戸の鉄道駅で貨車に飛び乗るという危険な仕事を命じられることになる。それを知った三郎は、それを止めるべく駅に急いだ。秋子には翌朝必ず戻るという約束を残して・・・(1951年) 監督: 市川崑 脚本: 松浦健郎 市川崑 音楽: 服部良一 キャスト(役名) 上原謙(関三郎) 久慈あさみ(矢吹秋子) 利根はる恵(ぎん) 川喜多小六(小田切利夫) 河村黎吉(亀山連吉) 月丘千秋(妹千代) 映画というものは特にストーリーがなくても、せりふがたくさんなくても観客に何らかの感銘を与えることができるものだ(テレビに毒された人々には理解できないだろうが)。この映画も、淡々と島の自然を描きながらもひとつのまとまった抒情詩になっている。 ある夏の日、南西諸島のひとつの島の空港に、母と6年生の娘が降り立った。母親は川西悦子、この島の出身であるが、東京で結婚生活がうまくいかず、とりあえず娘を連れて実家に戻ってきたのだ。娘はかおりといい、渋谷に住んでいたということで、地元の子供に珍しがられる。 かおりは、道端で行商を営むおじさんから魚の図鑑を贈られ、それを眺めているうちに次第に島の自然に関心を寄せるようになる。悦子はまだ独身の同級生のところに行って、その男になんとなく関心を寄せる。というのも彼は村一番の漁師で、小さいときからこの自然の中で暮らしてきたからだろう。 子供たちのなかに、父親を海の事故で失い、今祖父から素潜りによる漁の特訓を受けている少年がいた。ふたりは朝早く海に出てさんご礁にすむ魚を獲るのだ。すっかり地元の子供たちとなじんだかおりは、みんなと勝手に船を出してもぐりに出かける。しかし天候が怪しくなり、船のエンジンも動かず、みんなを乗せた船は流されて無人島に漂着する。その晩は村ではおおさわぎ。ようやく翌朝子供たちは無事発見される。 夏休みも終わりに近づいた。悦子はきちんと夫と話をつけることために東京に戻ることにした。かおりはすっかりこの村が好きになり、去りがたい気持ちでいっぱいだ。ここで暮らしたいと思う。バスに乗ると大勢の村の子供たちが手を振って別れを惜しんでくれた(1991年) 監督: 椎名誠 原案: 中村征夫 脚本: 椎名誠 沢田康彦 白木芳弘 キャスト(役名) 余貴美子(川西悦子) 本名陽子(川西かおり) 仲本昌司(阿木たかし) 平良進 タイラススム (上里徳一) 平良トミ タイラトミ (上里つね) Bonnie and Clyde 俺たちに明日はない 1994/12 : (再)2009/09/02 :(再) 2020/11/18 (再)2024/02/10 大きな社会ほど、”秩序”というものを重視する。規範を乱すものには容赦しない。もちろん個人は社会の強大な力の前にはひとたまりもない。権力は秩序の維持のためには人間性も自由も無視し、徹底的な殲滅を実行する。それでも時々ジェシー・ジェイムズやボニーとクライドのように、反逆児が現れては消える。のちに「テルマ&ルイーズ」という映画も作られた。 1930年代のテキサス、おたずねもののクライドは刑務所から出たばかりである。車を盗もうとしていたところを家の娘ボニーに見つけられる。泥棒としてとがめようとしたのだが、田舎町の先の見える生活に飽き飽きしていたボニーは、一目でクライドが気に入り、何の抵抗もなくクライドの泥棒家業の助手をすることになる。 時は大変な不景気の真っ只中で、人々は銀行に農地や動産を取られ、苦しい生活を強いられていた。クライドも借金漬けにされ土地を追われる農民にあった後、主に銀行を狙うようになったが、警備員や警官に追われるうち、相手を死なせることも増えてきた。やがて全国に指名手配され、二人は追われる身となる。 途中で、車の好きな若者、ポラードを拾って3人での旅は続く。クライドは兄のバックと再会し、彼の妻エステルも含めて総勢5人での強盗旅行は始まったのだった。しかしバックの家に食料品を届けにやってきた者によって所在がわかってしまい、1度は何とか逃げ失せるが、2度目には警察の急襲で、バックは死に、エステルは失明して捕らえられる。 このときボニーとクライドも負傷するが、ポラードが二人を父親の家にかくまい、二人は全快する。だが、ポラードの父親は警察に連絡をつけ、二人は待ち伏せていた警官たちによって蜂の巣のように射殺される。