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梅干しを作る

かごで干している梅干し

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故樋口清之博士の名著「梅干しと日本刀」にあるように、古来より梅干しは優れた食品だった。ご飯と梅干しだけの取り合わせなんていかにも野蛮に見えるが、さにあらず。食べたとたんに、脂肪としてたまってゆくハンバーガーと違い、体にカロリーとして吸収される、理想的な労働食なのだ。

さて、今回はわたしの両親が梅干しを作ることになったので、これを克明に記録して、今後の役に立てようと思う。梅が収穫されるシーズンは6月の中旬から7月の初旬ぐらいまで。あまり早いと、梅干しの入ったカメ梅酒に使う青梅しか手に入らない。少し立つと実に黄色みを帯びた梅が出回り出す。これが梅干しに向いた梅だ。大きさは最終的には、シワだらけになって縮むから、それを計算に入れて選べばよい。今は小梅に人気があるようだが、大きい方が果肉のうまさが味わえると思う。

買ってきたら、水洗いをして、ホコリや過去に噴霧したかもしれない農薬などを洗い流す。その後はザルにあけて陰干しをしすっ塩に漬けたところかり水気を取る。この後いよいよ塩漬けにはいる。今でも塩は専売公社の純粋のものがいいと思っている酔狂な方がいらっしゃるようだが、食品の価値は「不純物」にあるのだから、もちろんここでは海水を蒸発させて作った、「荒塩」を選ぶ。塩と梅の割合は梅5キロに対し、重量比で18パーセントぐらいがいいだろう。

カメの中に両者を入れ、木のふたをしてその上に重石をのせておく。そのうち2,3日すると汁が出てくるが、それを「梅酢」という。これはいったん別にとっておく。これは不思議な液体だ。透明で、梅の体から塩によって押し出されてくるわけだが、これがないと梅はかびが生えたりしてしまうわけだから、きっと強力な殺菌作用があるに違いない。

シソを塩で洗うこれとは別に赤紫蘇を用意しておかなければならない。青紫蘇と違って栽培が難しく、しかも梅干しを作るしろうとが減ったために入手が難しくなっている。よくちぢれて色つやのいい、新鮮なものを選ぶ。ボールに入れて荒塩をまぶし、かき混ぜると赤い水がにじみ出てくる。これはいらないから捨ててしまう。塩で余計な水分を出し、同時に不要な成分やゴミを取り除くのだ。これはよく絞って使う日まで冷蔵庫に保管しておく。必要なときに八百屋で売っていないかもしれないから。店頭で見つけたらすぐにこうやって準備しておくのだ。

梅雨が明ける。日差しが強烈になったらいよいよ「干す」のだ。カメからザルに広げて日中はどんどん太陽に当てて梅の実から水分を干し上がった梅干し減らし、「しわくちゃ」にする。紫蘇もしぼって干す。あれほど張りのよかった大きな梅が重量を減らし小さくしぼむのはみものだ。これを3日間ほど続ける。伊丹十三の「女たちよ!」によれば彼の祖母はさらに4日目からは昼だけ天日に干し、夜はカメに戻す。これを1週間ほど続けるのだという。手間をいとわない人はやってみるとよい。この後密封して秋から(もっと後の方がいいが)食べはじめる。これだけ手間がかかるのだから、なぜ市販品が高いのかわかるだろう。これが自分で作れるならば、これはまさに宝物だ。

梅干しに発生するカビについて

最近梅干しを自分で作る人が増えているが、意外にカビをはやす人が多い。はっきり言えば、かびが生えたら終わりだ。捨てるしかない。もともとシソには殺菌作用があり、それでもなおかつカビが生えてしまったということは、かなり強力な奴である。カビは発ガン作用のあるものも報告されているから、とても食べるわけにはいかない。

原因は、塩の減らし過ぎであろう。そもそもどうしてそんなに塩を減らすのだろうか?減塩が、高血圧予防に大変いいように喧伝され、みんなそれを信じ込んでいるようだ。市販されている梅干しは、砂糖やら、人工甘味料のアステルパームやら、カツオやら、甘ったるい味付けばかり。中には、カビ防止のため保存料をわざわざ入れている物もあある。

もう一つは、クエン酸不足だと思う。つけ込む前に、十二分に日光に干して水分を取り除くだけでなく、ほんとに「しわくちゃ」になるまでにしなければならない。そうすると内部でクエン酸が増えて、保存が利くようになる。

梅干しはそもそも保存食品だ。おかずではない。戦国武将が、炊いた飯を長く持ち歩いても腐らないようにするために工夫されたのであって、すっぱくて、塩分が多いのは当たり前。しかも彼らは運動量が多く、汗をよくかくから、塩分は減らすどころか、補給したいくらいなのだ。

私は、昼のにぎりめしを作るために、梅干しを作った。だから、相当塩辛いし、その酸っぱさには、歯が浮く位だ。でも私の場合、運動量があり汗をかくことも多く、朝夕の食事は特に塩分を多くしていないので、特に問題はない。「美味しんぼ第35巻第1話」では、この梅干しの低塩の害について詳しく述べてある。

2001年7月追加作成

梅サワーの魅力

梅は殺菌力を持ち、その豊富なクエン酸のせいもあって、疲労回復によいとされてきた。梅酒がそのもっとも人気のある飲料であるが、アルコール分が入っているので、しこたま飲んで運転、というわけにはいかない。夏の暑い日にはほんのり酔って、昼寝の時間が長くなるかもしれない。

そこで登場するのが梅のソフトドリンクだ。酢と砂糖を加えて、梅の成分を抽出したもの。さわやかで、ちょっぴりすっぱくて、疲労回復には強力な効果を発揮する。梅サワーの作り方外部リンク

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© 西田茂博 NISHIDA shigehiro
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