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ブランド米よりブレンド米を

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ひところ、「うまい米」の話がもてはやされ、さまざまな名前の米が、それも目の飛び出るような価格で店頭に並んだ。昔の配給制度が廃止され、米が自由流通になったのだから、人々はほかの食品と同じように、良い品質、良い味のものをもとめた。

同時にその時期は日本のバブルの時代と重なっていたから、金に飽かせて高級な米を求める人も少なくなかったようだ。だが、そのブームも落ち着くと、果たして人々の舌は、その味の違いをきちんと判別していたかというと、まったく疑わしい事態が続出した。

当然の事ながら、米の流通業者の中には悪い奴もいて、まったくラベルとは違う商品を仲に入れて堂々と売り出す者もかなりいるのだ。だがそのような一連の事件の後、米のうまいまずいには大して差がないこともわかってきた。つまり、狭い日本で収穫された米は、基本的には同じ味なのだ。

むしろ味を大きく変える要素は、米に含まれる水分であるし、新しいか古いかによる。しかも有名ブランドの米は作るのに手間がかかり、病気に弱いので多くの農薬を入れたり、冷害の場合にはたちどころにやられてしまうという欠点も明らかになった。

金を掛けた割には大した見返りがないのならば、何も特定の銘柄にこだわる必要がない。そこが酒や味噌と違うところだ。だが、ひどくまずい米を食べさせられるのもご免だ。そこで登場したのがブレンド米である。

ブレンドと言えば、何といってもコーヒー豆を思い出す。世界のコーヒー通は、豆屋に行って、自分の好み(酸味、苦み、香り)に基づいて、いろいろな種類の豆を買い求める(インスタントの粉末で満足している人は論外)。これによって自分だけのコーヒーを楽しむことができるし、好みが変われば、豆の配合を変えればよい。

この考え方は米の場合にも通用する。そして今まであまりその品質について高い評価を得ていなかった米(北海道産、北九州産など)も上手なブレンドによって、なかなかイケル味になって店頭に登場しているのである。おかげで価格も手ごろである。

米そのものは、世界の多くの地域で栽培されているように、そのわずかに甘みを帯びた味は非常に人気がある。しかも小麦や麦のように粉末にして作り変えるという手間をかけなくとも、煮たり、炊いたりすればすぐ食べることができるのが何よりである。

そして、米はほかの穀類や野菜を排斥しない。栗ご飯、イモご飯、豆ご飯、いずれも美味である。豚肉や牡蠣も大歓迎である。したがって、家庭でまずブレンド米を求めた後、さらに何か追加してご飯を炊いてしまうことが抵抗なくできる。

私は、まず栄養面のバランスから、ムギ(大麦)を追加することを考えた。米は玄米など、胚の部分を残すとうまくない。美味しい米であるが、ヌカの部分はその臭さがあるために毎日食べるときには必ずしも快適ではない。だから江戸時代から、精米された米は「銀シャリ」として、脚気の危険にも関わらず、喜ばれたのだ。

この点、全体の重量の20%をムギにすると、栄養面では完全に解決する。しかもムギにはヌカ臭さはないし、ほかのおかずに影響を与えるような強い癖もないので、すぐに慣れる。現代でも脚気の人々が少なからずいるという。この飽食の時代に?と思ってしまうが、よほど偏った食生活をしているのであろう。これもムギ配合によって解決する。米のでんぷんはムギに含まれているビタミンによってよく燃焼するから、日常生活にもエネルギーが生じるし、太り過ぎも防ぐことができる。

私はさらに、この中にわずかにモチ米を追加することも考えた。ウルチ米は冷えるとその粘度を失い、割とパラパラするが、モチ米を加えると冷えてもくずれにくい。この効果がはっきりわかるのはおにぎりを作る時だ。もちろんしっかりと握れば全体がくずれることがないが、モチ米を加えると、おにぎりはそもそも冷えた状態で食べるだけに、そのモチモチした感触が炊き立てのご飯のような舌触りを与えてくれるのである。

そして本当の炊き立てご飯の場合には、いっそうの粘りを与えてくれる。タイ人のようにパラパラした米が好きな人には、関係ない話だが、わざわざ水を多めに入れて水をさらに吸わせ、沸騰してからも蒸らすことをおこなっている日本人の食性から見るとぴったりなのだ。

しかし入れすぎは、逆効果になる。まるでモチかダンゴを食べているような重苦しさになってしまうから、加えるのは全体の重量の5%を超えないほうがよい。かくして、私のおすすめするブレンド米は、ウルチ米:大麦:モチ米の比率が75:20:5となっている。

なお、ウルチ米は無洗米である。これは洗う手間が省け水道水の浪費を防ぐだけでなく、処理工場では回収した部分を肥料にまわすことができ、ヌカの匂いをほとんどど完全に追放していることからも(同じ10キロを買うにしても200円ほど割高だとしても)ぜひ使うべきである。

2006年1月初稿

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro

 
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