・・・資料 Director:Arthur Penn Writers:David Newman (written by) & Robert Benton (written by) Cast (Complete credited cast) Warren Beatty ... Clyde / Barrow Faye Dunaway ... Bonnie Parker / Michael J. Pollard ... C.W. Moss / Gene Hackman ... Buck Barrow / Estelle Parsons ... Blanche (1967) Les Aventuriers 冒険者たち 2009/10/23 : 2020/11/25 冒険に挑む者たちが、命を最大限に燃焼させて行きぬいたところを描いた作品。荒唐無稽なところや、スリル満点のシーンの連続にもかかわらず、そのような細部とは別に、映画が終わったあとに、行動に突き進む人生の”完結”というものを感じさせてくれる傑作。 パリで自動車修理解体業を営むロランのところにモビールに挑む芸術家、レティシアが部品を買いに来た。ロランのレーサーエンジンを完成させる夢、彼の親友であるマヌの曲芸飛行への夢は、レティシアの心を大いに魅惑する。 レーサーエンジンは失敗し、マヌの飛行機免許は剥奪され、レティシアの個展は散々な評価を受けて、青春の夢は潰えたかのように見えたが、ふと耳にしたコンゴ沖に沈む財宝を求め、3人は冒険の旅に出発する。 墜落した飛行機を操縦していた元パイロットが現れて、4人はついに海底に沈む飛行機の残骸から財宝を手に入れる。だがそれを知ったならず者たちと撃ち合いになり、レティシアは死んだ。彼女は水葬され、パイロットは救命ボートで追放される。 フランスに戻った大金持ちの二人はレティシアの故郷を訪ね、彼女の甥にあたる博物館の管理をしている少年に彼女の遺産の分を渡す。ロランがふと海を見ると、レティシアが手に入れたいと言っていた、要塞の島(Fort Boyard )がはるかに見えるではないか。そこには何者かが銃や手榴弾を隠していた古い城だった。 一人パリに戻ったマヌは女友達と再会したとき、ならず者にあとをつけられるが、拷問を受けたにもかかわらずあのパイロットは口を割らず、殺されずにすんだ。その代わりパイロットは殺された。マヌが再びレティシアの故郷に戻り、彼も要塞の島にやってくる。ロランはレティシアの夢を引き継いでここをホテルにする計画を立てているのだ。 だがならず者たちは二人のあとを追い、上陸してきた。銃と手榴弾で何とか彼らを防いだものの、マヌは銃撃戦で負傷した。「レティシアはお前と暮らしたがっていたぞ」とロランが言うと、マヌは「うそつきめ」といいながらも安らかな顔で死んでいった。(1967年)・・・資料 Director: Robert Enrico / Writers : Robert Enrico (writer) /Jose Giovanni (dialogue) Cast Alain Delon ... Manu / Lino Ventura ... Roland / Joanna Shimkus ... Laetitia / Serge Reggiani ... Le pilote 言語;フランス語 父親は特急列車の機関士をしている。気丈な母親のもと、長男、長女、そして末っ子のマルチェロの5人家族だが、クリスマスだというのに一家には問題が次々と起こる。長女は妊娠しており、レナードという男と結婚させられる。だが夫婦がうまく行かないのは彼女には昔の恋人が付きまとっていたからだ。長男は仕事が見つからないというよりも探す気がなく、ばくちで金をすったりしている。マルチェロだけがその愛くるしさと機転が利いて賢いことからみんなに愛されている。 ある日父親の運転する列車が自殺者を引いてしまう。動転した彼はそのあと赤信号を見落とし危うく第三時なるところだった。そのため停職を食らい、全国のストライキではスト破りをしたと仲間たちからのけものにされる。こうして何もかもがうまくいかなくなってしまった一家だったが、父親がついに長男と長女と真正面から衝突し、二人は家を出て行くことになる。このため父親は仕事に行かなくなり昼から酒を飲む毎日になった。一家がばらばらになって母親はマルチェロを抱いて泣く。 再びクリスマスが近づいてきた。マルチェロは父親の行きつけの酒場を発見して、家につれて帰ろうとした。その前に父親は仲間たちのいる酒場に寄ろうと思った。みんなは温かく迎えてくれた。だが、突然父親は病気で倒れてしまう。 クリスマスの夜、マルチェロと両親だけの食事を始めようとしたところに、仲間が訪ねてきた。長男も仕事をやる気になって戻ってきた。長女もレナードとよりを戻し、やってくるという。久しぶりにこの家は人々のにぎやかな声でいっぱいになった。あれほど荒れていた家庭がやっと元の姿に戻ったのだ。 Director:Pietro Germi Writers:Alfredo Giannetti (story) Pietro Germi (writer) Cast (Complete credited cast) Pietro Germi ... Andrea Marcocci / Luisa Della Noce ... Sara Marcocci / Sylva Koscina ... Giulia Marcocci (as Silva) / Saro Urzi ... Gigi Liverani / Carlo Giuffre ... Renato Borghi / Renato Speziali ... Marcello Marcocci / Edoardo Nevola ... Sandro Marcocci (as il piccolo Edoardo Nevola) 原語;イタリア語 Wait Until Dark 暗くなるまで待って 2010/02/23 カナダのどこかで麻薬犯人が人形に”粉”をつめ、リサという女にニューヨークへ持っていかせる。だが、怖くなったリサは飛行機の隣に座っていた写真家サムにわたしてしまう。リサはそのため黒幕ロートに殺され、目の見えない妻スージーの住むサムの家はロートと二人の子分によって家宅捜索を受けることになる。 ロートが変装したり、子分たちがサムの旧友だと名乗ったり、刑事のふりをしたりしたけれども、賢いスージーは不自然さにすぐ気づく。しかも同じアパートにいてスージーの手助けをしてくれる少女、グロリアのおかげで彼らが自分の夫が持ち帰った人形を狙っている悪人だということを知る。 恐怖に襲われたスージーだったが、勇気を奮い起こして何とか自分を守ろうと試みる。だが子分たちもロートに殺され、自宅の電話線も切断され、自分もロートに殺されそうになって絶体絶命となる。だが、盲人には一つの利点があった。まったくの暗闇では彼らのほうがすばやく立ち回れるのである・・・ Director: Terence Young Writers: Frederick Knott (play) Cast Audrey Hepburn ... Susy Hendrix / Alan Arkin ... Roat / Roat Jr. / Roat Sr. / Richard Crenna ... Mike Talman / Efrem Zimbalist Jr. ... Sam Hendrix / Jack Weston ... Carlino / Samantha Jones ... Lisa / Julie Herrod ... Gloria (1967) 言語;英語 How to Steal a Million おしゃれ泥棒 2010/02/26 (再)2015/09/30 パリに住む偽造絵の大家、リーランドは自分の作った作品に美術愛好家たちがまんまとだまされ巨額の金を払うのを見て、大いに楽しんでいる。娘のニコルはいつかそれがばれて破滅的な最後が来るのが心配でならない。 大展覧会が催されることになり、こともあろうにリーランドは自分の偽造したビーナスを堂々と無償で出品する。見学者たちは感嘆のため息を漏らしたが、画商ボネは何か疑念を感じてサイモンという偽造鑑定専門の探偵を雇い、リーランドの家に忍び込ませる。 だがゴッホの(偽?)絵を調べている最中に泥棒と勘違いされてニコルに見つかってしまい、暴発したピストルで腕に怪我までしてしまう。一方”おしゃれな”泥棒だというのがニコルの第一印象だ。 だがニコルを一目気に入ったサイモンは、自分の泊まっているリッツホテルまで送らせた上、さっそく交際を申し込む。そのころ保険を契約するため、ビーナスを正式に鑑定する話が持ち上がった。 さあ大変。もし偽作であることがばれたら、リーランドは一巻の終わりだ。ニコルはサイモンを泥棒のプロと思っているから警戒の厳重な美術館に侵入して盗み出すよう頼み込む。 サイモンはニコルの頼みとあってさっそく二人で忍び込み、夜中まで待ってブーメランを使って赤外線防犯装置を2度も作動させるという奇策を用い、明け方近くに警備員たちにセンサーの電源を解除させてしまう。 まんまと偽ビーナスを盗み出したサイモンはリーランドに自分の正体を明かし、リーランドが今の仕事をやめるように迫る。そしてニコルとの結婚の意志を表明する。・・・資料 Director: William Wyler Writers:George Bradshaw (story) Harry Kurnitz (screenplay) Cast Audrey Hepburn ... Nicole / Peter O'Toole ... Simon Dermott / Eli Wallach ... Davis Leland / Hugh Griffith ... Bonnet (1966) 言語;英語 エイベルがベネズエラの首都カラカスの革命騒動から逃れ、原始そのもののアマゾンの支流を下っていくと、原住民たちに出会う。彼らは残忍であったがエイベルが勇気ある男だと認め、自由にしてくれた。彼らの住む村の近くには滝に囲まれた”聖域”があり、酋長レニはそこに住む妖精が自分の跡取り息子を殺したのだから、征伐して来いと命令する。 エイベルはその妖精というのが、祖父ヌフロと一緒に住む若い娘リマであることを知り、命の危険が迫っていることを知らせる。だが二人は恋に落ち、リマが自分の生まれ故郷に戻りたいと言い出すに及んで、祖父と孫娘のジャングルでの平穏な生活に終わりが訪れる。 酋長の次男クアコ率いる追っ手をたくみにかわしてたどり着いたかつての村は、ヌフロが若いころに盗賊団に属していたころに焼き払われ、リマの母親も殺された。当時4歳のリマを引き取ったのがヌフロであり、祖父などではなかった。すべてを告白したヌフロは自宅に戻り、クアコらに殺される。ヌフロを追うリマも大木のてっぺんに追い詰められ、下から火をつけられてしまう。 あとを追ってきたエイベルは原住民に捕まり、実は長男を殺したのはクアコであることを知る。脱走したエイベルはリマがいつも気に入っていた水辺でクアコとナイフで戦い、これを殺す。リマはこの森に咲く大輪の花のように、エイベルの心の中に永遠に生きることとなった。(1959年) Director: Mel Ferrer Writers: William Henry Hudson (novel) / Dorothy Kingsley (writer) Cast Audrey Hepburn ... Rima / Anthony Perkins ... Abel / Lee J. Cobb ... Nuflo / Sessue Hayakawa ... Runi / Henry Silva ... Kua-Ko 言語:英語 Les enfants du paradis 天井桟敷の人々 2010/04/24 原題は直訳すれば「天国の子供たち」、実際には劇場で一番上の堰で、最も入場料が安いために貧しい人たちが見に来る場所。しかし俳優にとっては、彼らの気取らぬ拍手喝采が励みになるのだ。時は戦前のパリの下町。劇場が軒を連ね、人々がひっきりなしに行きかう賑わいがあった。 その中でも「犯罪大通り」にある劇場のパントマイムの若き俳優バチストはスリ事件をきっかけにガランスという女に、彼女の男が脅迫してくる危険をものともせず恋に落ちる。だが、フレデリックというシェークスピアを目指す役者に彼女を取られてしまう。しかしガランスはすりの嫌疑で警察に捕まるところを、彼女を崇拝するモントレー公爵に救われパリを離れる。 数年の後、ドウランを塗った「白い男」、バチストは大人気を博し、劇団の娘ナタリーと結婚して子供ももうけるが、同じく有名になったフレデリックによって、ガランスがパリに戻り自分の公演をひそかに見に来ていることを知る。どうしても昔が忘れられない二人は再会するが、そこへナタリーがやってきてガランスは復活祭の雑踏の中に消えてゆく。 Director: Marcel Carne Writer:Jacques Prevert (scenario and dialogue) Cast Arletty ... Garance (Claire Reine) / Jean-Louis Barrault ... Baptiste Debureau / Pierre Brasseur ... Frederick Lemaitre / Pierre Renoir ... Jericho / Maria Casares ... Nathalie (as Maria Casares) 言語;フランス語 1945年 La grand illusion 大いなる幻影 1994/11 = 2010/05/27 第1次世界大戦末期、フランス軍将校のマレシャル中尉とボアルデュ大尉は、偵察飛行中に撃墜され、ドイツ軍の捕虜となる。最初の収容所では、ほかの仲間たちが床下に脱出用の穴を掘っていたが、完成前夜に移動命令が下り、その後はドイツ国内の収容所を点々として、ついにはある城を改造した収容所に入れられることになった。 そこではボアルデュ大尉の旧友であり、同じく貴族の出身であるラウフェンシュタインが隊長であった。かれは戦傷のため体中にギプスをつけ、捕虜監視の仕事をいやいやながらやっていた。すでに何度も脱走を試みて失敗した二人は、もう一人のユダヤ人、ローゼンタールと再び計画を練る。 5分でも大騒ぎをすれば、監視兵が一箇所に集中してその任務が手薄になることにヒントを得て、捕虜全員で笛を吹いて収容所を混乱に陥らせることにした。しかし誰が逃げるかという段になって、ボアルデュ大尉は自分は残ると言い出す。彼の決心は固いので、マレシャル中尉とローゼンタールは二人で逃げることにする。 騒ぎが起こり、監視兵は総点検をするために全員を招集した。ところがボアルデュ大尉は笛を吹きながら、ひとり城の中を走り回り、戻れという命令に従わない。そのすきをみてマレシャル中尉とローゼンタールは城壁を手製の縄で下り、森の中に逃げ込んだ。ボアルデュ大尉が命令にまったく従わないため、ラウフェンシュタインはやむなくボアルデュ大尉の足めがけて撃った。だが運悪く腹部に当たり、ボアルデュ大尉は絶命する。 一方、脱走に成功した二人はドイツ国内を南に向かった。何百キロという距離をろくな食料も持たずに歩き続ける。ついにローゼンタールが倒れる寸前、百姓家を発見し、そこで二人は幼い娘と暮らす母親のエルザに助けられる。彼女が一人で暮らしていたのは、エルザの夫も親戚もみんな戦争で死んだからだ。 2,3日暮らすうち、マレシャル中尉とエルザは恋をしてしまう。だが、出発をしなければならない。マレシャル中尉は戦争が終わったら迎えに来るという約束をして、エルザに別れを告げた。マレシャル中尉とローゼンタールは再び、まだ雪の残る荒野を前進し、ドイツ兵に狙撃されるが、運よくスイス領内に逃げ込むことができたのだった。(1937年) Director:Jean Renoir / Writers: Charles Spaak (scenario and dialogue) & Jean Renoir (scenario and dialogue) Cast Jean Gabin ... Lt. Marechal / Dita Parlo ... Elsa (farm woman) / Pierre Fresnay ... Capt. de Boeldieu / Erich von Stroheim ... Capt. von Rauffenstein (as Eric von Stroheim) / Julien Carette ... Cartier, l'acteur (as Carette) / Georges Peclet ... Le serrurier (as Peclet) / Werner Florian ... Sgt. Arthur / Jean Daste ... The teacher (as Daste) / Sylvain Itkine ... Lt. Demolder (as Itkine) / Gaston Modot ... The engineer (as Modot) / Marcel Dalio ... Lt. Rosenthal (as Dalio) 言語;フランス語 江戸の長屋で首吊りがあった。気前のよい大家は、みんなにほだされて金を出して通夜を行う。按摩の男など、和気藹々である。長屋に住む浪人、海野は自分の父親の世話になった侍、毛利に自分の就職を頼むが、すげなく断られる。というのも質屋の白子屋の娘、お駒が自分の番頭に恋していて、武家に嫁ぐのを嫌がって毛利を困らせているからだ。 白子屋は源七など、何人かのならず者を抱えていて、外で侍の出てくる海野をたたきのめしたり、同じ長屋に住む髪結新三を脅迫したりしている。ある縁日の夜、豪雨の中にお駒を発見した新三は誘拐し、隣の部屋に住む海野にあずかってもらう。 娘の誘拐が表ざたになるのを恐れた白子屋やならず者たちを相手に新三は大きな口をきき、それに乗じて金にさとい大家がたんまりと謝礼金を受け取って娘は返される。その夜大家の連中は大いに飲んで浮かれたが、新三はならず者らに呼び出され、実家から帰って、酔って寝ている海野の姿を見た、彼の実直な妻はすべてを悲観して・・・ 監督:山中貞雄 原作:河竹黙阿弥 配役:髪結新三・・・中村翫右衛門 海野又十郎 ・・・河原崎長十郎 白子屋の娘お駒 ・・・霧立のぼる 按摩籔市 ・・・坂東調右衛門 源七乾分百蔵:市川莚司(のちの加東大介) 女だけの都 La kermesse heroique 2010/09/11 原題は「英雄的な定期市」とでもいおうか。現在のベルギー付近は北フランスとオランダに挟まれた、フランドル地方とよばれるところだが、そこは16世紀のころ、スペインの統治下にあった。ある小さな町では、画家のブリューゲルに自分たちの肖像画を描かせている最中だったが、翌日にスペインの護衛隊が立寄るという知らせ聞いて、町長をはじめとする町役場の幹部たちは戦々恐々となる。というのもスペイン人たちは残虐で暴行と略奪をほしいままにするといわれていたからだ。 そこで町長はかくれるのが一番だと考え、自分が死んだことになって、通夜の準備を始めさせた。これを見た町長夫人は自分の夫のふがいなさにあきれ果て、町の女たちを集めて、男では町の防衛にまるで役に立たないから、自分たちで軍隊を歓迎しようと提案する。 これはさっそく実行に移され、部隊が到着すると中尉には町長夫人が、そして僧侶やその他の取り巻きには町の女たちが大サービスを開始した。破れた衣服のつくろいもしたし、酒場では大勢の兵隊たちを歓待した。兵隊たちは暴れるどころか、大喜び。 町長夫人は中尉と仲がよくなったのを利用して、町長が反対している自分の娘とブリューゲルとの結婚をその晩、僧侶に執り行わせてしまう。翌朝、スペイン人たちは大いに満足して町を出発していった。それどころか1年分の税金をまけてくれるというおまけまでついたのだが、夫人はみんなの前でこれは町長のおかげだというのを忘れない。(1935年) Director:Jacques Feyder Cast Francoise Rosay ... Cornelia de Witte / Andre Alerme ... Korbus de Witte / Jean Murat ... Le duc d'Olivares / The Duke / Louis Jouvet ... Le chapelain / The Priest / Micheline Cheirel ... Siska / Bernard Lancret ... Julien Breughel 言語;フランス語 ティファニーで朝食を Breakfast at Tiffany's 2010/12/26 (再)2012/05/22 (再)2023/03/09 年配の装飾家の女性、2-E の若いツバメであり、作家志望であるポールは、ニューヨークのあるアパートに引っ越してきた。同じアパートに住むホリー・ゴライトリーはアパートの鍵をなくしたといっては彼の部屋に飛び込んできた。真夜中に大勢の男たちを自分の部屋に連れ込み、大騒ぎが起こる。上の階に住む日本人写真家のユニオシ氏はカンカンだ。20歳前後であろうホリーは、まったくの謎の女だった。 彼女の兄フレッドと似ているため、ポールもその名で呼ばれ、彼女のかくれたファンになる。部屋には、オスネコを飼っているが、お互いを”所有”しないということで、名前がつけられていない。どうやって生計を立てているのか見当もつかない。化粧室に行くときに50ドルのチップをもらえるといっていたが。ホリーはニューヨーク社交界の”花”なのか? ポールは、彼女の部屋でのパーティで何人かと知り合いになる。ブラジル人の外交官ホセ、アメリカ人の大金持ち、背の高いモデルらがそれだ。大金持ちとモデルは結婚してしまった。ホリーはまた、週に一度、刑務所に入っているサリーという謎の男を”慰問”している。そうするとあとからサリーの弁護士から金が送られてくるのだ。 そこへ田舎から、一人の老人が訪ねてきた。ほかの家族に死なれ飢え死に寸前だったホリーとフレッドを引き取り、ホリーを自分の”幼な妻”にした男だ。数年前にホリーが家出をした後、ようやく居所を見つけたのだ。だが、いまさらホリーは大好きなニューヨークを去って帰るわけにもいかない。仕方なく老人は戻っていった。 貧困の少女時代を送り、家出のあとはさまざまな苦労をしたであろうホリーは、ティファニー宝石店のような、不幸の微塵も感じられないような場所が一息つけるところなのだ。できたらそこで朝食をとることも夢なのだ。実兄フレッドを引き取って暮らしていくには金持ちと結婚するしかない。ホリーはホセとの結婚を考えている。彼女を愛するようになり、それで2-E とも別れたポールはそれをやめさせたい。そこへ、フレッド戦死の知らせ。ホリーは部屋中をめちゃくちゃにして絶望の中に落ちた。そしてしばらくは付き合いも外出もやめていたが、いよいよホセとの結婚をするということになって、大事件が持ち上がった。 刑務所のサリーが麻薬組織の親玉で、ホリーは彼の”指令”を天気予報の形で外部に伝えるために訪問していたというのだ。新聞に大々的に取り上げられ、大金持ちに保釈金を出してもらったものの、彼女はもはや今までのようにニューヨークの社交界で”活躍”することができなくなってしまった。そしてこの事件をきっかけにホセも逃げてしまう。 夢は破れてもブラジルにいくのだといってきかないホリーはタクシーを止めてネコを街においてゆく。ポールは何とか思いとどまらせようとタクシーを降りる。ポールが見守る中、豪雨の中、ホリーは捨てた猫を再び見つけた・・・(1961年) ポールを”援助”する 2-E の存在と最後がハッピーエンドになるところが原作と大きく違う。原作ではホリーはあくまでも放浪の女、孤独の女なのだ。ハリウッドの脚本は、この小説が最も言いたい部分を甘ったるくしてしまった。 ・・・資料Director: Blake Edwards Writers: Truman Capote (based on the novel by), George Axelrod (screenplay) Cast Complete credited cast: / Audrey Hepburn ... Holly Golightly / George Peppard ... Paul 'Fred' Varjak / Patricia Neal ... 2-E / Buddy Ebsen ... Doc Golightly / Martin Balsam ... O.J. Berman / Jose Luis de Villalonga ... Jose (as Vilallonga) / John McGiver ... Tiffany's Salesman / Alan Reed ... Sally Tomato / Dorothy Whitney ... Mag Wildwood / Beverly Powers ... Nightclub Stripper (as Miss Beverly Hills) / Stanley Adams ... Rusty Trawler / Claude Stroud ... Sid Arbuck / Elvia Allman ... Librarian / Putney ... 'Cat' - a Cat (as 'Cat') / Mickey Rooney ... Mr. Yunioshi H O M E > 体験編 > 映画の世界 > コメント集(38) © 西田茂博 NISHIDA shigehiro |